士道 作:法師s
始まりは唐突で、いつも無意識からやってくる。
気づけないまま、気づこうとしないまま。
現状維持、現状維持、現状維持、現状維持。
都合のいい言葉とともに、都合のいい明日を妄想する。
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「おはようございます。父上。」
毎日の挨拶は欠かしません。厳格で堅物であった父親は、礼節を欠いた言動を嫌っていました。
その御蔭で幼少期よりしつけられた習慣は、父親が居なくなってもなお、私の体から抜けることはありません。
自分に厳しく、他人に厳しくあらねば、人間にあらず。
この姿勢は、私がこの短い17年間において、私が敬愛する父親から承った唯一の宝なのであります。
父親が殺され、私達の家族が没落したときも、私の容姿がどのように愚弄されようとも、私の生き方はぶれませんでした。
ですが、私は一途に生きてきたはずなのですが、その生き方が果たして正しかったのかは甚だ疑問であります。
私こと、親雪ゆきの人生は、人と比較しても、それなりに普通ではないのは確かだと思われます。
残された時間は少ないですが、それを一つひとつ語ってゆきたいと思います。
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「おんぎやあ、おんぎやあ」
「堅郎殿、これは誠に玉のような赤子にございますぞ」
私の意識は、温かい母の腕の中で覚醒するところから始まりました。父の堅郎は、このときばかりは、真顔を崩していたらしいです。
詳しくは覚えていないのですが、私は幼いとき、実に奥ゆかしい子供であったらしく、落ち着いて、いつもぼーっとしている子であったと聞いております。
自身の記憶があやふやであるのにも関わらず、自身について語るのは少々おかしいと自分でも思いますが、それについてはお許しください。
私の誕生から月日が流れ、私は、皆変わらない赤子の状態から、個々人により容姿に違いが明確に別れてくる年代へとすくすくと育ちました。
「ゆきちゃん、そんなに本を読んで、えらいねぇ」
「ゆきちゃん、この耳飾りをつけてみてくれないかい?きっとにあうに決まってるさ!!」
私の容姿は、実に漢らしいという言葉からかけ離れており、まるでおなごのようであったらしいのです。
それ故、よく性別を身間違われ、あるべきはずの姿を、見誤られるのです。私自身は一人の男子であるつもりなのですが、花のように扱われるのがとても苦痛でありました。
私の外見に囚われて、周りの人間は本質を見失っていたのであります。
私がそのような周りへの抵抗として、剣の道を父に師事したのは、ある意味当然の流れとも言えるでしょう。
父は、剣の扱いにおいては、それに勝るものはないと言われるほどの剣豪でありました。(家族の扱いに関しては、実になまくらだと言われていたのは、内緒であります。)
父は口下手でしたので、多くを語りませんでした。私が師事したときでさえも、私に一振りの木刀を渡した後、私の存在を忘れたかのように素振りを始めたのです。
私は一心不乱にその横で、見様見真似で素振りをし、数日が立つと、その光景は、我が家において特段おかしいものでもなくなりました。
やがて、その木刀を振り続けていると、次第に私にも友といえる存在ができたのです。
その友は初め、私に名を名乗りませんでした。しかし、ともに剣を振るに連れ、打ち解けていったのであります。
一緒に裸足で素振りをした早朝、夏の暑さに気をやられ、二人で寝転んだ昼時、茶を飲みながら落ち行く太陽を見た秋の夕方。桜の花びらと共に舞い、歌を歌いあった夜。
すべては希望で、楽しく、終わりの未来でありました。
そんな状況が変わったのは、私が数えて12歳の時です。
父が殺されました。
父は少々他人に厳しすぎたのだ、というのは泣きながら微笑んでこちらを諭す母の言葉にあります。
詳しくは知らされていないのですが、突然の父の死に、私は神経が弱ってしまったのです。
まず、父が居なくなってから、私達一家は、元々住んでいた屋敷を追われ、古い一軒家を借りて住むことになりました。
我が家の収入の大部分を占めていたのは、父親でありましたので、これは当然なのでしょう。
ここで一つ問題が生じました。その一軒家というのは、少々前の家から遠かったのであります。
唯一無二で、掛け替えのない友とは、そこで関係が絶たれることとなったのです。
友は、高貴な家の出でありました。私の家も、そうであったはずなのですが、父が居なくなったことにより、没落してしまいました。
すると、友の両親は、友と私の接触を徹底的に打ち切ったのです。
当然友は、こんな仕打ちはあんまりだ。と反抗したらしいのですが、それも無駄に終わり、泣きながら、二人である約束を結んだのであります。
その約束を果たすため、私は努力を惜しみませんでした。血豆ができても気にせず剣を振り続けました。
また、私が剣を振る理由は他にもあったのですが。
こうして、今に至ります。
時折こうして過去を振り返る癖は、私の美点であり、また汚点であるのでしょう。
これまでに、私の人生を振り返ってきたのですが、もうそんなことは言っていられません。
なぜならば、明日は、待ちに待った私が現在通っている学園での闘技大会の日なのですから。
早く寝て、力を貯めることは、とても重要であります。
そういうわけなので、もう床につきます。
では、おやすみなさい。
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見切り発車です。感想、評価をいただけると泣いて喜びます。
ちなみに、友(仮)の性別は女です。