朝が来た。
シンジは目を覚ました。
「…朝か。」
布団の横には洞木ヒカリがいる。
彼女は生まれたままの姿になり、眠っていた。
昨日初めて彼女を抱いた。
ミサトさんとは違う初々しい若さが溢れていた。
シンジは首にかけた十字架のクロスペンダントを握りしめた。
「…。」
どこかでミサトがみているだろうか。
シンジはペンダントを握りしめた。
ミサトはこんな自分を観たらどう思うだろう。
悲しむ?怒る?それとも自分ではない同年代の娘と関係を結んだことを喜ぶか?
シンジは、そんな風に思いを張り巡らせた。
また、人を好きになれた。
シンジは嬉しかった。
「すう…すう…」
ヒカリは寝息をたてている。
おぼこい表情が本当にかわいい。
その時だった。
スマホで告知がきていた。
「…なんだ?」
シンジはスマホを確認した。
『大学教授、殺害される。殺されたのは冬月コウゾウ(62)…』
冬月コウゾウ。
昨日僕たちが尋ねた教授だ。
シンジは震えた。
「まさか…」
すると、奥から音を立てて下着を着たままの、ヒカリが近づいてきていた。
「あ‥碇君起きてたの?」
「あ、ああ‥」
ヒカリはシンジの背中に覆いかぶさるように倒れてきた。
ミサトさんがよくやっていたことだ。
「…なーにみてるの?」
「…僕と君が昨日訪ねにいった。先生が殺されたんだ。」
「!?ええ、なんで!?」
ヒカリは驚くとシンジから離れた。
「…わからない。ごめんよ、君をこんなことに巻き込んで。」
シンジは申し訳なさそうに言った。
ヒカリはそんなシンジの背中を優しく触れた。
「…いいのよ、私、あなたを愛してるから。あなたの苦しみを一緒に共有できるなんて…すごくいい事だわ。」
「…ヒカリちゃん。」
シンジはヒカリを抱き寄せた。
そして、強く強く抱いた。
「…キミだけは何があっても守る。」
「それ、昨日も聞いたけど。」
「毎日言う。」
ヒカリはシンジの胸の中で顔を赤くした。
シンジの胸の鼓動が聞こえる。
まだ少年だ。
こんな若者に、世界の命運がたくされている。
「…赤木ナオコ。」
ヒカリはだしぬけに言った。
「?」
「赤木ナオコを探せってあの人が言ってたよね。」
シンジも思い出した。
冬月さんいわく、赤木ナオコは父の部下だった。
彼女だったら、怪獣と人間をかけあわせている悪を知っているのかもしれない。
「…赤木ナオコか。」
もしかしたら、手遅れかもしれない。
だが、時間が許される限り探す必要がある。
二人は急いで服を着ると、ヒカリのパソコンを開いた。
「…赤木ナオコ」
彼は検索すると、一人の名前が出てきた。
『赤木ナオコ、19XX年生まれ。生物学・電子工学界の第一人者、世界的コンピューターを発明。アメリカの多国籍企業にて勤務。』
シンジは画像をみた。
顔に見覚えがあった。
幼少時に顔をみたことがある。
「間違いない、この人だ。」
「…でも、どこに住んでいるのかしら。」
「…わからない。」
シンジは頭を張り巡らせた。
その時、一つのことを思いついた。
「父さんには顧問弁護士がいた。その人に聞けば何かわかるかもしれない。」
「…その人の所にいくのね?」
「ああ!君もついていくか?」
「勿論よ!」
二人は部屋を後にすると、靴を履き外に出た。
誰もいない銛に移動するとシンジはヒカリの手をつかんだ。
そして、二人は一瞬で大きな光に包まれた。
気が付くと、二人は団地から市街地に移動していた。
「…!!!!え?凄い!私たち…一瞬で」
ヒカリは自分の目の前で起きたことが理解できないでいた。
シンジは冷静だった。
「ここだよ、成歩堂法律事務所。」
ヒカリはふとみた。
成歩堂法律事務所と書いている。
シンジとヒカリは事務所に向かっていった。
事務所には後ろ髪をギザギザにした青年がいた。
「はい、成歩堂法律事務所です。何か用かな?」
「えーっとあの、僕碇ゲンドウの息子なんですけど。」
「ああ、君がシンジ君。財産のことでたびたび書類は送ってたよね、確か…で、何の用かな?」
「お父さんの同僚について知りたいんですが…。」
弁護士の男は首をかしげていた。
「うーん、お父さんとは2・3回しかあったことないし、仕事もどんなことをしているかよくわからないからな…。」
弁護士の目は嘘をついているようにみえなかった。
「…父さんの同僚だった赤木って人を探してるんです。」
「どんな理由でかな?」
「父さんが何をやっていたのか知りたくて。」
嘘はついていない。
シンジは確信した。
「…そうか、うーん‥どうだったかな。あ!思い出した!赤木さんだよね!僕もあったことがあるよ!お父さんの仕事を引き継いでいる人だ。ここに名刺がある。」
弁護士の男は机の引き出しを開けると、一つの名刺を取り出した。
そこには名前が書いていた。
『赤木リツコ』
シンジはキョトンとした。
「え、あのすいません。先生。僕たちが探しているのは赤木ナオコさんで…。」
「?その人はナオコさんの娘さんだったはずだよ。」
「娘さん?本人じゃなくて?」
「ああ、ナオコさんはもう引退して、リツコさんが後を継いだんだ。」
シンジは合点がいった。
娘がいたのか。
じゃあその人に聞けば、なんとかなるはずだ。
「ありがとうございます!」
「いや、それほどでもないよ!また何かあったら相談においで!」
弁護士は手を振った。
いい人で助かった。
「よかったわね碇君。」
「うん、さっそくいこう。
「え?まさか…瞬間移動?また?」
「そうだよ。」
ヒカリは少し顔を青くしていた。
どうやら瞬間移動はイヤなようだ。
シンジはふと、名刺をみた。
どうやらここから遠くない場所のようだ。
「…じゃあ、電車で行こうか。」
「うん、ちょっと気持ちが悪いのよねあの瞬間移動」
「なれれば気にならないよ。」
シンジは笑顔を作った。
二人は電車に乗った。
20分と、数件の乗り換えを経てリツコの住所の近くにたどり着いた。
そこからはタクシーを借りて、赤木リツコの元へと向かった。
白い大きな建物がみえた。
『赤木研究所』という表札があった。
どうやら、自宅兼研究所のようだ。
「ここだな。」
「…うん。」
「怖くない?」
「全然!」
ヒカリは笑顔だった。
シンジはその笑顔がたまらなくキュートにみえ、思わず抱きしめそうになった。
だが、心を抑えシンジは赤木研究所のインターホンを押そうとした。
その時だった。
「そこの前にいるの、誰?」
女の声だ。
偉く低い。
シンジはビクっとすると、声をおもわずとがらせた。
まさかカメラがあるとは彼も思わなかった。
「えええ!?ええええっと、ええーっと碇です!」
声の主は沈黙した。
「…?あれ?」
「どうしたのかな?」
「わかんないよ!。」
シンジとヒカリはマヌケそうに会話をしていた。
その会話をカメラを通して女はみていた。
「…。」
碇、というと碇ゲンドウの家族か。
最も合いたくない人種だ。
このまま帰ってもらおう。
リツコはタバコを吸いながら、断りの言葉を入れようと思ったその時だった。
「!!」
シンジと称する少年の首から下げている物に気が付いた。
十字架のペンダントだ。
リツコはそのペンダントに見覚えがあった。
それを持っているのは世界に一人だけだ。
学生時代の親友ミサトのもの。
「どうしてあれを…」
リツコは声が漏れた。
彼女は思考を張り巡らせた。
だが答えがわからない。
彼女も聞きたいことがある。
リツコは玄関へ向かっていった。
「どうしよう?」
「結構しばらくたってるよね」
「何かあったのかな。」
シンジとヒカリは困惑していた。
その時だった。
ガチャ…。
ドアのかぎが開くと中から、白衣を着た妖艶な大人の女性が立っていた。
「…あ!」
シンジは口を大きく開いた。
かなり美人だ。
「あ,こんにちは…」
シンジが挨拶しようとした矢先だった。
リツコはシンジの言葉を遮る形で言った。
「入りなさい。」
「お邪魔します。」
「お邪魔します。」
ヒカリが入ろうとすると、リツコは静止した。
「待ちなさい、彼だけよ。」
ヒカリはキョトンとした。
「え?」
「彼だけよ、あなたは帰りなさい。」
「で、でも…。」
「じゃないと、もう会わないわ。」
ヒカリは苦虫をかみつぶしたような表情でリツコを睨んだ。
リツコもそれに応じた。
「あ、あの…その、ヒカリちゃん悪いけど、先に駅に行っててくれないかな。」
「…えー!?碇君まで!?なんでよ!!!こんなところで帰すなんて男としてどうなのよ!!!」
「ごめん、今度おごるから!」
「約束だからね!」
ヒカリはプリプリしたような表情をして、姿を消した。
リツコとシンジはそれを黙って見送った。
「…もういいわね。」
「何で彼女はダメなんですか。」
「他人は信用できないから。」
リツコは冷たく言うと、少年をリビングにあげた。
リビングは何もなく殺風景にみえた。
彼女はコーヒーを入れると、シンジに手渡した。
「あ、ありがとうございます。」
「…あなた、なんでそのペンダントつけてるの。」
リツコは冷たく言った。
「え?あ、これは…。」
シンジの表情は変わった。
苦しい表情になっていった。
「私の知る限り、そのペンダントをしているのは世界で一人だけ。そのペンダントは特注の物だったから。何であなたがそのペンダントをしているのか知らないけど、事情によっては警察に突き出すわよ。」
シンジは面食らった。
どうやら、泥棒と勘違いしてるようだ。
シンジはこの目の前にいるリツコという女性が極度の人間不信になっていることに気が付いた。
「…このペンダントは盗んだ物ではありません。僕の大事な人からの贈り物です。葛城ミサトさんの、贈り物なんです。」
リツコは驚いた。
名前を知っている。
運命だ、否これはそれ以上の宿命なのかもしれない。
「ミサト…。」
「あなたこそ、彼女を知っているんですか。」
リツコはほくそ笑んだ。
その笑顔には少し悲しくシンジにはみえた。
「ミサト、懐かしいわね。」
「!!!」
シンジは驚いた。
父の知り合いを探すはずが、ミサトさんの知り合いとあってしまった。
「ミサトは、私のたった一人の友達だったのよ。ズボラでガサツで他人のことを考えてない。」
「そうでしたね、よくわかっていますね。」
シンジの反応をみて、リツコはやはりこの少年の知るミサトと自分の知るミサトが同一人物であることがわかった。
「学生時代、あいつと毎日酒を飲みかわした。ある日ナンパ男の集団が絡んできてミサトは機嫌が悪かったのかその集団をまとめて全員叩きのめしたの。」
リツコは笑っていた。
遠く懐かしい友人を思い出していた。
「あの人、喧嘩強かったですよね。」
「そうそう、その癖部屋は汚くて。」
「僕がいつも家事してました。」
リツコはアハハハと笑うと、シンジをみつめた。
「ああ、ミサト。もう10年以上あってないわ。ミサトは元気なの?」
リツコは笑顔で聞いてきた。
シンジは地面に顔を向け、肩を強くつかんだ。
そして、感情を押しこらえた。
「ミサトさんは、死にました。2年前に。」
リツコの表情が少し悲しそうなものに変わった。
「…そうだったの。」
「僕はミサトさんの家で一時住んでいました。あの頃は人生で一番楽しくて…僕を一杯愛してくれました。」
リツコはタバコを吸った。
目からは少し涙が流れそうになっていた。
潤んでいた。
「わかったわ、あなた確か碇君だったわよね。お名前は?」
「シンジです。」
リツコはタバコを持った手が震えた。
そして、驚いたような目でシンジをみつめていた。
「あなた、まさか…!!!碇ゲンドウの息子!?」
「そうです。」
シンジは真剣な表情で返した。
リツコは、タバコをすぐさま水洗い場に押し込み火を消した。
そして、シンジをみつめた。
「赤木ナオコさんの娘さんですよね。赤木ナオコさんはどこにいるか知っていますか。」
「フフ、残念だけど母はもう何年も前に死んだわ。」
「…!!!!」
シンジは面食らった。
そして、詫びた。
「ごめんなさい。」
「…ウフフ、あなたが謝るのね。謝らなくていけないのはあなたの父さんなのに。」
「父さんが何を…?」
リツコはシンジをみつめた。
「あなたの父さんは、私や母と浮気の関係にあった。覚えているはずよ。」
「…そういえば、そんなことがありました。」
シンジが10歳の頃だ。
父は浮気をしていたことが明らかになった。
考えればシンジが小学4年になる時から、夫婦関係はぎくしゃくしていた。
「あなたがその相手だったんですか。」
「おや、覚えていない。私と母親両方。」
「…ごめんなさい。」
「…でも、それは些細な事。」
リツコの顔は真剣なものになっていった。
「あなた、ここに来た理由。お父さんが何をしていたかよね。」
「…はい。」
「知りたい?」
「…はい。」
リツコは微笑んだ。
そして、シンジに近づいた。
その妖艶な雰囲気はミサトに近いものがあった。
「私を抱いてくれたら教えるわよ。」
「…!?」
シンジは目を見開いた。
まさか、セクハラ!?
「フフ、冗談よ…。」
「なーんだ」
「でも、条件があるわ。」
「何ですか?」
「目を閉じて。」
シンジはいわれるがまま、眼を閉じた。
その瞬間だった。
首筋に電撃が走った。
「………っ!!???????」
シンジは全身が電撃に震えると、そのまま地面に倒れた。
かろうじで意識は残っていた。
リツコは妖艶な笑みを浮かべ、それを見下ろしていた。
「…ただで返すとお思い?ここがどこなのか、わかっていないようね。」
彼女は指をパチンと鳴らした。
すると、奥から人間と芋虫の混ざったような怪物がやってきた。
シンジはようやくわかった。
怪獣と人間をかけあわせる実験。
今までやってきた人間怪獣たち、それを生み出していたのはリツコだったのだ。
「…まさか、あなたが…」
シンジは言葉を発した。
その時、リツコはシンジの顔面めがけて蹴りを入れてきた。
「あッ!!!!!」
シンジは電撃で弱っていた。
ウルトラマンに変身する力もない。
「随分としぶとい事。」
リツコは冷たく言った。
それがシンジがその時みた最後の光景だった。
彼の世界は暗黒に包まれると、やがて意識を失っていった。
その頃、メキシコ北西部
その日、アスカとキングジョーはメキシコに襲来した怪獣に対応していた。
人々が逃げている、その先にアスカとキングジョーは立ちふさがった。
巨大なクモのような怪獣スパイゲルは巨大な脚を伸ばしキングジョーの装甲に降りかかった。
鋭い爪がキングジョーに当たり、閃光と轟音を響かせた。
「………ッ!!!!!!!!!!!」
アスカは神経が繋がっているため痛みに苦しんだ。
だが、それを耐えた。
キングジョーの腕は延びると、スパイゲルの脚をつかむと勢いよく引き千切った。
ギシャアあああああああああ!!!!
悲鳴をあげたスパイゲルは目を赤く怒りの表情に帰ると、臀部とみられる部位から毒霧状の糸を噴射してきた。
キングジョーは、すぐさまフォースフィールドを張り、糸から自身を守った。
ふとみると、糸は周囲のビルディングを溶かしていた。
「酸性!?」
アスカが焦った。
まずい、喰らったら溶けてしまう!
スパイゲルは蜘蛛の脚を振り上げ、フォースフィールドをジリジリと割り始めた。
アスカは焦った。
このままでは負ける!
「…畜生こんな奴に…。」
アスカはその時、頭の中にウルトラマンが思い浮かんだ。
こんな時、あいつがいれば…。
「でも、あいつに頼ってらんないのよッ!!!!!!!!!」
アスカはフォースフィールドの出力をあげると、スパイゲルを衝撃波とともに吹き飛ばした。
昆虫怪獣スパイゲルは断末魔の悲鳴をあげると、全身をバラバラにすると塵のように吹き飛んでいった。
「はあ‥はあ…」
アスカは粗い呼吸をした。
自分で自分が許せなかった。
まるでウルトラマンを欲してる自分がいた。
こんなものは自分ではない。
その頃、シンジはようやく目を覚ました。
腕が動かない。
どうやら、腕を縛られて吊り下げられているようだ。
服は脱がされている。
周囲は暗くてよくみえない。
「フフフ、お目覚めかしら?碇シンジ君。」
「…あなたは…。」
シンジは声がする方を見つめ、睨んだ。
「…そんなかわいい顔で睨まないでくれる?かわいくてあなたを殺す気が失せちゃうじゃない。」
「なぜ、罪もない人々を怪獣に変えたんだ。」
「それはあなたのお父さんがやっていた事、私は母を通じてそれを受け継いだだけでしかないわ。」
シンジはつづけた。
「冬月さんを殺したのはお前か。」
「…誰か心当たりがあるけど、私は関わってないわ。」
シンジは暗闇に馴れ周囲がみえるようになった。
ここは地下室だ。
試験管のような中に、人と獣の混ざったようなものがみえた。
こうやって、人々を怪獣に変えていたんだ。
「…あなたって人は。」
「そんな事よりも、あなたがなぜこうなっているのかわかる?拘束され吊り下げられて裸にひん剥かれちゃって。ウフフ、屈辱的よね?アハハハ!」
リツコは微笑んでいた。
邪悪な微笑みがあった。
「あなたのお父さんは、私を弄んでいた。私だけじゃない!母もそうだった!私たち親子を弄び利用していた!!!こうやって裸にひん剥いてね!」
リツコは怒りとともに、シンジに近づいた。
そして、顔をみつめた。
「ああ、似ている。あいつに似ている…!!!アンタはあいつそのものよ!!!」
リツコは手に鞭を持っていた。
空気を切る音が聞こえた、
そして、シンジの後ろに回り込むと鞭を使い何度も何度もシンジの背中を叩きつけた。
「!!!ああああ、あうッ!!!!うああああああッ!!!」
シンジは悲鳴を上げた。
バシィン!!!
バシィン!!!!
二度響いた。
二度が三度になった。
三度は四度になった。
鞭の音が止まった。
リツコが前に戻ってきた。
「はあ、はあ…はああッ!!」
「どんな気分?痛い?苦しい?私たち母娘はそれ以上に苦しんだのよ!!!こうやってね!!」
リツコはシンジの首に鞭を持ってくると絡みつけ締め上げた。
「……ッ!!!!!!」
「苦しい?苦しいのね?!もっと苦しめてあげる!」
リツコは鞭で首を縛ったままシンジの唇を奪った。
貪るようにリツコはシンジの唇を何度も何度も奪った。
彼女は、飽きたように溜息をつくとシンジの首から鞭を離した。
「はあ、はあ…はああ…。」
シンジは粗く呼吸をした。
リツコは反応が薄いシンジをみて、不快感が心の奥底から上がっていった。
「…そう、あなたは自分がどんな目にあっても苦しくも痛くもないのね。だったら‥。」
リツコは指を鳴らした。
すると、先ほどの人間と芋虫の混ざった怪物が誰かに巻き付いていた。
「いかりくん」
「ヒカリちゃんッ!!!!!」
洞木ヒカリだ。
まさか…。
怪物はヒカリの胴と首に蛇のように巻き付いていた。
ヒカリの呼吸が粗くなっていた。
締め上げていることで苦しくなっているんだ。
「お前ぇ―――――ッ!!!!やめろやめろやめろやめろやめろやめろぉ!!!!!!!その娘だけは!!!絶対に手を出すなッ!!!!!」
「アハハハ、この子大事なんだね。かわいいもんねえ。」
リツコは手に注射器を持っていた。
まさか、まさか!!!!
「わかるだろ、怪獣に変わっちゃうのよ!!!化物と人間のハイブリット!!!かわいい娘がバケモノに変わる!!!その瞬間を楽しみなさい!!そして、次はアンタの番よ!!!!まあ、その前にアンタで楽しい想いをするとしようかしら!!!その光景を怪物に変わったこの娘がみるのよ!!アハハハ!!」
リツコはふと考えた。
「その前に、この娘が怪獣にけがされしまうのがみたいッ!?」
芋虫と人間の混ざった怪獣は人間状の顔から舌を出した。
それはヒカリのそばかすにまみれた頬をぬめりとぬめらせた。
シンジは怒りで手が震えた。
「貴様らァ、許さんッ!!!!!」
その時だった。
鎖で縛られていたシンジの手が震え鎖が音を立てて割れていった。
リツコはその様子をみた。
「…!?な、なんなの!!!」
彼女の目には困惑と恐怖がみえた。
「見るがいい、人間!!!これが僕の、いいや、違う!!!ウルトラマンのパワーだぁッ!!!!!!!!!」
シンジはすさまじい光で屋敷を包み込んだ。
そして、衝撃波が起きた。
リツコは、その衝撃波で思わず吹き飛んだ。
その時だった。
シンジがいる場所の位置にウルトラマンがいた。
鎖は砕け散っていた。
「ば、バカな!!!そんな…!!!」
リツコは思わず地面にのけぞった。
ウルトラマンは、ヒカリを縛っていた怪獣人間をみると腕をあげた。
そして、一瞬で念力が発動すると怪獣人間は一瞬で塵となり吹き飛んでいった。
青い血だまりがみえた。
「フフ、アンタがウルトラマンだったのね、ちょうどいい。だったらアンタを実験動物にしてやろうじゃないの!」
リツコは再び指を鳴らした。
すると、試験管やベッドから呻き声が上がり何かが立ち上がってきた。
シンジは、ヒカリを助け出すと彼女を抱きかかえた。
「…碇君。」
ヒカリは声を漏らした。
怪獣と人間の混ざった化物が周囲を取り囲んでいる。
その中にはミサトを凌辱したタコ人間に似た物もあった。
『どうやら、あなたは人として大事な物を失ったらしい。』
「アンタの親父に奪われたのよ!」
ウルトラマンは怪獣人間をみつめた。
彼らも哀れな存在だ。
だから一瞬で痛みもなく死なせよう。
シンジは先ほどと同じく念の力を出した。
この念力は大型怪獣には通用しないが、小型怪獣にはかなり通じるものだ。
すると、怪獣人間たちはその衝撃波と友に吹き飛び死んでいった。
彼らの青い血がウルトラマンの顔にふりかかった。
「あ、あ・・・あ・・・。」
リツコは青ざめていた。
そして、死の恐怖に包まれ走って逃げた。
シンジはそれを追わず、ヒカリの近くにやってきた。
変身を解いた。
そして、ヒカリをお姫様抱っこの形式で抱えながら外に出た。
夜になっていた。
その時、声がした。
「碇君…。」
ヒカリの声だ。
シンジは自分の胸で寝ているヒカリをみつめた。
「ヒカリちゃん。」
「私、一人でなんとかできるから、あいつを捕まえて。」
「わかった。」
シンジは再び等身大サイズのウルトラマンに変身した。
今度は光の速さだった。
そして、ウルトラマンはちょうど500m先にリツコがいることを把握した。
彼は光速で動くと、リツコの前に降り立った。
『もうあきらめてください。』
「…フ、なにを?」
『逃げないでください、全てを世間に明かしてください。そうすれば命はとりません。』
「…あなたは頭がおかしいの?」
リツコ、ミサトの友人。
彼女、ミサトの話をもっとしたい。
シンジは変身を解いた。
「リツコさん、あなたはタコと人間の混ざった怪物を飼っていましたね。あれと同じ種族がミサトさんを凌辱して死に追いやった。あなたはミサトさんの人生に泥をかけている。」
リツコはその時気が付いた。
ミサトが死んだ原因はまさかあの怪物…。
「だから、抵抗はやめてください。」
リツコは笑った。
手元には注射器がある。
「いいことを教えてあげる、所詮人の敵は人なのよ。シンジ君。」
「…!?」
「私がここであなたに全てを明かしても、誰か別の人間が同じことをする。そして、その繰り返しになるのよ。あなたには敵の大きさがわかっていない。」
リツコはそういうと、自身の首に注射器を打ち込んだ。
そして、中の血清を体内に注入した。
「!!!!!!リツコさん!!!」
リツコの金髪にまみれた髪の毛がボロボロと取れていった。
白衣から筋肉がむき出しになっていった。
そして、リツコだったものの顔はさけると血を吹き出し、肉片をまき散らし、その中からまるで毛をはぎ取った猫のような顔が見え始めた。
そして、筋肉は膨れ上がると大きくなっていった。
シンジはため息をつくとすぐさま変身した。
今度は巨人形態のウルトラマンに。
リツコだったそれは、怪獣に変化していた。
それは、毛がいくつか生えていたが肌を剥いた筋肉などがむき出しの猫のような怪獣に変化してしまっていた。
怪獣アムトに。
四つ足で歩行するそれは赤い目をギンギンに輝かせていた。
ブニャアあああああああああッ!!!!!!
アムトは叫ぶと飛び上がった。
そして、鋭い爪をむき出しにウルトラマンに襲い掛かった。
ウルトラマンは迎撃しようとしたが、アムトは早かった。
アムトの大きさは怪獣にしては小柄でウルトラマンの1/3程度の大きさだった。
『ぐっ!!!』
アムトは鋭い爪を使い、三本の傷をウルトラマンの脇腹に生み出した。
傷からは蛍光色状の血が噴出した。
アムトはさらに素早く動いた。
『どこだ‥』
早すぎる。
追いかけられない。
光速以上の動きをするウルトラマンですら、追いかけられない速さをしていた。
その時、背中に激痛が走った。
『ぐあああああああっ!!!』
ウルトラマンは背中を痛めた。
アムトだ。
ブニャアああああああッ!!!!!
アムトはさらに何度も何度も素早く動き爪を使いウルトラマンの体中に傷を積んだ。
体中から蛍光色の血が噴き出ている。
そして、アムトは前方からとびかかるとウルトラマンの首めがけて噛みつきを行った。
『う、うわああああああああああああぅ!!!!!!!』
ウルトラマンは倒れた。
アムトは馬乗りになり首に噛みついた。
カラータイマーが点滅している。
このままだと死ぬ。
ヒカリは遠くでみていた。
何とかしないと、あのままでは死んでしまう。
その時、ヒカリは近くに拡声器があるのがみえた。
彼女はそれをとると、大きな声で叫んだ。
「おい!!!!!!!!!!化け猫!!!!!!!こっちをみろ!!!!」
アムトは声がする方をみた。
気が逸れた。
今がチャンスだ。
シンジは指を4の字に向けると、アムトの首めがけて指を突き刺した。
ブニャアああああああああああ!!!!!
アムトは悲鳴を上げている。
『リツコさん、あなたともっとミサトさんについて話がしたかった…残念です。』
シンジは念じると指先からスペシウムエネルギーが放出した。
その時、アムトの中にいたリツコの魂は時が止まったように感じた。
ああ、ミサト。
私の友人。
私はあなたも傷つけるサイテーなことをした。
ごめんなさい、きっと逝くところは別ね。
さようなら。
その一瞬、アムトは死を受け入れるように目を閉じた。
そして、ウルトラマンの指先から出たエネルギーはアムトの顔面と脳味噌をまき散らしながら死滅した。
シンジは勝利がわかると、変身を解いた。
そして、ヒカリの元にやってきた。
彼はヒカリとみつめあった。
「…僕は、人を殺してしまった。」
シンジは暗い気持ちで心がいっぱいになった。
どうあがいても人を殺した。
それは変わらない。
ヒカリはそんなシンジを優しく抱きしめた。
むなしい勝利がシンジたちの心で満ちた。
その様子をみていた一人の男がいた。
彼はほくそ笑んでいた。
シンジがウルトラマンに変身したことを含めて。
彼こそが冬月を殺した張本人だった。
「くくく、あのガキがウルトラマンか。面白ェじゃんかよ。」
ふと目の前にアムトの肉片があった。
男はその肉片を踏みつけ唾をふきかけた。
「つまんねー女だったぜ、リツコよお。おまえはよ。だから捨てられるんだよ!!ギャハハハ!!!」
暴言を吐くと、少年を見つめなおした。
「また会おうぜ、坊や。」
男はタバコを放り捨てると、大笑いをしながら闇の中へと消えていった。