そして数年が…過ぎてくれなかった。現在、地獄の両輪ど真ん中である。カミキが下手(妥当)に売れ始めた為、劇団ララライの雑用が増え、遊んで(カミキとアイパイセンといっつも遊びにいく態で陽キャ育成法を行って)いた俺はあらゆる面でこき使われた。大道具や小道具はプロが居るんだからそっちに任せろよ…手が足りない?プロなら手を生やせ(暴言)。そもそも中学生のカミキは劇団以外の現場に行く際は付き添いが必要だ。主に成人した社会人の。中学生二人で行ってもガキの連れションでしか無い。
「劇団ララライのカミキヒカル入りましたー」「やぁやぁよく来たね。銀河君も今日はよろしく!」「銀河さんチャッス!今日もキマってますね!」「おー、中学生コンビじゃん。今日はよろしく」
何で問題ないのかが問題だ(哲学)
撮影が始まるとやる事はない。当たり前だ。こちとら素人の中学生やぞ。演技なんざみじんも判らんし、カミキは天才と呼ばれるプロだ。俺が口を出す必要はない。
「(あ〜銀河さん。ちょっといいっすか)」「何ですかコソコソと普通に喋ってください」
「(別現場の事大声で喋れないっすよ)」「…ここから離れられないですよ」「(大丈夫っす、カミキ君の出演お願いだけっす。劇団の子も一緒に使うっすよ)」
いわゆるバーターってやつだ。カミキで視聴率を稼いで劇団の人も出演できるようにするという金魚のフン扱い。しかし、知名度を上げるには必要なお約束でもある。
「原作付き?」「(脳内探偵ミカヅキで分かるっすか?)」知っている。カミキとアイパイセンの陽キャ育成に流行は外せない。ニッチな趣味も持っているB小町のメンバー相手に会話を出来るようにするために俺は漫画と小説を毎月数十冊購入している。カミキの親父さんとお袋さんが金銭的には緩い人達で良かった(アイパイセン用とは伝えていない)。「予算は?」「(余り出せないっす。2ヶ月後でこれくらい…)「カミキは今月には出演料を上げるからその時には1話も出れるかどうかだな。無理だよ」「(ま、マジっすか〜。どうしよ監督に殺される…)」どうせカミキを引っ張って来てみせますとか大見得きったのだろう。青い顔をする青年に呆れながらも頭の中で構成を組み立てる。「主役を劇団のカムトにして刑事役を安さんに頼めば?」「(カムトさんって大柄で陽気な役の多い人じゃなかったっすか?)」「無口な陰のあるタイプだよ。元々は」ガタイが良くて顔のパーツが大振りなんで化粧映えするから芝居では陽気で大雑把な役柄が多いが元々は恥ずかしがり屋でシャイなあんちゃんである。普段は無口だけど感情が高まると大きな声を出す主人公役にハマるだろう。「(安さんは?)」「細身だけどしっかりとした大人の役は出来るよ」「(何で知ってるんスか?)」「カミキと自分を普通の子供として扱ってくれるし…普通に優しい」「(マジっすか)」俺たちは中学生なんだがアイドルとか子役で慣れた芸能界はその常識がぶっ壊れ気味で色々と闇深い。安さんは貴重な常識人枠である。演技というより人柄がドンピシャである。
「(でも視聴率出せないっすよね?)」そこまで期待されても困るが…あ。
「カミキ1話分の拘束時間で全話に出せるよ」「マジっすか!?」声がでけぇよ。現場全員から集中する視線に俺は90度の綺麗な御辞儀をして謝るのだった。
「脳内探偵見た?」「カミキ君が脳内先生で笑ったわ」「原作は白髪の博士だもんね」「でも天才薄命カミキ博士きゅん好き…」「もう◯んでるけどね」「推しが既に◯んでいる件について」
女子が推してる脳内探偵ってどんなんや。一話完結で何処からでも見れる。地味だが良く出来てておもろいで。カミキヒカルの画像が出るけど何か画角ちっちゃくない?脳内恩師の助言って態で出るだけだからな。今日のは心霊写真みたいな映り方なんですが…先週はウォーリーを探せみたいな感じだったぞ。探し出す夢女子共は何なんですかね?◯人を推せるネクロマンサーなんやろ。全く否定出来ないのが笑えるんだけど。
「初手原作破壊でどうなるかと思いましたけど…」「その件はすいませんでした」「あ、いやお気になさらず。普通にやったら埋もれてしまうのはわかってましたし…地味ですもんね脳内探偵」「奇抜さに頼らない正道の推理物として評判ですよ」「アハハ有難うございます。でも博士が…天才少年になってしまうとは」「回想で出る分なら1日の予算で済むので…」脳内探偵は主人公の脳内の恩師である老人の博士が助言をするというギミックがある。カミキを全話に出しつつ撮影時間を1話分で済ますには原作者に怒られるのを覚悟でやるしかなかった。「でも主役の子のギャップ…よかったでしょう?」
「…いい」
カムトさんは普段は冷静で寡黙だが感情が高ぶると大声を出してしまい、すぐにその事を恥じて赤くなる幼気な主人公を見事に演じてくれた。カミキ目当てに見た人がカムトさんに転ぶ程のギャップ萌えは脳内探偵の骨太なストーリーと併せてバズってくれた。稚気のある主人公を優しく見守る刑事も「お父さんになって欲しい」「大人がしっかり大人していて気持ちいい」「刑事役の人演技上手いね。他のドラマでも目が行っちゃうようになった」と安さんも実力に見合った人気が出たようだ。全く中学生がする仕事を越えるのは勘弁して欲しい。俺はカミキとアイパイセンで手一杯だっつーの。
「などと言っており…」「これはいけませんね。ああ、いけませんお客様」
「「アマホシギンガの良さが判るのは私だけでいい」」
地獄の両輪は回り続ける。
ギンガの両輪は顔のいい男女のデコ車となっており完全に舗装されており途中下車は不可能となっております。(人生の墓場まで)ご乗車有難うございます。
追記
アマホシギンガ
アホ増し銀河に見える。間違っていない。