火が燃えたぎる音。
木造の建物が焼ける匂い、音。
そして、人が争い、死んでいく音。
人の死体が焼けていく異臭。
そんなこの世の地獄とも取れるような状況。
男は…周りで一番と言って良いほど燃え盛る建物の前に座りこんでいた。一人の女性を抱きながら。
「死ぬな…死なないでくれ…頼む…!」
「…げほっ…そんな顔しないで…〇〇」
美しい黒い長髪のフェリーンは、腹部から血を流しており、傷のせいもあってか口からも血を流していて、息も絶え絶えであった。
「何でだ…!何でお前が…!」
「泣かないで…ね?」
泣きじゃくる男の頬に手を添える黒髪のフェリーン。
その手は段々と冷たくなっている。
「そんな事言っても、もうどうしようも無いのよ…ゲホッ、カハっ…ね、〇〇…貴方は…長生きして…幸せになってね…」
「おい、おい…!やめろ…死ぬな…おい!」
頬に触れていた手が力無く落ちていく。
その手を握り締めながら男は必死に呼び掛ける。
現実から目を逸らしながら。
「……あ…ぁあ…」
目が覚める。
スラム街のお世辞にも綺麗とは言い難い空気と、大量の汗のお出迎えで目覚めは最悪だ。
「…あぁクソっ…またあの夢だ」
もう10年も昔の事を引き摺っている自分が情けない。
「はぁ…気分転換も兼ねて散歩でもするか…」
糞ほど最悪な気分を変えるために外に出よう。こういう時は日の光に当たるのが良い。
そうと決まれば後は早い。
立ち上がり、適当に決めた拠点にしている建物から出る。
「あー、飯もどうにかして確保しねぇとなぁ…はぁ、めんどくさ」
ーーー
「はぁ…どこもかしこも物騒なもんだ」
物騒とは言ったものの、既に龍門の市街の方はレユニオンの侵攻が始まっている。それに比べるとまだスラムはマシなのだろう。
レユニオンはチラホラと見えるが、目立った破壊活動などはしていない。まあ、スラムに大層な物は何も無いから標的にされないのも当然だろう。ここにいるのは感染者くらいだ。
「チッ…今にも雨が降りそうな天気だ…ツいてねぇ」
さて、この不穏な空気がただよっているという事はレユニオンと龍門の本格衝突が始まったのだろう。
「…バレない程度に様子見しに行くか」
ーーー
龍門市街は酷い有様だ、チェルノボーグと同じように其処彼処が荒らされており、元の街並みの面影は残ってはいる物の、建物から煙が出ていたりとまあ酷い。
それはさて置いて、状況を確認したいから周りを見渡せる建物に行くべきか。…となると近衛局のビルだな。あそこは嫌なんだがなぁ…行くしかないか。
目的も定まったので近衛局のビルに向かって走り出す。
道中レユニオン、近衛局と接触しないように迂回しながら少しずつ近づいていく。
そうして、コソコソと移動をしていくと近衛局のビルに辿りつく。
「…何も無いと良いんだが」
ビルの内部へと入り、屋上に行くための階段を探す。
こんな状態じゃエレベーターなんぞは機能していないだろうから非常階段を使わせて貰おう。
「ここか」
数分程探し回って見つける事が出来た。
それにしても、だいぶ静かだな。ここにはもっと戦力を割いているかと思ってたんだが。
「まあ、考えてもしょうがない。さっさと上に行こう」
音で察知されないようにゆっくりと、忍び足で階段を登っていき、最上階の扉前まで来た。
「…ふぅ…よし、行くか」
扉を開け、屋上へと飛び出す。
やはりと言うべきか、そこにはレユニオンの幹部、メフィストとファウストが居た。
「おやぁ?まさか裏切り者が現れるとはねぇ。近衛の隊長さんが来ると思ってたから予想外だ」
メフィストの周りにはメフィストの家畜にレユニオン兵がゾロゾロとおり、尚且つファウストにその部下の狙撃隊も居るだろうから迂闊に動けなくなってしまった。
とにかく活路を見出さないとジリ貧だろう。その為にも、時間稼ぎで話をふっかける。
「お前ら如きが龍門を攻め落とせると思ってるのか」
「勿論」
「…遂に頭まで腐ったか」
「まさか、腐ってるのは君の方なんじゃないの?」
お互いに煽り、挑発していく。
一触即発の状況。メフィストは痺れを切らしたのか、指示を出す。
「あの裏切り者を殺せ!」
その声と共にレユニオン兵が俺の周りを囲む。
成程、数で押して殺そうって訳か。
「はっ、この数で俺を殺そうってか?舐められたもんだな」
そして、多方向から襲いかかってくる雑兵共。
まずは前にいる奴。武器を大振りで振ってきたので弾き、首を掴んで後ろへと投げ飛ばす、ボキッ!と言う音が聞こえたので死んだだろう。
次は後ろから斬りかかろうとしていて防御がおざなりな奴の喉を自前の刀で切り裂く。
左側から来ている奴を転がし、顔面に踵落としをお見舞いしてやる。
別の奴が切り掛かって来たのを身体を逸らして避け、攻撃を避けたせいか隙だらけなので頭を掴み、そのまま膝蹴りを3回程する。
動かなくなったのを確認すると敵に向けて投げ飛ばすが、流石に避けられてしまった。
「やはり弱いな」
思っていた事を誰にも聞かれないような声量で呟き、飛んできたクロスボウの矢を左手で掴む。おそらく狙撃隊の攻撃だろう。
クロスボウでの攻撃頻度が多くないのは俺の周りにレユニオンの仲間が居るからだろう、こちらとしては好都合。
掴んだ矢をそのまま捨てるのは勿体無いので丁度近くまで来ていた敵の足に突き刺す。そして動きが止まった所に喉を切り裂く。
心臓とかを狙うよりこっちの方が楽で良い。
そうして、襲い掛かってくるレユニオン兵を次々と殺していると、遂にメフィストの家畜が来る。
「なりふり構ってられないってかなぁ!?メフィスト!」
大声で聞こえるように言うと、表情をさらに怒りに染め上げる。
本当はもっとおちょくりたかったのだが、家畜どもが来ているのでやめておく。
コイツらは厄介だ、人としての恐怖心が無く、痛みで動きを鈍らせる事なんてしない為、非常にめんどくさい相手だ。
まあ、やれん事はない。頭が機能していないので動きは単調で、遅いので個々の処理は簡単だ。
死角から噛みつこうとしてきた家畜の両足を切り、地面へとダイブさせる。そしたら無防備な後頭部に踵落としを決める。こうすれば流石に活動を停止してくれる。
家畜どもの頭を斬り飛ばす、四肢を切断して達磨にする。ビルから放り投げる。頭を潰す。
レユニオンの仲間が居なくなり、気遣う必要の無い家畜しか居なくなったせいかさっきよりも激しくなった狙撃隊の攻撃を躱しつつ、偶に飛んできた矢を掴み、家畜の頭に突き刺してほじくり回す。
ただひたすらにこの作業を繰り返していくと、どうやら家畜も全て殺したようだ。狙撃隊の野郎共はめんどくさかったし、何より武器を提供さてくれる為放置していたのだが、攻撃が来なくなってしまった。
弾切れか、あるいはファウストの指示か。
「おうおう、お前さんのご自慢の家畜共はぜーんぶ死んじまったぞ?」
「この…!」
メフィストの表情が更に怒りに染まっていく。
煽り耐性が無いガキを煽るのは楽しいもんだな。
「…メフィスト、撤退だ」
「どうしてだよ!それに増援はどうした!?」
「増援は来ない」
…なんかレユニオン内部も一枚岩じゃない感じだな、これは。契約切っといて良かったな…うん。
「お話は終わったかー?そろそろお前らの事殺すぞー」
待つのもアホらしいので殺そうと構えた直後。ファウストからの攻撃が来る。
「ッ!」
避けれないと判断し、何とか防御をした物の、その間に逃げられてしまったようだ。
「はぁ…逃したか。アイツはここで殺しておきたかったんだがな…」
敵の気配も無くなり、ホッと一息付いて休憩をする。
今の時間を確認したかったのだが…時計なかったんだったなぁ…。
「どうすっかな…この状況で龍門に留まるのも危険だしな…」
ボヤきながら考え事をしていると、後ろから扉が開く音が聞こえ、思考をすぐさま戦闘態勢へと切り替え、振り向く。
「貴様…生きていたのか」
そこにいたのは近衛局の隊長だった。名前は知らん。
「あぁ?いつ誰が死んだって言ったよ」
別にコイツと面識があった訳じゃ無いが、暴れ回ってた時期があったし、依頼があったから龍門にも喧嘩を吹っ掛けるような事もした事もあってマークされていたのだろう。当然と言えば当然か。
「私としては貴様のような危険因子は死んでて欲しかったがな」
「そりゃ無理なご相談で」
お互いに刀を構えての状態。コイツの刀の腕がどれほどかは知らんが、俺の互角かそれ以上だろう。どっちにしろ油断出来ない相手だ。
…まだ抜いてない赤い刀も含めて。
静寂が訪れる。
そんな中、先に仕掛けたのは男…レイヴンだった。
一瞬の内にしてチェンの懐まで近付き、斬り伏せようとする。
が、それに反応出来ない相手では無かった。
レイヴンの刀を弾き、反撃を仕掛ける。レイヴンも弾き返し、お互いに二歩程後ろへと下がる。
「…やはり手強いな」
「まさかここまでの逸材が近衛に居たとはな」
次はチェンの方から仕掛ける。
刀以外にも蹴りを混ぜつつ、攻撃を仕掛けていく。
だが避けられてしまう。相対するはあの”ウルサス軍を相手にして生き残った傭兵”なのだ、早々当たるとは思ってはいたが、ここまで避けられるのは予想外だったようだ。
流石にこのままでは埒が明かないと判断したのか、頑なに抜こうとしなかった赤い刀、赤霄を掴み、構える。
「貴様はここで倒す」
「そう簡単に倒せると思うな」
一瞬の静寂。
チェンが赤霄を抜き放つ直前、レイヴンの背筋に悪寒が走る。
「…!」
防ごうとしたら死ぬと判断し、全力で右に回避する。
「赤霄…抜刀!」
「…デタラメな威力してやがる」
レイヴンはギリギリで回避する事が出来たようだ。
チェンも赤霄を外すとは思っていなかったのか、顰めっ面が更に加速している。外した以外にも理由はありそうだが。
お互いに迂闊に手を出せなくなった状態。
猪みたく突っ込む訳にもいかない為様子見…もといどうするかを考えていると、上空からプロペラの音が聞こえてくる。
「…あれは…?」
上空に輸送機?が来たと思えばその輸送機から人が飛び降りてくるのが見えた。3人ほど。
最初は自殺志願者か?とか思っていたレイヴンだが、速度を落とさずにここに向けて落下してくるのを見てヤバいと判断。すぐさま衝撃に備えた。
「アーミヤちゃんにドクターも大丈夫そうだね、良かった良かった」
その顔を見た瞬間、息が止まった。
「はい、ブレイズさんのお陰です」
降ってきた人がビルに着地し、衝撃で砂塵が巻き上がる。
そうして、降ってきた3人の内一人の姿を見た。
長髪の黒髪、大柄な女フェリーン。
アイツに…似ていた、容姿が、雰囲気が。
胃から物が込み上げて来るがここで吐くわけにはいかない。隙を見せてはいけない。
「それで、そこの君はどうするのかな?たった一人でまだ戦うの?」
黒いフェリーンが話しかけてくる。それだけでも気分が更に悪くなるが、取り繕う。
「三人増えたぐらいで勝てるとでも?」
「あの…」
「あ?」
一人に集中し過ぎた為か気付いて無かったが、この前チェルノボーグで遭遇したコータスがいた。つまりコイツらはロドスからの援軍って事か。
「その…間違ってなければ…この前会ったレイヴンさんですよね?」
どうやら向こうも覚えてたようだ。名前を言っては無いが、まあ情報を調べられたのだろう。その位なら許容範囲内だ。
「名前は言ってないが…まあそうだな」
「アーミヤ…!」
「チェンさん、少し待っていてください。あの人と話をしてきますから」
近衛の隊長として龍門を守る役目があるチェンはアーミヤの選択に不満がある様だが、不満を飲み込んで見守る事にしたようだ。
勿論、刀は抜いたままなのでいつでも斬りかかれるようにはしているが。
「ブレイズさんに、ドクターも、良いですか?」
「私はアーミヤちゃんの選択に従うよ!」
「ああ、大丈夫だ」
「それで、お話は終わったのか?俺は気は長くないんでね、さっさとして欲しいんだが」
正直な所、今の間に殺そうと思えば殺せたのだろうが。
黒いフェリーンの奴が居るせいでアイツの事がチラついてしまい身体が止まってしまった。
「今終わりました」
コータスの少女が前に出てくる。
「で、どうするんだ?」
「…レイヴンさん、貴方はレユニオンじゃないんですよね」
「ああ、ただの傭兵だ。アイツらとは契約上の関係だ、その契約も終わったがな」
「じゃあ何故貴方はここに居るんですか?」
「チェルノボーグから辿り着ける都市がここぐらいだったもんでね」
「それならば、私たちロドスと貴方が争う必要な無いはずです」
コータスが言っている事は一理…と言うか大体正しい。
ここに居座らたいと言う気持ちも無いし、なんなら何処かに異動しようかと考えて居たぐらいなのだ。
ここで戦う理由なんてこれっぽっちも無い。
「…続けろ」
「貴方に協力して欲しいとは言いません。今は、一旦手を引いてくれませんか?」
「……その提案、乗った」
熟考の末、ロドスの提案に乗ることにした。
正直あの黒いフェリーンの顔を見るのがつらいからさっさとここから離れたい。
「ありがとうございます。欲を言ってしまえば、ロドスと一緒に戦って欲しいのですが…」
「俺は傭兵だ。金を積まれたのなら積まれた分の働きはするが。雇うかの判断はお前一人では決めれんだろう?企業というのはそういう物だからな」
「そうですね」
「…雇いの交渉はいつでも歓迎だが、俺の邪魔はしてくれるなよ」
さっさと話を切り上げる。
ホントにここから離れたいので屋上から飛び降りて時短する事にしよう。
ーーー
え?終わり方雑だって?
うるせえ力尽きたんだよ許せ。
ここに来て原作改変。許して。
レイヴンが壊滅させようがチェンとブレイズが殲滅しようが結局は援軍は来ないので少し早まったって事で…(震え声)
誤字脱字しないように心掛けてはいますが、あったら許して。
突然のキャラちょこっと紹介
レイヴン 過去に大事な人を亡くした経験有り、未だに引き摺っているメンタルよわよわ…?。
悪夢を見た後だったのでメンタルにクリティカルヒットして吐きそうになった。やっぱお前メンタル弱いよな…?
傭兵稼業やって暴れすぎた為、国から目を付けられてる。
ここ数年はレユニオンでのんびりしてた(当社比)模様。
大事な人 既に死亡済み。長髪黒髪のフェリーン。女(重要)
誰かと似ているらしい、誰かと。
ブレイズ 誰かと似ているらしい。まだ出番少なめ。
本人は気付いて無いが、レイヴンのメンタルに傷を負わせた奴。
本作のメインヒロイン枠。
おチェンチェン 堅物、レイヴンの事を大層警戒している。
だって前に龍門でやらかしたもんアイツ。
ロバみ…アーミヤ 何とかレイヴンを説得した、偉い。
子供の癖に色々と重たいもの背負い過ぎなんだよテメェ…。
不審者(ドクター) 台詞一個の不審者。本作では扱いに困る枠。どうすりゃええねん。