世界中でニュースが駆け巡った。
同日に二体、怪獣を倒す存在が確認されたからだ。
インドにはウルトラマン、そしてアフリカには巨大ロボットが現れた。
それから数日後。
シンジは、テレビをみていた。
金色のロボットが、ゴリラ型怪獣と戦う映像が映っていた。
シンジでさえ苦戦したあのゴリラ型がまるで赤子の手をひねるようにあっさりと倒された。
このことにシンジはほっとした。
これでもう怪獣と戦う必要がない。
しかしその後が問題だった。
その後にウルトラマンが、あの人とカニの混ざった怪獣を倒す映像が流れた。
倒す部分はモザイクが施されていた。
映像が終わると、テレビの司会者が話しかけていた。
「というわけで…怪獣を倒す存在が二体もでてきたわけですが、皆さんどう思いますか。」
「いやー、怖いですね特に最後のやつ。なんか人に近いものをあんなに叩きのめすなんて。」
メインのコメンテーターである元議員の男が言った言葉に他のコメンテーターもうなづいていた。
まるでウルトラマン=シンジが人類の敵といわんばかりだ。
「何だよこいつら。」
シンジは、少しむかっとした。
みんなのためにやっているのに、なんでこんな批判をされなきゃいけないんだ。
すると司会者は待ってましたといわんばかりに、話し始めた。
「そんな皆さんに見てほしいビデオがあるんです、こちらをどうぞ。」
するとモニターはある男の映像をうつした。
どうやら外国人のようだ。
端正な顔立ちをしているが髪の毛が一切ないスキンヘッドの白人の男だ、年齢は30代前後だろう。
シンジはこの男を知っていた。
レックス・ルーサー。
現在の世界で最も大金持ちの男だ。
なぜこんなところに。
溢れる気品に、日本人のインタビュアーは少々押されているようだった。
「まず最初に皆様にもうしあげたいことがあります。我々は数年前の怪獣襲撃の際にあなた方の国と一方的に同盟を解除しました、この事をアメリカ人を代表してお詫び申し上げます。」
ルーサーはインタビュアーがしゃべる前に丁寧な日本語で話した。
「日本語がお上手なんですね。」
「子供の頃、家庭教師が日本人だったんです。なので今回はなんでもご質問いただければ助かります。」
ルーサーは落ち着いた表情だった。
まるで、相手を対等に扱うようだ。
白人にありがちな驕り高ぶりはない。
「子供の頃ですか。」
「その頃は髪もフサフサでした。」
ルーサーは真剣な表情で、自虐を言った。
シンジは驚いた。
こういうジョークを事前に言う人間に、日本人は弱い。
日本人の心理をよく理解している。
インタビュアーは思わず吹き出していた。
そして、質問を始めた。
「あのルーサーさん、あの金色のロボットを制作されているのがルーサーさんと聞きましたが、一体何のために作ったのでしょうか。」
ルーサーはこの質問を待っていたと言わんばかりに微笑んだ。
「このプロジェクトに5年の歳月をかけました。まず私たちがあのロボットを作ったのは、最初に米国と同盟国に住んでいる人々の安全保障のためです。あのロボットは、NATO関係国及び日本・フィリピン・台湾のアジア同盟諸国の皆様に、怪獣対策・及び国土防衛のために無料で提供する所存でございます。」
インタビュアーは驚いていた。
「無料で、ですか!?」
「…はい、今後量産体制に入り、現在確認されているだけで6体の建設が完了しております。無論、日本と中国の戦争にも貸し出しをいたします。レンドアンドリリースではありません。料金はいただきません。」
シンジも驚いた。
ここまでやるのか?
「えーっと、ところで話が変わるのですが…例の銀色の巨人についてどうおもわれますか?」
すると、ルーサーの白目は大きくなりギロリと睨みつけるような表情になった。
シンジはテレビの前で凍り付いた。
まるで、シンジを睨んでいるようだ。
インタビュアーも笑顔が凍り付いていた。
迫力のある目だ。
ルーサーは口をゆっくり開いた。
「あの怪物は、一体なんなのでしょうか。まずそこからですよ。」
シンジは口を想わず覆った。
そうか、これはよくない感情を抱いているんだ。
「中国ロシアが生み出した人口兵器なのかもしれない。地球外の生命体かもしれない。怪獣を倒しているが、果たして人類の味方なのか?敵かもしれない。」
インタビュアーの男は質問を重ねた。
「しかし、一部世論ではアレは人類の味方ではないかという意見がでています。」
ルーサーは、首を縦に振った。
だが、その目は明らかに同意をしていないようにみえた。
「確かにそうかもしれません。しかし、そんなものに世界を任せてよいのですか?現にあの巨人の活躍の反面、市街地への被害も増えています。」
シンジは手で口を覆った。
そうだ、見えないところで誰かが死んでいるかもしれない。
「だから、このロボット『キングジョー』の製作を早急にしました。私共の戦いもおそらく市街地への被害がでるでしょう。私はあの巨人と違い、皆様の住んでいる地域への被害が出た場合は弁償いたします。」
ルーサーはインタビュアーの目をみつめて言った。
「地球は我々人類の住んでいる家です。家を守るのは家に住む我々しかいませんよ。」
シンジは圧倒された。
この男の言うとおりだ。
僕はウルトラマンなのに、何もわかっていない。
彼らは何なのか、どこから来たのか。
もしかしたら利用されているのは僕じゃないのか。
シンジはそんな疑心暗鬼の炎に身が焼ける気でいた。
『こんな低俗な存在の言う事を真に受ける必要はない。』
声だ。
あの巨人の声。
「いつからいたんだ。」
『君のことは24時間見張っている。』
「…だったら本当の事を教えてくれ。」
『いいだろう、眼を閉じろ。』
シンジは素直に目を閉じた。
『宇宙は闇とともに始まった。そして光が生み出された。』
その時、シンジの前に光が差し込んだ。
思わず彼は目を開きそうになったが、できなかった。
大きな光が生まれた後、少数の光に分裂していった。
『この光は、やがて宇宙の生命の源となり多種多様な多元世界を生み出していった。その全てを把握することは我々もできない。なぜなら無限に広がっているからだ。』
ふと、二つの光がみえてきた。
その一つは人が、もう一つは怪獣たちがみえた。
『みえているように、怪獣の世界と人間の世界…それぞれは分裂して存在していた。』
つまり怪獣は、別の次元の世界の存在なのか。
シンジは思わず言葉を心の中で思いついた。
すると、声の主は返した。
『その通りだ、怪獣たちは別の次元の地球からやってきた。』
始めて声の主とコミュニケーションができたかもしれない。
声の主は話をつづけた。
『我々の話にうつろう。我々はこの次元が誕生するとともに生まれた、それ以前はどうだったのかわからないが君たちと同じ姿をしていたと言われている。』
すると、ウルトラマンたちがみえてきた。
彼らは他の宇宙人たちとともに話し合いをしていた。
『かつてこの宇宙には多種多様な知的生命体がいた、だが…ある時悲劇が起きた。』
次に見えたのは大きな怪獣の群れが宇宙人たちを蹂躙しウルトラマンたちを追い詰めている姿だった。
彼らは囲まれ、次から次に死んでいった。
『怪獣たちの次元と我々の次元が繋がったのだ。怪獣たちは我々の仲間を多く殺した。だがその中で我々の英雄が現れた。』
ウルトラマンの中でたった一人生き残ったウルトラマンはそれぞれ手を組むと巨大な光を放った。
そして、怪獣たちは消え去っていった。
『この男がのちの私たちの王となる存在だ。彼は宇宙で生き残った生き残りを集め
銀河連邦を結成した。その中で我々M78星雲、またの名前を光の国の人間が他の宇宙人を守護することとなったのだ。我々は誓った、もう二度と世界を怪獣の次元と一つにしないと。』
でも、僕たちの地球に怪獣が来た。
『そうだ、私は他の者たちと話をしていた。誰かがこの次元を歪めている、だとすれば地球だけの問題ではない。否、全ての宇宙・全ての次元を巻き込んだ大きな戦争が生まれる。我々はそれを止めるのが目的だ。ウルトラマンとは、宇宙全体の安定と治安、平和秩序を守るために結成された騎士の集まりなのだ。』
シンジは目を覚ました。
まるで夢を見ていたみたいだ。
だが、なぜか夢ではないとわかる。
『そうだ、シンジ夢ではない。』
「ようやくわかったよ、でもなぜ僕なんだ。」
シンジは声の主に聞いてみた。
『お前は信用ができる、だからだ。欲深いものを選べば、それ相当の結果しかない。だから私たちは君を選んだ。』
シンジは顎を抑えた。
「わかった。じゃあ…聞かせてくれ。」
『なんだ?』
「この世界にはこの世界のルールがある、僕のやり方で、地球人に僕たちは敵ではないと説明したい。」
その時だった。
シンジに何か第六感が働いた。
怪獣だ。
場所もわかる。
『お前と長い間いすぎたせいだ、私の持つ全ての力がお前の物になりつつある。私の声も残された残留思念ももう消えるだろう。お前のやり方で地球を守れ。ただし約束しろ、その力を決して悪用するな。その力を使い弱いものを守れ。命を無駄に奪うな。この惑星の法秩序に従え。』
シンジは困惑した。
焦り、憤った。
「そんな…まだあなたに教わってないことは山ほどあるのに!!!」
『私は君とあったあの時にもう死んでいるのだ、これも運命だ。さあ行け。本能の声に従うのだ!』
シンジは目を閉じた。
その時体は動いていた。
体は、移動していた。
日本の三重県だ。
山々が生い茂る街に地響きが轟いた。
自衛隊の戦車隊が踏みつぶされている。
その真ん中に大きな怪獣がいた。
太陽がさんさんと輝いていた。
力が高まっていく。
『光は我らの栄養源、昼間は太陽をできる限りあびるのだ。そうすれば強くなる…。』
「ありがとう、名もなきウルトラマンよ。」
『我が名はエヴァ、もう終りの時だ。』
声の主の力が徐々に弱まっていく。
『お前でよかった…最期に会えたのが、お前で…。』
シンジは目をつぶり、変身を始めた。
彼の体は巨人に変身していた。
その数百m先には怪獣テレスドンがいた。
地底奥深くにある次元の裂け目から湧いて出てきたテレスドンは心の奥底から殺戮と破壊を楽しんだ。
同じような怪獣が数体いたが、皆殺しにしてやった。
恐竜のような体に、鉄のような皮膚をしたテレスドンは雄たけびを上げると口から火炎を浴びせた。
「きゃああああああああああああ!!!!」
「助けてえええええ!!!」
小さな者の悲鳴が聞こえる。
愉悦。
目の前にいる森が燃えている。
多くの死を感じる。
これは圧倒的強者の愉しみ。
テレスドンは口先を歪め高笑いをした。
『もっと殺してやる!!!もっと壊してやる!!!泣け叫べ!!!!貴様たちの秩序など、我が前ではこの森のように燃え尽きていくだけ!!!ファファファファファ!!!!』
テレスドンは高速道路に人々が倒れているのがみえた。
怪我人を支え避難していたのだろう。
こいつはちょうどいい。
彼は大きな口を開けると、先ほどの火炎を浴びせた。
『死ィ~~~~~ねッ!!!!!!!!』
だが、その瞬間だった。
銀色の巨人が姿を出した。
巨人は立ちはだかると炎を全力で受け止め人々を守った。
人々は驚いた。
巨人が人を助けたのだ。
怪獣テレスドンは睨んだ。
そして咆哮した。
『次の獲物はお前だ!!!』
テレスドンは1億トンの物を簡単に破壊する尾を振るうと巨人の首に見舞った。
どんな怪獣もこの尾で首が砕ける。
ただ一つ違うのは怪獣の王族のみ。
…だったはず。
巨人ウルトラマンはその尾を片手で受け止めた。
テレスドンは困惑した。
ウルトラマンに変身したシンジはわかった。
自分は強くなっている。
以前では勝てなかった相手に勝てている。
そして、尾をつかむと怪力を振るい全身を回転させた。
グアアあああああああッ!!!!!!!
テレスドンは悲鳴をあげた。
そして、ウルトラマンは全力でテレスドンを放り投げた。
地面に轟音とともに着地したテレスドンは、迫ってくるウルトラマンに向けて火炎を吐いた。
だが、ウルトラマンはその炎を吸収した。
「以前にお前と同じく火炎を吐く怪獣を観たが、お前などよりはるかに強かったぞ。」
そして、全身のエネルギーをためこみ大きな光の剣を作った。
両手でそれをつかむとテレスドンの首にめがけて一撃を放った。
それは一瞬だった。
ざく。
小さい音が響いた。
テレスドン、哀れな地底怪獣の首は両断すると、血が吹き飛び地面に倒れた。
ウルトラマンの銀色の肌に赤い血しぶきがかかった。
彼は周囲を観た。
テレスドンと戦闘した軍人、避難民たちは彼を恐怖の目でみている。
ウルトラマン=シンジはその時、指をデコにあてた。
そして、彼らの心に話しかけた。
それはその場にいる全ての人間に聞こえ届いた。
否、世界中の人々がそれを聞いた。
名古屋にいる洞木ヒカリ、アメリカにいるルーサー。
そしてキングジョーの中で待機していたアスカ。
全ての人間に。
『世界中の皆さん、私はウルトラマンです。私は敵ではありません。私の破壊により皆様を大いに悲しみ狂わせたことについては謝罪をいたします。ですが、繰り返しますが、私は敵ではありません。あなた方が怪獣に襲われるとき、私は人類をお助けします。私に異論がある人・敵視する人々、それはわかっています。これだけはわかってください。私はあなた方を殺すためにいるわけではないのです。』
その時だった。
ケガをした大型犬がやってきた。
ウルトラマンは一瞥すると、その犬を掌にのせた。
その時、また声が聞こえた。
『マックス!!どこへ行ったの!!』
少女の声だ。
この犬がマックスというのだろう。
ウルトラマンは形状を人間大に変化させると、少女の前にやってきた。
腕にはマックスがいる。
「マックス!!!!」
少女は叫ぶと、ウルトラマンの近くにやってきた。
彼はそれを少女に手渡した。
周囲の人々は、ウルトラマンの声を聴きながらその信じられない行為をみつめていた。
少女は呆然としながらも、感謝を述べた。
『私に敵意はありません…』
ウルトラマンは去っていった。
光のように消えていった。
その頃
アメリカにいるルーサーにもウルトラマンの声は聞こえた。
彼は恥辱であった。
遠い島国の猿どものインタビューに答えてやったらこれだ。
すっかり連中の心は、ウルトラマンに奪われた。
SNSのトレンド1位はウルトラマン。
二位はキングジョー。
三位がルーサーだった。
ルーサーは耐えられなかった。
この世界の全てで1位を獲得できなければ意味がない。
少なくともルーサーはそういう風に父ライオネルから教えられた。
ルーサーは握りこぶしを作った。
黙って怒りをこらえていた。
アスカはそれを冷めた目でみていた。
ルーサーは怒りで震えていたが、アスカは逆だった。
冷静な顔、自信満々の顔だった。
ルーサーはアスカの視線に気が付くとネクタイをなおし、表情を変えた。
「ミス・ラングレー。キミにはわかるだろう。僕たちがどれほどの時間をかけて、この計画をたてていたか。」
「ええ。」
「この世界は誰が守る?」
アスカにはルーサーの求める答えがわかっていた。
「この世界の守護者はたった一人、この私よ。」
「…そうだ、あの巨人は我々の敵だ。ヤツを殺してやるんだ。いいな。キミは特別だ。唯一無二だ。キミ以外はいないんだ。ヤツはまがい物。まがい物は消えなくてはいけない。」
彼女も戦う時が来たのだ。
アスカはルーサーの言葉に黙って首を振った。
次回、アスカvsシンジ
ご期待ください