シン・ウルトラマンエヴァ   作:井上ああああ

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今回は怪獣バトルありません。



第八話「父の闇」

昼休憩、シンジは屋上でたたずんでいた。

そこでシンジはある女を待っていた。

 

 

「碇くーん。」

「?ああ、ヒカリちゃん。」

 

ヒカリは顔を赤くした。

どうやらヒカリちゃんと呼ばれるのは恥ずかしいらしい。

だが、もう付き合っているんだから苗字で呼ぶのも何か違うと、シンジは考えていた。

 

「ちょ、やめてよ!碇くんったら!恥ずかしいからそのちゃん付けやめて!」

 

シンジとヒカリはデートの一件以降、正式に付き合うこととなった。

他の生徒にバレてはいけないので、あまり大っぴらに言うことはなかったが、周囲のほとんどは気が付いていた。

今もこうやって昼休憩に弁当を食べることにしている。

 

 

「…ヒカリちゃん。」

「なあに」

 

だが、彼には気がかりがあった。

人間型怪獣の思考を読んだところ、父の面影が思いついた。

なぜ父の顔が思い浮かんだのか。

 

よくよく考えれば、シンジは父について何も知らなかった。

もしも人間を怪獣にする実験に父が関わっているとすれば…。

 

シンジは決意した。

父のことをよく知っている人は一人しかいない。

 

 

「ちょっと学校終わったら…一緒にあってほしい人がいるんだ。」

「え?何…。家族に紹介?だとしたらまだ早すぎる…。」

「えーっと、そうじゃなくて…。」

 

 

シンジは頭をポリポリと掻いた。

 

 

「…キミも知ってるだろ、僕の秘密。」

 

ヒカリはその時思い出した。

 

「あ、そう…ああ、そうかあなたが、ウルトラマ」

「ッ~~~~~~~ッ!!!だ、誰かに聞かれたくないから声に出すのはやめてよ!」

「あら、ごめんなさい。」

 

なんだか、意外とヒカリちゃんは抜けているところの多い娘だな。

こうしている前はもっときっちりした性格だと思っていたけど…。

シンジはそう思いながら彼女に聞いてみた。

 

「人と怪獣のハイブリットが生み出されている。これは、見過ごしておけない。前にやってきた怪獣はヒトが怪獣化したものだった。恐らく僕はこれは、誰かが人を怪獣に変えていると思っている。それを知っている人に話を聞きたいんだ。」

 

 

シンジは父の仕事はよくわからなかった。

いわゆる研究職だとは知っていた。

だが、何の研究所なのかよくわからなかった。

母ともそこであったらしい。

母がまだ生きていた時、何度も家に来た同僚がいた。

 

 

冬月コウゾウ。

現在、第三帝都大学の生物学教授をしている。

第三帝都大学はシンジの住む愛知のはずれにある。

彼なら何かを知っている。

 

 

シンジは決意した。

父が何かを隠しているなら、それを暴く。

それが息子の役目でもあるから。

 

 

「…碇君には碇君なりの考えがあるんだね。凄い、私も碇君みたいに強くなりたい。」

「僕は強くないよ。」

「いいえ、強いわ。」

 

 

ヒカリはシンジの頬に触れた。

シンジはそれをジッとみつめた。

 

 

そうだ、ミサトさん。

彼女は強い女性だった、けど僕がこうやってジッとみていると彼女は凄くうれしそうな顔をしていた。

 

 

「…見ないで、照れちゃう」

「もっと照れさせてたい。ヒカリちゃんが照れるところかわいいから。」

「碇君ったら…」

 

 

すると、どこからか咳払いが聞こえた。

シンジとヒカリは慌てて離れた。

 

 

「あのーお二人さん。」

 

シンジのクラスにいるケンスケだ。

 

「相田君!?」

「…いや、その、もうそろそろ昼休憩終わるから帰ったほうがいいんじゃないかな。」

 

 

二人は離れると急いで弁当をたべた。

そして、学校での1日を終えた。

シンジとヒカリはその学校が終わったあと、すぐに第三帝都大学へと向かっていった。

 

電車ですぐにいけた。

電車の中のモニターではネットニュースが流れていた。

そこではあのレックス・ルーサーがうつっていた。

 

 

恐らくどこかの講演に参加したものだと思われる。

ルーサーは発言をしていた。

 

 

「相次ぐ怪獣被害、我々は得体のしれない巨人に人類の安全保障を任せてよいのですか?人類の問題は人類でなんとかするべきです。あの巨人は果たして正義なのでしょうか。私は疑問に感じます。」

 

 

ルーサーはウルトラマンを批判していた。

 

 

「何よりもあの巨人は不気味ですしね。所詮怪物なんですよ。」

 

 

会場はどっと湧いた。

笑い声とあざけりの声が響いた。

シンジは心がきしんでいった。

心臓が何かに縛り付けらるような痛さ…。

シンジは電車のつり革を強く握った。

 

その時だった。

 

 

「碇君。」

 

 

ヒカリの声だ。

彼女はシンジの背中に優しく抱きついている。

彼女の肌の冷たさが学ランの上着を通して伝わってくる。

 

 

「私は、なにがあっても、あなたの味方。」

 

 

シンジの心を縛り付けていた痛いナニカがほころんでいった。

自身の背中に巻き付くヒカリの腕をシンジは優しく触った。

そうだ、僕には彼女がいる。

彼女と一緒なら、どこにもいける。

 

 

シンジはその時気が付いた。

駅に到着した。

この大学に冬月はいる。

 

 

シンジはヒカリと手をつないだ。

あまりにも自然な勢いだった。

ヒカリは思わずシンジの思いがけない行動にさらに心が跳ねるような感触がした。

 

 

 

「…!」

 

 

ヒカリは顔を赤くした。

シンジはヒカリの手をやさしくひきながら、大学の門に入っていった。

そこで二人は学生証と名前と電話番号とかくと、門の中へ入っていった。

 

 

そこでシンジは、女学生の一人に話しかけた。

 

 

「すいません、冬月教授のゼミ室はどこですか?」

「あっちにあるわよ?あなた、受験生。」

「え?あ、そうです。」

「かわいい顔してるわねー、お姉さんと遊ぶ?」

 

 

ヒカリはあっけにとられた。

彼女いる前に口説く?普通?

だが、シンジの対応はあっさりとしていた。

 

 

「いえ、結構。ありがとうございました。」

 

 

シンジはヒカリを連れると、女学生の前から去った。

ヒカリはシンジの思いがけない男らしさに胸がさらにいっぱいになりそうだった。

 

 

「碇君…。」

「さあ、行こう。」

 

 

気にしていないみたいだ。

なんだか、中学時代の彼と違う。

落ち着いた大人の男という感じだ。

気が付くと二人は『冬月』という名前が書かれていた。

ここがそうか。

 

 

「冬月、間違いないここだ。」

 

 

シンジはそう言った。

ヒカリもなぜかドキドキしている。

シンジはドアをノックした。

 

 

「はい」

 

 

この声。

間違いない冬月さんだ。

声の主はドアを開けた。

そこには厳しそうな顔をした背の高い老人が立っていた。

老人は驚きのあまり震えあがっていた。

 

 

「き、君は!」

「…お久しぶりです、碇シンジです。」

「わ、私は洞木ヒカリです。」

 

 

冬月はシンジをみた。

そっくりだ。

あのユイ君に、だがそれ以上にこの子の父に似た男らしい風貌になっている。

そうか、もう16歳ほどだ。

 

 

「わかった、はいりなさい。」

 

 

研究室に入った。

本だなには本がきっちり並んでいる。

シンジは冬月に開いた席に座るように指示された。

 

 

「…何の用だね。」

「僕の父が何をしていたのか教えていただけますか?」

「キミの父の何か?」

「父と母の仕事について、その全てを教えてください。」

 

 

冬月は、シンジの目をみた。

真っすぐな目をしていた。

だが、そんな人間は生徒にも多くいる。

 

 

「君たちが、まだ知るには早いよ。」

「…え?」

「この世には知ってはいけないことがある。私はこの事を墓の中まで隠すつもりだ。」

 

 

何も話す気はないか。

シンジは決意した。

 

 

「わかりました、あなたには教えましょう。」

 

 

シンジは立ち上がった。

ヒカリは止めようとした。

 

 

「碇君、いいの?」

「いいんだ…。」

 

 

冬月は首を傾げた。

何だ…。

 

 

シンジはその時、光で体を覆った。

その眩い光の前に冬月もヒカリも顔を覆った。

そこにはいた。

ウルトラマンだ。

 

 

「………ッ!????」

 

 

冬月はのけぞっていた。

 

 

「まさか、まさか…き、君が!!!!君がウルトラマンッ!?」

 

 

シンジはウルトラマンのまま首を縦に振った。

冬月は面食らった。

 

 

「…そうか、そうか…キミがウルトラマンだったのか!!!!」

 

 

冬月の反応を見ると、シンジは変身形態を解除した。

元のシンジに戻っていった。

 

 

「僕は先日倒した怪獣が元々は人間だったことを知った。そこに父が絡んでいるのも、一体何が起きていたのか教えてくれますか。」

 

 

冬月は観念したようだ。

 

 

「今から15年以上前のことだ。君が生まれるはるか前の事。この地上波最初の怪獣『ゴジラ』による襲撃を受けた。世界で最初に被害を受けた東京は現在でも立ち入り禁止区域の方が多いほどの放射能汚染を受けた。」

 

 

シンジは腕をつかむ力を強めた。

ゴジラ、最初の怪獣。

 

 

「ミサトさんの父を殺した怪獣、そして僕の父さんも…!!!」

「そう、そのゴジラだ。だがその全ては、それ以上にはるか前に考えられていたある一つの計画がベースとなっていた。人類を別の次元にうつす『ハビダット計画』だ。」

「ハビダット計画?」

 

 

冬月はコーヒーを淹れて飲んだ。

 

 

「…怪獣が地球にくる以前、世界中の一部のエリート層が気付いた。地球は温暖化により、いつかは破滅する。地球は住めなくなる。そこで考え付いたんだ。この世界に似た別の次元に人類が移動することを。…しかし現地を調査する上で何かに気が付いた。それが怪獣だ。」

 

 

ヒカリは手を口に当てた。

 

 

「え?!まさか…怪獣は?別の地球から来たの。」

「その通り、多元世界の先にある別の宇宙の地球。私も詳しくは知らないが、そこで怪獣がいた。当然そんな危険な生物ばかりでは地球は住めたものではない。そこで世界中のエリート層は考えた。爆破して皆殺しにしようと。だが中々死ななかった。その結果、次元に亀裂が生じ怪獣がやってきたのだ。」

 

 

冬月は入れたコーヒーカップが震えはじめた。

 

 

「私と君の父である六分儀ゲンドウそして、母である碇ユイは、ある国際資本グループの援助の元、怪獣対策研究チームを開いた。当初は怪獣の弱点を探るはずだったが、相手の要求は暴走していった。それは怪獣と人類のハイブリットだ。彼らは世界を救済するよりも、自身の利益を優先するようになった。何よりも売れたんだ。その技術は…。」

 

 

シンジはようやくわかった。

父は、怪獣と人類のハイブリットを生み出していた。

ヒカリは口を覆った。

 

 

「そんな…、でもそんなものを誰が欲しがるの?」

 

 

冬月はため息をついた。

 

 

「欲しがる、世界中がな。世界の平和よりも混沌を求める人間は実は多い。兵器としては単純だ。小型の怪獣を植えこみ、人間と同化させる、そしてあるタイミングで怪獣に変える。中国は一部寄生体を利用し寄生して人間を怪獣化させていたが、私たちは違った。人間を怪獣に変えていた。」

「…!」

 

 

中国の寄生体。

ああ、そうだ。

 

 

シンジの心がざわついた。

彼は口を手で覆った。

ミサトさんを襲ったやつだ。

それと同等の存在を父は産んでいたんだ。

 

 

冬月は顔を手で覆った。

 

 

「私は怖かった。君の母も恐れていた。だが、止める事はできなかった。私たちではどうにもできない圧倒的な人間がいた。君の父も母も私も、ヤツを恐れていたんだ。私は途中でやめたが、君の父親は抜けられなかった。それが全てだ。」

 

 

 

冬月の目には涙が浮かんでいた。

そして、頭を抱えていた。

 

 

「…そして、ユイ君は…キミの母親は…。」

「…僕の母がどうしたんですか。」

「自殺した。」

 

 

 

「…!?」

 

 

そんな馬鹿なはずがない。

母さんは病気で死んだ。

自殺じゃない。

 

 

その時、シンジの体に力が抜けた。

 

 

「碇君!!!」

 

ヒカリはそれを何とか支えようとした。

冬月は話をつづけた。

 

 

「表向きは病死だったが、実は自殺だったんだ…。いうことはできなかった。だがいえるかッ!!!!私…俺だってユイ君が好きだった。なのに黙っているしかできなかったんだ!!!」

 

 

ヒカリは目の間にいる老人が哀れに見えた。

きっとこの人には隠していることが多くあった。

その重みはきっとこの人を今でも押し付けている。

ヒカリはそのように考えると、シンジを支えると、立ち上げた。

 

 

「…母さんは自殺だったんですか。」

「ああ、そうだ。聞きたいことはないだろ!?もういいだろう、帰ってくれ!!!」

 

 

冬月は感情をむき出しにした。

 

 

「…わかりました、ありがとうございました。」

 

 

シンジは俯きながら言った。

ヒカリとシンジはとぼとぼと、研究室を後にした。

その時だった。

 

 

「待てッ!!!」

 

 

シンジは振り向いた。

 

 

「…赤木ナオコという女を当たれ、ヤツは俺よりも君の父と長く接していた。ヤツは俺より全てを知っている。誰が黒幕なのかも、ヤツなら知っている。」

 

 

冬月は力なくそう言った。

シンジは、小さく再び「ありがとう」というと、その場をあとにした。

そして、二人は大学をあとにした。

電車に乗り、元の駅に戻っていった。

 

 

電車から降りると…。

周囲はすっかり暗くなっていた。

 

 

 

「うわあ、こんな時間だね。」

「ごめんね、ヒカリちゃんこんなことに巻き込んで…。」

「いいのよ、私嬉しいから。碇君のこと知れて。もっともっと碇君とそばにいたい。あらし、それ幸せだから。」

 

 

ヒカリは思わず言った。

その時だった。

シンジは月明りにふけるヒカリを観て、心が癒された。

そして、彼女の手を取ると、唇を奪った。

 

 

 

「・・・・・・っ!!!!」

 

 

 

シンジは首を横に振った。

激しくキスをした。

ヒカリはおもわず、されるがままだった。

シンジはヒカリの口から離れると言った。

 

 

 

「キミだけは守る。」

「碇君…!」

「…ヒカリちゃん。」

「私、私…実は今日家に誰もいないの。妹とお姉ちゃんはおばさんの家に行って。私、実は…。」

 

 

シンジはニヤリと笑った。

ヒカリはその微笑みに思わずドキドキと胸が高鳴っていった。

 

 

 

 

 

 

 

その夜だった。

碇シンジに全てを話した冬月。

まるで抜け殻のように放心状態になっていった。

 

 

ドアが開いた。

 

 

 

「…お前か、私を殺したいなら殺すがいい。もう好きにしろ。だが約束しろ。あの少年には手を出すな!!!!」

 

 

 

男はサイレンサーをつけた銃を向けた。

男は薄笑いを浮かべると聞いてきた。

 

 

 

「先生、一つだけ聞いておこう。月夜の夜に悪魔と踊ったことはあるか?」

「ない!」

 

 

パァン!

 

 

銃声は響いた。

冬月だったそれは、惚けなく倒れた。

血は流れていった。

川のように。

 

 

 

その中を男は鼻歌を歌いながら、歩いていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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