バスキュラープラントの建設と輸送航路の整備が終わりいよいよ地球へと出発する準備が整った。
もう何も障害はない。
そう皆が思っていた。
「何か忘れてる気がするんだよなあ…」
そうボソリと技研兵器はチャットルームに書き込む。
V.Ⅱ「プラントの稼働は安定、航路上の障害は排除、地球の本社や世間へと持ち帰る情報の精査は既に完了、何もかもが完璧だと考えますが。」
「いやそうだとは思うんだけどね?なーんか引っかかるというか」
私が格納されてているバンカーに警報が響く。
《衛星砲5・7・9番、軌道変更!5版砲の予想航路上にバートラム宇宙港が重なります!》
《PCAの自律制御システム、コマンドを受け付けません!》
《艦隊のデータリンクにウイルス侵入!船及び港の制御権を奪おうとしています!》
「どこからだ!」
《現時点で不明!アクセスポイントが大量に存在しており特定は困難!》
「どれ、見せてみな。このやり方は...」
カーラが見覚えがあるような反応を示す。
「いつぞやだったか、621に依頼した私のシマに仕掛けられたパラサイトモジュールの破壊の際に一瞬ちょっかいをかけてきた奴と似てるねえ」
本来ならイグアス君が出てくるアレだが誘ってないからかコヨーテスのハックに便乗したんだろうなと。
「やはり物理的にアクセスされてる、こっちからじゃ手も足も出ないね。あの一瞬で物理的な部分は弱いと学習されたか」
監視カメラじゃ艦艇、港内部には何も異常はないように見えるが....まさか...
《艦艇に近づいて直接目視しろ!ゴーストがいるはずだ!》
《いたぞ!撃て!》
案の定ゴーストがとりついていたが、ぶつかるような距離でもMTやACのセンサーにかからない光学ステルスを搭載した奴だった。
「そうだ!忘れていたこと!もう協力者もいないし保有戦力も少ないから完全に無視できると思い込んでいた!」
「オールマインド!あいつゴーストの再設計はおろか再生産して戦線に投入しやがった!」
「衛星砲はこっちが通る分だけ破壊しとけばいいと思っていたけど、軌道変更できる可能性とここから反対側にもPCAの遠隔コントロールハブがある事実を見逃していた!」
こっちは本編を遊びはしたが、全てが語られていた訳ではない。
オールマインドの生産能力、PCAの全拠点の所在地と機能、直接戦闘しない兵器の性能。
ゲームから現実になったことでないはずのものがある。
それをすっかり忘れてしまっていた。
考察や創作をするなら真っ先に気づけそうな部分だ。
《申し訳ない。失念していたばっかりに....》
「御託は後で訊きましょう。それに貴方だって知的生命です。間違いや思考の偏りだってあってしかるべきことのはずです。私たちがコーラルについて無知であったように。」
「さーてちょいと調べた結果だよ。あくまでPCAの遠隔コントロール施設は足掛かりで、今は封鎖衛星へ物理的に接続、占拠して一切の回線を閉じている状態だね」
「つまるところ直接乗り込んで止めるっきゃないって話だ」
「そして乗り込むのにうってつけのものが丁度海に浮かんでるって訳だ」
「だが向こうさんもそれは分かってるみたいだね。接近中のMT郡を捉えたよ」
「水上フロートタイプの脚に換装した技研製MTの再生産タイプってところかね」
フロート脚!久しくACでは出ていない脚パーツだ!あったのには驚きだ。
「しかしこっちにはPCAの鹵獲強襲艦がある、水上戦力などカビの生えた戦力....」
とスネイルが言いかけた所に大きな反応が映り込む。
「...何ですあれは。」
それは強襲艦の艦底部に備えられている大型レールガンが連装化された大型の砲塔、優に500セルを超えている大型ミサイル発射管、そして艦首部の大型の空洞、さながら戦艦の様相を呈した物体がゆっくりと水平線上から姿を現す。
「はは...向こうさんもなかなかのロマンチストのようだね...」
カーラが若干引いた笑いを零す...
「聞こえますか?エアです。あの戦艦から同胞かと思われる反応を感じています」
「同胞『と思われる』とはどういうことだエア。」
「ウォルター、アレからはコーラルと似ていますがそれとは少し異なる反応があるのです。」
「それが何かは分かりませんが、十中八九オールマインドの新技術と思った方がいいと考えます。」
「あの周辺には私の力が及ばないエネルギーの波動を放っているようなんです」
「...それもしかすると代替コーラルなんじゃないか?」
「あ、代替ってのはあくまで俺の予想ね」
「そんな技術が...?!」
「知っているのか。」
「細かい所は明かされてないから真実は知らないけど具体的には」
「緑色の粒子でコーラルと似た精神感応と恐らく無限に増殖する性質を持っている」
「ただし生成されるのはプラズマや電力」
「コーラルの伝播能力を遮断するフィールドを展開可能ってところかな」
「何をもってコーラルと同じだと言えるんだい?」
「俺が知ってるそれで動いていた機体がアイビスシリーズだったからって所かな」
「...なるほど、確かに代替と呼んでも良さそうな性質だな。」
「まあつまるところ、アレに俺とエアちゃんは近づけないし、もしやれるとするなら長距離砲撃だけって所かな。そんな手段はないけども」
「戦力外ってことですか。」
「エアちゃんはまだしも俺が無力化、鹵獲されようもんなら多大な痛手になる。」
「そうと決まればサッサと迎撃に行きてえが...足はどうするよ、ACはおろかMTでも水上航行はできねえぜ?」
「おまけに空を飛ぼうもんならあのミサイルに滅多打ちにされるのがオチだろうなあ」
「G4とG5の言うとおりだ。こっちにはロクな水上戦力がおらん。おまけに強襲艦は往還船として使うことが決まっているうえ数もギリギリだ。戦力として数えられん」
「それについてならアテはあるよ。前々から水上へのアプローチを考えていてねえ。その試作品があるんだ」
「ヘリで近づける所まで接近の後、フロートでMTを漸減しつつ、戦艦へ潜入・破壊という段取りか」
「その際あのドデカイ砲で狙われてもたまらん、ブースターを外付けして接近させるよ。」
「よし!やることは決まった。先ずは目の前の火の粉を取っ払ってからだ!」
621達がACに乗ってスクランブルしていく。
技術チームは戦艦攻略のキーを取りにあちこちへ駆け出す。
カーラとウォルターはザイレムを制御しているチャティへ指示を出し、なるべく時間を稼ぐよう航行支援を出す、
私たちコーラリアンは敵の性質上動くことはできない。
天命を待つほかないのだ....
程なくハックしていたゴーストは撃破され、RaDからはカーゴランチャーを通じてパーツが取り寄せられ着々と事が進んでいく。
ウォルターの航行支援によりザイレムは4日程時間を稼ぐことができた。
ロマンとロマン、忘れられたものの決戦が始まる。
試作フロート脚
EL-XFG-9 Ligereza
エルカノとRaDが共同開発した脚パーツ
シュナイダーのLAMMERGEIER/42Fに刺激を受けフロート能力と地面効果翼を備えた四脚風の脚
航宙艦の時代になりすっかりインフラは宙へと移り変わり、水上は専ら緊急時に使用する限りとなっていった。
だが、ルビコンでは違った、封鎖衛星が監視する空中ではブースターの光は大変目立つ。
その為より距離が遠い水上をステルス航行できる手段が模索されてきた。
が、航空機など作られなくなって久しく一から全てを作る羽目になった。
現地企業では開発に行き詰まり八方塞がりとなっていたそこにブランチによる企業の呼び寄せが新たな風を吹かせた。
シュナイダーである。
エルカノ・RaDは徹底的にリバースエンジニアリングし、ようやくこぎ着けたのが本パーツとなる。
例によって空力性能を追求したため防御は低いが、リバースエンジニアリング先よりかはしっかりと装甲化している。
四脚の変形機構は停止時のフロート・航行時の地面効果翼展開のギミックへ流用された。
エネルギー負荷は試作パーツながらシュナイダーのそれを更に洗練したものとなっており、大変低くなっている。
だがブースター非搭載のため、緊急時の回避はコア側に頼ることとなっている。
その為姿勢安定性能は少し低くなった。
またフロート/地面効果翼という切り替え式の都合上フロート時の場合に水平移動・垂直移動に制限がある
AP 3810
対弾防御 360
EN防御 315
対爆防御 300
姿勢安定制御 1005
積載上限 54130
水平跳躍性能 (停止時)33 (航行時)69
垂直跳躍性能 (停止時)9 (航行時)39
重量 23610
EN負荷 610