シン・ウルトラマンエヴァ   作:井上ああああ

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第十二話「光の国の裏切り者」

ゴジラとの闘いから半年以上がたった。

ゴジラが倒されたことが原因なのかわからないが、怪獣被害はめっきりと減っていった。

シンジがウルトラマンに変身することもなくなった。

 

シンジはヒカリとともに、青春を謳歌した。

青葉の家に行き、二人で音楽を学ぶこともあった。

ヒカリは青葉にその歌唱力を評価された。

 

やがて、二人は高校3年生に進級した。

ミサトの怪獣討伐の意思をかなえ、父の仇を打った彼は、ミサトや彼女の部下日向と同じ自衛隊の道へ行こうとしていた。

ヒカリは青葉にその歌唱力を評価され、音楽スクールに向かっていった。

 

 

今日も、シンジは友人ケンスケとともに電車で学校に向かっていた。

 

 

「あーあ、怪獣もウルトラマンもどこにいっちまんだろうなー。」

 

 

シンジにケンスケが話しかけた。

ケンスケはシンジと同じ自衛隊に入る道を選ぶ予定だ。

そんな自衛隊も近い内には、米軍下部組織の「国連軍」に編入されるといわれている。

 

 

「…さあ、ね。」

 

 

シンジは微笑んだ。

ケンスケはウルトラマンが僕であることに気が付いていない。

 

 

「どこかで生きているんじゃないかな。」

「案外近くにいたりしてな。」

 

 

ケンスケは笑ったが、シンジは内心ひやひやしていた。

すると、モニターにレックス・ルーサーがうつっていた。

ルーサーは来年に行われるアメリカ大統領選挙に立候補する予定だ。

その支持率は高い。

 

 

 

「…。」

 

 

シンジは彼の言動に少し不快感を覚えていた。

ルーサーは明らかに、ウルトラマンを敵視していた。

それどころか、キングジョーのパイロットが死んだことについてすら真実を話していない。

存在しない英雄ハル・ジョーダン少佐がパイロットとして、触れられていた。

アスカは、あのクローンのアスカはなかったことにされていた。

 

 

「…どうしたんだよ、怖い顔して。」

「いや、僕なんかこの人嫌いだなって。」

「そうか?まだ38歳なのに大統領だぜ!カッコイイよ!」

 

 

シンジはモヤモヤを感じていた。

 

 

「…そうかな。」

 

 

すると、次の駅に止まった。

そこで、ある少女が入ってきた。

 

 

「いかりくーん!!!!」

 

 

洞木ヒカリだ。

シンジは、他の客におされ倒れた彼女を優しく受け止めた。

 

 

「あ、ごめん…。」

「あ、いいんだよ。」

 

 

ケンスケはニヤリとした顔で二人を無言で冷かしていた。

 

 

「何だよ!」

「なあに相田君!」

「いいんだよ、二人仲良さそうだなーって。」

「なななななな!?」

「ななななななな!?」

「ハハハハ!!!」

 

 

3人は笑い合った。

このような日々が続けばいい。

そう、シンジは思っていた。

その時だった、シンジは何か強烈な悪意を感じた。

彼は後ろを振り向いた。

 

そこには、3人を見つめる男がいた。

男は、やせこけた白人の中年男だった。

男の目はヘビのようにギラつき、唇は赤く、肌はまるでアルビノのように異様な白さをしていた。

彼はギロリとした目で彼らを睨みながら、微笑んでいた。

男は、シンジの肩にわざとぶつかると、何事もなかったように駅に出た。

 

 

「…何だよあいつ。」

 

 

シンジは不満の声を出した。

肩が少し痛い。

 

 

「相手にするなよ、碇。」

「そうよそうよ!」

 

 

ヒカリとケンスケはシンジを慰めた。

シンジは肩をすくめると、彼らの言いつけに従った。

やがて、高校の近くの駅に到着すると、二人は降りていった。

 

 

 

高校のチャイムが鳴る。

3人はあわてて駆けだした。

 

やがて、1日は終わった。

ケンスケは体力をつけるために山へトレーニングに向かった。

シンジとヒカリは、学区から離れると二人で手を取り合いながら、市街地へいった。

青葉のスタジオだ。

 

 

「お、遅いじゃねーか二人とも!」

「ごめん青葉さん!」

「まったく、二人でそろって参加とはな、お熱いカップルだこった!」

 

 

青葉は高笑いした。

それをみた、バンドメンバーも笑っていた。

すると、後ろに立っていたマヤが青葉のロンゲを引っ張った。

 

 

「いでで!!!」

「乙女の恋を笑わない!」

「何だよ…、髪引っ張らなくていいだろ。」

 

 

ヒカリは顔が赤くなっていた。

羞恥心がかけめぐっていた。

 

 

「さ、レッスンを始めましょう。」

 

 

 

シンジは裏方に回った。

今、ヒカリは本格的に歌手としてその才能を見出されている。

マヤが勤務する芸能事務所で高校を卒業次第候補生として選出される予定だ。

青葉はギタリストとして彼女に楽曲を提供するとされている。

 

 

 

青葉のギターにあわせてヒカリが歌っている。

その様子をマヤとシンジは黙って観ていた。

 

 

 

「あの娘、いい才能を持っている。絶対に売れるわ。」

 

 

マヤは確信していた。

シンジも鼻が高かった。

 

 

「…で、どうするの君?」

「え?」

「高校卒業したら自衛隊でしょ?あの娘と関係を続けるの?」

 

 

マヤは厳しそうな顔をしていた。

流石女性だ。

恋愛の現実をわかっている。

 

 

「…。」

「別れるなら、別れる。続けるなら続ける。決めておいたほうがいいわよ。」

「別れるなんて絶対嫌だ!」

「…だったら、続けるのね。でも、芸能界は怖いわよ。」

 

 

マヤは遠い目でみていた。

彼女が所属する芸能事務所の本部はアメリカにある。

外資系企業の傘下にある。

アメリカの白人黒人アーチストも多くいる。

 

 

「はっきりいってあなたより顔だけはいい男は何人もいる。その男が彼女に近づけば、危険よ。それについていっちゃうかもしれない。」

「え、でも…。」

 

 

シンジは不安そうな顔をした。

 

 

「心配しないで、一つだけ方法があるの。それはね。」

 

 

マヤは薬指に巻いた指輪をみせた。

 

 

「結婚指輪。」

「え?」

「結婚しちゃうのよ、約束だけでもいいから。」

「…!!!!」

「私がそうだったんだから、それであの人と…。」

 

 

マヤは遠い目をした。

青葉の事だと、シンジにはわかった。

 

 

「今私のお腹の中には青葉さんとの子供がいる。」

 

 

シンジは驚いた。

マヤが妊娠しているとは、知らなかった。

 

 

「…考えてみます。」

「それじゃ駄目よ」

 

その時だった。

洞木ヒカリのレコーディングは終わったようだ。

 

 

「あ、碇君…?」

「…ああ、洞木さん。」

「…何改まっちゃって?」

 

 

ヒカリは微笑んだ。

青葉とマヤは何かを察したのか、すっかり黙っていた。

 

 

「…あ、あの…僕、その…」

 

 

シンジは照れていた。

結婚、言えるわけがない。

けの字が出た瞬間、喉の中に字が消えていくみたいな気が彼にはしていた。

 

 

「なんか、ごめん!」

 

 

彼は、照れた。

シンジはそういい、外に出た。

恥ずかしさが勝ってしまった。

 

 

ここは繁華街だ。

すっかり、人の活気は戻っている。

まるで、ゴジラなどいなかったかのようだ。

ゴジラか。

 

 

あの怪獣を倒していこう、地球では怪獣をほぼみかけなくなった。

ウルトラマンに恐れをなしたのか。

シンジは満足そうに微笑んだ。

 

 

その時だった。

道行く人々の歩みがゆっくりと止まっていくのがわかった。

シンジ以外の全ての動きがゆっくりと止まっていっている。

彼は困惑し、周囲を何度も振り返った。

 

 

「!?‥なんだ!?なんだ!?」

 

 

その時だった。

黒い皮膚に覆われた大きな人型の生命体がやってきた。

それの顔の形は山猫に似ていたが、皮膚はねっとりとした粘膜のようなもので覆われているので哺乳類のようにはみえなかった。

 

 

『これはこれは失礼いたしました、私はメフィラス。あなたさまをお連れに参りました。碇シンジ殿。』

 

 

メフィラスと名乗るそれは恭しくお辞儀をした。

 

 

「何だお前は…お連れするって!?どういうことだ!」

 

シンジの困惑した様子をメフィラスは楽しんだように微笑んでいた。

 

『とぼけないでください、私も観ましたよ。あなたはゴジラを倒したウルトラマンだ。我々ですらあの怪獣を倒すことはできない。それを倒すとは、あなたのような才能にあふれる方を私たちは集めているのですから。ぜひ、私たちのリーダーに会っていただきたい。』

 

 

メフィラスはそういうと、シンジの腕をつかみ指をパチンと鳴らした。

すると、二人のいた場所は違う光景になっていた。

そこは、崩れた建物で溢れていた。

まるで廃墟のような場所だった。

 

 

「!?なんだこれは…」

 

少年が周囲を見ると、そこには数多くいの異形の姿をした宇宙人が紫色の顔をしたヒューマノイドを虐待しているようすがみえた。

おかしい、地球にいたはずなのに…。

まさか、宇宙に飛んでしまったのか。

 

シンジは改めて意識を整えると場所の特定を図った。

 

 

「ここは地球じゃない!というか太陽系ですらない!」

『左様、ここは惑星コルガー、私たちの本拠地にございます。』

「酸素があるな呼吸ができる」

『左様、ここは地球と変わらない環境にあります。』

「なぜ今まででてこなかった。」

『ゴジラが怖くて出てこれる状況ではありませんでした、お許しください。』

 

 

メフィラスはシンジをあしらうと、廃墟の奥地にいる主の元へ向かった。

シンジはそれを目で追いかけた。

 

 

『シネストロ殿、お連れ致しましたぞ。』

 

 

シンジが困惑するよそにメフィラスは彼らの主を呼び寄せた。

廃墟で包まれたイスの奥にその男はいた。

 

 

『では、シンジ殿。私は別の任務がありますので失礼いたします。』

 

 

メフィラスはそう言うと、姿を消した。

シンジが困惑していると、奥から紫色のヒューマノイド型異星人がやってきた。

 

 

「…少年。」

 

 

威厳に満ちた低い声で男は尋ねた。

シンジはその顔を見て驚いた。

紫色だが、人間に近い。

シネストロと呼ばれたヒューマノイド型はシンジの目を見ると告げた。

 

 

「君が、あのゴジラを倒したのだな。」

「…そうですけど、何か。」

 

 

シネストロはフフフと微笑んだ。

 

 

「いい事じゃないか、大した強さをしているのだな。だが、あいつが倒されたということはかなり危険度が増すな。宇宙には多くの野心家がいる。その野心家どもは地球の貴重な水資源に目をつけるはず。となるといずれは植民地になるかもしれん。ゴジラがそいつらの防波堤になっていた節はある。」

 

 

シネストロという男は話をした。

シンジは顔をしかめると、男に聞き返した。

 

「…あの、いきなりこんなことに呼んでなんですか、ここはどこですか?そしてあなたは誰ですか?」

「…まあ、話をしようではないか。」

 

 

シネストロは、部下を呼んだ。

部下は椅子を持ってくると、シンジにそこに座らせた。

 

 

「…なあ、驚いてるだろ。なんだここはって。キミ。」

 

 

シンジは横で目を負った。

セミのような顔をしたハサミを持った宇宙人が複数いる。

赤い顔をしたゾウのような鼻をした宇宙人がいた。

なんだか居心地がよくないな。

 

 

 

「…本当にここはなんなんですか。そしてあなたは誰なんですか。」

 

 

 

シネストロはフハハハと笑った。

その笑顔は少し悲しげでもあった。

 

 

 

「私…いや俺はシネストロ、このコルガーの支配者だ。」

「支配者?なのに、他の宇宙人にいいようにされていいんですか?」

「…こいつらは俺が集めた宇宙の荒くれものどもさ。宇宙の星々を破壊して支配する。それが俺たちの目的だ。」

 

 

 

シンジは困惑していた。

 

 

「宇宙海賊って事?」

「まさか、そんなもんじゃない。海賊のように俺たちは無秩序だってはいない。俺たちには秩序と正義がある。正しい世界にこの宇宙を導くんだ。そのためにゾーフィや銀河連邦を破壊しようとするのさ。キミだって気に入らんだろうあいつら。」

 

 

シネストロはシンジの目を見つめた。

シンジは目の間にいる異星人に思わず同意した。

 

 

「あいつは気に入らない、僕の惑星を破壊しようとした。」

「…そうか。あいつはずーっとかたくななんだ。」

 

 

シンジは驚いた。

まるで、ゾーフィを知っているようだ。

 

 

「何で彼を知っているんですか?」

「…ああ、知らんのか。じゃあみせてやろう。」

 

 

シネストロは立ち上がった。

すると、天空に向かって手をかざした。

その時、光が駆け巡るのをシンジはわかった。

思わず目をとじたが、次第に光が落ち着くのがわかると目を開けた。

 

 

「……!!!!」

 

 

シンジは驚いた。

そこには、ゾーフィ同様金色の皮膚をしたウルトラマンがたっていた。

 

 

『俺もウルトラマンだったんだよ』

「…!!!!」

 

 

シンジは思い出した。

ゾーフィは言っていた。

ウルトラマンの裏切り者がいると…。

 

 

 

「まさか、あなたが!例の裏切り者!」

『そう、俺こそウルトラマンの裏切り者。人は俺をこう呼ぶウルトラマンシネストロとな…。』

 

 

シネストロは変身を解いた。

 

 

 

「ああ、疲れた。だから変身するのは嫌なんだ。」

 

 

シンジは呆然とした。

まさか、ウルトラマンの裏切りものがいたなんて。

 

 

「…あなたがそうだったのか。でもなんで‥。」

 

 

シネストロはシンジを横目でみた。

その時、一瞬悲しそうな顔をしていたのをシンジは見逃さなかった。

 

 

「…もうだいぶ前の事さ。俺はウルトラマンとして宇宙中をかけめぐった。色々とね。俺は気がつけば宇宙最強のウルトラマンと言われた。そんなことはないと思っているんだが。」

「へえ…」

 

 

シネストロはシンジが食いついたのを喜んでいた。

 

「君はゴジラを倒したらしいな。」

「僕だけの力じゃない。」

 

シンジはアスカを思い出した。

彼女の作戦がなければゴジラに勝てなかった。

シネストロは串刺しにしていた猿のような生命体の肉を食いながら話を始めた。

 

「観たことがあるか怪獣どものいる別次元の世界を。」

「いいえ。」

「あそこにはとんでもないバケモノがいた。ゴジラどもはあの多元世界を支配している王族なんだ。その中にはゴジラたちの王様がいた。王の中の王、つまりは皇帝だ。あのバカでかさといえば俺は宇宙で一番大きな山にいったこともあるが、あれよりでかい。そしてあのエネルギー量…こんな宇宙破壊する事なんて目じゃないよ。多くの仲間が死んで俺とゾーフィだけが生き残れたんだ。」

 

 

シネストロはその時悲しい顔をした。

死んだ部下を思い出したのだろう。

彼の言葉に嘘はない。

 

 

「ゾーフィと友達だったんですか」

「…まあな、あいつの若いころは他のウルトラマンと違って別の種族上がりのヤツを認めてくれたんだ。ライバルで親友だった。あいつとは色んな楽しいことをした。宇宙を一緒に回ったな。」

 

 

シネストロは少し楽しそうに思い出を語った。

宇宙の様々な場所を冒険し、弱者を守った事。

怪獣を倒した事。

その目は本当に楽しかったのだろう、眼が輝いていた。

 

 

「でも、俺は忘れていた。コルガーのことを。」

「…?」

 

 

ここか、考えてみればこの惑星は廃墟だらけだ。

 

 

「…その時、コルガーの民は俺を恐れていた。宇宙で最も強いウルトラマンの力を持つ俺を。だから…俺の家族を殺したんだ。」

 

 

シンジは目を見開いた。

 

 

「なんだって!!」

 

 

シネストロは驚く少年を見返した。

シンジも同じく見返した。

その時、シンジは気が付いた。

シネストロの目からは赤い血のような涙が流れていた。

 

 

「俺には妻と子供がいた、連中は俺が宇宙での任務で忙しい間を狙って家族を殺した。そして、軍隊を使って俺の友人を死刑にしていったんだ…。俺と関係する人間は全員皆殺しになったんだよ。」

 

 

ひどすぎる。

この人は守ろうと思っていたのに、その人たちに裏切られたのか。

 

 

「俺は報復を行ったよ。だからこの惑星の文明は全て滅んだ、俺が滅ぼした。」

 

 

シネストロはため息をふかぶかとついた。

 

 

「俺はこいつらを守る気でいた。この世界の全てを守る気でいた。なのにあいつらは俺を侵略者だと思っていたようだ…。」

 

 

シンジは、口を覆った。

そうだ、地球にもそんなやつがいる。

シネストロは、シンジの反応をみていた。

 

 

「そんな時、ゾーフィや光の国、銀河連邦は何をしていたと思う。何もしてくれなかった。妻や子供が殺されても、知らんぷりだ。助けてくれやしない。あいつらはコルガーでの暴動を知っていたのに、報告もなかったんだ。」

 

 

そうだ、ゾーフィはそういうやつだ。

シンジはうなづいた。

 

 

「あいつらはそういう連中です。」

「だろ?それどころか、あいつらは…俺を非難した。」

「…。」

「俺は追い出されたんだ。光の国から。ウルトラマンから。」

 

 

シンジは声が詰まった。

 

「ただ、その時思った。あいつらの法律や秩序が俺や家族を守らなかった、だったらアイツらの法律や秩序に従う必要なんかない。」

 

シネストロは赤い涙を拭き、周囲をみた。

 

「俺は、銀河連邦や光の国に恨みを持つ連中をかけ集めた。そして、俺の組織を結成した。なあ、少年よ。俺は、宇宙を正しい世界に変える。そして、今の秩序をすべて破壊すると決めた。」

 

 

シンジはシネストロに同情した。

心底つらい経験をしたのだろう。

その時、シンジの前にシネストロの紫色の手が差し向けられてることに気が付いた。

 

 

「だから、お前を呼んだ。お前は強い、頼りになる。だから、お前も俺についてこい!!」

 

 

シンジはあっけにとられた。

呼んだ理由はそれだったのか。

シネストロのあふれ出るカリスマ性にシンジは圧倒された。

 

「…。」

 

シンジはシネストロの手を握りそうになった。

その時、ふと周囲をみつめた。

コルガー人は他の宇宙人に虐待されている。

少女らしい個体が泣き叫んでいるのがみえた。

 

 

彼に考えが浮かんだ。

確かにこのシネストロの言っている事は正しい。

僕もゾーフィに付き従うことはできない。

 

 

「あなたの言っていることは正しい。」

「だろ!!!仲間になってくれるか!?ウルトラマンの仲間がいるんだったら心強い!ぜひなってくれよ!!」

 

 

シネストロは笑顔になった。

賛同者がいてうれしいようだ。

 

 

「でも…。」

 

 

シンジはシネストロの手を取らなかった。

その代わり、立ち上がり、周囲を指さした。

 

 

 

「これはどういうことですか?」

「何?」

「あなたは守るはずだった人々を傷つけている、その中にはあなたの家族を殺した連中とは無関係だった人も、いるんじゃないですか?あなたを信頼し続けた人もいるんじゃないですか?彼らをあなたは傷つけてもいいんですか。」

 

 

シネストロは周囲を見つめた。

そして、シンジの目を見返した。

表情は憤怒に変わっている。

 

 

「お前は何もわかってないな…。」

「…何。」

 

 

 

シネストロはためいきをついた。

わからないようだ。

目の前にいる若者は、気が付いていない。

無関心こそ最大の悪なのだ。

コイツもその一人だ。

 

 

「無関心こそ、最大の悪なんだ。」

「…それがあなたの答えですか?」

 

 

シンジは戸惑った。

その態度がシネストロの憤怒に火をつけた。

 

「だから、お前はわかっとらんのだ!!!」

 

シネストロは立ち上がり、周囲を指さし怒りの雄たけびを上げた。

その顔は不動明王のようにシンジにはみえた。

 

「こいつらは黙ってみていたのさ!だから同罪だ!お前は地球でおきたユダヤ人虐殺を知っているだろ!!ドイツの近くで収容所にいた連中は、黙って観ていた。黙ってみることが全ての始まりだ!!!傍観者・無関心こそは究極の罪であり究極の悪だ!!!だから死刑だ!!!」

 

 

シンジは賛同できなかった。

 

 

「違いますよ。」

「何ィ!?」

「傍観することしかできなかった、止めることができなかった。弱いから逆らえなかった、それが罪なら。ゴジラが死ぬまで地球に誰もよこさなかったあなたも罪人だ。本当に、宇宙を救いたいならアイツを何とかすべきだった。」

 

 

 

シネストロはシンジを睨んだ。

先ほどまで打ち解けそうだった雰囲気とは違う。

 

 

 

「…貴様!」

「僕はあなたに賛同しません。仲間になりません。ですが身に起きたことは同情します。」

「貴様は、ゾーフィに従うんだな。言っておくが、あいつは地球の破壊をあきらめていないぞ!!」

「あいつにも従いません、僕は僕のやり方のみでウルトラマンとして生きます。」

 

 

シネストロは怒りのあまり周囲がグジャグジャにみえた。

そして、ため息をついた。

この地球人は理解をしていない。

説得できない。

 

 

「ダメだ、お前は生かして帰さない。」

「…何!?」

「お前たち、コイツを殺せ。」

 

 

 

 

その時だった。

セミの姿をしたエイリアンのバルタンが近づいてきた。

シンジは気がつけば囲まれてることに気が付いた。

 

「…後悔するぞお前たち。」

 

バルタンたちはシンジの言葉を負け惜しみと勘違いすると笑い声をあげはじめた。

その声をシンジは徹底的に無視した。

 

 

「フォフォフォフォフォフォフォ…!!!!」

「笑わせる!!!!」

「何をぬかすか小僧!!!」

「後悔するのはお前の方だ!!!」

 

 

いってもわからないか、なら仕方ない。

彼はため息をついた。

そして、素早く、シンジは片腕をあげた。

眩い光があたりを包んだ。

それとともに衝撃が発生した。

 

 

「フォフォフォ!?」

 

 

バルタン達は思わずのけぞった。

そこには立っていた白銀のウルトラマンが。

それをみてシネストロは、フンと腕組みをしていた。

バルタンたちはシンジに襲い掛かると、四方八方から取り囲まれのしかかられた。

 

 

 

『そんな攻撃、ビクともしないぞ!!!」

 

 

シンジは念力を使い衝撃波を発生させた。

バルタンの群れは悲鳴を上げ吹き飛んでいった。

セミのような顔をしたバルタン一味は吹き飛ぶと、地面に倒れていった。

 

 

『…あなどるなよ、お前ら。』

 

 

シンジは啖呵を切ったが、バルタン以上の能力者たちがあたりを囲んでいる事に気づき、一瞬で劣勢であるとわかった。

 

 

 

 

『多勢に無勢か…。』

 

 

シンジはすぐさま、瞬間移動をしようとした。

だが、使えなかった。

その時、宙を巨大なフォースフィールドが覆っている事にきがついた。

どうやらこのフォースフィールドは侵入者や脱走者を逃がさないようにしているようだ。

 

 

 

「野郎ォ!!!!」

「やっちまえ!!!」

「おいかけろ!!!」

 

 

エイリアンたちは雄たけびをあげている。

まずい、いくらウルトラマンと言えどもあれだけの量がきたら倒せない。

シンジは焦って、逃げた。

 

 

「追いかけろ!!!!」

 

 

シネストロの声が轟く。

ウルトラマンは逃げた。

やがて、過労時で残っている雑木林をみつけた。

 

 

「助けてえええええええええええええええ!!!!」

 

 

声がした。

その時、シンジはふとみた。

コルガー星人が別のエイリアンに襲われている。

 

 

「ゲへへへへ…助けを求めたってなだれもきやしねえんだぜェお嬢ちゃんよォ!!!ゲヒヒヒ!!!」

 

 

コルガー星人の少女を襲っているエイリアンはトカゲのような顔をしていた。

両腕はブレードが生えていた。

ふとシンジがみえると、コルガー星人の亡骸があたりにみえた。

どうやらこいつが戯れに殺したようだ。

バラバラに刻まれているもの、首を斬られているものがあった。

 

 

「そうだ、お嬢ちゃん、冥土の土産にきかさせてやるぜ、俺様の名前はツルクゥ!!!!!ツルク様だあよおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!アヒャヒャ!」

 

 

ツルクは雄たけびをあげた。

 

 

『おい、ツルク。そこでやめろ。』

「なんだあ!?お前、シネストロ様とは違うウルトラマンだな。それにシネストロ様は強いヤツが弱いヤツを支配していいって言ってたんだぜェ、ゲヒヒヒ!まあいい!!てめぇを殺してやるァ!!!!」

 

 

ツルクは鋭いブレードを使い、シンジに襲い掛かった。

だが、シンジはそれを二本の指でつかんだ。

そして、力任せに引き千切った。

 

 

「ゲヒィ!?」

 

 

ツルクは激痛に苦しんだ。

シンジはウルトラマンの左腕を使い、ツルクの顔を殴打した。

ツルクは激痛に苦しみながら、顔が砕けていった。

 

 

「ゲヒィ!?待ってくれよ、ゲヒ。殺さないでくれェ!!!!俺にも家族がいるんだよ!!!」

『消えろ。』

 

 

ツルクは砕けた顔から青い血を流すと這うように逃げだした。

シンジはコルガー星人の少女をみた。

 

 

『…キミも帰ったほうがいい。ここは地獄になるぞ。』

 

 

コルガー星人の少女は怒号に気づくと、小さい声で感謝の言葉をいうと逃げていった。

すると、シンジを囲むようにエイリアンたちがやってきた。

その中心にはメフィラスがいた。

 

 

『…騒ぎが起きているので帰ってきたらこれですか。あなたも迷惑な御仁ですね。』

『それを連れてきたのはお前だ。』

『まあいいでしょう。』

 

 

メフィラスは指をパッチンと鳴らした。

ウルトラマンの動きは止まった。

 

 

『…あなたなど、私からすれば倒すのはたやすい。』

 

 

時間は止まった。

その中をメフィラスはゆっくりと進んだ。

他のエイリアンも動けないのか動きが止まっていた。

 

 

『この止まった時間を歩めるのは私、そしてシネストロ殿だけ。さあ、死になさいッ!!!!』

 

 

メフィラスは両腕をかざし、ビームを放った。

だがその時、放ったビームが何かに押し返されたのがわかった。

ウルトラマンだ。

シンジは素早く、動きスペシウム光線で押し返したようだ。

 

 

『ば、バカな…!!!』

『メフィラス、先ほどと同じことをすれば、僕がどれだけバカでも抜け穴を見つけるなんてたやすいんだよ。』

 

 

メフィラスはうろたえた。

まさか、時間を止めたことがバレているなんて…。

しかも、シンジは動けるようになっていた。

その時背後に冷たいものを感じた。

 

 

『時間を止めることができるのは、あなただけではありませんよ。』

 

 

女の声だ。

その声の主はスペシウムでできた剣をメフィラスの首元に近づけていた。

メフィラスはこの声の主を知っていた。

 

 

『…どうやら、例外がいたようですね。お久しぶりです、ユリア殿。まさかあなたが来るとは…あの時の傷が痛みます。』

『私もあなたに傷つけられた腕がいまだに痛みます。さあ、死にたくないなら負けを認めなさい。メフィラス。』

『流石、お見事です。』

 

 

メフィラスは両手をあげた。

ユリアはメフィラスを許した。

 

 

『…残念ですが、私の負けですね。おさらばです。』

 

 

メフィラスは一礼をすると、指を再び鳴らした。

すると時間は戻った。

周囲のエイリアンたちは困惑していた。

メフィラスは彼らをおいて姿を消した。

 

 

『ユリア、なぜ君が』

『話はあとです、まず逃げましょう』

 

 

その時だった。

ユリアは何かを踏んだ。

 

 

『!!!』

 

 

その時、彼女を何かの装置が包んでいった。

罠だ。

シンジはその装置を破壊しようとしたが、シンジも同様に何かを踏んでしまっていた。

 

 

 

「へへへへ、そこはな罠なんだよ。俺様の!!!」

 

 

エイリアンたちの中から一人がやってきた。

赤い鼻をした象のような姿をしたエイリアン。

ヒッポリトだ。

 

 

「フハハハハハハハ!!!てめぇらはそろってタールの像になっちめェや!!!!!!!」

 

 

ヒッポリトはタールを流し込んだ。

みるみるうちにシンジとユリアはタールに呑まれて行った。

だが、その時、シンジの目が光輝いた。

 

 

『うあああああッ!!!!!!!』

 

 

衝撃波とともにヒッポリトの罠は吹き飛んだ。

エイリアンたちは、その衝撃波で飛ばされたがヒッポリトは別だった。

彼は微動だにしなかった。

 

 

その埃の中からシンジがゆっくりと出てきた。

彼の両腕の中には倒れたユリアがいた。

 

 

『…まだ生きているね、ユリア。ごめんよ。』

 

 

彼はユリアをゆっくりと地面におろした。

そして、ヒッポリトの目をみた。

 

 

『ユリアは僕の恩人だ、手を出した貴様には死んでもらう!』

「フフフ、泣くなよ小僧。」

 

 

ヒッポリトはその長い鼻を伸ばした。

ウルトラマンの胸にあるカラータイマーめがけて鼻を突き刺そうとした。

だが、シンジはそれをつかんだ。

 

 

「何ィ!?」

『お前には役に立ってもらおう。』

 

 

シンジはヒッポリトの鼻をつかむと一回転しながら空中高く、円盤投げの選手がごとく放り投げた。

力任せだった。

 

 

「う、うわああああああああッ!!!!!!」

 

 

ヒッポリトは悲鳴をあげながら天空に突き刺さった。

そして、フォースフィールドをぶち破った。

そのまま彼は宇宙空間に呑まれて行った。

 

 

『さあ、逃げようユリア!』

 

 

姿を消そうとしたその時。

その時、背後に気配を感じた。

シネストロだ。

彼は怒りに満ち溢れていた。

 

 

 

「小僧、お前には失望したぞ。」

 

 

シンジは、一瞬人の姿に戻った。

 

 

「僕たちを逃がしてください!」

「無理だ。」

「…何度も言ってるが、僕はあなたのような短絡的な考えは好きになれない。」

 

 

シネストロは憤りの溜息をつくと、一言言った。

 

 

「いいだろう、勝負だ。」

 

彼は身に羽織っていたマントを脱いだ。

これは、一騎討ちの合図。

勝った存在が負けた存在に言うことを聞かすことができる。

 

 

「わかりました、僕が勝てば帰してくれますね。」

「約束するが、お前が勝つ可能性はない。」

 

 

シネストロは腕を天にかざした。

すると、ウルトラマンに姿を変えた。

赤い目をしたゾーフィのような金のウルトラマンに。

 

 

 

『覚悟しろ、地球のウルトラマン。』

 

 

 

シンジも覚悟を決めたのか同じく腕を天にかざした。

そして、白銀のウルトラマンに姿を変えた。

周囲のエイリアンたちは、驚きあわてふためきながら周囲を囲んでいる。

 

 

 

『来いッ!!!!シネストロ!!!!』

『地獄に落としてやるぞ!!!!』

『それはこっちのセリフだ!!!』

 

 

金色のウルトラマンとなったシネストロはまず腕を振り上げた。

その腕は素早くシンジの変身したウルトラマンの胴に向かって振り下ろされた。

 

 

 

『ぐっ!』

 

 

 

シネストロに殴られたウルトラマンはたじろいた。

痛い、腹部が。

その隙に素早く動くと、シネストロは素早く金色の脚でウルトラマンの首めがけて蹴りを解き放った。

 

 

 

『うぐっ…!!!!』

 

 

 

シンジの首に激痛が走った。

そして、おもわずさらに一歩下がった。

 

 

『糞、何とかしないと…。』

 

 

シンジは思いついた。

念力を解き放った。

だが、シネストロにはわかっていた。

念力には念力を…。

かつての勇者は掌から念力を解き放った。

 

 

『うわアッ!!!!』

 

 

シンジは弾き飛ばされた。

 

 

『糞、まずい…。』

 

 

シンジは両腕をクロス状態にするとスペシウム光線を放った。

だが、シネストロも同様のポーズをとりスペシウム光線を放った。

光線の打ち合いとなった。

 

 

『‥‥ぐ、グうううううう!!!!』

 

 

シンジは押されていた。

そして、シンジの放ったスペシウム光線は吹き飛ばされ巨大な爆音を響かせ、地球のウルトラマンは吹き飛んでいった。

 

 

『あ、あ…あぐあが…。』

 

 

シンジは全身に響く激痛に身をねじった。

カラータイマーが点滅している。

 

 

『なめるなよ、お前と俺では戦績が違う。』

 

 

シネストロは腕を組みながら言った。

 

 

こいつ強い。

基礎のスペックの時点で違う。

シンジはわかった。

この男はやはり、歴戦のベテラン兵士なんだ。

 

 

 

『でも、負けるわけには…』

 

 

シンジは立ち上がった。

シネストロはシンジのスタミナに驚いた。

シンジはふらふらになりならも、なんとか立ち上がりパンチを繰り出した。

 

 

『面白い』

 

 

シネストロはそれをつかんでいる。

効いてない。

シネストロは腕をつかむと地面に一本背負いのやり方で投げ飛ばした。

この動きにシンジは覚えがあった。

 

 

『…柔術!?』

 

 

シネストロはシンジの反応を喜んだ。

やはり、地球の男だ。

 

 

 

『そうだ、俺は地球の格闘技にも影響を受けている。私は60年以上前に地球にいったことがある。お前の惑星は素晴らしい。豊富な水と食文化、そして娯楽文化も充実している!だからお前の惑星はこのコルガーのようになってほしくない。諦めろ、手を組め。そうすれば地球に来る怪獣を一緒に何とかしてやってもいい。』

 

 

シンジは地面に倒れていた。

 

 

『それに言っておくが、お前が倒したゴジラなんてまだ子供だ。もっと強いゴジラが来る。そうなったら宇宙のだれも止められない。ゼットンですらもな。ゾーフィは手を出さないだろう。だが、俺は助けることができる。』

 

 

シネストロは手を差し伸べてきた。

何様だ、虐殺者の分際でとシンジは毒を心の中で吐いた。

シンジは差し向けられた手をつかんだ。

シネストロの体から安堵の気持ちが湧いてきた.

 

 

『何があっても、アンタに従う気はない。』

 

 

シンジは息を吐きながら睨み言った。

するとシネストロの掌が赤く輝いた。

高エネルギー反応がある。

 

 

『じゃあ、死ね。』

 

 

しかし、シンジはその一瞬をついた。

シンジはシネストロの腕をつかむと一本背負いのやり方で投げ飛ばした。

シネストロは驚いている。

 

 

『柔道か、ミサトさんに教えてもらったさ!!!次はこんなやり方もな!!!!』

 

 

 

シンジはシネストロの腕をつかむと両足で挟んだ。

腕菱木十字固めのやり方だ。

そして、シネストロの腕の骨にダメージを与えた。

 

 

 

ビキビキビキ…。

 

 

 

コルガー中に、その音が響いた。

 

 

 

『グギャあああああああああああッ!!!!!!』

 

 

 

シネストロは悶絶した。

激痛が腕に走った。

 

 

 

『諦めろ!折るぞ!』

『小僧ォ…貴様…!!!!』

『小僧や少年というんじゃないッ!!!!僕には名前がある!!!』

 

 

シンジは怒気をこめた、全身のスペシウムエネルギーが溜まっていく。

その力のまま上半身に力を込めた。

そして…。

 

 

 

ゴキッ!!!!!

 

 

 

とうとうシネストロの腕の骨が砕ける音がした。

シネストロは声にならない悲鳴をあげながら、悶絶し腕を抑えた。

シンジは倒れ悶えるシネストロをみつめ、呟いた。

 

 

『僕の名前は碇シンジだ。』

 

 

シネストロは悶絶し悶えている。

闘いを続けることはできないようだ。

シンジの勝利だ。

その時、シネストロは叫んだ。

 

 

 

『待て!』

 

 

シンジは立ち止った。

 

 

『碇シンジよ、地球のウルトラマンよ。』

 

 

シンジはシネストロを睨んだ。

シネストロは腕を抑えながら叫んだ。

 

 

『忘れるな、お前はいずれ俺のよに全てから裏切られる。仲間からも、守るはずだった人々からも。』

 

 

シンジは背中でシネストロの忠告を聞いた。

 

 

『僕はあなたのやり方にはついていくことはない。でも、あなたの境遇には同情します。さようなら、シネストロ。』

 

 

 

シンジはユリアを抱えるとそのまま、宇宙へ飛んでいった。

ヒッポリトも吹き飛んでいっているようだ。

シンジはあの赤鼻とは逆方向にいくようにした。

そして、脇にあった惑星に止まった。

そこの住民たちは、ウルトラマンに好意的だったようだ。

 

 

彼はユリアが、目覚めるのを待った。

やがて、30分後に彼女は目覚めた。

 

 

『ユリア…』

『シンジ様』

『君には助けられたからね、これで借りは返したよ。』

 

 

ユリアは上体を起こした。

 

 

『なぜ、君はあそこに…。』

『シネストロを説得するためです。今よりあそこは恐らく兄上とその部隊が派遣されるその前に…。』

『なんでそんなことを?』

 

 

ユリアは顔を赤らめた。

それだけで答えが分かった。

 

 

『シネストロが好きなんだ。』

『…兄上とシネストロは若いころ、親友の間柄でございました。あの頃の兄上は理想に燃えていたのです。それがシネストロにあのようなことが起きて…。それ以降は秩序の実を信じる冷酷な男になってしまったのです。』

『ゾーフィは彼と妻を助けなかったと聞いたが』

『…確かにその通り、でもあの時の兄は所詮中間管理職、何もできなかったのです。』

 

 

シンジはためいきをついた。

そうか、そんな関係があったのか。

 

 

『君はあいつが好きなんだ。でも、彼には妻がいたよね。』

『だから私の片思いでした。…そんなことよりシンジ様、シンジ様も帰ったほうがいいのでは?』

『どうして?』

『兄上が来ますよ、そうすれば…あなたも戦いに巻き込まれます。今のうちにどうかお逃げください!』

 

 

シンジはユリアが自分を心配していることに感謝した。

 

 

『ありがとう、ユリア…。』

『ご武運を。』

 

 

シンジは変身を解くと、瞬間移動を使い地球に帰ってきた。

地球はどうやら時が変わってないようだ。

人々が行きかっている。

平穏が戻っている。

 

 

シンジは決意した。

彼はある場所により買い物を済ませると、スタジオに戻ってきた。

青葉とマヤとヒカリがいた。

 

 

「もーう碇君なにやってんのよ!」

 

 

シンジはヒカリの手を取った。

ヒカリは一瞬の出来事に困惑した。

 

 

「え?」

「…ヒカリちゃん。いいえ洞木ヒカリさん。」

「ええ?」

 

 

シンジはヒカリの目を見つめた。

彼女は身をくねらせ頬を染めながらそれをみつめていた。

シンジはある者を取り出した。

それは、指輪だった。

 

 

「…結婚してくれますか?僕と…。」

「!?」

 

ヒカリはうろたえた。

 

 

「高校を出たらすぐに結婚してくれますか?」

 

 

シンジの目をみた。

まっすぐだ。

こんな真っすぐな目みられたらノーとは言えない。

 

 

「…はい。」

「え?

「…結婚します。」

 

 

 

シンジは喜んだ。

脇にいた青葉とマヤも大いに喜んだ。

青葉はシンジの肩を抱き寄せると、ひっぱりながら裏部屋に連れてきた。

 

 

「結婚、本気でするのか?」

「本気です。彼女といると、辛い事が忘れそうになってくるんで。」

 

 

青葉はため息をつくと、シンジの肩に手をポンと置いた。

 

 

「…キミは、頑固だからなー。まあ、いっか。まあでも浮気はしちゃダメだからな。」

「わかっています!」

 

 

青葉はシンジの頭をくしゃくしゃと撫でた。

二人は本当の兄弟のようだった。

 

 

「でもな、シンジ君。結婚っていうのは重いんだ。人一人の人生を背負うってことだ。キミにそれができるんだな?」

「…やってみせます。」

「…ま、君ならできそうだな。」

 

 

青葉はふと、時計をみた。

もう午後9時をまわっている。

 

 

「お、やべー!もうこんな時間だ。今日はお開きにすっか。」

「あ、はい!」

 

 

青葉は背中をポンポンと叩いた。

 

 

「…お姫様のことは頼むぜ、ちゃーんと守って見送ってやれよ。」

「…はい。」

 

 

シンジは顔を赤くした。

その時だった。

 

 

シンジの体に何か電気が走った。

体がビリビリと痺れた。

 

 

「…。」

「どうした?」

「いえ‥。」

 

 

シンジは青葉の方を振り返った。

本の数㎝しか離れてないのに青葉がまるで遠く感じるようになった。

なぜだろう、青葉さんがどこか遠い場所に行ってしまう気がする。

 

 

「あ、青葉さん。」

「どうした?」

「いえ、何というか…お世話していただいてありがとうございます!」

「…はは、気にすんな。」

 

 

青葉はそういうと時計を指さした。

ライブハウスも閉館の時間だ。

シンジはヒカリを連れると、マヤや青葉たちと別れた。

シンジは青葉の方を何度も振り返った。

何度も、何度も…。

 

 

 

「どうしたの、碇君。」

「いや、何だか…嫌な予感がするんだ。」

 

 

 

ヒカリは首を傾げた。

しかし、彼女もそろそろ門限が迫ってくる。

早く帰らないとまずい。

彼女とシンジは、駅に向かっていった。

 

 

 

そんな若い二人を青葉とマヤは見送っていた。

 

 

「なーにか言ったの?マヤちゃん。」

「え?」

「じゃなきゃ、あの子あんなにあせんないでしょ。」

「フフ、秘密!さあ、私たちも帰りましょう!」

 

 

マヤは青葉の腕をがっつりと手に取った。

青葉は想像以上の強引な力に面食らったが従わざる負えなかった。

 

 

「今、お腹を蹴った気がするわ」

「いいな、シンジ君は弟のようにかわいがってくれるだろう。」

「いいわね。」

 

 

青葉とマヤはおどけながら歩いた。

人通りは少ない。

空き家が多い。

ゴジラの騒動で起きたダメージは大きい。

そんな時だった。

紫色のコートをした、痩せ細った白人の中年男が近づいてきた。

肌はアルビノのように白く唇は女性のように赤かった。

まるでピエロのように。

 

 

「ハロー、コニチハ。」

 

 

男は青葉たちに話しかけた。

 

 

「あ、ハロー。」

 

 

青葉は挨拶をかえした。

 

「ごめんね、本当は日本語しゃべれるの。」

 

男は流ちょうな日本語で言った。

青葉とマヤはひょうしぬけし、思わず笑ってしまった。

 

 

「面白い人だなアンタ」

「ご冗談がお得意なんですね」

「アハハハ、みんなから言われますね。」

 

 

ヘビのように痩せ細った、ギラついた目をした男は紫色の上着から何かを取り出してきた。

 

 

「なあ、お兄さん…月夜の晩に悪魔と踊ったことはあるか?」

「は?」

 

 

その瞬間だった。

パシュン。

 

 

空気を切る音がした。

青葉の額に大きな穴が開いた。

そこから、血と脳味噌が一瞬で吹き飛んだ。

 

 

 

ドチャ…

 

 

鈍い音がした。

まるで糸の切れた人形のように青葉は倒れた。

 

 

 

 

「・・・え!?」

 

 

 

あまりにも唐突なことでマヤは返り血を浴びた時にようやく気が付いた。

 

 

「シゲルくん?」

 

 

マヤは青葉の亡骸を抱き起そうとした。

動かない。

白い目を向いたまま青葉だったそれはピクピクと痙攣していた。

顔が潰れたように額にゴルフボールサイズの大きな穴が開いている。

 

 

「・・・・いや、いや・・・いやあああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

マヤは震えあがり叫んだ。

だが、そこにはだれもいない。

空き家だらけなのだから。

彼女は青葉を殺した男をみつめた。

男は薄気味悪い笑顔を浮かべていた。

 

 

 

「あ、ああ・・・・ああああ・・・」

 

 

赤黒い血をのたうちまわりながら、マヤはのけぞった。

 

 

「・・・・なあお姉ちゃん、月夜の晩に悪魔と踊ったことはァあるか?」

 

 

男はふざけたように言っている。

全ての生命を嘲る侮辱するような笑顔をしていた。

マヤはこの男の狂気に震えあがった。

 

 

「やめて、やめて・・・・私、お腹の中に子供がいるの。」

 

 

男は目を見開いた。

 

 

「そうか」

 

 

そして、銃を下した。

 

 

「残念だ。」

 

 

男はニヤニヤと笑うと銃をコートの中に隠した。

だが、その脇には光り輝く何かがあった。

 

 

「だったら…もっと面白いことをしてやろう。」

 

 

 

男はニヤリと笑った。

マヤは悲鳴を上げる暇もなかった。

周囲には別の男たちが立っていた。

彼らは彼女を捕えると車に連れ込んでいった。

リーダーを務めていた紫色のコートを羽織った男はほくそ笑んでいた。

 

 

 

 




次回以降、シンジはいろんな人を失う展開に
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