僕に欠けているもの   作:鯖と羊

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サークル探し

「ねえ、結局ベルは友達作れたの?」

 

「俺の今までの話を聞いてどうだと思う?」

 

「全然作れてないね。」

 

「話聞いてたのかよ、3人も友達が増えてるだろうが。」

 

「まあベルがそういうのならそうなのかな。」

 

「どう聞いたってそうだろう。」

 

「まあでもよかったね死なずに済んで。」

 

「確かに一歩間違えていれば俺はこの世にいなかっただろうな。」

 

「じゃあ折角生きてるんだからもうちょっと友達を増やしてみたら?」

 

「いやもう友達はこりごりだ。」

 

 有名王立魔術学院に入学して幾らかの月日が経った後、俺とララとのちょっとしてすらない会話の一幕。

 

 俺は最近サークルに入っていた。

 

 ララから友達を作るようにと言われていたのだが、とある事件のせいでなんだかんだサークルからは退会することになった。

 

 今回はその事件について少しだけ、いや、やっぱり事細かに全て包み隠さずお話ししよう。

 

 どうせ取るに足らないよくある内容でしかないしな。

 

 まあただ友達なんてのはあまりいいものではない、ってのは皆に伝えておくべきだろう。

 

 そのせいで俺は死にかけたんだし。

 

 それじゃあ少し事件について、いや、サークルに入る前のところから思い返してみようかな。

 

 

「ベル…、ベル!」

 

「ん…?」

 

 耳元で騒ぐ聞きなれた声で目を覚ます。はて、今は何時だ…?

 

「おはようベル。」

 

 赤髪の彼女がニコニコと僕の対面に座る。

 

「ああ、おはよう。えーっと。」

 

 周りを見渡すと学院の制服を身にまとったいかにも学生といった風貌の男女が幾らか談笑していた。

 

 どうにも食堂で昼食をとった後そのまま寝ていたようだ。

 

「ベルってばご飯食べた後ここでずっと寝てたんだよ。」

 

「あー、やっちまったな。」

 

 食堂の一角を占有して堂々居眠りこいてたってわけか。

 

 ここを利用したい学生には大変邪魔だったことだろう。

 

「今日は食堂すいてたし隅っこだから多分目立たなかったんじゃない?知らないけど。」

 

「つーかお前がいるってことは、」

 

「もう土属性錬金術の講義は終わったよ。」

 

「だよなあ、最悪、もう後がねえだろ確か。」

 

「ベルはお昼の後の講義に出てこなさ過ぎなんだよ。」

 

「昼めし食ったあとは眠くなっちまうだろうが。」

 

「入学早々こんなに不真面目なのはベルくらいなんじゃないかな。」

 

 俺ことベルトット・サイダーはそれなりに少ない脳みそをフルに使って有名な王立魔術学院に入学したんだが…、早々に留年のピンチに陥りかけているというわけだ。

 

 別に勉強が大嫌いってわけでもないのだが。

 

「そういや、ララはこの後予定あんのか?」

 

「私はこれからサークルに顔出すけど。」

 

「あーなんか入ってんだっけ。」

 

「うん、スティーラサークルにね。」

 

 スティーラといえば魔術とスポーツの古来からの融合競技。

 

 魔術師としての腕と運動神経も問われるある種エリートスポーツなのだが民衆の人気、知名度共に高い。

 

 まあやっぱり魔法をバンバン使うようなスポーツなんてスティーラくらいなので見た目の派手さもあって観戦するのも面白いしな。

 

 正直ちゃんとしたルールは知らないが。

 

「友達作れてんのか?」

 

「ベルにだけは言われたくないんだけど。」

 

 いかにも冷ややかな視線が俺に突き刺さる。

 

 顔はにこやかなのに目だけが笑っていない。

 

「ベルもサークル何か探しなよ。暇なんでしょ。」

 

「いや、おれは暇をつぶすことが趣味といっても過言ではないほど暇つぶしが好きでな…。」

 

「わけのわからないことを言わないで。そんなだから今になっても私しか友達が増えないんだよ。」

 

 実際ララの言う通り、俺は自分から他者に関わることがあまり好きではない、となると必然学院入学からある程度たった今でも新しい友人など増えていない。

 

 学院の寮に住んでいるので知人はいるのだがまあ積極的に話したりはしていない。

 

 結局のところ簡単に言えばぼっちというところか。

 

「サークルつってもよお?あんま面白そうなの無いんだよな。」

 

「サークルってのはね、別にナニカするために入るってものじゃないんだよ。人脈、友人作りに入るものなの。」

 

 呆れたような顔で長く伸びた赤い髪を手でくるくるしながら俺に説法を解いてくる。

 

「ほーん、さすがはララ様聡明であられる。」

 

「ベルはちょっとおバカすぎるかもね。」

 

「優秀ですうー。魔術とかなんかその辺の色々とか他の人よりできますうー。」

 

「あーうざ、私が言いたいことが分かってないあたりがもう終わってるんだよ。」

 

 何が終わっているというのか我が人生はこれから華々しく彩られるというのに。

 

「まあいいや、一週間のうちに何か適当にサークルに入りなよ。」

 

「もし入れなかったら…?」

 

「聞きたい?」

 

「結構です…。」

 

 咲き誇るがごとき満面の笑みが何よりも怖かった。

 

「じゃあ私はサークル行ってくるから。」

 

 そういうと彼女は席を立ち食堂を後にした、さて…。

 

「サークルねえ、一度一通りの奴には目を通したんだがなあ…。」

 

 実際以前ララに連れられて色々とサークルを見て回ったこともあるのだが、

 まあ有名な魔術学院であるがゆえにお遊びのようなサークルは存在していなかった。

 

 なんだかんだ活動自体はガチなやつが多く、こう、端的に言って疲れそうなやつばかりだった。

 

 ララがスティーラサークルに決めたときは俺も一緒に入るようにあれやこれや言われたが

 

「運動は…ちょっと…今はいいかな。」

 

 とか言って断った気がする。数日は口をきいてもらえなかった。

 

「ま、もう一回見てみますかね。」

 

 自分のやる気を呼び起こすように呟き、俺も食堂を後にした。

 

 

 活気ある学院を活気のない顔ですたすた歩きながら周りを見てみればザ・青春といわんばかりの若人がそこかしこで見つかる。

 

別に羨ましいとかいうわけではない。決して。

 

まあ俺もサークルに入ればそちら側に行くのだ。なにも問題はない。問題はないはずなのだ。

 

自分に言い聞かせながら学院掲示板前に来る。

 

掲示板には所狭しとサークルの勧誘やら今後のイベントのポスターなどが張られている。

 

サークル勧誘の欄を見てみるが、やはりピンとくるものがない。

 

どうしたものか。などと考えていると俺の肩がトントンと叩かれる。

 

「君、もしかしてさ、サークル探してる?」

 

 そんな言葉をかけられ振り返ってみると、頭が光り輝く男が立っていた。

 

 いや別に髪がないとかそういう意味での光り輝くではない。何というか頭の後ろから後光のようなものが差していた。それもかなりの明るさで。

 

「ああ、御免ちょっと切るね。」

 

 男がそういうと後光が弱まりいかにも優男といった面構えの青年が現れる。

 

「悪いな、うまいツッコミが思いつかない。」

 

「ああ。気にしないで、僕の偉大さを前にツッコミができる凡人は限られてるからね。」

 

「ハッ倒すぞハゲが。」

 

「野蛮なやつだね。僕の輝きをもう一度…」

 

「あー、わかったわかった。何もしねえから輝くのは辞めてくれ、眩しくてかなわん。」

 

 口調も態度も尊大な男だった。

 

「ところで君、質問に答えてもらってもいいかな?」

 

「ん?質問?」

 

「最初に言ったろうサークルを探してるのでは?と。」

 

「わりいな過去は振り返らない主義でよ。」

 

「数秒前の事すらわからないのは生きづらそうだけどね。」

 

 過去にとらわれ生きてちゃあより良い人生は歩めないんでね。

 

「まあ確かにサークルを探してる。遅れたスタートダッシュだが。」

 

「今サークルを探してる人は確かに少ないかもね。大方入るサークルを決めた後かサークルに入らないことを決めた後だろう。」

 

「つまり俺は異端ってことだ。」

 

「別にかっこよくないよ、君。」

 

 どうにもコイツにはセンスってもんがないらしい。

 

「しかし君は幸運だ。僕の所属するサークルにこの僕から直々に勧誘されるのだから。」

 

「なるほど、参考になるな、まずお前んところは除外できる。」

 

「あー!嘘嘘!ねえ頼むよマジで、今は人数足りなくてヤバいんだよ。」

 

「最初からその感じで喋ってくれマジで。」

 

 さすがに尊大なムーヴも限界らしい。

 

「んで、お前の入ってるサークルは何なんだ。」

 

「よくぞ聞いてくれた。僕のサークルは神秘サークルさ。」

 

「ん…?」

 

 なんだ神秘サークルって、聞いたこと無いしうさん臭さが尋常じゃない。

 

「最近僕らが新設したサークルでね。君が入ってくれると既定の人数に達してサークル活動が認められるんだ。」

 

 なるほど通りで前にサークルを見て回った時には無かったわけだ。

 

「今僕を含めて4人いてね、君が入れば5人で活動可能になるわけなんだ。」

 

「あーまあ事情は分かったんだが神秘サークルって何するんだ?」

 

「そうだな基本的には過去、つまりは神代の魔法を研究しようって感じだ。」

 

「神代魔術っていうと…英雄サンドロスとかそのへんの?」

 

「まあ大体その時代でいい。失われた魔術の復活…はまあ無理だろうがちょろっと研究してみようという感じだ。」

 

「で実際は?」

 

「神代魔術についてオタクトークがしたい。」

 

「素直でよろしい。」

 

 サークルなんてそんなもんでいいんだよ。ガチでスティーラやってるあそこがおかしいんだよ。

 

「それで、どうかな、君は神代魔術とかは好きかな。」

 

「小さいころよくサンドロスごっこやってるぐらいには好き。」

 

「素晴らしい!歓迎するよ!」

 

 いいのかそれで。

 

「でも大丈夫か?好きではあるが俺そんなに詳しくないぞ。」

 

「馬鹿を言うんじゃない、必要なのは知識じゃなくて愛なんだよ愛。」

 

 ちょっと思想が強そうな気がする。まあただ間違ってるわけでもないか。

 

「そうと決まれば行動だよ君!今すぐ僕らの活動拠点へと行こうではないか!」

 

 なんてはしゃぎながら光り輝やいていた彼に連れられて僕は学院のサークルが使うための棟、その一室へと足を運ぶわけだった。

 

 

 

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