ホグレガ中長編   作:hiro_s

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眠る君が祈る夢・4

今までに教えたことがないほど優秀な生徒だ。

 

愛弟子ともいえる教え子を見るその瞳は優しい。言われたほうも照れた様子ではあったが、まんざらでもなさそうだった。

五年生からの途中入学は、一般の生徒と比較できないほど昼夜を問わずひたすら学業に励まねばならない。それに加え、その特別な才能から、古代魔術に関する知識も少しずつ付けていかなければならなかった。師からの言葉は、その両方を見事にこなした努力に相応しい称賛だった。

真面目な生徒だ。「先生」と語り掛ける声はいつだって真剣で、我々の知らないところでも過酷な現状に抗い続けていた。

だからこそ、卒業時に誰よりも立派な成績を収めたことは、教師として喜ばしく思えた。

魔法省にだって入れただろう。闇祓いから直接声がかかっていた。けれど、どうしても治療したい人がいるのだと、その進路を古代魔術の研究と医術の研鑽に決め、ホグワーツを旅立っていった。

 

その数年の後、世界中を混沌と絶望に叩き落した疫病の大流行が起こった。熟練の魔法使いである教師でさえも身が震えたそんな中で、ある一人の優秀な"魔女"が、マグルとも、他の種族とも協力して、最前線で治療の研究にあたっているという知らせが届いた。

 

――ああ、"彼女"が古代魔術に選ばれたのは、その古代魔術の力が開花したのは、恐らく時代が求めたためだろうと思うほど、その知らせは我々に希望の光をもたらした。

 

疫病への予防法と注意点を伝えに、忙しい中、時間を割いてやってきてくれたイシドーラを呼び止めると、使命に燃える瞳がこちらを振り返った。

 

 

 

 

10

 

OWL試験の結果は散々とまでは言わなかったけれど芳しくはなかった。

一方で、たった一年しか勉強していないはずの同級生は、僕を抜かすどころか、たいていの生徒を追い抜かす好成績をたたき出したようだった。

五年生で最初の飛行術の授業で"ホグワーツ観光"と称し学校一周に連れ回した時は、ノリノリな様子に、愉快な同級生がやってきたなあなんて暢気なことを考えていたけど、蓋を開けてみればビックリするほど彼は優秀だった。

(すごいなー。彼の実技の腕は僕なんかよりずっと上だとわかっていたけど、座学もアミットとほとんど差がないなんて)

同級生の中でも優秀な成績を収めている人間のリストを眺めて感心する。

OWL試験時には僕の隣に座り、カンニングはダメ!なんて言ってつれなかったアミットは、そのリストに名を連ねる常連の一人だった。

寮の談話室に、それが張り出されたのはもう二日も前だが、成績に興味津々のうちの寮では、今日の昼間になってようやくその前から人が捌けた。

 

知識を重んじるレイブンクロー。

なんで僕がこの寮なのかな、なんてことは考えない。楽しいことに重きを置いて学業を疎かにしている自覚はあるけれど、得意な科目はとことん得意で、楽しめるのなら努力を惜しむことはないというのが僕だからだ。

魔法道具の開発や解明、箒の改良だったら四六時中していられる。スピントゥイッチーズでいろいろ教わっていれば、すっかり時間を忘れて没頭してしまう。

五年生にもなれば分かるが、レイブンクローはがり勉タイプよりも、むしろこっちの気質の奴のほうが多い。持ち前の強い好奇心から、勉強するという行為そのものが好きな奴も多く、がり勉を併発している寮生は沢山いるけれど。

 

リストの張られた壁の側、談話室に常備してあるリンゴを手に取り、しゃくしゃくと租借する。

成績上位者に変動なんて本来そうそうない。同室であるアミットは、天文学や歴史学に関心があるからつい皆そちらの成績ばかりに目を引かれてしまうけれど、他の教科だって十分に勉強していて、今までずうっと優秀だった。

しかし、昨年転入してきたばかりの友人は、総合成績でそのアミットすら抜いたのだ。

 

「いやあ、彼はすごいなあ」

「エバレットでも、そんなこと思うんだね」

 

意外だよ、とまさに頭に思い浮かべていたアミットに真後ろから声をかけられた。

今更このリストを確認しているのなんてうちの寮では自分だけだと思っていたので、思わずリンゴを詰まらせそうになる。ケホケホとむせると、気遣うようにアミットは僕の背を軽く叩いてくれた。

暫くしてようやく咳が収まり顔を上げると、彼は既に僕を見ておらず、成績優秀者のリストを見上げていた。

 

「いつも通り、アミットの名前はあるよ」

「いつも通り、エバレットの名前はないね」

 

あえて教えてやると、ふふふと笑ったアミットにホッとする。

五年間勉強を頑張ってきたのに、たった一年で成績を抜かれてしまった気持ちなんて、僕には分からないから。

 

「彼はすごいな」

 

だから、もう一度繰り返したこの一言が、失言だったのかどうかも僕には分からない。

 

「――でもエバレット。彼に見えている魔法界は、まだ上辺だけのようだよ」

 

アミットから、こんなに辛辣な誰かの評価なんて聞いたことはなかった。だから今度は、持っていた齧りかけのリンゴを滑り落とすほど僕は驚いた。

アミットはまだ、リストから目を離さない。

淡々と伝えられたその声は、悪意なんてない、いつも通り落ち着いた口調だった。

 

 

 

 

11

 

(私は間違ったのだろうか……)

本当は、ルックウッド城で、ミリアムから先祖が造った箱を奪わなければならなかった。

けれど私は、彼女と話したことでそれを止めてしまった。

 

「私は、古代魔術について調べているの。少し前までは、夫も一緒に旅をしていたのだけれど、あの人ったらすっかりホグワーツに腰を落ち着けちゃったのよ」

 

私を隣の席に誘い紅茶まで淹れてくれた魔女は、明るく朗らかだった。

手際よく箱から汚れを取り除き、杖でいくつかの解除呪文を浴びせながら、彼女は世間話をした。

私が知っている限り、この城は地方を収める領主の所有物であったはずだが、果たして彼女は勝手に入り込み、しかも簡易的な研究施設まで作ってしまっているが良いのだろうかと、自分を棚に上げて首を傾げた。

 

「すっかり荒れ果てているでしょう?ルックウッドは既にここに住んでいないわ。十三世紀……いえ、おそらく十四世紀ごろの城ですもの。居住区も小さくて、今の生活にはとても合わないわ。捨て置かれているのよ」

「だからと言って、勝手に発掘していいものでもないだろう」

「あら、一応許可はもらっているのよ。ルックウッドに手紙も送ったわ。研究のために一週間、城を探索していいかってね」

 

ああ、だめだわ。と、何をしても開かない箱にさじを投げたミリアムは、今度は解除のためでもなんでもなく、行儀悪く杖で箱をつついた。

「ルックウッド」と彼女の口から出た名前を反芻する。

今の当主は、利己的で傲慢な、犯罪集団すら率いている罪深い男だと聞いた気がしたが、噂は当てにならないということか。

 

「手紙への返事は返ってこなかったけどね」

「それは許可をもらっていないというのだろう」

 

思わず指摘した私に愉快そうに笑った彼女は、紋章が記された紙を手渡した。

受け取って眺めると、確かに調査許可書という文字が読み取れる。

 

「許可は、魔法省からとっているのよ。それに、珍しいことだけれど、この城に住み領地を統治していた時代のかつての当主が、この城の調査を自由に認めると魔法省に登録しているの。もちろん、ここで見つかったものは"後継者"のものであると明言されているけどね」

「それで、調査の成果がその箱か」

「ほかにも封じられている部屋はあるけど、特別な魔法で閉じられていて、私では開けられなかったわ」

 

許可書を返し、箱を指さすと彼女は頷き、肩をすくめた。

すっと目を細めて彼女の手の中を眺める。箱についている記号の意味はわからないが、形どっている金属はおそらくゴブリンの銀で、その記号はブラグボールの日記に残されたものと同じに見えた。

(私が探すべきブラグボールの遺産)

ランロクから指示を受けたものだ。果たしてこの魔女からどう奪うか。

思案する私を気にすることもなく、ミリアムはその箱を差し出した。

 

「これ、ゴブリンの銀じゃないかしら。ねえ、良かったら……」

 

その後に続けてかけられた言葉に、再び驚いて顔を上げた私を見る彼女の瞳には、疑いや侮蔑ではなく、期待と、そしてゴブリンへの尊敬が宿っていた。

忘れられない、瞳だった。

 

(ああ、やはり。私は、間違っていなかった……)

私のあの箱をミリアムに返した行動は、確かに、ゴブリン族のためになったはずだったのだ。

 

兄から受けた魔法により弾き飛ばされ、その衝撃に、体はゴムまりのように地面をはねた。

薄れゆく意識の中、せめて最後に兄の姿を見ようとしたが、揺らめく何かがその体を覆っていてよく見えなかった。

――あんなもの、手に入れてはいけなかったと、悲しみが襲った。

封印されたルックウッド城の地下を無理やりこじ開け、ランロクと目にした力と器は、その時すでに崩れかけていた。

放っておけばよかったのだ。私たちは。

 

あれはいつか、魔法族に牙を剥き、自滅させる力だったのだから。

 

 

 

 

12

 

夏季休暇の前の週に、僕の休暇と合わせて航海から帰ってくる両親への手土産を買いにホグズミードへ行き、最後に三本の箒へ寄った。

あの邂逅以降、この店に訪れるたびにロドゴクを探したが、彼に三度会えることはなかった。

彼の銀製品をもう一度見たかったし、ゴブリディグック語を一単語でいいから聞いてみたかったなと、今日もまた溜息をつく。

店主のシローナに尋ねても、「ホッグズヘッドにも最近顔を出さないみたいだ」と首をかしげるだけだった。

 

「ああそうだ、良かったら一つ頼まれてくれない?」

「何でしょうか」

 

一杯のバタービールを飲んで、代金を支払うために話しかけると、彼女は硬貨を受け取った後で杖を振った。

がさりと茶色い小さな紙袋を呼び寄せ、僕に視線を合わせて困ったように笑う。

 

「ほら、あの五年生から転入してきた生徒がいるだろう?これ、ロドゴクが彼に渡してほしいって言っていたんだ」

 

でも、ゴブリンからの贈り物なんて、一緒に友達がいるときに渡していいものか悩んでしまってね、と彼女は申し訳なさそうに首を振った。

魔法族でゴブリンと友好的な関係を築けるものは少ないし、何よりこの地方は少し前までゴブリンにより多大な被害を被っていた。だから、シローナの気遣いは可笑しなものではない。

 

「わかりました。同じ学年なので、渡しておきます」

「ありがとう!次回、お礼にバタービールを一杯御馳走するから、また来てね」

 

気のいい店主の明るい笑顔に、ロドゴクに会えなくて残念に思っていた気持ちは少し絆されていた。

 

 

ちょうどよく、翌日、天文学の授業があった。

天文学はとても学びの多い授業だと思うけれど、夜の授業であること、冬はどこまでも寒いこと、シャー先生が少し気難しいことも相まって、選択している生徒は少ない。こっそり彼に預かりものを渡すなら、まさに絶好の機会だった。

東の空を一人で観測しているところを見計らって、そっと声をかける。

 

「やあ、君に預かりものがあるんだ。……はい。これ、ロドゴクから」

 

ロドゴクの名前は少し音量を小さくして伝えたが、ばたばたと風が吹いているとはいえ十分聞こえたはずだ。

 

「――え?」

 

あまり動じることのない彼が、予想外に驚いた様子で唖然と声を返した。

目を見開き、まるで信じられないものを見るように僕の差し出した紙袋を受け取る。

 

「アミット……これ、いつ預かったの?」

「え?昨日だよ。三本の箒で、」

 

シローナから、と僕が答えるよりも前に、彼は慌てて紙袋を開いて中身を取り出した。

(あれ……この銀細工って)

それは以前、ロドゴクが先祖の模倣品だと言い、手放そうとしていたルーンの飾りだった。

そして、袋からはもう一つ、何か紙切れのようなものが落ちる。

そのことに彼はまるで気づいていなかったので、夜風に飛んでいかないように僕が膝をかがめてその紙をつかんだ瞬間。

 

「ああ!良かった、ロドゴク。――生きていたんだ」

 

そう、彼が抑えきれないように漏らした言葉が聞こえた。

 

 

 

 

13

 

届けてくれてありがとうと、しゃがみ込んでいるアミットに声をかけると、ゆっくりと立ち上がった彼は泣きそうな顔で僕を見た。

先ほどまでとは打って変わって、責めるような視線に、思わず一歩後ずさる。

 

「どういうことか、教えてくれる?」

「アミット?」

 

下へ行こうと、珍しく低い声で僕を促したアミットに続いて、大望遠鏡がある階へ降りる。

今夜の課題は比較的明るい星の観測だから、ここで天体観測をしている生徒はいない。

困惑する僕に、アミットは一枚の紙を差し出しながら言った。

 

「さっきの紙袋は、シローナが、ロドゴクから預かっていたものなんだ。君に渡してほしいって。僕はそれを"昨日、シローナから"預かっただけ。ロドゴクが三本の箒に預けたのは恐らくクリスマス明けぐらいだろうね。ほら、手紙に日付が書いてある」

 

受け取った手紙に記された日付を見ると、ランロクやルックウッドと対峙した"あの日"の数日前だった。

手紙の内容は簡潔だ。――この模様はゴブリンのものではないから魔法族に委ねたいと、ただそれだけだった。

時系列を理解し、さっと頭が覚めると、先ほどの失言に気づき冷や汗が背筋を通った。

ロドゴクが死んだことを知っているのは、僕とフィグ先生、そしてランロクとルックウッドだけ。つまり、既に僕だけが知りえる事実になっていた。当然、目の前の友人にはそのことを伝えていなかった。

 

「ねえ。さっきの君の物言いは、まるでロドゴクが死んだと思ってたみたいだった」

 

息苦しいほど、そう問う声は冷静で静かだった。

どう答えるべきかと黙した僕に、ふーっと少し長く息を吐き、アミットは壁に背を預け、落ち着かせるように両の手の平をこちらに向かって広げた。

 

「君の問題に僕が首を突っ込むなんて間違っていると思うなら、説明しなくてもいいよ。――それなら僕は、勝手に調べる」

「な、にを……?」

「そうだな。貿易路をゴブリンが邪魔をしていたことは知っているよ。積み荷から何を探していたのかな……そういえば、彼らはずいぶん鉱山に執着していたね?わざわざ魔法族の村を襲っていたね?でもすべての村じゃない。じゃあ、共通点を見つけていけばいいんだ。どこにゴブリンがいたのか」

「アミット……」

 

振り返ってみれば、奴らの痕跡はあちらこちらに残っている。

サン・バカーの塔、ルックウッド城、イシドーラ・モーガナークの生家、三枚絵の残されていた研究施設。アッシュワインダーズも、密猟者も気にかけず、ただゴブリンの行為だけを追っていけば、それは古代魔術という真実への最短ルートだった。

乾いた強い風が、僕らの間を吹き抜ける。

 

「一緒に行った鉱山で確認したドリルの設計図と、ホグワーツの襲撃は、無関係かい?」

 

ああ、とどめだ、と悟った。

彼は限りなく確信に近いところに気づいている。

調べられて僕が困ることはない。ただ、何も知らずにこのことを調べるのは、アミットが危険なのではないかと思った。

 

これ以上友人が、古代魔術に関するものに巻き込まれ、傷つくことが僕は嫌だった。

 

 

 

 

14

 

天文学の授業の後で、初めて彼と一緒に天体観測をした城壁近くの星見台へ向かった。

あれ以来僕は、ホグワーツ近くの星見台を見て回って、箒を手に入れてからは少し遠くの星見台を見に行って、初めはあんなに怖かった蜘蛛でさえ、一人で対峙するのに随分慣れた。もちろん、彼のようにトロールの巣になんて近寄りはしないけれど。

僕が彼から秘密の話を聞くなら、ここ以上の場所はない。

望遠鏡を見るでもなく、星見台を挟んでお互いごろりと横になり、空を見上げる。

どんなに辛くて悲しいことがあっても、この星空があれば大丈夫だと、いつも唱えていたことを心に抱き、滔々と語る彼の話に耳を傾けた。

(大冒険どころの話じゃないなあ)

要所をかいつまんでも、その一年に渡る彼の奮闘記は長い。

僕は人の話を邪魔してしまうようだと自分で気付いているから、できるだけ口を挟まずに、彼の語った言葉の一つ一つを考えた。

 

歴史書で見ていた古代魔術なんてものを、隣に寝転んでいる友人が使えるなんて、まるで夢物語のようだ。

けれど確かに、そのような一発逆転の力を狙っていなければ、ゴブリンがホグワーツに対して襲撃事件なんて起こさないだろうとも納得する。

 

ロドゴクの最期は、とても悲しいものだった。

彼を咎める気は勿論ない。残念だなと思うけれど、彼らの間には決定的に信頼が不足していて、ランロクとルックウッドが結んでいた同盟関係とその絆の脆さは変わらなかったのだろう。

 

「秘密を伝えずに危険なことに巻き込んで、ごめん、アミット」

 

ずっと黙っていたら、ごろりと彼がこちらを向いた気配がした。

あの鉱山のことだろう。いや、怒ってないよと返すと、じゃあ何を考えてるのかと尋ねられた。

少しだけ言葉にするか悩んだものの、僕も彼の方へ体を向け、彼の話を聞いて最も不可解に思ったことを告げた。

 

「どうして、ルックウッド城の地下に最初の保管所があったのか、不思議だなって考えていたんだ」

 

そう言った僕に、彼は首を傾げる代わりに眉を寄せて、その意味を推し量るように視線を揺らした。

 

(彼がわざわざ嘘をついているとは思えない)

彼は矛盾に気づいていないのだろう。様々な出来事の説明をしている時も、少しの疑念も持っていない様だった。

けれど僕には、どうしても、いくつかの事象に違和感が残った。

 

かつて古代魔術に魅入られた一人の魔女と、彼女が残した災厄の力。それが悪しき者に渡らぬように守る者達とその後継者。

一連の騒動を見れば、彼はまさに古代の守護者達の意思を受け継いだ者としての役目を果たした。

 

しかし実際には、肖像画の守護者達は、最後の最後、その力を封じるか解放するかを後継者に委ねている。つまり、"その古代魔術の力を彼が取り込んでいたとしても"古代魔術の守護者達は構わなかったのではないか。

結果的に彼は、守護者達が最も望んだとおり、その力を守り秘匿した。けれどもし、災厄の力を我が物にしていたって、やはり彼が"古代魔術の守護者の後継者"であることには変わりなかった。僕にはそう思えた。

何故なら、本来であれば、ルックウッド城での第二の試練の時点で、古代魔術の力の一部を手に入れるようになっていたことが想定されるからだ。古代魔術を授ける仕組みとしての試練が絶対的なのに対し、力を守るという意思を継ぐことはあくまで古の守護者たちからの要望でしかない。

 

――そもそも、何故ルックウッド城にそんな力が残されていたのか。

 

誰かが、良いように事実を歪曲している。どこかちぐはぐで辻褄が合わない。彼の認識に、故意に祖語を引き起こしている。

 

(彼が嘘をついていないのなら)

果たして一体、誰が嘘をついていたのだろうか。

 

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