戦闘シーンは次回になります。
また、独自設定タグの通りに、異世界の能力と呪力を混ぜ合わせた独自設定がございます。独自設定が苦手な方には申し訳ございません。
一つ目は単純に呪術師としての役割を果たすため。
夏油傑は彼なりに呪術師の未来を考えて百鬼夜行を起こした様だが、呪術師の未来を謳いながら今いる呪術師を危険に晒す様な今回の行動を、禪院直樹は今を生きる呪術師としては認められなかった。
二つ目は禪院家次期当主候補としての箔付のため。
禪院直樹の幼少の頃は次期当主候補として全く期待されていなかった。
しかし、今現在その評価は大きく変わっていた。
禪院家の本家の血を引くことで呪力量も申し分なく、『異世界転移』という前代未聞の術式を持ち、さらには夜の炎という空間転移を可能とする技を持つ。反転術式を他者に使用できるまで使いこなし、炎の呼吸なる剣技を持ってしては、昔禪院家にいた
しかし、いくら評価されようとも実績の差は大きい。
そう、禪院直樹はその実力を評価されながらも、『異世界転移』によりこの世界での呪霊討伐の経験が浅かった。
他の次期当主候補は、直樹よりも年が上の人間ばかりであるために、また当たり前だが異世界に行くような事がないがために、呪霊討伐の実績は豊富にあった。
その差により、禪院直樹は未だに当主候補に収まっていた。その真の実力を持ってすれば、次期当主に内定するやも知れぬのに。
そういった事情により、直樹の父である現当主の
そして、最後の三つ目の理由。
なぜ東京ではなく京都の百鬼夜行に参加しているのか。
もちろん実家が関西にあるので、近い場所に参加したという理由もあるが、最大の理由は百鬼夜行直前の今に至るまで、直樹が探している人物にあった。
side.禪院直樹
百鬼夜行直前、俺は一歳年上の従姉妹である
禪院真依は呪術高専京都校に在籍している三級術師である。はっきり言ってその実力はあまり高くない。
頑張っても二級呪霊までが戦える強さで、一級呪霊や下手をすれば特級呪霊すらも出かねない百鬼夜行の戦場では死ぬ危険性もある。
故に、俺は
そして、遂に見つけた。
「久しぶりやなぁ、真依姉さん」
俺は、お揃いの濃い紺色で各々独自の改造が施された制服を身に纏った集団の中に、真依姉さんの姿を見つけて話しかけた。
真依姉さんは、俺の顔を見た瞬間に一瞬だけ目を細めたが、すぐに笑顔になり俺に近づいて話しかけてきた。
「久しぶりねぇ直樹君。こんなところで何してるのかしら?」
「次期当主候補として箔付けてこいて親父に言われたからと、まぁ真依姉さんに渡したいもんがあってん」
そう言いながら、俺は腰に差していた二本の日本刀のうち、一本を真依姉さんに差し出した。
「この刀は日輪刀て言うねんけど。まぁ所謂
真依が驚愕する。当たり前だ。退魔の剣とは文字通り魔を退ける剣であり、反転術式による正のエネルギーを常に発生させている剣である。
現存する退魔の剣はほとんどない。故に日輪刀に値段を付けるなら億は堅いだろう。
そんな刀を渡されて驚くなという方が無理である。
「三級呪霊ぐらいまでなら真依姉さんが振っても楽に致命傷になると思うわ。それ以上になったら有効な武器程度になるかも知れんけど」
この言葉は禪院家に捕獲されていた呪霊相手に試してみた結果であった。
その時は直樹自身が試し切りをした。適当に振ると三級呪霊には致命傷になったが、二級呪霊には致命傷とまではいかなかった。
「そんな凄いもの…ほんとうに貰ってもいいの?」
真依姉さんが恐る恐る尋ねてくる。自分でも使いこなせるとは思っていないのだろう。
それとも、自分の姉に遠慮しているのか。
「言うたやろお守り替りやって。見知った人間に死なねると気ぃ悪いねん。あと、
真希姉さんは真依姉さんの双子の姉だ。
双子は禪院家において凶兆とされ、忌み嫌われる。
それが俺は大嫌いや。
禪院家には「禪院家に
初めは何も思ってへんかったこの言葉やけど、異世界行くにつれて、この言葉が心底気持ち悪く感じるようになった。
異世界にはええ奴がいっぱいおった。
人助けるために必死になれる優しい奴。
強大な力を持つ奴に立ち向かえる勇気を持った奴。
禪院家におる奴のほとんどは違う。
人を貶して悦に浸るクズか、力のある奴に媚びて自分も強なったと思うカスばっかや。
せやから人食い鬼がおった世界から帰って来た時に思ったんや。
真依姉さんにはそれまで死んでもろたら困る。
今までクズ共のせいで碌な人生歩めへんかった分、俺が当主になってからは自由に人生選べるようにしたる。
「ほな真依姉さん、頑張って生き残りや」
それだけ言い切って、軽く跳び上がる。
呪力により強化された肉体は、軽々と二階建ての家の屋根に着地した。
そのまま屋根伝いに数回のジャンプをすると、ほんの数秒で五階建ての建築物の屋上にまで到達した。
直樹が街を見下ろしていると、ドーム状の帳が街を覆い始める。
帳とは最も簡単な結界術の一種であり、その基本的な使い方は非術師から呪術師の戦闘行動を隠すことである。
つまり、帳が下りたと言うことは
「さぁ、開戦や」
百鬼夜行の始まりである。
side.禪院真依
私ははっきり言って禪院直樹が苦手だった。
私達姉妹を虐める
そもそも『異世界転移』という術式の影響と直樹が呪術師として常に厳しい修行を行っているためにほとんど会話もせずに育った。
そして何より
同情してくれるのはいいが、それだけでは
まぁそれは
「大丈夫カ?」
「ええ大丈夫よ」
考えに耽っていた私を心配してくれたメカ丸に返事をする。
「なら構えておケ。そろそろ始まるようダ」
メカ丸のその発言と共に、帳が下りきる。
気を抜いている暇は無くなった。いくら退魔の剣を手に取ったところで私の実力が大きく上がったわけではないのだから。
「はぁ、嫌になるわねぇホント」
ため息を吐き、嫌味を言いつつも気を引き締める。
退魔の剣に熱い視線を送っているメカ丸と
お読みいただきありがとうございました。
この小説の独自設定の一つ目としまして、日輪刀の存在になります。
日輪刀=鬼の弱点
鬼≒呪われた存在=呪霊
呪霊の弱点=反転術式の正の呪力
と言う考えで、日輪刀を退魔の剣の一種という設定にいたしました。また、前話でさらりと流しましたが、逆に反転術式は鬼の弱点となっております。