※後半、シリアス注意
※煌視点
〜RING、スタジオ〜
「ふぅ……」
「私、間違えずに出来たよ!」
「さすが、姉さんたちのバンドですね。」
今は、MyGO!!!!!の練習を見学させてもらっている
一見バラバラに見える5人だが、いざ演奏が始まると、バンドの世界観を醸し出した独特な雰囲気を魅せる
特に、先程まで練習していた碧天伴走は5人で初めて作った曲らしく、心に問いかけてくるものがあった
「そろそろ、煌の琴見せてもらってもいい?」
「私も見たかったんだ。」
「時間が過ぎるのはあっという間ですね、約束でしたからやりますよ。」
「私は帰る。」
「ちょっ、帰っちゃうの!?」
ギター練習に満足した楽奈ちゃんは、機材を片付けて早速帰ろうとしていた
なるべく私の演奏は誰にも見られたくなかったから、かえって都合が良い
「じゃあ、いきますね。」
軽く深呼吸をしてから、琴の弦に触れる
私は昔から、琴の優しい音色が好きだ
「このメロディー……!」
「これ、詩超絆だ……!」
「おもしれ〜。」
詩超絆のメロディーを奏でていると、帰ろうとしていたはずの楽奈ちゃんが足を止め、片付けたギターをもう一度取り出し、アンプに繋いでいた
すると、楽奈ちゃんはイントロ部分をギターで弾き始める
「そよ。」
「えっ、ま、まさか……!?」
「準備しよ〜!」
「う、うん……!」
すると他のメンバーもそれぞれの持ち場に付き、楽器を構える
「うたううた〜♪ うたういま〜♪ ああ届け、君の胸にまだ間に合うかい〜♪ こころを叫ぶ、言葉を超えるため〜♪ (僕には)たったひとつのやりかただから、ああ〜♪(僕はうたう、うたううた、きみに届くまでうたう〜♪)きみに届くまでうたう(僕はうたう、うたううた、きみに届くまでうたう〜♪)
ここのコーラスは、以前のライブでは見られなかった
新たに追加したのだろう
「一緒に泣きたいよ〜♪ (きみと)一緒に笑いたいよ〜♪ (きみと)僕らの道が平行線だとしても〜♪ 昨日を握ったまま〜♪ (きみの)ズキズキ震えてる〜♪ (こころ)痛いほど伝わるから、きみを離れない〜♪」
ここからゆっくりと転調したフレーズに変わる部分
私のとても好きな所だ
「うたう、手と手をつなぐうた〜♪ ほどきたくないんだ、ずっと一緒にいよう〜♪ うたう、僕らになれるうた、うたう〜♪ ここではじめよう、もう一度〜♪」
そしてラストまで、私たちはセッションをしたのだった
気が付けば、私の目元はうっすらと濡れていた
「あれ〜? きらりん、もしかして泣いてる〜?」
「……目にゴミが入ったんだと思います……」
「声震えてる、やっぱひかるもおもしれ〜女……の子」
「煌、ありがとう。」
「和のアレンジもありだな……」
やはり私は、姉さんたちに敵わない
こんなに良い曲を作れて歌えるのだから、数年後にはかなり大化けしていそうな気がした
迷子のままで進むのだろうけど……
「煌ちゃん、私たちと合わせてみてどうだった?」
「良かったとは思います、ただ……」
「ただ?」
「MyGO!!!!!以外のバンドとは合わないと思います、こんな性格ですから……」
「え〜、勿体ないよ! 折角なら和楽器のクラブとか入ってみたら!?」
「っ……!」
「ひ、煌?」
「あなたに……あなたに私の何が分かるんですか!!?」
「えっ、きらりん……!?」
「煌っ!!」
私は愛音さんにそう怒鳴り散らし、姉さんの静止も聞かず、スタジオを飛び出した
あぁ、やってしまった……
結局、私は逃げ続けることしか出来ないのだろうか……?
もうイヤだ……誰かとセッションすることが……
琴なんてやるんじゃなかった……
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外はいつの間にか気温が低くなり、ポツポツと雨粒が当たる感覚があった
無我夢中で走り続けた先にたどり着いたのは、とある公園
ここは確か、姉さんがよく綺麗な石を拾ってくる所だ
そういえばあの日も……あそこで姉さんが……
「煌っ!!」
私を呼んだのは聞き間違える筈のない、たった1人の姉の声だった
「姉さんっ……」
もう感情なんてぐちゃぐちゃだった
息を切らした姉さんを見た途端、私は姉の懐に抱きついた
「煌……もう大丈夫だよ……?」
「ごめんなさい……ごめんなさいっ……!」
「煌は琴が弾けるだけでも充分だよ、不安ならお姉ちゃんがいつまでも側に居てあげるから……」
「うん……お姉ちゃん、ありがとう……」
そして、そっと姉さんに抱きしめられたのが分かった
今だけは、普段の敬語を使えなかった
まるで、昔の私に退行したみたい
けれどそれは決して嫌ではなく、むしろ懐かしくて、このままこの優しさに包まれていたいなと感じるものだった
「きらりん!!」
「愛音さん……?」
私は愛音さんの言葉で、元の世界に戻される
後ろには、傘をさしたそよさんと立希さんの姿があった
「燈、煌は大丈夫そう……?」
「うん、だいぶ落ち着いたと思う。」
「ひとまずRINGに戻ろう、ここだと風邪引いちゃうかもしれないから。」
「そうだね。」
ひとまず雨足が酷くなりそうだったので、一旦私たちはRINGに戻り、話を整理することにした
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〜RING、カフェテリア〜
「燈ちゃんと……煌ちゃんだっけ? 今日は傘持ってきてなかったの?」
「いえ、私が自発的に飛び出してしまったので自業自得です。」
私たちにタオルを貸し出してくれたのは、ここのライブハウスのスタッフである真次さん
立希さんの上司にあたる人らしい
「さっきはごめん! きらりんの気持ちを考えずにあんな事言って!」
「……大丈夫です、元はといえば、あれは私が原因なんですから……」
「ひかるの琴、もっと聴きたい。」
「パフェあるから、野良猫は少し黙ってて。」
「……煌ちゃん、何があったのか私たちに話してくれないかな?」
「そよちゃん、それは……」
「大丈夫です姉さん、皆さんになら話してもいいですから。」
私の忌まわしき過去
家族以外で話すのは初めてかもしれない
話してあげよう……トラウマになったあの頃のセッションを……
お姉ちゃんしてる燈を描きたかっただけ……
次回は、更にギスドリでシリアスな回を予定