初戦闘シーンなので能力の解説が非常に多くなりました。
読みずらいかも知れませんが楽しんでもらえると幸いです。
帳が下りたと同時、呪霊が溢れ出る。
それを認識したと同時に全身に呪力を纏い俺は跳ぶ。
着地点にいた三級程度の呪霊を踏み潰しながら、大通りのど真ん中に着地する。
俺の派手な登場に怯んだのか、あるいは俺の身を纏う呪力に怯んだのか。
どちらにせよ、その場にいるみなが呆然と立ち尽くすのを無視して、呪霊を狩り始める。
日輪刀は抜かへん。その必要性は感じられへん。
目の前を飛ぶ蜂のような虫型の呪霊を平手で打ち払う。
足に噛みつこうとした犬のような四足歩行の呪霊を蹴り飛ばす。
左右から挟み込んできたヴェロキラプトルのような呪霊を、一歩引いて躱わす。
無防備に晒された頭を掴み、地面に叩きつける。
上空から襲いかかってきた鮫のような呪霊をアッパーカットで殴り返す。
鎧袖一触。
俺の一挙手一投足に呪霊が祓われる。
頭を殴れば破裂して、胴を蹴れば真っ二つになる。
日輪刀も抜かず、ただの呪力で強化した徒手空拳のみで、群れをなしていた二級から四級程度の呪霊を鏖殺した。
ふぅ、と息を一つ吐いて周りを見渡す。
気がつけば大通りは大混戦になっていた。
スーツを着た呪術師が鉈を振い、高専生らしき男が呪霊に拳を叩き込む。
カエルのような呪霊が舌を伸ばし、鷹のような呪霊が爪をたてる。
呪霊も呪術師も、誰も彼もが己の武器を振るっていた。
その状況を見て、思考する。
この状況のどこに大義があるねん。夏油傑は何を考えとるんや。
千体もの呪霊を解き放ち、仲間と謳う呪術師を危険に晒す。この行動のどこに大義があり、この行動の果てはどこに行き着くのか。
非呪術師のいない世界を作るとのことだが、その為に今いる呪術師を傷つけるのか。
横目に映った状況が、そんな取り留めのない思考を打ち切る。
あまり実力がなかったのか、高専生らしき女性の呪術師が犬のような呪霊に足を噛まれていた。
地面を強く蹴り、高速で接近する。
そのまま貫手で呪霊の喉を抉り、足を開放させる。
「じっとしてくれ」
呪霊に噛まれ、傷ついた足に左手をかざす。
左手人差し指に装着した、黄色い宝石を中央に嵌め込んだ晴のリングを意識して反転術式を発動する。
ボオゥと、リングから黄色の炎が立ち上る。
黄色の炎は晴の炎と呼ばれ、
日輪刀と同じく、異世界を由来とするこの力だが、生体エネルギーをリングに流すことで、炎を生み出す。
晴のリングをこの世界に持ち帰ってきた直樹は、晴のリングに反転術式で生じた正のエネルギーを流し込むことにより、その力をこの世界でも発動させることが出来た。
正のエネルギーを発生させる反転術式はそのプロセスで、通常の負の呪力同士を掛け合わせる故に、通常の呪力の倍の呪力を消費する。
しかし、治癒を可能するこの力はその呪力消費に見合うだけの効果を持つ。
炎の活性能力と反転術式の正のエネルギーの力により、足の傷を急速に癒した。
反転術式単体でも治癒は可能だが、即効性を高めるならば晴の炎と併用した方が良い。
「あ、ありがとうございます」
驚きの表情を浮かべながら、呪術師の女性は感謝の言葉を投げかけた。
驚きの理由は明確である。自分への反転術式だけでも高等技術だが、他者への反転術式はそれを超す超高等技術だ。出来る人間が両手の指で数えられると言うと、その難易度と希少性が伝わるだろう。
「どういたしまして。危ない思うたらすぐ下りや」
そう言いながら俺は次の負傷者の元へと急ぐ。
戦闘が進むにつれて負傷者が増えたからだ。
負傷者を目指しながら邪魔になる呪霊を祓う。
相変わらず俺の道を塞げる呪霊はおらんかった。
呪霊を祓いながら負傷者へと一直線に進む。
負傷者の完治と同時に次の負傷者の元へと走り、治す。
走る、治す。
何人目かの怪我を治している最中、悲鳴が連続して聞こえた。
悲鳴の方向を見ると、ブラキオサウルスと亀と人間が混じったような、等級で言えば一級は堅いであろう呪霊が幾人かの高専生を殺しとった。
先程見た青いシャツを着たスーツ姿の呪術師が、ネクタイを巻いた拳を振りかぶり、呪力を溢れさせながらその呪霊に向けて疾走する。
その呪力に反応して、他の呪霊達がスーツ姿の呪術師に向けて群がる。
もちろんそれを黙って見ている俺やない。
右手をスーツ姿の呪術師がいる上空に向ける。
同時に、右手の中指につけた特徴のない金属の指輪に向けて呪力を流し込む。
先程の晴の炎とは違い、今度は黒い炎が立ち上る。
黒い炎は
夜の炎の位置付けは、異世界であっても特殊である。
使いこなせた者は直樹を抜いて僅か二人だけ。
その二人は、非常に強大な力を持ちながらも強い絶望を味わい、復讐を誓った悲しき男達だった。
夜の炎とは、絶望という負の感情のエネルギーを用いて発生させる死ぬ気の炎だったのである。
直樹はこの夜の炎を、負のエネルギーである呪力の性質を活かして発動させる。
呪力により呪具化したリングに、自身の術式の
とはいえ、空間転移は呪術師から見ても破格の力を持つが故、直樹の豊富な呪力を持ってしても多用し過ぎることは危険だが。
右手の前に人一人が通り抜けられるサイズのワームホールを発生させる。
地上のワームホールは地面に直立するように発生させ、空中のワームホールは斜め下の地面に向けて発生させた。
ワームホールが繋がると同時に、ワームホールに全力で飛び込み、狙い誤らずにスーツ姿の呪術師の上空に躍り出た。
群がる呪霊に高速で飛び込み、拳と蹴りで呪霊を蹴散らす。
突如として現れた俺に驚くスーツ姿の呪術師を横目に問いかける。
「デカいのとちっさいの、どっちやりますか?」
その問いかけで状況を把握し直した呪術師が、サングラスを掛け直しながら答える。
「ではデカい方を」
答えを聞き、再び呪霊の群れへと飛び込んで呪霊を祓う。
その直後、黒い呪力が稲妻の如く迸った。
それは黒閃と呼ばれる現象で、打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる空間の歪みのことである。
黒閃は平均で通常の2.5乗の威力を持つと言われており、その絶大な威力が巨大な呪霊に炸裂した結果、巨大な呪霊は体を左右に真っ二つにされていた。
「ありがとうございます」
スーツ姿の呪術師が、感謝を示すが
「いや、余計なお世話だった見たいですね」
そう、この呪術師には加勢が必要なかった。
黒閃が出たとは言え、一級以上の呪霊を一振りで両断するその力量は、例え直樹がいなかったとしても、群がる呪霊に足を引っ張られることもなく同じ結果を作り出していたことだろう。
「例えそうだとしても」
スーツの男は、そこで一度言葉を区切り、鉈についた呪霊の血を払いながら続きを話す。
「助力に感謝を示すのは大人として当然のことです」
その言葉を聞き、その実力と精神性を認めた上で
「じゃあ、この辺の呪霊は任せます」
「ちょっと、待ちなさい!」
そう言い切り、相手の制止も振り切って移動を開始した。
今いる付近には、もう一級呪霊以上の強い呪霊はおらんが、他の場所からはまだまだ強い呪力を感じる。
この場にいた呪霊は被害が少なく済んだけど、他の場所ではどうなっているか分からん。
やから被害が大きくなる前に俺が祓う。
そう決意し強い呪力に向けて走る。
道路を疾走し古き良き京の街並みを体現する道に出た。
少し離れたところにおるのは巨大な鎧武者の姿の呪霊と半裸の男。
呪霊はその悍ましい呪力から特級相当の呪霊やと推測でき、それと相対する上半身裸の男も、その鍛え上げられた上半身と練り上げられ呪力から相当な呪術師やと推測出来る。
呪霊と男が動く。
呪霊は咆哮上げながら巨大な刀を振り回し、周囲の屋敷ごと男を薙ぎ払おうとする。
男は刀を躱し、飛来する瓦礫をはたき落としながら、呪霊の足に接近して打撃を叩き込む。
呪霊の巨体はよろめくが倒れるまではいかず、更に激しさを増して暴れ出す。
男は全ての攻撃を躱して俺の近くへと退避してきた。
呪霊の方は見た目通り破壊力が高く、頑丈そうに見えた。
半裸の男もまた、見た目通りに優れた体術を修めているみたいや。
やったら、被害少なく呪霊を討伐するためには大技が必要になるやろう。
「あいつを数秒止められるか?」
問いかける俺に対して
「それ位わけないさ」
容易いと言葉にする半裸の男。
そのまま男は手を打ち鳴らし、呪霊の足元へと瞬間移動して、男のいた場所に呪力の込められた木片が音をたてて落ちた。
どうやら拍手をすることで瞬間移動を可能とする術式のようだ。
「俺と似た力やな」
呟きと同時に、夜の炎を使って先程と同じようにワームホールを発生させる。
地上のワームホールはすぐ近くに、空中のワームホールは特級呪霊の直上100メートル程の高さから真下を向けて発生させた。
作り終わると、左腰のベルトに差し込んでいた日輪刀を勢いよく抜刀する。
刀身は炎のように真っ赤に染まっていた。
日輪刀は
その名の通り、初めて握った剣士によって刀身の色が変化する、摩訶不思議な刀である。
足を開き力を貯めながら日輪刀を上段に構えて、呼吸をする。
ただの呼吸ではない。異世界にて、尋常ならざる身体能力を持つ鬼と真っ向から切り結び、あるいは一刀両断することも可能とするほど身体能力を上昇させる、全集中の呼吸と呼ばれる特殊な呼吸法である。
その特殊な呼吸法故に、呼吸音もまた特殊である。
俺の口からゴオゥという炎を彷彿とさせる呼吸音がする。
俺が今から使う炎の呼吸による音や。
本来なら戦闘中は常に使用してるけど、二級以下の呪霊に使う気の起きひんから今まで使用してへんかった。
こんな事をしとると知ったら「油断するな‼︎」と声の大きい師匠に怒られるかもな。
「炎の呼吸、捌の型」
呟きながら、最大まで足に力を溜める。
そして
「
叫びと共に、溜めていた力を解放した。
流星火は貯めた力を一気に解放して鬼に飛び掛かり、回転して遠心力を加えながら唐竹割りに仕留める型である。
その型の性質上隙が大きく、外れた時の立て直しが難しい。
さらには、他の型を使っても鬼を十分仕留められる威力を出せるという、使い所が難しい型である。
その分破壊力は絶大な型でもあるが。
俺はそんな型を、夜の炎と呪力によりさらに強化する。
呪力による身体強化と全集中の呼吸により、地面を弾けさせる程の踏み込みを見せた俺は、ワームホールを潜り、鎧武者の呪霊へと一直線に落下する。
一瞬で呪霊へと近づいた俺は、接触する直前に一回転し、遠心力を乗せて刀を振るう。
炎の呼吸から生み出される人の限界まで強化された身体能力は、豊富な呪力による強化によって人を超えた力となる。
そこに重力による落下エネルギーと遠心力を生み出された斬撃は、圧倒的な攻撃力を生み出す。
日輪刀は寸分違わず呪霊の脳天に直撃した。
刃は抵抗もなく呪霊に分け入り、切り開き、脳天から股下までを通り抜け、見事呪霊を左右に両断した。
退魔の剣としての力故か、あるいは威力が高すぎた為か。日輪刀の刃の長さよりも、明らかに切断面が長かった。
斬った直後、勢いのままに地面に着地し、地面を深く陥没させる。
その跡は正に流星火の名に相応しく、隕石が落下したような有様だった。
「足止め助かったわ。おおきにな」
近くにいた未だ無傷の半裸の男に話しかける。
瞬間移動を可能とする術式と優れた体術を見せた男なら、俺の技から被害なく逃げおおせると考えてたけど、予想は当たってたらしい。
「そんなことはどうでも良い」
俺の言葉を切り捨てる半裸の男。
思わずどういう意図の発言か、聞こうとするその前に、
「どんな女がタイプだ!」
逆に俺が問いかけられた。
意味分からん。
戦場の、
百鬼夜行の最中に、
それも特級呪霊との戦闘のその直後に、
そないな事を聞いてくるなんて。
半裸の男の顔を凝視する。
真剣な表情をしている。
マジかこいつ。本気で聞いてるんか。意味分からんし、もう勝手させとこか。こういうわけ分からんやつとは関わらんのが吉や。
そういった事を瞬時に考えた直樹は、二重に強化されたままの超人的な身体能力で逃げ出した。
side.
「フッ、逃げられたか」
先程まで剣士の呪術師がいた場所を見る。
逃げる動作が
「まぁいいさ。どうせまた出会う」
呪術界は広いようで狭い世界である。
呪霊による被害は全国各地で起こるが、呪術師は万年人手不足である。
任務で一緒になることもあるだろう。
特に東堂葵と禪院直樹は呪術界でも高い実力をもつ呪術師だ。
東堂葵は二級術師だが、その実力は特級呪霊と渡り合うほどである。この戦いが終われば一級術師へと昇格するだろう。
そして禪院直樹は
「特級か…」
人の力を超えた身体能力。
特級呪霊を一刀両断する烈火の如き剣術。
そして
東堂葵には予感があった。
彼の師である特級術師
しかし今は
「しまった!高田ちゃんのトーク番組が!」
そう今は、そんなことより重要なことがある。
東堂葵は急ぎ、呪霊討伐に精を出す。
トーク番組を生放送で見るために。
今回の後書きはすごく長くなったので読み飛ばしてもらっても大丈夫です。
さて、独自設定の二つ目、死ぬ気の炎についてです。
呪力も死ぬ気の炎も、一種の生体エネルギーである点で一緒だと思いまして、直樹が使えるようにしました。
晴の炎は反転術式と似た効果だし、夜の炎は『転移』が部分的に一緒だし、両方使えるようにしたろ!とノリで決めました。
また夜の炎に関してですが、原作REBORNでは夜の炎にリングは必要ありませんが、直樹に関しては必要という設定です。
デイモンとバミューダよりも夜の炎の習熟度が低い、呪力を使っているせいで炎の純度が低いなどの理由により、直樹君はリングという補助具を使うことで夜の炎を扱える設定になります。
独自設定の三つ目、炎の呼吸の型についてです。
原作では陸から捌の型は未登場になっていましたが、折角なのでオリジナルの型を考えてみました。
今回登場した流星火は飛びかかって切り掛かるせいで、隙は大きいが威力は高いという型になります。
原作で考えると、無限列車では天井が低すぎて使えず、猗窩座相手には隙が大き過ぎて使えなかった。
とかだと煉獄さんが使えなかった理由になるかなとか妄想しております。
また、直樹君が使った強化版の流星火のモデルはREBORNのバミューダが最後に使った必殺技をオマージュしており、死ぬ気の炎と炎の呼吸、炎繋がりで好相性かなとか考えました。