お陰様でUAも一万を超え、お気に入り登録も250件を超えました。本当にありがとうございます。
皆様が読んでくれると思うと、頑張って続きを書こうと思って筆が進みます。
さて、今回は会話メインの回なのですが、人によってはキャラ崩壊していると感じる方や、話の流れに違和感を感じる方がいるかも知れません。
もし、不快に思った方がいらっしゃれば申し訳ございません。
【2018年 1月8日 禪院家】
禪院家次期当主が決まってから一週間が経過した今日、次期当主のお披露目が行われようとしていた。
お披露目には分家の中で有力な者と、本家に仕える全ての人間が
禪院家の大広間に集められた人々は座布団の上に正座して待機していた。
先日行われた次期当主を決める戦いに出ていた人間の多くも集められており、扇と直哉も、直樹による反転術式により五体満足でその場にいた。
また、その中には禪院真希、真依の姉妹の姿もあった。
真依は浮かない顔で、真希は仏頂面でそれぞれが次期当主である禪院直樹を迎えようとしていた。
「禪院直樹様が御成です」
女中のその言葉と共に襖が開き、禪院直樹が広間に足を踏み入れる。
顔は禪院直哉と兄弟だけあって非常に似ており、整っている方に入るだろう。
髪の毛は直哉が金に染めているのに対して、直樹は地毛の黒。
背格好は直樹の方が少し小さいだろうか。
上下黒の着物に、上から黒の羽織を羽織ったその姿は兄にそっくりだった。
しかし、その姿から感じる存在感が圧倒的に違った。
まるで、
年老いた者は、禪院家を出奔した禪院甚爾を思い出していた。
あの者に感じたものと同じ、圧倒的強者に会った感覚を。
今やその存在感に呑まれ、身動き一つしない者が殆どだった。
直樹が全員の前に座る。
「楽にしてくれ」
直樹の声が大広間に通る。
その声に応じて、ようやく息を吐き出す音が聞こえる。
それほどに張り詰めた雰囲気だった。
「次期当主に内定した禪院直樹だ。知らぬ者もいるだろうが、よろしく頼む」
直樹の挨拶と会釈に、多くの者が慌てて頭を下げる。
「頭を上げてくれ。さて、次期当主として初めに言っておきたい事がある」
頭を上げた皆に直樹が告げる。
「私はこの禪院家の雰囲気が嫌いだ。この家の、人を人として尊重できぬ傲慢な雰囲気が」
思い当たる節のある男性陣の顔が曇る。
逆に女性陣の顔は少し明るくなる。
もしかすれば、本当に待遇が良くなるかも知れないと。
「聞いている者も多かろうが、先日の戦いの際に『炳』を中心とした呪術師達に縛りを施した。内容は女子供に危害を加えぬ様にする為のものだ」
その言葉に、負けた事を思い出した面子の顔が顰める。
「私はこれから禪院家を改革していくつもりだ。呪術師として強い者が尊敬を集め、それ以外の者も虐げられない様に」
全員が困惑した顔を浮かべる。
呪術師として強い者が尊敬を集めるとは、今と変わらないのではないかと。
しかし、改革をするとも宣言している。
この矛盾した発言に皆が困惑していた。
「私は思う。呪術師とは尊敬されるべき職だと」
「呪術師とは呪霊と戦える唯一の者。その力は!その努力は!その活躍は!尊敬されるべきものだっ!」
直樹の力強い宣言に、多くの呪術師の自尊心が満たされる。
そうだと、呪術師として我々は努力してきたと。
呪術師として活躍してきたと。
それをこれほどの強者が認めてくれていると。
その言葉に引き込まれる。
直樹の圧倒的な強者の雰囲気はカリスマ性へと変わり、その場にいた多くの呪術師の心を掴もうとしていた。
「もう一度言う。呪術師とは力ある存在だ!呪術師とは尊敬される者のことだ!」
「しかし、力には責任が問われる」
論調が変わる。
「昨年末に起きた百鬼夜行は記憶に新しいだろう。呪詛師夏油傑が起こした事件だ」
皆の頭に呪術界で起きた近年で一番大きな事件が思い起こされる。
夏油傑が東京と京都で起こした事件が。
「あの事件に参加した者もいるだろう。かく言う私もその一人だ」
「あの事件で夏油傑はその力を振るったが、その結果はどうなった?そう、より大きな力により潰されて死んだ」
「五条悟が夏油傑を殺したのだ」
直樹が拳を強く握りこむ。
その動作に、まるで自分が潰されるかの様な感覚を覚える者もいた。
「力による行動は、より大きな力により潰されるものだ」
「禪院家もまた、そうなるやも知れない」
その言葉に多くの人間が不安を覚える。
当然である。御三家の中で、一番力が強いのは五条家だ。
なんせ現代最強の呪術師がいる。
全ての呪術師が束になっても勝てるか分からない程の隔絶した強者が。
「そうならないためには、私達も振る舞いを変えていかねばならない」
そう言って握りこんだ拳の手を開く。
「傲慢な存在ではなく、誇り高い存在に」
掌を上に掲げる。そこに希望が乗っているかの様に。
「もう一度言うが呪術師とは唯一呪霊と戦える存在であり、尊敬されるべき者であり、力を持った存在だ」
「その力には責任が求められる」
「力を持った責任を、などと言うつもりはない。その力を振るわない選択もまた尊重されるべきものである」
「しかしっ!力を振るう者としての責任はあると思う!」
「呪術師としてっ!力無き者からの尊敬を集める様に振る舞うべきであるとっ!」
「禪院家の呪術師にはそれが出来ると私は信じている」
力強い演説を静かに締めくくる。
その直後、大広間に集まった呪術師の多くから盛大な拍手が奏でられる。
しかし、素直に喜べないのは集められた女性陣である。
呪術師達の行動は多少変わるかも知れない。
しかし私達の待遇について直接的な発言はなかった。
それが不安だった。
「そして、これまで禪院家を支えてきてくれた女性陣」
「辛い思いばかりをして来たと思う」
「本当に申し訳ない」
その発言と共に直樹が深々と頭を下げる。
全ての人が驚き、時が止まった様に静かになった。
直樹が頭を下げたまま話す。
「私が次期当主になったからには、貴方達の待遇を改善することを誓おう」
「故に」
直樹が頭を上げて目を見て話す。
「もう一度だけ禪院家に力を貸して欲しい」
「貴方方の力が必要です」
そして、もう一度頭を深く下げた。
今度は大広間に集まったほぼ全ての人が拍手を送った。
次期当主は盛大な拍手と共に迎え入れられた。
その日は宴会となり、
「疲れたわ。暫くはあんなんは懲り懲りやな」
お披露目が終わった次の日、禪院直毘人私室にて、直毘人と直樹はアニメ鑑賞しながら寛いでいた。
見ているのは2017年に流行った、本物のドラゴンが異世界で好きな人に出会い、メイドとして生活するというアニメだった。
この世界にも行くことあるかもなぁと思いながら、俺はのんびりしてた。
「まぁそう言うな。なかなかの演説だったぞ」
親父はそう言うが、もっと上手く出来た様な気もする。
「しっかし良いのか?もっと一気に改革すると思ったがな」
「急な改革には誰もついて来んよ」
演説は上手くいったかも知れんが、現状は殆ど変わっていない。
せいぜいが女子供に対する直接的な暴力行為が激減したことと、
それは本人にとっては大きいことかも知れへんけど、禪院家の仕組み自体が変わった訳やない。
そう直樹は禪院家の意識を少し改革した程度で、仕組みを変えた訳ではなかった。
当然である、直樹は
あくまでも決定権は当主直毘人にある。
「それにしても、親父が俺のことホンマに次期当主するとは思ってへんかったわ」
「うん?そうなのか?」
親父が不思議そうに首を傾げる。
「そらそうやろ。
実際に何人かには直接言われた。
「直樹様が異世界に行ってる間はどうするのか」と。
「何じゃそんなことか」
親父が酒を飲みながら返事をする。
「当主なんて殆ど飾りじゃ。力があるやつがなって、家の方針を決めるだけ。雑事は他のやつがやってくれるぞ」
グビグビと酒を飲む親父。今日は気分が良いらしい。
「まぁ家同士の付き合いはあるが、それも最悪は代理を立ててもええしのう」
「まぁそれでも良いのかもな」
案外そんなもんなのかも知れんな。
所詮呪術師の家、求められるのは力が強いことなんか。
そう言えば五条家もそうやな。
本人は自由に高専で教師やっとるし。任務で忙しいみたいやけど、家の事は誰かに任せてるんかも知れんな。
「さて、晴れて次期当主として認められたお主にして貰うがある」
さっきまで酒飲んでた親父が真面目な顔で話し出す。
「来年度からお主には
「高専に通う?一体何でや?」
はっきり言って今から高専に通う必要性はない。
必要な術は大体収めたし、強いて言うなら領域展開ぐらいやけど、それこそ高専で習える訳でもないし、習って使える訳でもない。特に俺の様な術式やと領域展開出来るかすら怪しい。
「主な理由は顔繋ぎじゃな。今高専には呪術界でも重要人物が揃っておる」
そう言って親父は左の手を挙げて、指折り数えながら名前を挙げていく。
「東京には五条悟を筆頭に、
次に右手を挙げて同じく数えていく。
「京都には呪術界の重鎮、保守派筆頭の
「で、どっちが良い?」
「俺が選んでええんか?」
突然の選択肢に思わず聞き返す。
「良いぞ。お主のための、いや次代のための顔繋ぎじゃからな。お主が好きな方を選ぶといい」
そう言って、また酒を飲んでアニメを見る。
しかし、どうするか。
東京に行けば呪術界の中で革新的な人物に多く会えて、京都に行けば呪術界の中で保守的な人物に多く会える。
暫く悩んでいたが、俺の選択は決まった。
「じゃあ京都校の方行かせてもらうわ」
その選択に親父が驚いた。
「何じゃ禪院家を変えるって言うとるから東京に行くと思ったんじゃが」
「それについてはさっきも言ったやろ、急な改革には誰もついて来んって」
そう、急に何もかもを変えようと失敗する可能性が高い。
「理由は三つある。一つ目は家が近いから禪院家の様子を近くで見れる事やな」
禪院家は変わろうしたばかりである。
変えようとしている俺が東京に行き、家を離れると状況が逆戻りする可能性がある。
監視とまでは言わんでも、様子は見とかなあかん。
「二つ目は改革派との合流はいつでもし易い事やな。最終的に改革派に入るにしてもや、保守派と仲悪くなりすぎると、そこで争いになるかも知れん。まぁ俺が仲介に入れる立ち位置に居れればベストかな」
保守派と争いたい訳やない。無理な改革をしようとすると流血が多くなりすぎる。
それを防ぐんやったら間に立てるもんがおる方がええやろ。
「で、最後の一つは何じゃ?」
親父が酒の肴にしながら聞いてくる。
「三つ目は、加茂家の次期当主を改革派に誘いたいからやな。それが出来たら御三家当主が皆んな改革派になる事が出来る。そしたら改革なんていくらでも出来るし、争いも最低限になるやろな」
二つ目の理由に半分ぐらい被るけど三つ目が出来たら最高の結果になる。
そしたら禪院家だけではなく呪術界全体の改革を成し遂げられる。
「お主がそれで良いなら京都校に入学の手続きをしとこう」
「ありがとう親父」
親父に感謝の言葉を告げる。
一気に喋ったから置いてあったお茶を飲む。
「あ、それと嫁探しもしとくからの」
その発言にお茶を吹き出した。
「ゲホッゲホッ、いきなり何言い出すねん!」
「いや、次期当主何じゃから当然じゃろ」
それも次期当主の役割かと思いながら親父に弄られる会話が続いていく。
好みのタイプをアニメキャラで聞いてくるのはどうなんだと思いながら、アニメ鑑賞は続いた。
side.真希
私は今まで禪院家の当主になる為に呪術師として戦ってきた。
私達姉妹を見下して来た奴らを見返すために。
しかし次期当主の座は直樹のやつに取られた。
お披露目の時に直樹を見た時、鳥肌が立った。
あの馬鹿目隠しや
そんな直樹に私は勝てるのか?
当主になれるのか?
いや、当主になる必要があるのか?
禪院家は変わるだろう。
直樹は圧倒的な力を示したし、女中の待遇を改善する事も誓った。
あいつが当主になった時、私達姉妹も冷遇されることはなくなるだろう。
そうだ、あいつらを見返して
そして、
そのためだったのに…
「私は何のために…」
呆然とした声が真希から漏れた。
それをそっと見る真依の姿に気づく事はなかった。
いかがだったでしょうか。楽しんで貰えてれば幸いです。
今回も後書きに書きたいことがいっぱいあり、長くなってしまいました。今回もサラッと読み流してもらって大丈夫です。
今話ですが、直樹の演説/直樹と直毘人の会話/真希の独白の三本立てになりました。また、サブタイトルの「人の在り方」とは呪術師としての在り方/次期当主としての在り方/姉としての在り方を書いたつもりです。
さて、前書きでも書いたキャラ崩壊についてですが、これは禪院家の全員に関することです。
まず、禪院家モブ達は直樹の演説を聞いて本当に態度が変わるのかと疑問に思った方もいると思います。ただ、原作では『躰倶留隊』の隊長も扇のことを貶すぐらいなので、多くのモブはまだマシな感性をしてそうだなと考えております。また、前の戦いで直樹の力を知ったので、強い人の言う事だし聞いとくかみたいなモブもいるかなと考えて、演説により多少は心を入れ替えた形になってます。
次に直毘人に関してです。この人は、直樹の息子力が高すぎて親馬鹿になってると思って下さい。会話の内容自体は次期当主として必要なことをさせているだけなので、おかしくはないと自分では思っています。
最後に真希についてです。彼女は原作で「妹のために当主になる」と直接言ったセリフは無かったと思います。しかし、妹思いである発言や場面はありましたので、この作品では「妹の居場所を作るために当主になる」と考えていたことにしました。
また、今話では直樹が次期当主になったことにより複雑な思いを抱えて、ちょっと曇ってしまう展開になりました。不快に思った方がいたら申し訳ないです。
しかし、これで終わりにするつもりは無いです。真希さんが活躍する展開も書きたいとは思っていますし、この姉妹に関する展開の構想も一応あります。
さて長々と書いてしまいましたが、今回の話も読んでもらい本当にありがとうございました。