同級生が何かキラキラしとる   作:yua

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ボッチはボッチと引かれ合う(VS背景一般通過出来ない人)

出会い2

 

あれは俺が13歳の時だった。中学生の生活にも慣れ、学生と劇団の二足のワラジにも慣れた秋。何か俺はキラキラした同級生と1個上のこれまたキラキラした女パイセンに喫茶店で囲まれていた。クソ、二人共顔がいい、さながら無駄に眩しいスマホのライトを両側から浴びせられてるかの様だ。

「ギンガ、こちらアイさん」

「よろしくねギンガ君」

平然と紹介するカミキとアイさんとやら。何で困惑顔を隠せない俺にそんな通常営業なのか。と、俺はここで違和感を感じた。カミキは人見知りする性質だし、このアイさんも陽キャっぽいが何か視線がおかしい。具体的には視線が合わない。試しにアイさんに視線を向けて見る。首を傾げた後にニッコリと笑う。顔がいい。カミキを見るとこちらも首を傾げた後にニコリと笑う。顔がいい。この二人には顔がいい以外に共通点があった。

「あのさぁ…目線合わせてくれませんかね」

二人揃ってビクリと体を震わせた。

「ちゃ、ちゃんと顔を見て話してますし」「そ、そうだよギンガ。アイさんに失礼じゃあないか」「ほーん…」

誤魔化しますか、そうですか。

嘘の匂いがする。伊達に外面完璧内面陰キャのカミキを長年見ている訳じゃない。こいつ等からは同じ雰囲気がビシバシ伝わるし、俺が目を合わせようとすると目線がフイッと下にズレる。俺がイケメンなら照れやがってこいつぅ、となるが俺はフツメンの範疇だ。こいつ等、自分の顔を見る人が照れて視線を外すのを見越して目線を合わせないスキルを身に着けているのだ。実に狡(こす)い。

「で、俺に相談があるんだろ?ゲロれよ」「…カミキ君の幼なじみって凄いキャラしてるね」「い、いい奴ですし」

言い淀むな。何か知らんうちに劇団ララライにカミキとセットで在籍しているのだ。本当に意味判らんけど。

 

…事情把握中…

 

「ほぅ…対人関係に悩んでいると」

アイパイセンから出て来たのは結構普通の中学生のお悩み相談だった。

「私、人の名前覚えるの苦手だし知らないうちに相手の気に触る事を言っちゃってるみたいで…」

訥々と語るアイパイセンの横でカミキが瀕死になっていた。本人的に刺さる部分が多いのだろう。お前マジで会話のきっかけ掴むのが苦手だもんな。

だが、アイパイセンの悩みには思い当たる節がある。カミキの他人に興味無さすぎる点が気になってウチの親とヒィヒィ言いながら学んだ医療知識が火を吹くぜ!

「対人恐怖症及びサッケード抑制異常の併発かなぁ」

曖昧になった。

「さ、サケ?」「魚じゃねぇんだわ。簡単に言うと人の目を捉えられない異常だな」

人の目は常に動き続け情報を取得し続けている。サッケード運動ってのはこの目の動きを指し、抑制は目が動く際の網膜のブレを補正する機能だ。カメラの手ブレ防止機能みたいなもんでこれがないと人間が見る世界は常にジェットコースターみたいにブレまくってマトモな映像は脳に届くまい。

「多分、長い間人の目をまともに見れないストレス環境下で過ごしたせいだろうな」カミキが正にこれだった。親の目を伺い、機嫌を損ねないように振る舞う内に相手が自分に失望したり怒りを向ける目を見るのが怖くなり、相手の目を見ずにその周辺や手足の動きで感情を察知して対応する。一見、完璧に見える対応だが極大の問題があった。

「人の顔を覚えられない…」

「覚えると相手の感情が理解出来易くなるからな。それが怖くて無意識に覚えようとしなくなる」

人間は学習の生き物だ。色んな経験を基に無意識に精度を高めていく。人間相手の学習精度は特に高い。相手の感情が怖いのに精度を高めたら常に相手を意識してストレスが高まる。カミキやアイパイセンには致命的なストレスになるだろう。知り合いより他人の方が意識しないぶん楽なのだ。

「治す方法はあるの…?」

カミキを見ると相変わらず目を逸らす。根治治療は相当に難しいという証明である。サッケード運動を行う際に無意識に相手の目の辺りを外してしまうので、他人の顔はのっぺらぼうみたいにしか見えていないだろう。

「他人に興味を持って、顔以外で相手を覚えるしかないな」「それなら…」「後、その人と前に何を会話したか覚えておく。相手の目の前でメモしてもいい」俺の言葉にアイパイセンは絶句した。他人に興味ない事でストレスを抑えるアイパイセンには苦行だろう。嫌いな相手の好きな物や自慢話をメモして覚えるのを想像すればいい。

「会話中の不快感は同じ話題を繰り返す、前の会話のレスポンスが無いという点だ」ゲームでNPCが同じ会話を繰り返すので話しかけなくなる現象だ。無意味な会話だし、こちらの変化に興味がないんだなと感じて感情が冷えてしまう。毎日「今日はいい天気ですね」としか言わない相手との会話は退屈だし、たまには「その髪型可愛いですね」位の反応の違いは欲しくなるだろう。だが、カミキもアイパイセンもそれが超苦手だ。何せそれをしようとして失敗し続けたストレスから今のボッチ症候群だ。また失敗し続けろと言われたら気が狂うかもしれん。

「…あれ?カミキ君は普通に会話とかしてる様に見えるけど何で?」顎に指を当て不思議そうに首を傾げるアイパイセン。可愛さの暴力かよ。

「気付いてしまわれましたね」

カミキがすっげぇ悪い顔をしている。顔が良いだけに迫力がある。いや、これは追い詰められた感覚がある俺の錯覚から生まれた幻影かも知れない。カミキは『計画通り』とか言ってないし。

「僕はボッチ気質のまま対人スキルを身に着けたんだ。ギンガのお陰でねっ!」

バチコンとばかりに俺にウィンクをするカミキに中指を立てた俺を誰も責められない。こいつナチュラルにあの地獄へ俺を誘うとかマジで性格がドブ川のヘドロだわ。ちなみにアイパイセンは瞳をめっちゃキラキラさせて俺の至近距離に居る。カミキだったら払い除けるのだが今日初対面の先輩にそれを出来るほど俺は傍若無人な性格をしていない。初対面の女性の足をへし折った事があるのに?そうだねスナイパー空手だね。

 

その日から再びあの地獄が俺の日常に顕現した。具体的にはアイパイセンとの会話の練習と速記の練習、会話の拾い方、今のトレンドを調べるという陽キャ育成法を他人に施すという苦行である。陽キャは生まれついての天然陽キャと一生懸命陽キャになる養殖モノがいる。9割は後者だ(偏見)。毎日スマホとにらめっこして自分が興味ない今のトレンドを検索するのは心が摩耗する。賽の河原の石積みを何故現世で行うのだろうという疑問が常に頭に浮かぶ。流行なんて一過性で後に何も残らないのだ。刑罰として受けるほうがまだ受刑年数が減る分達成感がある。アイパイセンが頑張っているからまだ耐えられる。会話の拾い方はカミキもそうだがアイパイセンも得意だ。ただ拾ったことを次には忘れてるので相手は同じ反応が返ってきたり、前に自分がオススメしたのに何も反応が無いと「あ、こいつ自分の事に興味ねぇな」と冷めてしまうだけだ。対人関係で致命的すぎるので、会話しながら常に速記して自分の反応した会話をメモるというよく分からない苦行をしないといけない。これがキツイ。マジでキツイ。次回にこの会話の内容が出るとは限らないので丸々無駄になる可能性すらある。ましてや「へ〜、やってみるね」とか「見てみるね」なんて返してるとクソ興味のない運動をやったりドラマを見る羽目になる。それに付き合って感想をアイパイセンに伝えてアイパイセンは俺の感想を相手に伝えるという循環である。ぶっちゃけ対処療法で根本的な解決にならない。俺はこれをカミキ相手に数年単位で付き合い、自分の交友関係をほぼ犠牲にしてカミキが何とか一人でやれるだけの経験値を貯めた直後に再びこの地獄へ舞い戻ったのだ。同じ様なボッチを召喚したカミキマジ許すまじ。

ただアイパイセン曰く

「B小町のメンバーと一緒にカラオケ行ったよ」と写真を見せてくれた。ボッチらしく縮こまったアイパイセンを中心にキラキラした女の子達がキラキラの笑顔で写っていた。アイパイセンは引きつった笑顔で指の折れたピースサインをしていた。

 

 

……ボッチ症候群が悪化している気がした俺はスマホをそっ閉じした。根治治療は遥かに先だと実感した俺は地獄が続く事を覚悟したのだった。(カミキヒカルもボッチ症候群が治ってないので治療継続中である)




会話の練習中は顔面偏差値が高すぎる相手に至近距離で目を合わす練習をするため銀河は情緒がバグるものとする。
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