シン・ウルトラマンエヴァ   作:井上ああああ

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今回最終回です


最終話:「最後の戦い」

シンジは目を覚ました。

彼はウルトラマン形態のまま小惑星の上で眠っていた。

それがどうだろうか、何かしらの惑星に小惑星は落下していたようだ。

 

 

「…ここはどこだ?」

 

 

少しウルトラマンのままでいるのも疲れてきた。

無駄にエネルギーを浪費するのも問題がある。

ウルトラマン形態のまま掌を出して大気がどのようになっているのかを確認した。

 

 

「…酸素が多い、地球人のままでも問題がない。」

 

 

シンジはウルトラマン形態を解除すると、周囲を見回した。

砂漠が溢れていた。

太陽がさんさんと照り付けていた。

周囲には建造物の跡のような廃墟が残っていた。

 

 

「どうやら、地球と同じ文明があったようだな。」

 

 

シンジは、砂漠の上をつらつらと歩いていた。

その時、背後に邪悪な気配がした。

彼は振り向いた。

そこには巨大なアゴをしたサンドワームの怪獣が立っていた。

800mはくだらないだろう。

 

 

「…ゾーフィめ、怪獣は僕たちの次元にいなかったんじゃないのか。あの節穴。」

 

 

シンジはためいきをついた。

怪物が近づくと睨みつけた。

すると、サンドワームは怯えていた。

その時、シンジはようやく気が付いた。

長時間、チェレンコフ光の太陽にあてられ続けた影響でスペシウムエネルギーはかなりたまっている。

もはや、その力は並みのウルトラマン以上の物となっている。

弱い怪獣程度なら、人間形態で睨むままで怯えてしまう。

サンドワームは地中の中に逃げ隠れた。

 

 

 

「…」

 

 

シンジは周囲を見つめた。

この砂漠の先には何がまっているのだろうか。

文明はあるのか、それとも誰もいないのか。

彼はとぼとぼと歩いた。

 

 

砂漠の上で観たこともないような怪獣の死骸があった。

カバのような見た目をしたそれは腹部を食いちぎられていた。

小型の怪獣がその死骸に群れて食っていた。

 

 

 

太陽が照り付けている。

太陽の形は、あの地球と変わらない。

 

 

 

「‥‥まさか」

 

 

 

シンジはその時何かを感じた。

 

 

「もしかして、自分がいるのは…。」

 

 

シンジは口ぐもった。

 

 

バカな、ありえない。

何光年も離れた場所にいたんだ。

そんな偶然があるわけがない。

 

 

自分自身に言い聞かせ、彼はとぼとぼと歩いた。

複数体の怪獣がシンジに近づいたが、そのあふれ出るエネルギーに震え逃げ始めた。

彼は無視して歩き始めた。

不思議なことに疲れはなかった。

 

 

ガレキや廃墟が多くなってきた。

ここには間違いなく文明があった。

小型の怪獣はシンジをみると、うろたえたように逃げていった。

あふれ出るスペシウムのエネルギーはかなり強いオーラを発生させていた。

 

 

その時だった。

シンジはある物をみてしまった。

 

 

 

「…!!!」

 

 

 

戦艦だ。

戦艦は廃墟に突き刺さっている。

 

 

 

「あ‥‥」

 

 

 

その形は覚えていた。

ミサトと住んでいたあの神戸の土地にいた護衛艦「やまと」だ。

やまとは廃墟に突き刺さっていた。

 

 

「うそだろ…」

 

 

シンジは呆然としていた。

ここは、地球だ。

地球だったんだ。

 

 

否、違う。

こんなものは全部同じだ。

シンジは拒絶した。

そして、走った。

 

 

何かから逃げるように、走った。

砂漠の砂の上を彼はかけた。

砂が重くなっているのを感じた。

 

 

 

そして、彼はみてしまった。

 

 

 

「‥‥!!!あ、あああああああああああ‥‥!!!」

 

 

 

砂漠の上にそれは立っていた。

それは、人類の文明の象徴だった。

自由の女神。

それは、砂漠の上に倒れていた。

 

 

 

「あ、あああ‥‥なんてことだ。」

 

 

 

ここは地球だ。

自分が見捨てた地球だ。

その結果、地球は滅んだんだ。

 

 

 

「僕のせい?・・・僕のせいなのか・・・・。」

 

 

 

その時、雨が降ってきた。

雨は黒かった。

シンジにはわかっていた、これが放射能性物質が含んでいる毒の雨だと。

彼は廃墟の中に入った。

そして、そこで、座ってすすり泣きはじめた。

 

 

 

「僕が…僕が‥‥」

 

 

 

シンジは泣いて後悔した。

地球は滅んだ。

恐らく人類もほとんだ。

全ては自分のせいだ。

彼は、大泣きすると、そのまま廃墟の中で寝た。

 

 

目が覚めるとまだ雨が降っていた。

でも、彼はもうどうでもよかった。

体育座りで座ったまま、彼はまたふて寝をしようとした。

 

 

ふと小型の怪獣同士がお互いの首をかけて喰い合ってるのがみえた。

シンジは無視した。

どうでもいい、もうどうだって。

このまま大型怪獣が来て、殺されればそれでいい。

彼はそう思うと、寝た。

 

 

それが何時間に及び、何時間になり、何日にもなっていった。

そして、数日が経過した時だった。

 

 

 

「…アレ、誰か人がいる!」

「本当だ」

「近くで観に行こう」」

 

 

人の声がした。

シンジは振り向いた。

 

 

その時だった。

男が立っていた。

髪の毛に白髪が生え、痩せ細った老年の男だった。

彼は、眼鏡をかけていた。

 

 

 

「こ、これは…」

 

 

 

男は心底驚いたような表情をした。

シンジはその男の顔をよくみた。

彼は記憶の底を思い出し、おぼろげに記憶を探った。

 

 

 

「‥‥日向さん?」

 

 

 

日向マコト。

シンジがミサトのところにいた時に出会ったミサトの部下だ。

シンジはその時思い出した。

そうだ、僕は彼と一緒に戦いたいから、ミサトの仇を討ちたかったから自衛隊になろうとした。

なのに、僕はウルトラマンになって、それでもうそういった夢も忘れていったんだ。

 

 

 

「シンジ君…」

 

 

 

痩せ細った老人となった日向はシンジの肩を抱いた。

そして、涙を浮かべながら彼を抱き寄せた。

 

 

 

「生きていたのか…。」

 

 

日向はその細い腕でシンジを抱きしめた。

日向の涙がシンジの肩に当たった。

その時、シンジもずっと我慢していた涙が出てくるのがわかった。

 

 

 

「日向さん。」

 

 

 

そうだ、僕は地球にまだ友人がいた。

いたんだ。

それなのに、僕は…僕は…見捨ててしまったんだ。

 

 

 

「ごめんなさい、日向さん。僕は…。」

「知っているよ、君がウルトラマンだったことも。地球を見捨ててしまったことも。わかっている。でも、いいんだ。もういいんだ。」

 

 

日向はそう言いながらシンジを優しく抱きしめた。

彼の抱擁は、ミサトのそれとは違うものだった。

日向の仲間だった人物は冷たく言った。

 

 

「おい、爺さん!ボスから言われている言葉を忘れているのか?」

「あ、ああ…知っているとも。早く帰ってこいだろ。」

 

 

日向とツレのしゃべっている言葉は日本語ではなく英語だった。

だが、ウルトラマンにあった超能力はシンジにそれを日本語に変換して伝えてくれていた。

 

 

「あ、あの…」

 

 

シンジは日向とその仲間の目を見た。

 

 

「僕もつれていってください。」

 

 

日向の仲間は彼を観た。

 

 

「役に立つのか爺さんこいつ」

「ああ」

「まあ、いいだろう。じゃあついてきな。だが遅れたら、待っていないからな!」

 

 

日向たちはそう言うと、走り始めた。

廃墟の奥にある階段を抜けていった。

そこは下水道だった。

日向達は黙って突き進んでいった。

シンジも黙ってそれについてきた。

 

 

「…おい!若いの」

 

 

日向は若者に言った。

若者は、ランタンを持つと火をつけた。

 

 

「怪物がいるかもしれんから注意しろ。」

 

 

若者はシンジに言った。

だが、シンジは微笑んだ。

このエネルギーがあれば、半端な怪獣はついてこない。

3人は下水道を抜けると、地下深くへ向かっていった。

電車の跡地があった。

地下鉄なのだろう、そこはさび付き、焦げ付いていた。

二人はトンネルを走っていった。

すると、脇にドアがあった。

 

 

「…ここで待て。」

 

 

 

若者はドアをコンコンと鳴らした。

すると、ドアの小窓が開くと中から男の目がみえた。

男はぶっきらぼうにいった。

 

 

「合言葉は」

「クソ喰らえ」

「正解だ。」

 

 

 

ドアが開いた。

男は手招きをすると、彼らを呼び寄せた。

そこは、シェルターだった。

否、シェルターを借りた地下街だった。

 

 

「うわああ!」

 

 

シンジは驚いた。

地上は荒れていたが、ここはずいぶんと平静だった。

多くの人々が行きかっていた。

こういったところで、人は生きている。

シンジは人類の強さに驚いた。

 

 

「じゃあ、そいつのことはアンタに任せる。ボスにあって許可をもらいにいけよ。」

「わかってる。」

「また来週」

「ああ」

 

 

若者は去っていった。

日向はシンジをみつめて言った。

 

 

「すまないが、これからここのボスにあってもらう。」

「ここは何ですか?」

「人類解放戦線の守衛地だ。」

「じんるい?かいほう・・・せんせん?」

 

 

日向は黙って突き進んだ。

子供たちが不思議そうな顔でみている。

シンジは笑顔で返そうとした。

だが、老人たちが子供を引き留めていた。

老人たちは敵意に満ちた目で睨んでいた。

 

 

「‥‥」

 

 

そうだ、僕は人殺しで地球を見捨てた裏切者。

そんな人間を信用するなんて難しいに決まっているよな。

シンジは少し気分が暗くなった。

日向はシンジの肩をたたいた。

 

 

「さあ、今から僕たちのボスに会いに行くぞ。」

 

 

 

大きなドアがあった。

すると、日向は緊張した顔つきで、ドアを叩いた。

 

 

 

「入れ。」

 

 

 

威厳のある野太い声が響いた。

シンジはその声に心底緊張しそうになった。

そこには男がいた。

身長190㎝近い大男だった。

だが、髪の毛に白髪が生えそろい杖をついていた。

老人だった。

 

 

「おお!」

 

 

老人はシンジをみて、驚いたように言った。

 

 

「こいつは、驚いた。ウルトラマンか。」

 

 

老人は、シンジに近づいた。

その顔は顎が太く、鋭い猛禽のごとき目をしていた。

彼は興味深そうに言った。

 

 

「…そうです、若い連中には気づかれませんでしたが、大人には気づかれています。」

「だろうな。」

 

 

老人は杖を突きながら自己紹介を始めた。

 

 

 

「…失礼、自己紹介が遅れた。私はブルース・ウェイン。人類解放戦線のリーダーだ。」

 

 

 

ブルース・ウェイン。

そうだ、確かアメリカのお騒がせ金持ちだったはず。

まだシンジが若いころテレビでなんどもみた。

あの頃とは顔つきが変わっていたようだ。

バカなセレブが今では人類のリーダーに。

 

 

 

「君が地球から姿を消して、もう30年以上になるな。」

 

 

 

シンジは驚いた。

まるで昨日のように覚えているが…。

まさか、30年もたっていたなんて。

 

 

「・・・・さんじゅうねん!?嘘でしょ!」

「残念だが、嘘ではない。」

 

 

シンジはよろめきそうになった。

日向は慌ててシンジを支えた。

 

 

「君が地球を去ってから、宇宙から刺客がきた。ゼットンという宇宙怪獣だ。ヤツは地球を滅ぼそうとしたが、その時それ以上の脅威がやってきた。ゴジラだ。」

 

 

シンジは驚いた。

 

 

「ゴジラは確か僕たちが倒したはずじゃ。」

 

 

ウェインは深々とため息をつき答えた。

 

 

「うむ、そうだ。私があのゴジラを弱めるバクテリアを産んだのだ。」

「…そうだったのですか、あれはどうやって生んだのですか。」

「あれは、異次元世界にいた昆虫生命体であるモスラの鱗粉から生んだ。ゴジラ族、特に若い個体はあれにアレルギーがある。」

 

 

シンジはその時思い出した。

そうだ、キングジョーのパイロット。

式波アスカ。

彼女の気持ちを裏切った…。

 

 

少年は肩を落とした。

ウェインは、あえてそれを無視して話をつづけた。

 

 

「話を戻すが、次にやってきた個体はそのゴジラより大きくてね…バクテリアがきかなかったんだ。残念だ。」

 

 

ウェインは重い口で言った。

シンジは呆然とした。

そして、ウェインの話を聞いた。

 

 

「大ゴジラは、一瞬で日本列島を破壊しつくした。たった一発の熱線で日本列島とユーラシア大陸を吹き飛ばしたんだ。アジア・ヨーロッパにいた多くの人々は億単位で死んだ。そして、世界中でM9の震災と500mの津波が襲った。多くのアジア諸国・太平洋諸国はそれのせいで海に消えた。そして、さらに人は死んだ。」

 

 

シンジはその時思い出した。

ニュージーランドに洞木ヒカリのお墓があった。

それも今では…海の底か。

 

 

「‥‥」

 

 

シンジは沈黙した。

 

 

 

「そして、ゼットンとゴジラはアメリカに来た。ゴジラはゼットンを殺すために熱線を吐き、そこでアメリカの東海岸もほとんど滅んだ。地軸は曲がり、環境が変わった。そして、大西洋は干上がり砂漠になっていった。太平洋は放射能まみれの毒の海に…。」

 

 

ウェインは肩を落とした。

彼も何か辛い事があったのだろう。

何かを思い出して苦しい顔をしていた。

 

 

「ああ、アルフレッド…私の親友であり執事だった男もその時に命を落とした。」

「…。」

 

シンジはウェインに申し訳ない顔をした。

 

 

「私は事前に何か起きるかわからないと思っていたのでここに避難所を作っていた。そして人々の生き残りを集めて、今に至るというわけだ。食料も何とか食える怪獣と食えない怪獣がいることに気が付き、そいつらに肉を食い生きている。水は毒や放射能を軽減させることができる装置を産んでなんとかやりすごしている、だが…それもいつまでつづくかわからんよ。」

 

 

ウェインは杖を持ち立ち上がった。

そして、シンジと日向を連れると外に出た。

外には子供たちが遊んでいる。

わずかに生き残った犬がかけている。

老婆が猫を抱いている。

 

 

だが、それも下水道の地下の中。

太陽を知らない子供たちの肌は汚かった。

これが、シンジの見捨てた地球の馴れの果て。

シンジは絶句した。

 

 

「‥‥これが、今の日常というやつさ。」

 

 

シンジは後悔した。

 

 

「もしも僕がウルトラマンになっていれば…」

「いや、むりだろう。キミでもやつらにかなわなんかったさ。」

「‥‥」

「まあ、仮に今ここにいるところに怪獣が来たら、よろしく頼むよ。」

 

 

ウェインは自嘲すると、シンジの肩を叩いた。

ウェインは、現実主義者のようだ。

それでシンジは少し助かったのかもしれない。

 

 

「じゃあ日向、コイツの事を任せたぞ。」

「はい。」

 

 

ウェインは静かに言った。

日向は首を縦に振った。

そう言うと、彼らはウェインの部屋から姿を消した。

 

 

「よかったな、シンジ君。」

「ええ…。」

 

 

その時だった。

 

 

「シンジ…」

 

 

声がした。

シンジは振り返った。

そこには赤い髪をした、40代ほどの女性が立っていた。

自分をシンジという女性は、一人しかいない。

 

 

「‥‥惣流アスカ?」

「シンジ!」

 

 

アスカはシンジに近づくと、彼を抱きしめた。

 

 

「‥‥アスカ…大人になっちゃったんだね。」

「ああ、…生きてたの…よかった!よかった!!!」

 

 

 

アスカはシンジを強く抱擁した。

すると、アスカの子供なのだろうか赤い髪をした子供たちが話しかけてきた。

 

 

 

「だれ?ママー」

「ママ、だれ?」

 

 

 

アスカは目に涙をためると、シンジの頭をなでた。

 

 

 

「この子はね、ママの知り合いなの」

 

 

 

シンジは、アスカが40代になり子供が多くできていることに驚いた。

30年もたてば、そうなるか。

 

 

随分とアスカは子だくさんの親になったようだ。

奥をみると、赤い髪の白人風の青い目をした美少年が立っていた。

14歳ぐらいだろう。

美少年は、弟や妹たちを連れると気を利かせ立ち去っていった。

 

 

 

「…ああ、シンジ…。」

「ごめんよ、アスカ僕がちゃんと見捨てていなければ…。」

「バカね、アンタ一人で何かできると思ったら大間違いよ。」

 

 

 

日向はシンジとアスカの再開を見て喜んでいた。

だが、喜んでいる人間ばかりではなかった。

一人の背の高い老人が近づいてきていた。

 

 

 

「キサマ!!!!」

 

 

 

老人は敵意で満ちていた。

 

 

 

「キサマが、ルーサーを!!!!!」

 

 

 

男は眼鏡をしていた。

シンジはこの男に見覚えがあった。

ルーサーを殺した時にいた、彼の友人だ。

彼も生きていたようだ。

 

 

日向とアスカはシンジを守るように立ちふさがった。

だが、老人は止まらない。

手には鈍器を持っている。

その時だった。

 

 

 

「もういいやめろ」

 

 

 

声がした。

野太い声だが、ウェインの物と違う。

 

 

 

「…スレイド!」

「もういいやめろ、ケント。下がっていろ!」

「…フン、助かったなウルトラマン!」

 

 

老人は引き下がった。

だが、その目には殺意が残っている。

スレイドと呼ばれた眼帯をした老人は、シンジの前に近づいた。

 

 

 

「…小僧覚えてるぞ私は。」

 

 

 

スレイドは話しかけた。

 

 

 

「ゴジラを倒したあの時、俺はお前の補佐をした。お前はルーサーを殺したらしいが、それを知ったうえでもお前は地球の味方であると知っている。俺はお前を尊敬している。」

 

 

 

スレイドはそう言い、背を向けた。

シンジは命が助かったことに感謝したが、同時に自分がルーサーを殺した事を思い出し、心を痛めた。

 

 

「…。」

「シンジ君、何か事情があったんだろ。話してみなよ。」

 

 

シンジは日向の目を見た。

老人になり、年老いていても彼は変わらない目をしていた。

 

 

「…僕はルーサーを殺した。でもアイツは僕の大事な人を奪っていったんだ。僕のことを好きになってくれた子も、友人も…奪っていった。だけど、僕には残っていた。ここに(地球に)まだ友人がいたんだ。」

 

 

日向はシンジを優しくみていた。

黙って彼の話を受け止めていた。

 

 

「…」

 

 

シンジは話をつづけた。

彼がいかに孤独だったかを、誰も彼をかばわなかったかを。

日向は反論せず、何も言わず黙って聞いていた。

 

 

「…なあ、シンジ君。」

「はい」

「そのペンダント」

 

 

シンジはペンダントを手にした。

日向はそれを愛おし気にさわった。

 

 

「…彼女の事をまだ愛してくれていたんだね。」

「え?」

 

 

そうだ、ミサトさん。

日向さんと僕は同じ女を愛していた。

 

 

「…はい。」

「彼女は喜んでいるな。まだ君が好きでいてくれている。」

 

 

 

日向は遠い目をしていた。

まだ愛している。

彼女への愛情は残っているんだ。

 

 

 

「日向さん。」

「フフ、きっと葛城さんが導いてくれたのかな。君と僕を…そう考えることにするよ。」

 

 

日向は笑顔を浮かべた。

だが、その笑顔には疲れがみえた。

否、疲れを通り越している。

諦めがみえている。

人類はこのまま終わると、諦めている目が。

 

 

「日向さん…。」

 

 

シンジは後悔した。

地球を見捨てた。

それは、最悪のアイデアだったんだ。

僕一人でも残ってあがけば、最悪の結果になっていてもチャンスはあったはずだった。

それを、見捨てた。

シンジは強く後悔した。

 

 

「…さあ、もう寝よう。」

 

 

 

日向は寝室へと案内した。

簡易なベッドだった。

地下の塹壕のベッドだ。

どこか湿った感触がシンジの背中を包んだ。

 

 

シンジが寝るのを見守った日向は、部屋を後にした。

だが、彼はシンジは寝たふりをしていたことに気が付けなかった。

 

 

 

 

彼はベッドから地上をみた。

虫が走っている。

ネズミも走っている。

どうやら、彼らも地上を追い出されたようだ。

 

 

 

 

そんな時だった。

男の声がした。

 

 

 

「…なんであんなガキを連れてきた。俺たちの食い扶持が減るだろ!食料だってろくにとれてねえんだぞ!!!水だってねえんだ!!!何考えてるんだ!!!」

 

 

 

男の怒鳴り声だ。

誰かはわからない。

その後に日向の声がした。

 

 

 

「あの子はウルトラマンになれる。怪獣から守ってくれる。大事な戦力になるぞ。お前なんかよりもな。」

 

 

 

日向は言い返していた。

 

 

 

「ねえ、アンタらもうやめにしてよ!」

 

 

 

アスカの声だ。

大人になったアスカは疲れているようだった。

シンジは黙ってふて寝した。

すると、誰かが近づいてくるのがみえた。

 

 

 

「ねえ、キミママの知り合いなの」

 

 

 

アスカの子供だ。

隣のベッドで寝ていたようだ。

 

 

「ああ…古い友人なんだ」

「気にしなくていいよ、ママもみんなもああやって喧嘩ばかりしてるんだずーっとね」

 

 

 

子供はそれが日常だといわんばかりにあっけらかんとしていた。

子供は強い、だがそれと同時に不幸だと思った。

ウルトラマンも知らない、怪獣に支配されることになれている。

こんなのがあっていいわけがない。

 

 

 

「…」

 

 

シンジは黙った。

するとアスカの子供はつづけた。

 

 

「知ってる?昔は地上にいたらしいね。お花もいっぱい咲いてたらしい。地上ってなにがいるのかな。ここにはいない生き物も山のようにいるんだって。それにここより多くの人がいたってさ。」

 

 

この子は地上を知らないまま生きている。

かつて地上を人類が支配した事を知らないんだ。

シンジは黙った。

 

 

 

「水もいっぱい飲めたらしい。いいよな…。」

「ああ、羨ましいな」

 

 

 

シンジは相槌を打った。

その後、数分達話疲れたのかアスカの子供は何も言わず眠りこけた。

彼の肌は汚れていた。

太陽を浴びていないのか、栄養も行き届ていていないようだった。

 

 

 

 

「‥‥」

 

 

 

シンジは震えた。

これが、これが…本当にあの地球なのか。

別の惑星に来ているのではないか、シンジはいまだに信じることができなかった。

彼も次第に目をつぶった。

 

 

暗闇がシンジを包み込んだ。

安寧がシンジを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

『碇シンジ』

 

 

 

 

声がした。

シンジは目を開けようとしたが、開けることはできなかった。

 

 

 

 

「誰だ」

『忘れたのか』

 

 

 

シンジは記憶を張り巡らせた。

すると、声の主を思い出した。

以前のウルトラマンだ。

 

 

 

「あなただったか」

 

 

シンジの体を暖かい日の光が包んでいくような感触がした。

 

 

「でもなぜ、死んだはずじゃ」

『お前の心の中に残っていたようだ。私も気が付かなかった。だが、これも長い間続けられるというわけではないのだよ。』

 

 

 

ウルトラマンの声の主は、話をつづけた。

 

 

 

『…お前は傷ついている、あまりにも多くの傷に』

 

 

 

ウルトラマンの声の主は深い同情の声をあげていた。

 

 

 

「…なぜ僕を選んだのですか」

『お前しかいないかったからだ』

「僕はウルトラマンになってあまりにも多くの物を失いました。」

 

 

 

シンジは思いだした。

ヒカリは殺された。

ウルトラマンになったばかりに、目をつけられた。

ウルトラマンにならなければ、こんなことにならなかった。

 

 

 

『そうかもしれん、だが…すべてを失ったわけではない。それはお前自身が先ほどみたはずだ。』

「…はい」

『…しかし、状況は最悪だな、地上は怪獣に支配され人類は地下に逃げ延びている。だが、それも死に耐えようとしている。肝心のウルトラマンたちはどうなっているかわからん。まあ、ゾーフィが動くとも思えんし、今まで見過ごされていたんだろう。』

 

 

 

 

どうやら、この元のウルトラマンもゾーフィは信用していなかったようだ。

 

 

 

 

「…どうすればいいでしょう。」

『残念だが、怪獣どもの王であるエルダー・ゴジラは強い。キミでは勝てない。私でも勝てない。ゾーフィでも勝てない。10万人ウルトラマンが集まっても勝てないだろう…。』

「では勝てないのですか?」

 

 

 

ウルトラマンの声の主は黙った。

どうやら消えたのか。

すると、声がまた響いた。

 

 

 

『可能性はある、だがお前に教えたくなかった。これを教えるとお前は死ぬ。私は長い間お前と同化していたせいで、お前のことが好きになってしまった。だから教える気はなかった。』

 

 

 

シンジは黙った。

そうか、僕を愛していたから教えることができなかったのか。

否、違う。

死なんて最初から覚悟していた。

なぜ教えてくれなかったんだ。

シンジの心に怒りが沸き上がった。

 

 

 

「なんで最初から教えてくれなかったんだ!僕は死なんて怖くない!」

『‥‥お前には生きていてほしかった、ただそれだけだよ』

 

 

 

ウルトラマンはそう告げた。

シンジは、ため息をついた。

 

 

 

「‥‥じゃあ、その方法とは。」

『あのエルダー・ゴジラには人間以上の知恵がある。心がある。その心に植えつけるんだ。君の感情を…、そのためには君が死んで魂だけになり、ヤツと同化する必要がある…これは“魂の上書き”だ。私たちはそう呼んでいる。』

 

 

 

 

魂の上書き、それをやればゴジラを倒せる。

 

 

 

「倒せるんですね、ゴジラを」

『…ああ、出来るだが、お前は死ぬんだぞ』

 

 

 

シンジはちゅうちょしなかった。

迷いなどなかった。

 

 

 

 

「死ぬと天国はあるのかな」

『そこまでは、わからない。まあ、でもあるのかもしれないな…。私は君とともにある。』

 

 

 

声の主は消えていった。

 

 

 

 

 

「っ!!!」

 

 

 

シンジはベッドから起き上がった。

夢か?

否、違う。

感触がある、暖かい感触が。

全て経験したことだ。

 

 

 

「どうしたの」

 

 

 

アスカの子供が聞いている。

シンジは笑顔を浮かべていた。

勝ち誇った笑みを。

 

 

 

「…なあ、キミ」

「なに」

「地上を観てみたいかい?」

「…え?」

「怪獣がいない、地上を歩いてみたいか?」

 

 

 

アスカの子供は少し考えた。

 

 

 

 

「…そんなの想像できないよ」

 

 

こわごわといった。

自信がないようだ。

シンジは微笑んだ。

 

 

「僕の住んでたところは、怪獣が来ない時があった。その時の地上は楽しかった。空気はおいしくて水もいっぱい飲めた。…そんな世界、みたくないか?キミは…。」

 

 

 

アスカの子供は深く考えた。

そして、声に出した。

 

 

 

「ちょっとみたいかも」

 

 

 

自然な反応だった。

無邪気な声。

だが、シンジにはそれだけ十分だった。

彼は覚悟を決めた。

 

 

「…だったら、それをみれるようにするよ。僕が約束する。だから君も僕の頼みを聞いてくれないか。」

 

 

シンジはそういうとベッドから出た。

アスカの子供はそれをキョトンとした表情でみている。

 

 

シンジには考えが浮かんだ。

ここにいる全ての人間を幸せにする方法。

一度見捨てた人々の生活を元に戻す方法。

それは、僕がゴジラの怒りを鎮めることだ。

 

 

首元のペンダントが寂しそうに下がっている。

シンジにはなぜかミサトの静止する声が聞こえるようだった。

 

 

「ごめん、ミサトさん…。」

 

 

シンジはそういうとペンダントを強く握った。

近くにあったメモとペンをつかむと、素早く書きなぐった。

終わると、シンジはアスカの子供の方をみた。

 

 

 

「…日向っていうおじさんを知っているか」

「ああ、あの眼鏡をかけた人」

「そうだ、彼にこれを渡してくれ。そして、言ってくれ。『ありがとう』って…。」

 

 

シンジは十字架のペンダントと手紙をアスカの子供に手渡した。

ミサトのペンダント。

失うのは嫌だ。

だが、今の僕よりも日向さんの方がふさわしい。

 

 

 

「…わかった。」

「君のママにもお礼を言ってくれ。」

 

 

シンジはそういうと、ベッドを飛び出した。

地下街を抜けていった。

幸運なことに、誰もシンジに気が付かなかった。

 

 

「ごめんなさい、日向さん。」

 

 

シンジは小さく言った。

寒い風があたりを包んでいる。

彼は洞窟を抜けて、たった一人で走っていった。

 

 

 

夜の世界だ。

 

 

 

怪獣が廃墟を練り歩いている。

それも一体じゃない、6体ほどだ。

200mほどある怪獣たちはお互いの喉笛を狙い食い合っている。

 

 

 

シンジは彼らにみつからないように、息をひそめた。

そして、全神経を集中させた。

 

 

 

「‥‥‥ヤツをみつけよう。」

 

 

 

そして、ウルトラマンに変身した。

ウルトラマンは宙に浮かび上がると、大気圏を越えて月の近くまで浮かび上がった。

さらにそこから、全身の精神を統一させ、探した。

ゴジラの王、エルダーゴジラを…。

 

 

 

シンジはその時、凄まじい憎悪のエネルギーとオーラを感じ取った。

思わず、そのオーラに押しつぶされそうになった。

 

 

『ウッ…!!!』

 

 

凄い憎悪と憤怒の負の精神エネルギーを感じる。

怒っているんだ。

子供を奪われたこと、住んでいた場所が荒らされたこと…。

 

 

『まずいな、こいつ強すぎる…』

 

 

憎悪と憤怒のエネルギーだけで恐らく地球はおろか、次元の一つ破壊することも可能だ。

だが、コイツは計算高い。

ありったけの憎悪のエネルギーをコントロールして、この地球や次元を破壊しない程度で破壊と虐殺を行っている。

まさに、合理的で計算高い、そして執念深い極めて残忍な存在だ。

 

 

 

そして、シンジは気が付いた。

地球の形が変わっていたことに、ユーラシア大陸は消滅していた。

かろうじでのこっていたアフリカ大陸もその一部が欠けていたり水没していた。

南米も同様だった。

北アメリカ大陸は東海岸が消滅していた。

南極は恐らくゴジラにより融解させられたのだろう、蒸発していた。

 

 

 

『‥‥これが僕がやったことの報いか。』

 

 

 

シンジはため息を深々とついた。

そして、憎悪のエネルギーがたまっている。

北アメリカ大陸へと向かっていった。

気が付いたが、実は日向達のいる場所とエルダーゴジラのいる場所は意外と近いようだった。

ウルトラマンは、地球の守護者は身をねじり、最終決戦の場へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

アメリカ、旧フロリダ地区。

 

 

かつて、その場所は数多くの市街地で溢れていたが今では全てが廃墟となっていた。

その廃墟とガレキの城の中でエルダー・ゴジラはひっそりと待っていた。

彼の周囲には赤いレッドキングの王である怪獣将軍『ジェネラル・レッドキング』と、凄まじい超能力ですべてを操る怪獣参謀『チーフ・ジェロニモン』がいた。

 

 

彼らの周囲に怪獣がわいていた。

彼らは己の本能と欲望のままに食い合い殺し合っていた。

それをエルダー・ゴジラは黙って観ていた。

 

 

彼はウンザリしていた。

ここにきて30年、配下の怪獣どもにヤツを探らせたが私の息子を殺した憎い敵はいない。

どうやら、いなくなったようだ。

だったら、ここにきた意味もない。

憎たらしいこの世界の文明も破壊しつくした。

アイツを殺せば、もうそれだけで十分だ。

エルダー・ゴジラは失望の溜息をついた。

 

 

『ジェロニモンよ、いつまでここにおればよいのだ。私は何年も我が子の仇を待っていた。だがそれは来ないようだ。』

『…ご主人様…。』

『…もしもアイツがこなければ、私は、どうしたらいいのだ。どうすればいい。もしもこの惑星から逃げているのであれば…。』

 

 

ジェロニモンは髪の毛を触りながら主の不憫をともに嘆いた。

エルダー・ゴジラが子供の頃からジェロニモンはともにいた。

彼の父である皇帝のエンペラー・ゴジラにこの幼子の面倒をたくされた。

ジェロニモンの中ではあのかわいい子供のままだ。

 

 

 

『若様』

『これ以上待ってもこないのであれば、我はこの次元もろともメルトダウンを起こし死ぬ。その時、そなただけにはしらせる。そなただけでも生きて、元の次元にもどれ。』

 

 

 

ジェロニモンは困惑した。

このお方は息子を失い、困惑されておられる。

元は、ここの次元にいた知的生命体が行った兵器実験で空いた次元の穴。

それ以上の威力を持ち、ここの次元ごと滅する気でいるのか。

 

 

忠実なる酋長は、主を静止した。

 

 

『今更そのようなことを私に求めるのですか…あなた様がメルトダウンで死ぬなら私も死にます』

 

 

その時だった。

チーフ・ジェロニモンは何かに気が付いた。

上空から何かが来る。

ジェロニモンはゴジラの顔をみた。

 

 

 

『おお、主よ。あなたの求めている者が来ました…。』

 

 

 

エルダー・ゴジラも天空をみた。

大気圏外から小さな光がみえた。

そして、それはゆっくりと近づいている。

 

 

 

エルダー・ゴジラは睨むと、雄たけびを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グルォオオオオオオおおおおおおおおおおおンンンああああああああああンンンンンン!!!!

 

 

 

 

攻撃の合図。

すると、地面の奥底から無数の飛行怪獣の群れがやってきた。

それはすさまじいスピードでやってきた。

その姿はワイバーンや西洋の悪魔に似ていた。

デビル・ウォリアーの群れは大気圏を抜け、ウルトラマンの体を雲霞のごとくウルトラマンを覆いつくした。

 

 

 

そして、シンジにはみえた。

大気圏外にいるのに、ゴジラはこちらに気づいていた。

凄まじい探知能力だ。

 

 

 

『!!!!』

 

 

 

だが、シンジは冷静だった。

悪魔のような姿をした空中怪獣たちの群れを凝視すると、全身から巨大な光と衝撃波、念動を放った。

デビル・ウォリアーの群れは一瞬で滅んだ。

大気圏を抜け、やがて、ウルトラマンは地面に降り立った。

 

 

 

 

その様子をエルダー・ゴジラは黙って観ていた。

 

 

シンジはその巨大さに驚いた。

かつて戦った個体とは比較にならない数倍以上の巨体だ。

今のウルトラマンは100mほどあるが、このエルダー・ゴジラはそれ以上の巨体だ。

10倍以上ある。

 

 

 

 

『…』

 

 

シンジはその気迫に押されそうになった。

だが、持ちこたえた。

まだ空中にいるのに、顔がみえている。

ウルトラマン=シンジは、その怪獣たちの暴君の元へ降り立った。

 

 

シンジは恐怖が立ち上がるがわかった。

こいつは、僕よりはるかに強い。

まともにやれば勝てない。

 

 

だが、やるしかない。

アスカの子供たちが、広い世界を観るためにはやるしかないんだ。

 

 

 

『‥‥僕を探していたんだろう。キミの子供を殺している憎い敵。それが僕だ。だから約束してほしい。僕を倒せたら、この地から引き揚げてほしい。』

 

 

 

ウルトラマンは、シンジは言葉を発した。

脇にいた全身を羽毛で覆いつくした怪獣参謀チーフ・ジェロニモンはその声に気が付いたのかゴジラに話していた。

すると、ゴジラは白い瞳孔の無い瞳でウルトラマンを睨んだ。

 

 

 

『ならば、まず下僕を倒してみせよと我が主はおっしゃっておる。』

 

 

 

 

チーフ・ジェロニモンの声とともに、赤い巨大なレッドキングが動いた。

その体は2000m近くある。

その巨大さに、シンジはめまいがしてきた。

 

 

 

ギぃぃいいいいいいいぐああぉ・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

レッドキングの王であるジェネラルは苛立っている。

赤い蛇腹の体が赤く光っている。

目は血のように真っ赤に染めあがっている。

 

 

 

 

 

ぎぃいいいいいいいいいいいいいいがあああああああああああおおおおおおおおおおおおおん!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

ジェネラル・レッドキングは尾を振り上げ、ウルトラマンの頭上めがけて振り下ろした。

100m程度のウルトラマンはその攻撃を避けることができなかった。

ところが、レッドキングの尾が地面にたたきつけられる前にウルトラマンは尾をつかんでいた。

 

 

 

『‥‥確かに前の僕なら君に苦戦していたのかもしれない。だがもう君は相手にならないんだよ。』

 

 

 

 

シンジはそういうと、レッドキングの尾をつかみ空中に持ち上げた。

2000m以上ある体は浮かび上がった。

そして、シンジは怪力のまま放り投げた。

 

 

 

ジェネラル・レッドキングは何が起きているのかわからないまま、空中に浮かんだ。

そして、シンジは素早くスペシウム光線を放った。

ジェネラル・レッドキングの体は貫かれると、爆音とともに砕け散っていった。

 

 

 

 

 

『…次は誰だ。』

 

 

 

 

シンジはゴジラの方を向いた。

彼は余裕の表情だ。

すると、先ほど人間の言葉を発したジェロニモンが近づいてきた。

 

 

 

 

『まずはこの私めが、相手をしてさしあげよう。』

 

 

 

 

顔中に羽毛をはやした怪獣ジェロニモンはほくそ笑むと、赤い目を輝かした。

すると、先ほど殺したデビル・ウォーリアーの群れの死骸をかけ集めていった。

それだけではなく先ほど空中で死んでいったレッドキングの肉片も吸収されて行った。

そして、それは一つの怪獣の姿になった。

巨大なコウモリの翼と鋭いカマを持った怪獣・ディアボロスに。

 

 

 

『…ゆけ!ディアボロス!』

 

 

 

ディアボロスと名前がつけられたそれは素早く動くと、天空に飛び上がった。

そして、音を切るような素早さでシンジに近づいていった。

シンジ、ウルトラマンはその素早さに対応できなかった。

鋭いカマが、シンジ=ウルトラマンの体表を傷つけた。

 

 

 

『うっ…!』

 

 

 

さらにジェロニモンは自らの体についていた羽毛を飛ばすと、その全てを飛ばしながらウルトラマンの体に突き刺していった。

 

 

 

『あ、うぐっ!!!!!』

 

 

 

シンジ=ウルトラマンは悲鳴をあげながら全身に突き刺さる羽毛の槍に苦しんだ。

それに追い打ちをかけるようにディアボロスは攻撃を加え続けていった。

そして、ディアボロスはそのトラのような顔で噛みつき、ウルトラマンを押さえつけた。

 

 

 

『…さあ、これでおしまいだ。』

 

 

 

ジェロニモンは口を開き、エネルギーをためこみ光線を放とうとした。

 

 

 

ごおおおおおおおおおおん!!!!

 

 

 

轟音と地響きが響いた。

地面に大きなクレーターができている。

 

 

 

『やったか。』

 

 

 

ジェロニモンは勝ち誇った顔をしていた。

だが、土煙の中に浮かび上がっていたのはウルトラマンだった。

ディアボロスの首を締め上げるように持っていたウルトラマンは、生きていた。

 

 

 

『な、なんだと!!!!』

 

 

 

ジェロニモンは怯えた。

それを冷酷にみたウルトラマンは、ディアボロスの首を軽く折るとゆっくりと近づいてきた。

ジェロニモンは焦り、巨大な念動を飛ばした。

だが、ウルトラマンはそれ以上の念動を放つとジェロニモンの体を吹き飛ばした。

同様にみていたモブの怪獣たちも吹き飛んだ。

エルダー・ゴジラを覗いては。

 

 

『これで、お前と僕だけだな。』

 

 

 

エルダー・ゴジラは立ちふさがった。

まるで待っていたといわんばかりに、3000m以上ある巨体は唸り声をあげた。

その様子に焦ったジェロニモンや怪獣たちは我さきに逃げ始めた。

 

 

 

エルダー・ゴジラとシンジはお互いににらみ合った。

緊張が周囲を支配している。

まるで地球が戦いを傍観しているかのように、風も止まった。

 

 

 

 

シンジの心臓が高鳴る。

勝負は一瞬だ。

 

 

 

 

彼は全身のエネルギーを込めて、腕に力をためた。

スペシウムのエネルギーが彼の全身を流れている。

ゴジラもわかっているようだ。

それに対抗すべく背びれを青白い光が覆っている。

そして、その時は来た。

 

 

 

 

ゴバあああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

シンジの放ったメガスペシウム光線が放たれた。

エルダー・ゴジラはそれを避けることがなかった。

そして、一瞬でメガスペシウム光線のエネルギーを吸収すると、逆に光線を放った。

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥‥‥‥‥!!!!!!!!!!

 

 

 

轟音がした。

それにあわせ地面が揺れている。

シンジは、ウルトラマンは決意した。

死をもってこいつを倒す。

 

 

 

 

『ミサトさん、ヒカリちゃん…。』

 

 

 

 

死を覚悟したシンジは愛した女性たちの名前を言った。

その次の瞬間、ウルトラマンの体は熱線に貫かれた。

全ては終わった。

 

 

 

エルダー・ゴジラはゆっくりとクレーターに近づいた。

巨大なクレーターの中に、上半身のみがのこったウルトラマンがそこにいた。

 

 

 

『あ、あ…あぐ…あ、ああああ‥‥。』

 

 

激痛がした。

それ以上に吐き気が。

下半身がない。

もう、人間状態に戻っても死しかない。

 

 

でも、これでよかった。

シンジは後悔はしていなかった。

 

 

だが、ゴジラの王は違った。

まだ、生きていたのか。憎い我が子の仇、とってくれよう。

心の中で言ったエルダー・ゴジラはトドメを刺そうと近づいた。

そして、尾でウルトラマンの残った上半身を縛りあげ持ち上げた。

 

 

『とても痛い…、だけど後悔なんかしてない。』

 

 

だが、シンジはその時ニヤリと笑った。

チャンスができた。

 

 

 

そして、二本指を使いゴジラの尾に突き刺した。

その時だった。

シンジの魂はウルトラマンから抜けると、ゴジラの中に入っていった。

 

 

 

そして、始まった。

最終奥義「魂の上書き」が…。

シンジの魂は、ゴジラの中に入り込むと彼自身が経験してきたすべての事をゴジラの脳内に植えつけた。

ゴジラの中に溶けていくシンジの魂は満足そうに言った。

 

 

『僕の勝ちだ』

 

 

ゴジラはその時、よろめいた。

彼はわかった。

その時、シンジが経験してきた全ての事がわかってしまった。

 

 

 

ウルトラマンになってしまったことで、自分を愛してくれた人を失った事。

ゴジラがやってきたことで、家族を失ったこと。

そして、最愛の女が怪獣によって奪われた事。

 

 

 

 

その時、彼はわかった。

全ては我が子の復讐であった。

だが、それはコイツも同じ事。

結局、我々は同族嫌悪でしかなかった。

 

 

 

グゥウウウ…。

 

 

 

唸り声をあげ、ゴジラは魂が抜けきったウルトラマンの残骸をみつめた。

彼は尾の中で縛っていた宿敵を優しく地に置いた。

すると、それは煙のように消えていった。

 

 

 

『ご主人様、大丈夫でしたか。』

 

 

 

ジェロニモンの声が響く。

ゴジラは、彼をみつめた。

 

 

『…我の目的は果たした、今一度戻ろうではないか。故郷へ。』

『‥‥しかし、あなたの父上である皇帝にどう言い訳なさいますのか。』

『いや、よい。我らは、もう充分に破壊した、それでいい。父上もわかってくださる。孫の仇を討てた。それでよいではないか。』

 

 

 

ジェロニモンは黙って主の言葉を受け入れた。

そんな彼をみつめ無言で謝意を示すと、ゴジラは大きな咆哮をあげた。

それは、世界中にいた怪獣たちに響いた。

帰還を意味する咆哮だ。

 

 

怪獣たちは我先に海の中へ飛び込んだ。

天空を待っていた怪獣も同じく続いた。

山の中にいる物も次々に、海へ向かっていった。

 

 

 

 

その頃。

 

偶然地上にいた日向達は、その光景をみていた。

 

 

 

「おい、みろ!」

「怪獣どもが逃げていく!」

「どうしたんだ!?」

 

 

群衆は慌てている。

日向は黙っていた。

そして、手紙とシンジから託されたミサトのペンダントを握りしめた。

 

 

 

「シンジ君…。」

 

 

 

手紙の中にはこう書かれていた。

 

 

 

『日向さん、お世話になりました。僕はゴジラの倒し方がわかりました。ヤツを肉体的に倒すのではなく、ヤツの心の中で一つの感情として生きていく方法でヤツを倒します。そして、ヤツの中に後悔の感情を産みだしてみます。ミサトさんのペンダントをあなたにあげます。彼女の生きていこうという意思とあなたが受け継いでください…。それとアスカと子供たちのことをよろしくお願いします。お元気で、さようなら。』

 

 

 

日向は手紙を握った。

そして、目から涙を浮かべていた。

 

 

 

「・・・シンジ君、ありがとう。」

 

 

 

怪獣たちは海へと消えていく。

エルダー・ゴジラはジェロニモンに先にいかした。

エルダー・ゴジラの心の中で、シンジは生きていくことにした。

魂の上書きにより、シンジはエルダー・ゴジラの感情の一つとして生きていた。

やがて、全ての怪獣が海の中に消えていくと、エルダー・ゴジラも続いた。

 

 

 

 

日向はそれを見送った。

地上にやってきたアスカたちも続いた。

 

 

 

「じゃあ、もうアイツは…」

「ああ…」

 

 

 

アスカは日向の言葉を聞き、悲しそうに微笑んだ。

そして、胸に抱いた赤子を優しく抱きしめた。

 

 

 

「僕は、彼が命懸けで守ったこの世界で生きていく…。それが彼への恩返しだ。」

「ええ、そうおもいます。私も。」

 

 

 

日向はふと背後をみた。

すると、クレーターの中に小さな花がはえているのがみえた。

そこに、一匹のてんとうむしがいるのがわかった。

てんとうむしは朝焼けに誘い込まれるように飛んでいった。

 

 

日向は驚いた。

まだ虫がいる。

こういったものが生きていけるなら、僕たちだって生きていける。

 

 

朝焼けが日向達を包み込んだ。

それはまるで、人類の長い暗黒の夜が終わりをつげるように優しく彼らを守っていた。

 

 

「これからが大変だぞ」

「ええ、わかっています」

 

 

 

アスカと日向は仲間たちの待っている場所へと向かっていった。

 

 

 

 

その頃

 

 

その朝日は、ニュージーランドにあった小島にも届いた。

そこには誰も知らない洞木ヒカリの墓があった。

シンジが死んだ後のクレーターにいたものと同じ種のてんとうむしがそこにいた。

やがて、このメスのてんとうむしもまた朝日に向かい飛んでいった。

 

 

 

 

 

朝焼けは廃墟を包み、世界を包んでいった。

地球はまだ生きている。

シンジたちが戦い守った世界は消えることなく続いている。

 

 

 

 

 

 

 

fin

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございました。
ラストのてんとう虫は一応シンジとヒカリの魂の一部が転生したものだと思ってくれればありがたいです。
つまり、最終的に二人は転生して今度こそ夫婦になるといった感じです
12月31日に、登場人物・設定紹介を書いて連載完了にします


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