オガミ婆は私の嫁   作:記憶破損

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【閑話】です。

ご友人…私は上手く書けているのでしょうか…

ご友人の事を考えて、新しいご友人を招待しました。


愛情

 

 夕焼けを背に浴びながら玄関を開け中に入る。彼の家と違う質素な作りの家…帰っても待っているのは嫌な現実。彼とのひと時を過ごす時間が夢見心地なのを感じてしまう。ずっと見ていたい夢だから、時には我慢も必要だと自制する。

 

 …オガミ、帰って来たの?ふふ、見てごらん…

 

 母がほころぶ顔で見せてきたのはドングリとサツマイモだった・・・そう、これが普通なのだ。戦争が長く続くにつれ、食事がどんどん質素になっていった…‥いや違う、家畜のエサになったのだ。

 

「…うわ~!」

 

 満面の笑みで喜びを表現すると、母もまた笑みを浮かべ料理をし始めた。あの食材なら、ドングリは粉末にしてパン擬きか団子だな…

 

 私も彼との交流で演技?世渡りかな、子どものままじゃ恥ずかしいと感じるようになった。多くの人になったせいで知識と感情が大人びた物になったと自分でも思う。でも彼には敵わないと思ってる、頼りがいがあり過ぎる彼を目標にしてしまうのは違う。私は彼の隣で‥‥

 

(ふふ、贅沢は敵ね)

 

 私にとって贅沢は友だ、だったら悦に浸るのも許される。例え許さない存在がいても、私はそいつを潰してやる。

 

 …さあ、食べましょうか!…

 

 食卓に並ぶ豪華な料理の数々、サツマイモ、ドングリ粉で作った団子、ご飯、水…‥勿論、調味料など無い自然な味が舌を刺激する。それを満面の笑みで食べ始める親子の姿には一般家庭の温かみを感じるだろう。

 

 …‥ああ、青井…貴方のことが急に恋しくなったわ…

 

 贅沢は敵…一度でも贅に負けたら勝つのが難しい。お肉は?調味料は?揚げ物は?パンは?食後の果物…‥あるはずの物がない。逆だ、ないはずの物があったのだ。

 

 …美味しいでしょ?…

 

「…うん!」

 

 私は上手く顔を作れただろうか…

 

 

 

 

 

「『盤星教』の方々に合わせる為に天元様について知っておきましょうか」

 

 青井の説明を聞くと、その天元様という術師はこの日本全土の結界の強化・行使をしており、人から化物になった存在らしい。全てに干渉できるだけの存在…私からしたら化物と違いがわからない。

 

「その言葉は出してはいけませんよ?盤星教の皆様にとって天元様は宗教対象ですから。私としては、呪霊と大差がない気がしますがね」

 

 人の業を向けるだけの存在、人の業から生まれる呪霊、何が違いがあるのだろう?人の負の感情から呪霊が生まれるようだが、数多の感情を向けられた存在が変化しないと考えないのだろうか?そもそもの過程が曖昧な気がする…私がふと考えてしまう疑問に答えはあるのだろうか。

 

「そうですね…私も論理的に説明が難しいです。ただわかることは、憧れは理解に程遠いという事です。我々にとっての天元様は装置、盤星教の方々にとっては夢、これぐらいの気持ちで十分だと思いますよ」

 

 

 

 憧れは理解に程遠い…か…私は貴方を理解できてるのかしら…

 

 

 

『まだ我々には時間があります。ご家族との時間をお互いに大事にしましょう』

 

 私の気持ちを察するのが上手い癖に、この時は答えてくれなかった…私からの告白も彼は普段通りに返してきた。

 

 

 

 

好きよ

 

 

 

 ただの確認のような物だった。普段から愛してるなど浮いた言葉をかけてくれる彼への思い…ただ、好きだとか…簡単に返してくれたら満足できた。

 

 

 

「愛してますよ」

 

 

 

 …‥どうしてかな…あの時の彼の言葉は私に向けた物なのに心に響かなかった…言葉にしずらいけど…私という存在(・・・・・・)そのものを愛しているって言ったように感じたのだ。そこに違いは無いのかもしれないけど…

 

 

 彼は個を見ているようで、その個を見ていない。その個を構成する要素を含めて愛している・・・持論でも意味がわからない。彼を好きかと言われれば好きだ、愛してるかと言われても愛してると返す…きっと彼も同じ返答をするだろう。

 

 

(ああもう!意味がわからない、私は彼が好き!終わり!)

 

 

 現実との差で気持ちが滅入ったのだろうと考えながら、ドングリの香ばしい苦みを舌で遊ばせ、黙々と胃に入れていくのであった。

 

 


 

 

 

 闇市とは市場から外れた非合法な市場の事です。知られている闇市は戦後の貧困時代が有名ですが、実際は戦時中には既に闇市は存在していました。数少ない物資を市民間でやり取りするのはなんと微笑ましい努力です、感動的ですね。

 

 売られていた物は主に煙草、野菜、果物、手作り雑貨類など様々です。未来ではバザーなどと呼ばれ、形を変えて残っているのを見るとどこか観念深い感覚に囚われます。

 

 …あら、青井さんのところの…

 

「こんにちは」

 

 切羽詰まると人は獣になります。自分より華やかだ、自分より金持ちだ、自分より、と自らと比較して見定めるハードルを無理やり下げようとする生き物です。その中で生きるには自らもハードルを下げて生きるか、ハードルに手が届かないレベルまで上げるかしかありません。私の場合は下げるやり方を取っただけの事。闇市に来る人々の大半とは知り合いになっていますが、コミュニティの形成が今後に左右される可能性があるのなら全力で作るだけの事です。

 

「このクソガキ!俺のリンゴだぞ!」

 

 ですがお気をつけを、非合法という事は集まる者を統率する存在がいないという事。価格の引き上げ、所謂ボッタクリは日常茶飯事、食品類は特に値上げが横行しています。例えば通常ではリンゴが1個100円のところ1000円と約10倍ほど値上げされて売られたりします。それがまかり通ってしまう現状は実に悲しい事です。

 

「止めて下さい、ああ、怪我をしているのですね」

 

「ああ!このガキの」

 

「どうぞ、私の購入したリンゴですがよければ」

 

「あぁぁ!なめ・・・つッ…」

 

 戦時中の闇市と言っても客は民間人、婦人の方々が大半である。そんな中で悪いのは子供と言っても暴力を続けていたら闇市から追い出される可能性が出てきます。助け合う、それが闇市ができた当初の理由…それに相反する行動を続けたら除け者にされるのも必然。

 

「大丈夫ですか?」

 

 私が助けたのは戦争孤児のようですね。衣服はボロですが着ています、見え隠れしている素肌は骨が浮き出て見えるほど筋肉が衰えているようです。栄養失調の典型、親が亡くなり何もわからず放り出されたところでしょうか?

 

『あう、あ…りが』

 

 乳歯の生えかけが見えました。見たところ私より幼い、9~10程度でしょうか…周りの方は見てきますが手を出す気はない様子。まあ、自分たちの生活も危うい中で他者を助けようとは思わないでしょう。それに、戦争孤児はこの時代にありふれているのですから。

 

 助けた子が私を見つめています。この世の理不尽を嘆くことすら知らず生きる幼子…ああ、悲しいですね。ならば私がその悲しみを受け止められるでしょうか…背丈を合わせ伝えましょう

 

「私の友人となりませんか?」

 

 突然の事で混乱しているようです。ですが大丈夫、ゆっくり壊れないように抱きしめます…どうやら身なりが気になると、私が汚れると抵抗してきました。

 

「大丈夫ですよご友人、貴方は汚くない…こんなにも美しいのです、自信を持ってください」

 

 そうです、汚いのはこの世全て。個人での汚さなどありません…泣かせてしまいました。ああ、そういえば名前を聞いていませんでした。

 

森 かどる(モリ カドル)です』

 

―ーー

―ー

 

 

 

「で…連れて来たと」

 

 彼女の目の前には風呂に入り、お粥を食べて満腹となり寝ている森少年が寝ていた。

 

「…何で孤児を拾ってくるのよ」

 

 私が殺していいの?…‥彼女の熱の籠った言葉に心を動かされそうになるが、今回は心を鬼にして、いや足りませんね、阿修羅すら凌駕して耐えます。

 

「上層部は我々の力を欲しているのは明らかです。現に呪術師たちに連絡していないようなので」

 

「ああ~・・・新しい身分とかは青井に任せてるからいいわ…その子は何?替え玉?」

 

「いいえ、私のご友人となった森君です…私の力で彼も使えるかもしれないと思ったので」

 

「…呪力があるのね」

 

 ええ驚きました。闇市を見張っていたら呪力を感知するなんて、どうやら暴力を受けたのが切っ掛けで目覚めたようですね。

 

「育てる気?」

 

「ええ、良きご友人ですから。先ずはよく食べ、よく動き、よく寝るを繰り返して頂きましょう」

 

「…もしかしてだけど、組織でも作る気なの?」

 

 私は青井がいれば…‥その愛で焼かれますが再起動します。

 

「組織と言っていいのかは不明ですが…呪詛師だけの、正確には我々のご友人を集めた団体を作りたいと思っています」

 

 非常に残念ですが、我々だけではこの世界との踊り相手にはなれないとわかっているので。

 

「はぁ…青井の考えを理解できる日は何時になるのかしらね」

 

 ああぁぁあぁ私を彼女が愛を…‥ふぅ…満たされました。

 

 私が闇市にいるのは事を早めなければならないからです。学徒出陣…本格的に実行され出しています。皆々『鬼畜米英!』など掛け声を上げながら話す同期の者が多い中、森少年のような若い人材がその能力を発揮する前に消えてしまうからです。戦後を見据えた動きができない世論が蔓延るに対し、呪術師たちの方が賢いとは世も末ですね。彼らは穴倉に潜り、普段通り薄暗い道を進み続けているようです。

 

「もう少し時間が欲しいのですが…あと数ヶ月ですか…」

 

 困りました…先ずは各地方でご友人を集めるしかありませんか…

 

「・・・本当に来るの?米国の…」

 

 

 ええ…来ますよ…

 

 

 

 

『B-29』という黒い鳥がね

 

  






 夏油傑「最期くらい呪いの言葉を吐けよ」

 1990年…-47歳


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