転生したら西野武子だったので、原作知識を生かして無双します! 作:たかきょう
無人島試験5日目。
この日は明日の最終計画の打ち合わせという理由もあり、私は龍園の許可をもらってDクラスのスポットに向かっていた。
(さて、伊吹さん...上手くやれてるかな?)
実を言うと、Dクラスと交渉したあの日...私はDクラスのスポットに訳あって伊吹さんを置いてきていたのだ。
えっ?なになに?原作とは0ポイント作戦の内容が変わったのだから、別にわざわざ伊吹さんをDクラスのスポットに置いてくる必要なんてなくない?...だって?
う~ん、冷静に考えればその通りだね...
それなのに私がわざわざ、伊吹さんをDクラスのスポットに置いていった理由は単純、Dクラスの生徒達の何かしらの異変や不可解な行動が起こってないかを探ってもらいたかったからだ。
これまでに、私の知らないところで起こっている原作からの変化の数々...それに対して私の中で1つの考えが生まれていた。
『ひょっとして、私以外にも転生者がいるのではないか?』
...と。
もしもだよ?仮に転生者がいるとして、Dクラス所属の生徒だった場合はかなりまずい...
なぜなら、早くAクラスに昇格したいがために何かしらの方法で原作の主人公の綾小路くんや高円寺くんが早期に本気を出すように仕向けてくる可能性が否定できないからだ。
そして、ないとは思うが...もしもこの二人が手を組むような事があれば...
(うん、私でも絶対に勝てないね...)
何せ、2年生編の後半が過ぎたにも関わらず、いまだにこの二人の力の底が見えないからね...頭脳戦でも肉弾戦でも私が絶対に勝てる未来が見えないのだ。
最も、転生者がモブの生徒で目立たずに普通の学園生活を謳歌したいだけみたいなタイプ子ならどのクラスでも問題はない。まぁ、既に原作からの変化がたくさん起こっている時点で私のそんな淡い望みは潰えているだろうけどね...
ちなみに、伊吹さんには【龍園の指示でDクラスを影で操っている黒幕を捜す】という事。
Dクラスの皆には【作戦の都合上、Aクラスの生徒が密かにDクラスのスポットを偵察に来るかもしれないから、そのためのカモフラージュ】(伊吹さんがDクラスに潜入してリーダーを探るという偽りの話を龍園が葛城くんには報告済み)という事と...それぞれに表向きの理由を伝えて納得してもらっている。
だって、流石にお世辞にも口が固いとは言えない伊吹さんや、ましてやDクラスの皆に本当の理由を話すわけにはいかないからね...
・・・・・
そんなわけで、Dクラスのスポットにやって来たんだけど...
「あれっ?どうしたのかな~?何か雰囲気が悪いみたいだけど...」
「あっ!西野さん!実はね...軽井沢さんの下着が...」
近くにいたDクラスの女子に詳しい事情を聞いてみたところ、何者かの仕業によって軽井沢さんの下着が盗まれてしまい、女子が男子を犯人扱いした事でお互いにギスギスしているんだとか...
「そういう事だから!私達とは別のクラスだけど一応、西野さんも気をつけてね!」
「あっ...うん、忠告ありがとう。」
あれっ?確か、原作で伊吹さんが下着泥棒事件を起こしたのはDクラスの仲間割れを狙うためだったはず...
でも、この世界ではDクラスを特別試験で勝たせる事がうちのクラス(というか、私個人)にもメリットがあるはずだから、バレるリスクを犯してまで仕掛けにいく理由なんて全くないと思うんだけどな~?
「...伊吹さんも悪い子だね~!」
「はぁ?何の事よ...」
はぁ...ここにきて惚けるなんて、そんな手段が私に通じるとでも?貴女は嘘をつくと目を見開くという癖がある事ぐらい、私はちゃんと知ってるんだからね?
「いやいや!他人の下着を盗んだあげく、それを男子に擦り付けるんだからさぁ...」
「ふん、クラスメートの大半が遊びまくってる中でこんな面倒な事を強いられてる私の身にもなってほしいんだけど...」
私の追求にも、伊吹さんは素っ気なく言うだけだった。ただ、その際にDクラスのとある男子をチラ見していたのを私は見逃さない。
たぶん、彼が伊吹さんの機嫌を損ねるような事をしたから仕返しをした感じかな~?
...ねぇ、池寛治くん?
「それで?彼...池くんが貴女に何をしたのかな?」
「シンプルにうざい。私の事をしつこく口説いてくるし、手柄を立てようと勝手な行動して空回りするし、しまいには購入する物を巡って一部の女子と言い争いまでする始末で鬱陶しい...だから、アイツの鞄に軽井沢の下着を入れてやったのよ。まぁ、下着は見つからなかったみたいだけど...」
一瞬だけ、ん?池ってこんな感じの奴だったっけ?と思った私だったが、なんとなく納得した。
(そうか...今はまだ、篠原さんと付き合う前の池だったっけ...)
私自身が原作のファンな事もあって池寛治という名前を聞くと、どうしても2年生編での成長した彼の事を思い浮かべてしまうのだ。
須藤健、池寛治、山内春樹。この三人は原作の1年生編では三馬鹿と呼ばれるぐらい、Dクラスの足を引っ張っていた存在だった。そして、この世界でもそれは変わらなかった...
...そう、夏休み以前までは確かにそうだった。
しかし、暴力事件の内容の改変によって須藤...愛里ちゃんを助けたヒーローとして山内...それぞれの株が下がらずに逆に上がった結果、池は自分だけ取り残されてしまったのでは?と錯覚してしまったのだろう。
その焦りからか...池は何とかクラスのために貢献しようとしたり、原作以上に女子に話しかけにいったりと自分の株を上げようと必死になっているがどうやら、本人が思っているほど上手くいってないらしい。強いて言うなら、自身のキャンプの知識が多少は役に立ったぐらいだろうか?
おまけに女子達には見つからずには済んだとはいえ、自分の鞄に軽井沢さんの下着を入れられていたのだ。クラスのために成長するどころか、一歩間違えてたら下着泥棒扱いされていたかもしれないという不安が彼の精神を追い詰めているのは明らかだ。
その証拠に池は一人、落ち込んでいる様子を見せている。それを見かねた外村くんや宮本くんといった仲の良い男子は理由は分からないにしろ、池を励ましているようだ。
「ねぇ?私はいつまでここにいればいいわけ?」
「あなたには明日の夜、ある事をやってもらう。それで最後かな?終わったら、船に戻っても構わないよ。報酬も弾むから頑張ってね!」
その頃には私と龍園以外のクラスメートも船に戻っているだろうからね...
「はぁ...あんたと龍園ってほんと悪魔ね...いつか痛い目に遭うんじゃない?」
「そういう発言はフラグになっちゃうから言わないでほしいかな~?」
「意味わかんないっつーの...」
まぁ、そんなのは当てにしてないけどね?
「私は龍園...アイツの事は嫌い...だけど、西野...あんたの事は何故か嫌いになれないのがムカつくんだけど...」
「素直じゃないな~?ひょっとして、伊吹さんも本当は私と仲良くなりたいとかじゃないの?」
「勘違いすんなぁ!」
全く...いくら、私にからかわれたからって急に蹴り技を仕掛けてくるのはやめてほしいかな...
「ちょっと...私は普通の女の子なんだから、下手をすれば大ケガしてたかもよ?」
「あのね!私の蹴りを平然と受け止めている時点であんたが普通の女じゃないのは明らかでしょうが!!」
この時ばかりは前世で私に嫌というほど、武道や武術全般を習わさせてくれた両親に感謝したのだった。