僕に欠けているもの   作:鯖と羊

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不適合者

コンコンとノックの音が部屋に響く。コンコン、コンコン、コンコンコンコン…、

 

「どんだけ鳴らすんだよ!」

 

 耐えかねた俺の叫びが聞こえたのかギギギとドアが開かれる。

 現れたのはゆるふわ少女。髪型もやわらかなら顔もやわらか。人畜無害が似合いそうな娘だった。

 

「どうもー。皆はやいねえ。」

 

「遅いわよミーナ危うくこの男を殺すところだったじゃない。」

 

「俺の命が軽すぎる。」

 

 人を害することに一切の抵抗がないのか?

 

「あれ、お寝坊さんがいるー。もしかしてサークル入るの?」

 

「ああ俺はベルトット、一応このサークルに入りたいんだが…、君の名前は?」

 

「私?私はミーナ。ただのミーナだよ。」

 

 ただ者ではないミーナもいるのだろうか。

 

「うーん…。おやミーナも来たのか。それじゃあ皆揃ったことだしそろそろ掃除を始めようか。」

 

 もぞもぞと起き上がりまるで快眠であったかのように伸びをしてサイモンが掃除に取り掛かろうとする。

 

「ん?まだ俺以外で3人だろ。あと一人は待たないのか?」

 

「ああ、ケインは今日は学園自体休んでるんだ。だから今日はこれがフルメンバー。ま、そのうち会えるから気にしなくていいよ。」

 

 そういうと3人は適当に掃除道具を部屋の隅から取り出し思い思いに掃除を始める。俺も用具入れから箒を取り出し適当に掃除を始める。

 

 確かにこの部屋は結構使われてはいないようだったがあまり大きくないため4人掛かりでそれなりに時間をかければある程度はマシになった。

 

 まあまだ掃除しようと思えばできなくもないけど年末でもあるまいしこれくらいが潮時だろう。

 

「ふうこんなもんかな。」

 

 サイモンの言葉がきまりになり、皆道具を片づけ始める。思ったよりエリーが丁寧に掃除していたのが印象的だった。口が裂けても言葉にしないが。命は惜しい。

 

 そして部屋の中央のテーブルを囲んで皆で椅子に座り一段落つける。

 

「じゃあ時間もあるし始めるわよ、今日の不適合者(ラックチルドレン)を。」

 

「ん…?」

 

「ん…?て何よ、ん…?て。…まさか本当にサイモンから何も聞いてないの?」

 

「いやあ話してるとどうにも本当のこと言っちゃうと付いてきてくれなさそうだったからね。」

 

 何の話をしているのだろうか。神秘サークルなどと言っていたが裏の活動目的があるのだろうか。

 

「はあ…しょうがないわね私が説明するわ。ベルトット、貴方はこの馬鹿に不適合者としての才能を見出されたってわけ。有り体に言えば問題児ね。」

 

「何だその不適合者(ラックチルドレン)ってのは。絶妙にダサいのがむかつくんだが。」

 

「センスの文句はサイモンに言って。まあ簡単に言うと私とミーナ、そしてケインはサイモンに弱みを握られて半ば脅されてここにいるの。わかる?この集まりも全てコイツのエゴなのよ。」

 

「弱みを握るだなんてとんでもない。僕はただ友好的に()()しただけなのに。」

 

「ほんとおにひどい人ですよねー、このゴミ。」

 

 ミーナのゆるい雰囲気から強烈な言葉が飛ぶ。此処には口の悪い女しかいないのか。

 

「成程な、まあサイモンが諸悪の根源だというのはわかった。だとしたらなんで俺は此処にいるんだ?そもそも此処は何をするためのサークルなんだ。」

 

「まあ神代魔術に対しての研究をしたいっていうのは変わらないよ?ただそれとは別に人助けをしてほしいというわけなんだ。」

 

「人助け?」

 

「僕が見込んだ君たち3人…正確には4人だが、君らは徹底的に欠陥品さ。人を見る目はある方なんでね。そんな君たちに()()になってもらおうと思ってね。」

 

「なんだ、まるで俺たちが人間でないかのような発言じゃねーか。」

 

「おいおい自惚れないでくれ、君たちが人間なわけがないだろう?それを僕が治してやろうというのさ感謝して欲しいぐらいさ。」

 

 認識を訂正、こいつは優男ではなくてゴミだ。人を見る目がある俺が言うんだから間違いない。

 

「わかった?ベルトット、こいつは入学早々に生徒会(エリート)に強引に入った馬鹿なの。そしてこのサークルはこいつの趣味と評価を上げるポイント稼ぎってわけ。」

 

「あー、まあいいやサイモンが悪い、それはいいとして結局なにするんだ人助けっつっても色々あるだろ。」

 

「せっかちなやつだね君も、今日の当面の予定だって決まってるよ。」

 

 そういうとサイモンは自分のバッグから何かをごそごそと探し始めると二枚の紙を取り出した。

 

「僕が現状所属している生徒会(エリート)には目安箱と呼ばれる制度が取り入れられている。まあわかりやすく言えば学院に通う生徒の不満や要望を聞くための取り組みだ。」

 

 誰だって聞いたことはあるだろう。だが実際利用したことあるというやつは意外と少ないんではなかろうか。しかも利用したうえで解決したなんて奴はなおさら。

 

「このではそういった目安箱の悩みを解決することが目的さ。わかったかい?」

 

 そういうと二枚の紙を机の上におき、サイモンが俺たちに指をさしながら何か考え始める。

 

「うーんそうだな、そこの一枚は僕とミーナ、そしてもう一枚はエリーとベル君に頼もう。それが一番()()()()叶えられそうだからね。」

 

 というとサイモンは一枚の紙を俺とエリーの前によこす。

 

「冗談ですよね?私がサイモンと組むんですかあ?」

 

「泣くほどうれしいだろ?ミーナ、あとで夕飯をおごってくれてもいいよ。」

 

 柔らかな表情なのにミーナの声色が異様に冷たいのは気のせいではないだろう。

 

「ていうかよ、なんだかんだここまで来たけどよ、俺は別にこれやる理由がねえよな?現状まだ他の奴がされたような()()を握られたわけじゃないしよ。」

 

「まあそういうなよ君にもメリットがある。君は最近授業の参加回数が怪しいだろう?それを僕が何とかしてやってもいい。」

 

「代返してくれるってか?嬉しいが俺の席は最前列だいないこと自体すぐにばれるぞ。それとも何か?生徒会の力を使って口聞きしてくれるってか?」

 

「僕の固有魔法(オリジナル)は幻影作成、つまりは君の姿を作って出席させてあげようということさ、どうせ寝てるんだしばれることもないだろう?どうかな君にとっても悪い話では…。」

 

「是非!協力させていただきます!俺ほど人助けという行為の似合う人物もいないでしょう!」

 

 なんてことだ、俺の本質が善性の塊だってことを見抜かれていたとはな…。前世は英雄サンドロスだとよく言われてるのがばれたかな?

 

「変わり身が早すぎてなんかキモイですねー。」

 

「10点、次やったらコロスから。」

 

 女子たちからの冷ややかな視線が刺さる。まあ天才とは理解を得られにくいものさ。

 

「はあ、そろそろいいかな?早く依頼を確認してくれ。まあ時間のかかる者ではないから…、そうだな、3日あれば完了できると思うよ。」

 

 サイモンに促されるままに俺はテーブルの上の折りたたまれた紙を手に取ってそれを開いて依頼を確認してみる。すると中には…。

 

「「彼氏のDVが酷いので解決してほしい。 1-βリリア・ヒューム」」

 

「え…?」

 

「まあ簡単な方だろ?それじゃあ3日後にここに集合で期待してるよベル君。」

 

「いやいや簡単じゃねーだろ!めちゃめちゃ重い内容だろうが!あと人選ミスが酷すぎるだろ!俺はともかくエリーなんて暴力の権化みたいなガガガガ…。」

 

 体がビリビリ、素敵な電撃が俺の体を駆け巡る、ドサッと俺はその場に崩れ落ちた。

 

「0点。」

 

「驚いたな、エリーの電撃を食らってまだ意識があるのかい?僕ですら数分は意識を飛ばすんだが…、よほど丈夫みたいだ。」

 

「ええ、嬉しいわ。新しいオモチャが手に入った気分よ。」

 

 床に突っ伏した俺の上でなにやら失礼な会話が聞こえてくる。誰がオモチャだ誰が。

 

「まあいい、それじゃ3日後にここでまた。」

 

 サイモンのその言葉で今日の神秘サークルもとい不適合者(ラックチルドレン)はお開きとなった。

 

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