異世界帰りの呪術師   作:北山 真

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 今話は幕間という事で、めちゃくちゃ短くなっております。


幕間:『異世界転移』の裏側

 

 ある廃墟となった建築物の一室、剥き出しのコンクリートで囲われた扉もない殺風景な部屋の一室で、一人の男と複数の異形達が大型テレビを見ていた。

 

 テレビには直樹が『異世界転移』の術式を行使している場面が映っていた。

 

「素晴らしい。実に面白い術式だ」

 

 この場にいる唯一の人間の男、黒を基調とした袈裟を着た男が興奮を隠しきれずに声を漏らした。

 

「これが本来の術式の使い方か…あのワームホールは拡張術式なのか?」

 

 交流会を襲撃した龍人の呪霊、楼靇が疑問を発した。

 自身が相対した敵である直樹の術式がワームホールを作るものではなく、『異世界転移』だった事を知った事で生じた疑問であった。

 

「さぁ…そこの所はどうなんだい?」

 

 袈裟の男が並び立つ異形の内の一人、木製のロボットの様な人物、つまり呪術高専京都校の生徒であるメカ丸に目を向けながら聞いた。

 

「…ワームホールは異世界由来の技術らしイ」

 

 袈裟の男の質問に、メカ丸が簡潔に答えた。

 

 メカ丸は自身の目的の為にこの集団に協力していた。

 その一環として、今現在東京校で操作している傀儡に小型のカメラを仕込んでおり、その映像をこの場にあるテレビに映し出していた。

 彼が真依との会話にて不機嫌だったのは、呪術界、引いては京都校の仲間に対する裏切り行為に罪悪感を覚えていた為であった。

 

「ほうほう、成程ねぇ」

 

 その答えに対して、うんうんと頷く袈裟の男。

 

夏油(げとう)!忌々しい呪術師が二人減ったのだ、今の内に動くべきでは無いのか!?」

「ぶふぅ〜」

 

 袈裟の男、夏油に対して、頭が火口になっている単眼の呪霊の発言に、真っ赤なタコの様な巨体の呪霊が同意する様に鳴いた。

 

「そうだね…まずは宿儺の指の回収を急ごうか」

『しかし今動ける人数は多く無いですよ。私と楼靇は今回の件の疲労が、漏瑚(じょうご)は五条悟やられた傷が癒えていません』

花御(はなみ)っ…!?」

 

 夏油の指示に木の呪霊である花御が反対し、名を挙げられた火口頭の呪霊、漏瑚が悔しさから抗議する様な声を漏らした。

 

 花御の指摘は的を射ていた。

 花御と楼靇は先に行なった姉妹校交流会の襲撃で呪力を消費しており、回復には少なく無い時間が掛かる。

 漏瑚は交流会よりも前に五条悟と戦闘していた。その際、首一つにされるという圧倒的な敗北を喫していた。

 今現在、一応肉体は再生していたが、万全の状態とは言いずらかった。

 

 しかし、花御の意見に対して夏油は解決策を持っていた。

 

「それについては心配要らないよ。そろそろ新しい仲間が来るはずだ」

 

 その言葉を聞いていた訳では無いだろうが、部屋の外から三人の男と一体の異形が入室して来た。

 

「お待たせ〜」

真人(まひと)か、後ろの奴らは誰だ?」

 

 呑気な挨拶をしながら入って来たのは、漏瑚に真人と呼ばれた呪霊であった。全身に縫い目のある長髪の男で、ボロボロの服を着ていた。

 

「新しい仲間だよ。ほらほら挨拶して」

 

 ニタニタと笑いながら自己紹介を促す真人。

 そのすぐ後ろにいた僧兵を思わせる様な法衣に身を包んだ鼻の上に一本の黒い線がある男が一歩前に出た。

 そして、代表して簡潔に自己紹介を始めた。

 

脹相(ちょうそう)だ。後ろにいるのは弟の壊相(えそう)血塗(けちず)

「壊相よ、よろしく」

「血塗だぁ、よろしくぅ」

 

 脹相に続いて挨拶した壊相と血塗。

 壊相は筋肉質で大柄な男性で、タイツの様なズボンと女性用のボディハーネスを着ている紛う事なき変態であった。

 血塗は青緑色の肌をした異形であり、丸っこい胴体にのっぺらぼうの様な顔、そしてその下に二つ目の巨大な口があった。

 

「ご苦労様だったね真人」

 

 夏油が労いの言葉を掛けた。

 

 そう、今回の襲撃の目的は呪術師の殺害ではなかった。真人が忌庫と呼ばれる呪術高専内にある呪物の保管所から呪物を盗み出す為の陽動だった。

 

 この三人は、真人が盗み出した『呪胎九相図』という九つの呪物の内、一番から三番までが受肉した姿だった。

 

「さて…じゃあこれからの話をしようか」

 

 夏油が今後の展望について話し始める。

 

 それをコンクリートの壁に背を預けた状態で、呆然と眺めながらメカ丸は思考を巡らせていた。

 

(新たに三人の仲間が加わった。それも九相図の受肉体ともなれば、その実力は最低でも一級以上は確実。ここにいる戦力だけでも相当だが…夏油傑の戦力も予想が付かない。俺は…どうするのが正解なんだ)

 

 メカ丸は悩んでいた。

 今回の襲撃で、京都校の仲間が多数傷付いていた。本来ならばその事について夏油に言い寄るつもりだった。何故ならば、京都校の仲間を傷付けないという縛りを夏油と結んでいたからだ。

 しかし、今ならば理解出来る。どうせ夏油ならば「縛りを結んだのは自分と真人だけ」とでも言うだろう。実際に花御と楼靇が縛りを破った罰を受けていない。

 

 その上で、自分がどう動くべきかを考えていた。

 

 自分の目的の為には、真人の協力が絶対に必要だった。

 しかし、自分の目的の為だけに仲間を危険に晒し続けるのは罪悪感から胸が苦しい。

 反抗するにしても、この戦力を相手に自分が出来る事は限られている。

 

 そして、その反抗についても、メカ丸から自信が無くなろうとしていた。

 

(奥の手は用意してあるが…本当に通用するのか?)

 

 メカ丸はこの集団と戦う事になった時用の奥の手を用意していた。しかし、今回の襲撃で目撃した楼靇の巨大竜巻を見て、奥の手が通用しない未来を想像してしまっていた。

 実際に戦うならば真人を相手にする事になるだろうが、しかし、楼靇と真人は同格の特級呪霊。簡単に倒せる相手では無い。

 

(俺は…俺はどうすれば良いんだ…三輪)

 

 メカ丸の悩みに回答は出ない。

 

 今はまだ…。

 




 いかがだったでしょうか。今話も楽しんでいただけていると幸いです。

 さて、今話で重要な変更点はメカ丸君の葛藤についてです。
 まず、前話で真依に対しての返答が不機嫌になっていた裏にはこういう事情がありました。
 そして、原作では交流会の件から真人との戦闘になったメカ丸君ですが、楼靇の強さを見たせいで現段階では自信を失っております。
 そんなメカ丸君がどうなるかは、後のお楽しみという事で。

 それでは今話も読んでいただきありがとうございました。
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