オガミ婆は私の嫁   作:記憶破損

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青春が何者にも訪れるとは限らない


日常

 

 時代が進むにつれ戦争は激化している。米国からの攻撃で東京に爆撃が来たのもつい最近だ。歴史通りに進むのか不明だが、少なからず広島・長崎には絶対近づかない方が無難だろう。安心を得たいなら外国に逃げるという手段も無くはない、この時代でアジア人がまともに相手されるかは別として。そもそも、今の日本人が逃げる存在を許さないで八つ裂きにされる可能性が高いです。

 

「困りました」

 

 日本は戦争による人員補充案として臨時召集令状、赤紙を発行しだしました。当初は青年など一定の年齢になった健康男子だけですが、戦争が長引けば年齢層を下げるのも時間の問題。そうなると、今世で事業者跡取りとしての地位を持って生まれた自分も対象となる。

 

「彼女との時間が減ってしまう」

 

 彼女…オガミ少女との過ごす時間、それが何よりも優先されるべき事象であると青井は考えている。彼女がどこの学校に通っているか、どこに住んでいるか、何が好きなのか、好物は、嫌いな―ーー…今まで流されるまま過ごしていた日々はもう終わり、流れにモーターボートで反するように心が躍っていた。彼女と踊る時間は心も踊る、彼女と過ごす箱の日常も全身が溶けそうになる。言葉で表すなら…‥今の青井は青春していた。

 

 

―ーー

―ー

 

 

「同い年だったのね・・・どうしてここに来たの」

 

 私が愛の道を求め、彼女について調べて、調べて、調べヌいた。ならば、彼女との時間を確保するのも必然と言える。

 

「貴方に出会う為に来ました。あの時はお互いに冷静になれる状態では無かったので」

 

 彼女が口を開けかけ止めてしまう。しかし、青井は察する、迷い、混乱、悪意、そして…共感…‥今の彼女は求めている。

 

「混乱は察します。ええ、私も心が躍っておりますが感じています・・・貴方を知りたい、改めて伝えます…貴方のお名前を教えて頂けませんか」

 

 「ッ…オガミよ」

 

 彼女の紹介を聞いた時、心肺が停止していました。彼女のほのかに赤みが出た頬、やや左にそれた目線、慣れない感情に任せて私に合わせてくれた彼女の愛…私は今、彼女の愛に包まれていると自覚した。

 

 

 

 

 

 

「この力は呪術って言うのね」

 

 彼女の覚えは早い。元より基を自分で作っていたので呪力の基礎は問題なかった。後は細かい呪力操作、呪術界の常識など教えていけば立派な呪詛師に早変わりである。彼女が望んでいたとはいえ、自らの手で呪詛師にしたことに少し興奮していたが…黙っていた。

 

『た、たしゅけじぇぇぇ…」

 

 いい的がいたので適当に捕まえて彼女の練習台にしました。彼女の呪力練習台になれたことを光栄に思ってほしいです。

 

「ええ、貴方の使う【降霊術】は戦闘向きではありませんが、死んだ人間から情報を抜き取る、死んだ人間の力を使用するのに特化しています」

 

『ぐげ!?あ、ああ・・・あれ、わたし』

 

「…試してなかったけど、出来たんだ」

 

『ひ!?いや、助けて!?』

 

 黙れ…そう命令すると意味がわからない様子で口を閉じる少女が出来上がる。他者に降霊するのは初めてだったようだが、上手くいったようだ。

 

「素晴らしい!作品を作り直させてしまう事には私の心が痛みますが、貴方の腕がより向上していく姿に今私は感動を」

 

「あーー!青井・・・恥ずかしいから」

 

 今、この瞬間に脳が、心が、魂が焼かれていく…私の心臓は旅に出かけたいようですが、前身のアドレナリンが血液を沸騰させているのを感じながら耐えます。

 

 

 

 

 

 

 

 戦時中の子どもの遊びとは何だったかご存じでしょうか?お手玉、おはじきなど想像するかもしれませんが、戦争が長引くにつれ娯楽を作る工場は弾薬工場となり、娯楽商品も消えていきます。故にチャンバラ、戦争ごっこ、金がかからず大人たちの姿を見た子供が思いつくモノなんてたかが知れています。軍国に伴う思考誘導の賜物とはこの事でしょうか?自国の事を思うのは良いですが、思い過ぎて周りが見えなくなったのが敗因だと自覚してほしいですね。

 

『贅沢は敵だ!』

 

 聞いたことはありませんか。物資が無くなり、日々の生活もままならない中で教えられる言葉。何もないからこそ得る為に頑張るではなく、何もないからこそ、その状態に適応する。未来では決して受け入れられない考え方ですね。特に問題なのが食料なのは言わずもがなでしょうか?

 

「美味しい」

 

「それは良かった、おかわりは?」

 

「…いる」

 

 私の愛を込めた料理が彼女と融合していく。彼女も豪勢な料理は初めてなのだろう、さつまいも、じゃがいも、すいとん…焼きじゃが、ビーフストロガノフ、鶏がらスープなど準備した。特に彼女が好んだのは鶏がらスープ、香辛料でちゃんと味付けした物で食べた時の顔は魂に永久記録している。

 

 何でこんなに食料があるのか…それは私の親が外国との取引をしていたから。と言っても戦争が長引き、今は取引できておらず当時の栄光は無いに等しいですが。とはいえ、食料は基本消費する物であり、何より冷蔵庫など普及していない時代に長期保存する事ができない為、基本食料は消耗品扱いなのは違いない。そこで活躍するのが私の術式…名は付けていませんが影を操り、収納・攻撃、万能に動かすことができる力。戦争になるのは知っていたのですから、秘密裏に入れていた物です。しかも影の中の物は腐らず当時のままの状態で保持できる、使わない手はありません。

 

 お腹が膨れたのか、辺りを見渡す彼女。我が家にご招待する手前、念入りに清掃していたのだが何か気に入らなかったのか…

 

「あんたの親はいいの?」

 

 彼女が見たのは私の両親だったようだ。上の空で食事を楽しんでいるようだが、今の両親が見ている我々はどのように映っているのだろうか…やはり婚約者…‥ああ!いけない、まだ、まだ‥‥ふぅ…帳の応用で幻覚付きの結界を両親の周りに張っている。一種の催眠状態なので問題ない。

 

「貴方との時間を得られるならいくらでも」

 

 そう笑顔で返すと彼女は目をそらす…本当に素敵だ

 

 

 

 


 

 

 青春はこれからだ。だというのに…国が、世界が、私達を否定する。

 

 1943年…日本軍がガダルカナル島撤退を開始した。米国との戦いで兵站を疎かにしていたのが主な要因だが、そもそも米国との物量戦など馬鹿げた事だと自覚していない時点で敗北は決まっている。

 

「青井・・・疲れた」

 

「ああ、何と…手足がまるで鉄の如く固まっています!」

 

「ひゃあ!・・・」

 

 我が家に来る彼女が日常になっている日々の中、戦争が本格的になってきているこの頃…私としては彼女との甘い学生時代を謳歌したいと思っていたが学校も閉鎖されたに等しい状況なのが現状だ。

 

 我が家のソファーに寝転んだ彼女に対し、マッサージを繰り返す。その都度彼女から発せられる声に私の心は燃えている。彼女も時代の被害者であり、日夜軍事工場で弾薬を作っている。当初は回避しようと模索したが、年齢、立場、社会の現状、その他にもあるが、社会との靴幅を揃えざるえなかった。最近では彼女の趣味もできず、発散できていない様子。

 

「…赤紙は?」

 

「いいえ、まだです。私は13、そうですね…来年、再来年には収集されるかもしれません。私の父は既に行きました…残念です」

 

 心苦しいですが仕方ありません。それはそれとして私は工場で働いていません。正確には働けません。

 

「そう、闇市で集まってる?」

 

「ええ『盤星教』の面々と接触はできています。後は替え玉の用意、立場の購入でしょうか」

 

「やっと、この面倒な仕事から解放されるのね…」

 

 我々がこれから向かうのは『盤星教』ではなく、その信者たちの子としての立場の確立。私は闇市を支配するのにどうしても、どうしても、彼女と共にいられない時間を作らざる得なかったのです。未来への投資…私の記憶には助けられていますが、悩ましい事です。

 

 …余談ではありますが、弾薬工場には基本女子が送られます。男子は戦場、または肉体労働送りです。私は不健康児としている為、収集を今のところ受けていないだけです。彼女が工場に行くとわかった時、女装してでも行こうかと思いましたが…彼女から止められてしましました。彼女の愛は計り知れず私を包んでいると感じた瞬間です。

 

「ねえ、青井…」

 

「はい、何でしょうか?」

 

 彼女はこちらを向いていた顔をソファーにうつ伏せ、小さな声で呟いた

 

 

 

 

 

 

好きよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 楽巌寺嘉信「個のために集団の規則を歪めてはならんのだ」

・1943年…楽巌寺嘉信くん 1歳
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