アーキバスの格納庫に運び込まれた技研兵器。
書かれた文章からして何か伝えたい事があると考え、
無線通信を行うが一向に返答が帰って来ない。
ならば有線だと兵器のどこかにメンテナンス用のソケットか何かがないか捜索するRaDとアーキバスの整備員。
すると胴体側面にコンソールがあることを発見してそれのカバーを開いた。
問題なく動いてそうだなとアーキバスの整備員が表示を確認している。
何かの文字列がCLIに割り込んで来た。
<これ!これ見えてる?>
「なんだこれは...?」
<見えてるならなんか返事してくれー>
恐る恐る<見えてるよ>と返答してみる整備員。
<あっ、よかったー問題なく割り込みできた。>
<これどっか見やすい画面に転送できる?>
<ちょっと待っててくれ>
整備員は画面から顔を離すとブリーフィング用のホロプロジェクタに回線を繋げる。
「おい、何やってんだ?」
「あの兵器が管理コンソールに通信してるから大画面で映すだけさ」
セットアップが終わり管理コンソール画面が投影される。
<見やすくなったわありがとう>
画面に表示される文章はなんか軽めの感じだった。
程なくしてレールガンの後始末が済んだカーラとデブリーフィングが終わったG1やウォルターが戻ってきた。
でかでかと表示された管理画面に一瞬驚いたものの
整備員の説明を受けて不在の間の事柄を理解した。
暫くしてアーキバス、RaD、ベイラム、ウォルター達が集った。
「さて、我々の時間を使って何がしたいのですか?」
スネイルは兵器へ向かって尋ねる。
<言いたいことは以下の通り>
<このまま行くとアーキバスもベイラムも在ルビコンの人もまるごと焼き尽くされる未来>
<焼き尽くしは一旦回避されるけど何も解決せず、問題が先送りになる未来>
<コーラルリリースが達成される未来>
<この3つの未来のいずれかが達成されてしまうことを伝えたい>
<またこの未来が達成されることの基本条件としてアーキバスもベイラムも何もかも死に体になる>
格納庫内に沈黙が走る。
こんな衝撃的な未来の話が飛び出て来るとは思ってもいなかったからだ。
暫くしてスネイルが口を開く。
「それがお前の妄想ではないのか」
アーキバスが死に体になるとは到底信じられなかったからだ。
が、それはこう返してきた
<これはこのまま事が運ぶようであるなら完全な決定事項となる>
<それは私自身がよく見てきた>
返答にスネイルは黙ってしまう。
次に喋ったのはG5。
「なあ、コーラルリリースってなによ?」
純粋に知らない語に疑問を感じたからだ。
<コーラルリリースは旧技研が論文として発表し、現オールマインドが進行しているCパルス変異波形と人類の融合計画>
<ひいては新しい生命を作る試みといった感じです>
<無論、強制的に行われますが...>
「Cパルス変異波形ってなんだ?」
<Cパルス変異波形は上空にある残留コーラルの流れに生じた知的能力を持つ波形です。>
<Cパルス変異波形とは私自身や621に憑いているエアが該当する>
<G5、あなたの耳鳴りは我々の話し声が中途半端に聞こえてしまっているがために発生してしまっています>
<これに関してはお詫び申し上げたい>
「お、おう、そうか...」
耳鳴りの原因がはっきりしてなんか安心したG5。
「621の耳鳴りはそういうことか...」
納得するウォルター。
「あんたは生き物なのかい?」
カーラは質問する。
<一般的な漠然とした概念の生き物という捉え方ならそうと言える>
<なのであなた方オーバーシアのコーラル焼却計画は凍結してもらいたい>
----どういうことだ?----
----オーバーシアってなんだ?----
「どういうことだシンダー・カーラ」
G1は詰め寄る。
<G1。確かに大量の人、コーラルが失われる計画ではあるがそれなりに理由があってのことだ>
<コーラルの焼却計画を進めているのはあと幾ばくも無い時間でアイビスの火の再来が起こるからだ。>
<オーバーシアが存在しなかったとしても起きていることだ>
「ならなぜ燃やす必要がある!」
<地上にコーラルがあるうちはまだ安全に焼却できるからだ>
<彼らのオーバーシアは地上にてコーラルを燃やし、災害を防ぐために行うのだ>
「だが結局は燃えてしまったのだろう?」
<燃えたのはアーキバスがオールマインドに誘導されてバスキュラープラントを宇宙空間まで伸ばし、そこにコーラルを吸い上げてしまったからだ。>
<コーラルの特性を存じ上げている方々なら何をしでかしてしまっているかはお分かりになると思います>
「バスキュラープラントが残っているのか?」
ウォルターがそう発言する。
<オーバーシア、ハンドラー・ウォルター。確かに地下14kmより下に旧技研都市と一緒に眠っています。>
ここでウォルターの正体がバラされるが気にする事なく続ける。
「オールマインドはこのことをいつ知ったのだ?」
<現時点ではまだこれをオールマインドは認識していない>
<旧技研都市へ続く道のりには封鎖機構の強制執行システムの本体があり、厳しい封鎖を敷いている>
<オールマインドの保有戦力は技研製ステルスMTであり、強制執行システムへの太刀打ちは不可能>
<621やG5は過去このステルスMTに遭遇しているはず>
「BAWS監査のあれか...」
「ああ、あの訳わかんねえあれか」
621とG5はよくわかんなかったアレの正体が判明して声を上げた。
<しかし企業としてはコーラルは欲する故に焼却に邪魔が入るでしょう>
<そうなればもう安全な焼却は不可能です>
「ウォルター、部下の命まで勉強代にするつもりはないぞ。」
「分かっているが....」
「コーラルを持ち出し、他の星系でアイビスを再現するわけにはいかない。」
「必ずルビコン3で焼却しなければならない...」
<ああ、でもコーラルを資源として使うのはやめた方がいいですよ?>
<盗聴、改竄、出力の過剰、減衰、Cパルス変異波形にとってはやりたい放題ですので>
「だが結局はコーラルだろう。燃やしてしまえばいい」
と、アーキバスの整備員は言う。
<コーラル内燃型ジェネレータですか>
<それが積めるならその機械の掌握は簡単でしょう>
「そんな...」
八方塞がり。
どこをどう取っても滅びしか企業には残っていない。
<ですが、今ならまだ間に合います>
<企業はコーラル利権を得られますし、この惑星を燃やすこともありません>
<私らCパルス変異波形も焼却から逃れることもできます>
「どうするんだ?」
とG1。
<まず、コーラルの焼却は行います。勿論地上で。>
<ただし全部燃やすようなことはしません>
<アーキバスにはバスキュラープラントを大気圏外まで延伸してもらいます。オールマインドの計画の一部を利用しましょう。>
<バスキュラープラント吸い上げの過程で一部を地上焼却します。>
<そしてCパルス変異波形には入れ物が必要になります。>
<これに関してはオールマインドと技研のACパーツがこれを満たしているのでこれを使用します。>
<憑いてる方は...そのままでいいでしょう。無理に引き剝がすことはしません。>
<あとはアーキバスとベイラム、ルビコン現地企業の連名でコーラルに関する今一番正確な情報を発信すること>
<これらをあなた方にやって貰えれば、と>
「つまり、コーラルの管理は厳しく行え、Cパルス変異波形の認知をしてほしい、と。」
<そういうことですG1>
「しかしなぜオールマインドのパーツなんだ?技研パーツが使える理由は分かるが」
<オールマインドは生物のような馴染みやすさをコンセプトとしたパーツ開発を行っています>
<リリースを進めるだけあって変異波形が人の真似事をする際のニーズにも対応しようとしています。>
<この上ない候補です。>
「なるほど。」
<さて、私からの話はここまでにしておきましょう>
<あとはあなた方がどう判断するか、それに委ねます。>
<あと、最後に。>
<V.Ⅲ。あなたは今オールマインドとアーキバス、どちらに付くのですか?>
「オールマインドからはもう縁は切っている。」
<分かりました、V.Ⅲ>
その後、ウォルターとカーラのオーバーシアと星外企業、621のCパルス変異波形、エアとの会談で
オーバーシア側としてはアイビスの再来が防止が出来るのであれば
企業のコーラル利用を認めること、
エアとしては自身が独立して動ける機体の開発を約束として利用を認める形となった。
それに合わせて不戦協定も結ばれる形になった。
「という形の合意となった。」
スネイルはそう報告した。
<そうか...>
<...死人がここまで出過ぎた、死ぬのはここまででいいだろう...>
「あと一つ、なぜV.Ⅶを襲ったのですか?」
<ああ、実はね、あそこでV.Ⅶは621に命乞いするんだよね>
<ヴェスパーの金庫から金やるから見逃してくれって>
<621が見逃せば再教育行き>
<見逃さない場合は死にます>
<ですが今回では死ぬこともなければ横領されることもありませんでした。>
「なるほど。第七隊長には聴取しなければなりませんね。ありがとうございます。」
あっ、やっべ、スウィンバーンごめん。
おちょくりたかったから襲ったとは言えなかった...
「まあ、なにはともあれ燃えたり強制進化したり問題先延ばしにならなくてよかった。」
「そして自分のやることは...」
コンソールへ送られてきたのはアーキバスの依頼
[封鎖衛星破壊]