本当にありがとうございます。
side.直樹
「スターーット!!」
交流会は五条さんのクソデカ宣言でスタートした。
その前にあった庵先生のグダグダ挨拶なんて無かった。
いいね?
スタートと同時に、何でか上半身裸になっている東堂さんと走り出す。
交流会の舞台は主に森。
そこに放たれた呪霊達の中で二級呪霊を見つけ出して、先に祓った方の勝ちや。
やから、二級呪霊を祓えて機動力のあるやつを討伐役に当て、それ以外が妨害役に徹するんがベストやと、京都校は考えとった。
京都校の生徒達は三つのグループに分かれていた。
一つ目、というより一人は西宮桃。彼女はその術式により空を飛べる。故に空中からの索敵と各員への指示を担当していた。
二つ目は、加茂が率いるグループ。このグループは一番機動力のあるメカ丸を敵の妨害役から守りつつ、敵の妨害もする。臨機応変な対応をするグループ。
このグループには西宮と東堂、直樹以外の全員が参加していた。
三つ目は、東堂と直樹。この二人は妨害に専念する役である。
東堂と直樹は京都校における最大戦力。
故に、呪霊討伐に行かずに妨害に専念することになった。
しかし、最大の理由は東堂が言う事を聞かないからである。
東堂は三年。これが最後の交流会。
求める物は勝利…ではなく闘争。
退屈な呪霊討伐ではなく、東京校との血湧き肉踊る戦闘を欲していた。
東堂の戦闘に付いていける者が彼しか居なかった、という理由で、直樹はその付き添いである。
そして、このグループ分けにした加茂は考えていた。
ともすれば、
東堂さんと一緒に森を駆け抜ける。
東京校の面子が固まっている場所は上空の西宮さんが指し示した。
故に、最速でその場所にまで辿り着いた。
「いよーし!全員いるな?まとめてかかってこい!」
「東堂さん、俺もおるんすけど」
東京校の全員が揃っているところで東堂さんが啖呵を切る。
「虎杖っ!」
「押忍!」
真希姉さんが虎杖君の名前を呼び、それに反応した虎杖君が東堂さんの顔面に飛び膝蹴りをした。
呪力は殆ど込められてなかったから、大したダメージにはなってないやろうけど、体勢が崩れて隙が出来た。
「今だ!散れ!」
東堂さんに隙が出来たのを見逃さずに、真希姉さんが合図を出した。
それを聞き、東京校の面子がバラバラな方向に走り出す。
バラバラに逃げられると全員追うのは不可能やな。
この面子の中で一番索敵能力があるのは伏黒君や、それだけは確実に妨害しよか。
「君は逃さん」
逃げ出す伏黒君の背中を捕まえようと手を伸ばすが
「お前の相手は俺だよ」
それは金次さんに止められた。
金次さんは、腹の前で両手を構えている。
右手は親指と人差し指で円を作り、それ以外の指は揃えて伸ばされとる。
左手は右手の下に添える様に、指を揃えて伸ばされとる。
そして、金次さんの呪力が高まる。
「領域展開」
領域展開を出される前に『落花の情』を発動しようとしたけど、それよりも早く金次さんの領域展開が完了した。
「
結界に閉じ込められてしまう。
その結界内を、金次さんの生得領域が満たしていく。
駅の改札が無限に連なる空間へと変わっていく。
その瞬間に俺の脳内に直接流された情報の数々。
『坐殺博徒』は「
パチンコの内容を割愛するが、領域展開の効果は非常に単純。
領域の必中効果で、パチンコの情報を教えられた俺は抵抗を止めた。
「どうした?出ても良いんだぜ」
それを見て不審に思ったのか金次さんが尋ねてくる。
「確かに出るんは簡単ですけど、金次さんがボーナス当てるまで待ちますわ」
「後悔するぜ」
そう金次さんが警告してくるが、
「逆にここで逃げ出したら、最後の交流会やのに全力でぶつかれへんかったって、金次さんが後悔するでしょ?」
俺が後悔するんは良いけど、最後の年で後悔させたくない。
東堂さん見てると、そう考える様になってきた。
「やから、全力でやり合いましょう。俺も本気でやりますし」
俺の言葉を聞いた金次さんがクックッと笑い声を漏らした。
「良いゼェ!最高に熱いじゃねぇか!」
金次さんが『坐殺博徒』のパチンコを回し始める。
「最高の交流会にしようぜ!」
「ええ、是非」
そのセリフから五分後、秤金次がボーナスを引いた。
交流会が始まり、秤金次の領域が展開されてから一分後。
交流会の敷地である森の中は混戦模様となっていた。
東堂葵は虎杖悠仁を
星綺羅羅、狗巻棘、メカ丸、西宮桃の四名は、この交流会団体戦の勝利条件である二級呪霊討伐の為に、森の奥深くへと入っていた。
加茂憲紀は、まだ実力が未熟な新田新をカバーしながら故に苦戦しながらも、伏黒恵、パンダとの戦闘を行っていた。
禪院真依、三輪霞、禪院真希、釘崎野薔薇の四名もまた、女同士の熾烈な勝負を繰り広げていた。
side.禪院真依
真希の薙刀と霞の日本刀が打ち合う。
そのままだと霞が押し切られちゃうから、手に持った
「チッ」
舌打ちされながらも真希に躱されちゃうけど、霞との距離は離れた。
私の気が逸れた所を、釘崎さんが狙って来た。
私の左脇腹を抉る様に金槌を振るってくるけど、
「あら野蛮ね、一体どこ出身なのかしら?」
煽りながらそれを躱し、逆に隙が出来た所を腹を蹴って追い返した。
「ってぇなぁ!」
「落ち着け野薔薇」
煽り耐性がないのか、怒り出す釘崎を真希が宥めていた。
その隙に三輪が抜刀術の構えを取り、その後方5メートル程度の所で真依が銃を構えていた。
その銃のリロードは既に完了していた。
「どうしたの?その程度?」
「うっせぇよ」
私の煽りに真希は淡々と返す。
生まれた時から一緒なんだから、この程度で一々怒ったりはしないわよね。
けど、釘崎さんは違うみたい。カンカンに怒ってるわね彼女。
「絶対その面ぶん殴ってやる!」
釘崎さんはそんな事言って、私を狙い、霞を迂回しながら銃撃にも気をつけて、森を縫う様に、木を盾にして私に近づこうとして来る。
それは好都合だった。
真希と釘崎さんの二人がかりで霞を狙われるのが一番嫌だったから。
私は釘崎さんを狙って数発の銃弾を放った。
釘崎さんは近くの木の裏に隠れるが、銃弾が足に掠り出血する。
「ぐうっ!」
「野薔薇っ!」
「大丈夫です!」
それに反応して心配する真希、気丈に返す釘崎。
「さぁ、どうするの真希。一年生守りながら戦えるの?」
「テメェ」
「真依がガチ悪役なんですけど…」
真依の拳銃という極めて強力な遠距離武器と、それを守る三輪。
極めて理想的な前衛と後衛の
この戦場は膠着状態に陥っていた。
side.加茂
森の中で戦闘中、少し距離が空いたタイミングで私は口を開いた。
「戦闘中だが、君達に聞いておきたい事がある」
「ん、何だ?」
私の問いにパンダが答える。
「虎杖悠仁をどう思う」
「どうって言われてもな…」
私の問いに少し考え込むパンダ。
「どう言う意味ですか」
「言葉通りの意味だ。特に伏黒君は同じ一年で、任務も共にしたと聞いている。君からは特に聞いておきたい」
その時、考え込んでいたパンダが答えを出した。
「ちょっとしか話してないが、ありゃ善人だ。なぁ恵」
「ええ、あいつは良いやつですよ」
「そうか」
両面宿儺の器が善人か。
「私は虎杖悠仁の死刑に賛成だ」
「ちょっと加茂さん…」
私の言葉にパンダと伏黒君の顔付きが変わる。
新田が止めてくるが構わず続ける。
「万難を排すなら今すぐに殺しておくべきだと思っている」
「なら何で殺しに行かないんですか?今なら事故に見せかける事も出来るでしょう?」
「さて、何でだろうな」
伏黒君の問いをはぐらかす。
直樹と学長の話を聞いて、虎杖悠仁殺害にはリスクが多い事は理解した。
しかし、私は未だに悩んでいた。
今、殺す為に必要なリスクは私達呪術師の命だけ。
対して両面宿儺が復活した際には、非術師にも被害が出るかもしれない。
呪術師として、それを許容して良いのか。
いや、そもそも私は本当に虎杖悠仁を殺したいのか。
善人と言われる彼を、リスクがあるという理由だけで殺す事が本当に正しいのか、私は悩んでいた。
「もう何でかは聞きません」
そう言う伏黒君の体に呪力が満ちる。
「ただ俺は、自分の良心に従って人を助けるだけです」
「そうか。君は強いな」
覚悟を決めた伏黒君と向かい合う。
「俺は先輩だからな。後輩を助けるのは先輩の役目だろ?まあ、俺はパンダだけどな」
そう言うパンダも呪力を身に纏い、拳を構える。
その呪力の昂りを感じて、新田と共に私も構える。
この戦場の戦いはこれからが本番だった。
side.教師陣
交流会を教師陣は建物の一室で観戦していた。
その場にいるのは、京都校側からは楽巌寺嘉伸、庵歌姫。東京校側からは夜蛾正道、五条悟。そして、中立の立場として一級術師の
観戦方法は冥冥の術式『黒鳥術式』を使ったものである。
『黒鳥術式』は烏を操る術式であり、その烏にカメラを持たせる事で、教師陣は戦闘を観戦することが出来ていた。
流石に秤金次の領域内までは観戦出来ていなかったが。
「うんうん。皆良い感じにバチバチしてるねぇ」
上機嫌に五条悟が言い放つ。
彼が予想していた、虎杖悠二殺害もなく、極めて順調に交流会が進んでいたからだ。
そんな時、冥冥が呟いた。
「おかしい…」
「どうしたんですか?冥冥さん」
その冥冥に対して、敬語で話しかけたのは庵歌姫であった。
「
冥冥は術式で操る烏と感覚を共有する事が出来る。
その烏が感じていたのは、不自然な気流の乱れ。
それは、空を飛ぶ西宮桃の影響を考慮しても不自然過ぎた。
その発言の意味を教師陣が考える中、次なる異変が起きた。
カメラから送られて来ていた映像が全て止まったのである。
「冥さん!」
「…烏が全部落とされた」
五条悟が冥冥に確認をするが、その答えはカメラの故障では無く烏の死亡であった。
そして、更なる異変が起きる。
部屋に貼り付けられていた符が全て、赤い炎で燃え落ちた。
この符は、交流会が行われている森に放たれた呪霊とリンクしており、呪霊が祓われると色がついた炎により、燃え落ちる様になっていた。
そして、赤い炎というのは東京校側が祓ったか、
そして、それと同時に建物全体にアラートが鳴り響く。
このアラートは、東京校の敷地内に未登録の呪力を持つ存在が侵入している事を示すアラートであった。
そこまでを判断した教師陣の動きは早かった。
「敵襲だ!俺は天元様の元へ!残りの全員で生徒の元へ!」
夜蛾の叫びにより全員が一斉に動き出す。
建物から勢い良く飛び出て、一直線に森へと向かう。
が、しかし。その方向には既に帳が下り始めていた。
「五条!アンタだけでも先に行きな!」
それを見た庵は、この場で最も移動の速い五条に向けて叫ぶ、が
「いや、無理だね」
「はぁ!?」
五条は無理だと判断した。
五条の六眼には既に帳が完成しているのがみえていた。
視覚的には完成していなかったが、結界の効果は既に完成していた。
故に、安易に五条だけが先行することをしなかった。
少しして、帳にまで辿りついたが、またしても問題が発生した。
「僕だけが通れ無い結界か…随分と準備万端だね」
そう、この帳は五条悟だけを通さず、それ以外は通れる様に設定されていた。
結果的にその場に五条悟を残して、庵歌姫、冥冥、楽巌寺の三人で帳の中に突入する事になった。
果たして、帳の中はどうなっているのか、そして、どうなっていくのか。
それは六眼を持つ五条悟でさえも見通せない事であった。
いかがだったでしょうか。楽しんで貰えていると幸いです。
今話から交流会開幕となりましたが、展開が全然違う事になっています。
学生の配置や、倒されている人が居ない事もそうですし、烏を落とされた事で冥冥も本格参戦する事もそうです。
この状況がどうなって行くのか、楽しんで貰えると嬉しいです。
それでは今話も読んで頂きありがとございました。