異世界帰りの呪術師   作:北山 真

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姉妹校交流会 作戦会議

 

 姉妹校交流会の日の午前中。

 

 呪術高専京都校の生徒八名と、引率の庵先生を合わせた総勢九名は呪術高専東京校の敷地を歩いていた。

 楽巌寺学長は先に入り、東京校の学長である夜蛾正道と会談していた。

 

 姉妹校交流会は昨年の勝利校の土地で行われる。

 昨年は特級術式乙骨憂太の活躍により、東京校の勝利で終わった。

 故に、今年は東京校で開催されることとなったのである。

 

 

「乙骨は結局出ないのか…」

「いつまで言っているんだ」

「海外に居るから出ないって話でしたね。会ってみたかったです」

 

 東堂さんが嘆く様に言い、加茂さんと俺が言葉を返す。

 乙骨さんは結局不参加みたいで、俺も残念に思ってた。

 

「終わったら皆でショッピングして帰りましょう」

「良いですねそれ」

「私、弟にお土産買って帰りたいです」

 

 女子三人は、既に終わった後のショッピングについて考えているようやった。

 荷物持ちにされそうで今からちょっと怖い。

 

「メカ丸さんは身体大丈夫ですか?」

「問題なイ。平気ダ」

 

 新田はメカ丸さんの心配をしとった。

 

 

 楽しく会話している間に、一行は集合場所へと着いた。

 森の中にある石造りの階段を登った先、少し開けた場所に既に東京校の面子が集まっていた。

 

 

「来たな」

「しゃけ」

 

 真希姉さんと狗巻さんが話しかけてくる。

 

「あら、出迎えご苦労様」

「柄悪いのが多いわね、可愛くない」

 

 真依さんが嫌味ったらしく返し、西宮さんは可愛くないことに不満気やった。

 

「あの馬鹿は?」

 

 庵先生が東京校の生徒へと質問した。

 いや、馬鹿じゃ誰も分からん気がするけど。

 

「悟なら遅刻してる」

「あの馬鹿が時間通りに来るわけねぇだろ」

 

 パンダさんと真希姉さんがそう返した。

 馬鹿イコール五条さんなんや。そして遅刻するんや。

 いや、特級やし普通は忙しくて交流会不参加でもおかしく無いんちゃう?

 

「はーい!お待たせ!」

「遅いのよっ!」

 

 そういう会話をしている内に、五条さんが大きな箱を乗せた台車を押して登場した。

 庵先生に遅刻を指摘されているが、全く気にしとらん。

 

「いや、任務で海外に行っててね。これからお土産を配りたいと思いまーす!」

 

 ニコニコと話しながら、お土産を配る準備をする五条さん。

 

「はいこれ、京都校の皆に、とある部族のお守りね。あっ、歌姫の分は無いから」

「いらねぇよ!」

 

 そう言って京都校の生徒にお土産の人形を配っていく五条さん。

 案の定庵先生は無視された。おいたわしや先生。

 

 それはそうと何の人形なんやろ。

 ピンクの色の人型らしき、ゆるい顔をした人形を配られた。

 

「そして、東京の皆にはこちら!」

「はい!オッパッピー!」

「故人の虎杖悠仁(いたどりゆうじ)君でーす!」

 

 ハイテンションで、台車に乗っていた大きな箱から登場したのは赤茶色の髪の毛の男子生徒やった。

 お笑い芸人の一発芸しながら登場しとるけど、めっちゃ滑っとる。

 

 いや、それよりもこの人形何やろ。感触結構ええなぁ。

 お守り言うてたけど、何から守るやろ。やっぱり呪いからかな。

 

 

 

 京都校の生徒が五条悟のお土産に夢中になっている間。

 東京校の生徒間では感動の再会…にはなっていなかった。

 変な登場の仕方をしたせいでそんな空気にはならず、何処で何をしていたのか責められる雰囲気になっていた。

 

 その時、ちょうど花火が上がり、姉妹校交流会が開催された。

 そのタイミングで夜蛾正道が全員の意識を集めて、開会の挨拶を始める。

 

「二日間に渡って開催される、東京・京都姉妹校交流会。第一日目、団体戦!」

 

 夜蛾さんの低い声で開催が宣言された。

 

チキチキ!呪霊討伐猛レース!!

 

 チキチキって何や。

 

「相手を殺したり、再起不能の怪我を負わせることのない様に」

 

 この挨拶中、夜蛾さんは、ずっと五条さんにコブラツイストかけてるせいで、若干声が途切れながらも説明を終えた。

 

「以上!開始時刻の正午まで解散!」

 

 解散宣言がされても五条さんは解放されへんかったし、誰も助けようとはせんかった。

 

 五条さんの悲鳴が上がる中、各校は用意された部屋へと案内された。

 

 

 


 

side.東京校

 

 虎杖悠仁が生きていたことを説明し、自己紹介を済ませた後、東京校の生徒達は作戦会議に入ろうとしていた。

 

「それで?虎杖は何が出来るんだ?」

「殴る蹴る」

「そう言うのばっかだなこっち側」

 

 パンダが質問し、それに虎杖が回答したが、望む答えでは無かったパンダが嘆く。

 実際は秤金次、パンダ、禪院真希、虎杖悠仁の四名が前衛タイプの呪術師なので配役は悪く無いのかも知らない。

 

「実際どんぐらいの実力なんだ?」

 

 真希が虎杖の実力を尋ねる。

 

「そいつが死んでた間、何してたか知りませんが」

 

 そう前置きした上で、伏黒が言う。

 

「東京校・京都校、全員呪力なしで戦い合ったら…虎杖が勝ちます」

 

 虎杖の人外じみた身体能力を知る伏黒が言い切った。

 

「へぇ、面白れぇじゃねぇか。それは東堂よりもって事で良いんだよな?」

「ええ」

 

 秤の質問に対しても、伏黒は言い切る。

 伏黒は戦って実力を知る東堂よりも、虎杖のことを買っていた。

 

「じゃあ、虎杖。お前の相手東堂な」

「オッス!」

 

 秤の指名に虎杖は元気良く返事をした。

 

「金ちゃんはどうするの?」

「俺は直樹の相手をやる」

「秤が東堂の方がいいんじゃないのか?同じ三年の一級だろ」

 

 星と秤の会話に、パンダが混ざる。

 パンダは、東堂の強さを見た事で、今いる東京校の中で一番強い秤が東堂と戦う方が良いと思っていた。

 

「いや、百鬼夜行の時に見たが、東堂よりも直樹の方が強いぜ」

「そんなにか直樹は…」

「ああ。東京校なら俺か乙骨じゃねぇと止められないだろ」

 

 直樹は強いと言い切る秤。

 今ここにいないが特級呪術師である乙骨憂太か、その乙骨に「()()()()()()()()()()()」と言われる秤。

 それに匹敵すると思うほど、秤は禪院直樹を買っていた。

 

「じゃあ、虎杖は東堂、秤は直樹を抑えるとして、他の配役はどうする?」

 

 パンダが司会をして、配役を決めていく。

 

 式神により探索力の高い伏黒が呪霊・京都校の探索役。

 連携が難しい術式持ちの狗巻・星が主に呪霊討伐役。

 連携が取りやすい真希、パンダ、釘崎は、三人で京都校の押さえ役。

 

 役割分担が決まり、実際の動きの打ち合わせをしていく東京校。

 

 正午は近づいてきていた。

 

 

 


 

side.京都校

 

 京都校の生徒と楽巌寺学長が集まる部屋で、楽巌寺学長が方針を示す。

 

「宿儺の器、虎杖悠仁は殺せ。あれは人では無い、故に全て不問」

 

 その言葉に京都校の面々は様々な顔をしていた。

 人を殺す事に難色を示す者。

 当然の事と流す者。

 違う事を考えているのか、無関心な者。

 傀儡なので顔色の変わらない者。

 

「殺すも何も、彼死なないからここにいるんですよね?」

 

 真依が楽巌寺学長へと質問する。

 どうやって殺すのか?と。

 

「先の虎杖の死は自死だと聞いておる。敵対術師に止めを刺す時に気をつけねばならん事は?」

「死後呪いに転ずる事を防ぐ為に、呪力で殺します」

 

 楽巌寺学長の更なる問いに対して、加茂が模範回答で返した。

 

「そうじゃ、故に――」

 

 ガシャンッという音で楽巌寺学長の話が遮られた。

 音を出したのは東堂。

 先程の音は、彼が襖を蹴り飛ばして破壊した音だった。

 

「くだらん。勝手にやってろ」

「戻れ東堂。学長の話の途中だ」

 

 勝手に外に出ようとする東堂を、加茂が止める。

 しかし、

 

「十一時から散歩番組に高田ちゃんが出る。それ以上の説明がいるか?」

 

 推しアイドルの高田ちゃんの番組の為に動く東堂は、その程度の静止では止まらない。

 

「録画すれば良い。戻れ東堂」

 

 尚も止める加茂だったが

 

「リアタイ*1と録画、両方見んだよ!舐めてんのかぁ?」

 

 そう言い放ち、凄む東堂。

 その体から発せられる圧力に、加茂は何も言えなくなる。

 

「そこかよ」

 

 真依が突っ込みを入れるが、気にせず東堂は続ける。

 

「いいかお前ら、爺さんもよく聞け!」

 

 東堂が部屋にいる全員に向けて言い放つ。

 

「女の趣味の悪いお前らには、とうの昔に失望している」

 

「謀略・策略勝手にやれよ。ただし、次俺に指図してみろ…」

 

殺すぞ

 

 そう言って殺気立つ東堂の放つ圧は先程までの非では無かった。

 

「行くぞ、直樹!お前も見るだろう」

 

 そう言って東堂は直樹を誘うが

 

「すみません東堂さん。学長に話があるので…」

「フンッ!先に行っているぞ」

 

 直樹は申し訳なさそうに断った。

 故に、東堂は鼻息荒く一人で歩いて行った。

 

「それで、話とは何じゃ?」

「ええ、二つほど聞きたい事があります」

「ほう?」

 

 直樹から二つの質問が入る。

 その間、周りからは一言も発せられなかった。

 

「一つ目は、()()宿()()()()()()()()()()()()()()?」

「どういう意味じゃ」

「受肉した両面宿儺がむざむざ死ぬとは思えません。器が死に掛けたなら生きようとするのでは無いですか?例えば()()()()()()()()()()()

 

 その発言に、京都校の生徒が凍りつく。

 器である虎杖悠仁殺害任務が、呪いの王である両面宿儺討伐に変わるかもしれない。

 いくら二十本ある宿儺の指の内、数本分の力しか無いとはいえ、相手は呪いの王。最強の呪術師と言われた存在である。

 敵対すれば、自分達に待つのは死だけである。

 

「本当に殺すのであれば五条悟に依頼すべきかと思います」

 

 そう直樹は締めくくる。

 呪いの王を殺しうるのは、現代最強以外あり得ない。

 そういう趣旨の発言であった。

 

「…それで、二つ目は?」

 

 一理あると考えたのか、少し時を開けて楽巌寺学長が二つ目の質問を促した。

 

「はい。二つ目は、その五条悟についてです」

 

 直樹は先程名前を挙げた人物について尋ねる。

 

「学長、五条悟は本当に()()宿()()()()()()()()?」

「何を言っておる。その五条に依頼を出せと言うたのはお主じゃろう」

 

 楽巌寺学長が困惑する。

 五条悟に殺せと言っておきながら、五条悟に殺せるかを尋ねる。

 矛盾した発言に聞こえた。

 

「これには二つの意味があります。五条悟は両面宿儺に勝てるのか、五条悟は器である虎杖悠仁を殺せるのか。私より学長の方が五条悟について知っているでしょう」

「ううむ」

 

 楽巌寺学長が悩む。

 五条悟を知っていて、過去の両面宿儺についても詳しいが故に悩んでいた。

 

「殺せるじゃろう。あの男ならば」

 

 悩んで出した答えは五条悟は両面宿儺を殺せるであった。

 

 楽巌寺学長はこう考えていた。

 五条悟は親友であった夏油傑を殺した、故に虎杖悠二も殺せるだろうと。

 五条悟は現代最強の呪術師である。故に、指数本分の両面宿儺であれば問題なく殺せるだろうと。

 

「で、あれば。私達が殺すのではなく、五条悟に処遇を任せるのが妥当かと考えます」

「…お主はそう考えるのじゃな」

「はい」

 

 直樹が考えていたのは、人食い鬼のいる世界で会った兄妹であった。

 人食い鬼にされた妹を庇う兄と、兄の言いつけを守り人を食わずに我慢する妹。

 

 それが、虎杖悠仁の境遇と被って見えた。

 虎杖悠二は()()人を殺していない。

 そして、宿儺の器として指を二十本食べた後に死ぬ覚悟はあると聞く。

 

 ならば、最後の一瞬まで人として生きて、人として死んで欲しい。

 それが直樹の願いであった。

 

 当然、両面宿儺復活のリスクがあるのは分かっていた。

 しかし、被害を出す前に殺すのは嫌だった。

 

「…よかろう。虎杖悠仁殺害は取り消そう」

「ありがとうございます」

 

 直樹の発言により、楽巌寺学長が虎杖抹殺を取り消した。

 その言葉にホッと肩を撫で下ろす京都校の生徒。

 

「じゃあ俺は東堂さんのところに行って来ます。説明もいるでしょうし」

 

 そう言って直樹は外に出ようとする。

 その背中に楽巌寺学長が声をかけた。

 

「直樹よ、後悔するかも知れんぞ」

 

 それは、両面宿儺復活の折には、この時殺しておいた方が良かったと思うのでは無いかという警告であった。

 しかし、それを理解した上で直樹は返す。

 

「その時は、俺が殺しに行きます」

 

 かつて人だった存在である人食い鬼を斬り殺した様に、両面宿儺に挑むだろう。

 その覚悟を決めている直樹が今度こそ外に出た。

 

 後に残された京都校の人間は、少しした後に、団体戦での配役を決めていった。

 

 

 

 結局、時間になるまで東堂と直樹は帰って来なかった。

 

 高田ちゃんは今日も可愛かった。

 

 

 

 


 

side.◾️◾️

 

 

 交流会の三日前。

 何処とも知らぬ浜辺で会議が行われていた。

 

 その場にいるのは一人を除いて人では無かった。

 

「じゃあどういう攻め方をしようか」

 

 特徴的な前髪をして、額に縫い目がある長身で袈裟を着た男性が発言する。

 この場にいる唯一の人間であった。

 

「俺が忌庫(きこ)に入る為の陽動でしょ、相手は?」

 

 次に声を出したのは人に見える呪霊。

 全身に縫い目が存在しており、ツギハギのゾンビにも見えた。

 

「生徒だけで一級術師が三人以上、その他にも多数ってところだね」

 

 袈裟の人間がそう答えた。

 

『私一人では荷が重いですね』

 

 意味は伝わるが、何を言っているのか分からない声で返したのは、目から木の枝が突き出た呪霊。

 

「儂は回復に時間がかかる」

「ぶー」

 

 頭が富士山の様になっている単眼の呪霊がそれに続き、頭巾を被った頭が巨大な蛸の様になっている呪霊が鳴く。

 どうやら否定的な意味の鳴き声の様だった。

 

花御(はなみ)だけでは厳しいかな…さてどうするか」

 

 その袈裟の発言に今まで話していなかった存在が話し出す。

 

「私も行こう。花御と二人なら、まぁ何とかなるだろう」

 

 そう話したのは、二足歩行して、白い袴だけを着た単眼の龍の様な呪霊だった。

 

「なら、二人に行ってもらおうか。流れとしては…」

 

 袈裟の男を中心に作戦会議がされる。

 

 果たして、この作戦は何を意味しているのか、それが分かるのは交流会の当日であった。

 

 

 

*1
リアルタイムの略




 いかがだったでしょうか。今話も楽しんでもらえていれば幸いです。

 さて、今話から交流会編開始となります。
 ここまでは書きたいと思っていたので、書き続けられて良かったです。
 皆さんのお気に入り登録、高評価、感想、UAのおかげです。
 本当にありがとうございます。
 次話以降も楽しんで読んで貰える様に努力してまいります。

 それでは、今話も読んで頂き本当にありがとうございました。
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