オガミ婆は私の嫁   作:記憶破損

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相手を理解できている人の方が少ないものです


家族

 

 『盤星教』は非術師の集団。天元様の教えを広げ、統括するのを目的としている。対して呪術師の基本として呪術は秘蔵されるべきと考えている。呪力がある者は呪術界の掟として登録、強いては御三家含む呪術師によって管理されねばならない原則となっている。宗教と呪術界の相性は正しく火に油、盤星教の面々が無事なのは【人】だからという、呪術師の考えより、道徳的な考えを捨てなかった呪術界の気まぐれに救われたとも言える。その気まぐれ故に互いに干渉を控え、内部の事を調べる手が伸びずらいのが我々にとって都合が良かったのだが。

 

「…残念です。いえ、この場合は誇るべき事なのでしょうか」

 

 私に赤紙がきた。それと同時に【誉の家】とされた。泣き崩れながら『おめでとうございます!』と言われる母を見て悲しい現実に目をそらしたくなるかもしれません。私の父は名誉の死、天皇様の為に死ねたと誉れ高いと人々は声を上げ拍手をする。新聞にも誉の家として紹介されるのはこの時期ではよくある事。こういった、世の理を見てしまうと人というのは罪深いものだと改めて感じてしまう。

 

『どう˝じでジンじゃぅ田ノォォ』

 

 母の体から負の感情が浮き出て来た。今の時期は呪霊を生みだすスパイラルが起こっている。戦争直後と比べても呪霊、呪言、の見える数が桁違いに増加している。人々の感情が下がる一方、呪術師たちは日夜祓うのに動き続けているようだ。しかし、今の極限環境により生まれた呪霊より未来の比較的平和な時代を生きる人々の感情から生まれた呪霊の方が強靭になりやすいのはどうしてなのだろうか。感情の多様化に伴う呪霊の進化?それとも…‥

 

 五条悟が産まれたから

 

 未来の知識ではそうであると、そのように描かれていると記憶している。突起戦力の登場に呪霊側が対抗した、バランスが崩れた…どの世界でも突発的にバランスブレイカーは現れる宿命なのでしょうか?

 

「それも受け入れるべき事象なのでしょうね」

 

 話を戻そう。まず私は戦争には行く。私の柵を無くす方法は他にあるが、今世の母を心より納得させる手向けだ。納得のいく終わり、それを提供するのも 青井 弐 を始めさせてくれた者に対する最大限の礼だろう。

 

 戦争に行く話を彼女に話したら猛烈に反対してくれた。愛の激流に身を焦がしながらも、礼だけは帰さなければ納得できない自分がいた。ある意味、私という存在を表に出して伝えたのは久しぶりな気がする。彼女も少し驚いた様子だった。基本的に私は彼女の言葉を否定・反対することはないからだ。それに…あの協力者(・・・)の縛りが効いている今だからこそ、私のわがままが通るのだ。時には年齢相応な感情も発散したくもなる。

 

 …ですが、協力者に縛りを結べるかは賭けでした。切らざる得ない自らの記憶も縛りに含めたのです、こちらの手札を見せ、相手が乗ってくれたのは幸いです。我々が呪詛師だからこそかもしれませんが、後ろ盾として使えるなら何でも使わせてもらいますよ。彼女の安全も縛りの内、仲間集めも並列して頑張って頂きましょう。相手からすると計画上必要であり、それらが集まり働くなら過程はどうでもいいと思っている節がありましたので、お互いに納得いく縛りとなった事は喜ぶべき事でしょう。

 

 

 

 

 

「どうして行くのよ!何の為に戸籍を、新しい土地だって」

 

「ええ、ですのでオガミには少しの間…私を待っていてくれませんか?」 

 

 新たな戸籍、移住する村を決めて半月。新たな家族になる面々とも挨拶は既に済ませている。元より決めていたことだが、彼女に話すのは直前だったのが災いした…彼女の思いを堪能できる時間を楽しんでいたのは内緒です。

 

「っ森は、あの子はどうするの…私に育てろっていうの…」

 

 ええ、そうなります。私は登録上死ぬ必要があるので会えるのは比較的すぐなのですがね。私が送られるのは・・・訓練時期も考え、歴史と合わせると『ペリリューの戦い』に向かわされるかもしれませんね。

 

 1944年…ペリリュー島(未来でのパラオ共和国)の戦いは日米合わせて約5万人が死闘を繰り広げた。サンゴ礁上に作られた小さな島で起こる地獄のような泥沼の戦いは未来で語り継がれている。

 

「ですがご安心を、納得のいく死を感じたら帰りますので」

 

「…本当に死なないでしょうね」

 

「貴方を残して消えませんよ」

 

 ですので、新たな家族…特に今度の母親になる方とは仲良くしていてくださいね?少々変わった方ですが、頼りがいがある存在ではあるので…あの方の話をしたら、しかめっ面になってしまいました。

 

「何であの、頭を怪我してる女から師事を受けなきゃいけないのよ…そもそも盤星教って非呪師しかいないんじゃ」

 

「彼女は特別ですから、呪術に関してなら彼女から聞いた方がより上手くなれます。森君の師事者としての側面もあります…程々に頼ってみてください」

 

 本当に呪術に関しては敵いません、ですが問題ありません。最終的に我々が良ければいいので、今は彼女の願いを手助けして未来がより悲惨な出来事になっても我々が楽しめていればいいのです。オガミの未来が明るい、それだけで私は満足できますので。

 

 


 

 

 

 

 

 

 人々が寝静まった夜の事、未来では当たり前の光球はなく蝋燭で火をともす静かな灯り。その灯りも贅沢として姿を消していくのだから、最後の灯りは尊い物のように揺らいでいる。

 

 

 

 

「面白い人間が産まれた者だ…しっかし、怠いな~…この体だと動きずらいけど縛りだしな~」

 

 その女は肩を回しながら、日々のつまらないルーティーンに飽きがきていた。数年前から労務緊急対策要綱…女性を労働させるのが当たり前となって以来、日々自由に動き回るのが難しくなっていた。

 

「まあ、彼の知識を得られるなら少しの我慢かな…死んでくれるなら貰うけどね」

 

 あの子は死なないだろうけど・・・・・思い出すのは温和な雰囲気で近づいて来た14歳の少年。あの時は呪力のある子供だと思って興味を持っただけだったが、何だかんだで今では協力者になってしまった。それもこれも、彼の持つ未来の知識が原因だ。私の正体を暴くだけでなく、計画の事も話し出すからつい笑ってしまった。イレギュラーは歓迎だが、彼のような常識外れな存在は人生で初めてだった。年甲斐もなく、久方ぶりに心が浮いた瞬間だった。

 

「でもまさか、私に母親になれとはね…しかも呪詛師に育てつつ雑用とは、彼は人使いが荒いよ全く」

 

 呪術界を、人を進化させる。その為に天元、強いてはその力に同化させる素体の用意…彼が最低限提示してきた情報は私にとって有益なものだった。何より彼は呪詛師、人として破綻していたのが決め手だった。

 

 

 

 

 

 

 

『よろしくお願いします』

 

『…よろしくお願いします

 

「ええ、こちらこそよろしくね。オガミちゃん、それと森君?」

 

 

 彼から育てなくてはならない者達を見定めた。どちらも呪力を持っているが、少女の方は使い慣れているに対し、少年の方は最低限呪力がある程度だった…少女の術式は貴重だったのはよかった…それぐらいしか印象に残らない2人だった。あの彼のお墨付きだと期待し過ぎた自分が悪いのだが、少し顔に出てしまっていたらしい。少女の方に不快感を与えたようだった…だが逆に、その刺激が良かったのだ。

 

『あんたイラつくわ』

 

 少女は躊躇なく私の顔面を呪力で強化した拳で殴って来たのだ。勿論無駄に殴られたくないので回避するが…回避したせいで玄関扉が破損したのは嫌な想定外だったがまあいい。この子もある意味、普通じゃないと少し興味が湧いたのだから。逆に少年の方はビクビクとして自信がないのか、不安なのか…孤児から復帰したばかりなのだからと納得することにした。

 

 彼が言うには米国はこれから小さな島々を占領していき要塞化及び基地化を繰り返し、地盤を固めた上で日本本土を占領する作戦に移るそうだ。それに対抗すべく日本国軍はパラオ諸島、ペリリュー島にて徹底抗戦を決め込むらしい。う~ん…彼の話を聞いているが勝てる見込みがない、それに孤島で補給なしに生き残れるのかな?呪術は万能じゃない、彼の呪術はまだしも呪力は平凡だった。それは彼も理解しているはずだ、それでも行くなんて言った時、「頭がいかれてるんじゃない?」と伝えたよ。

 

 

 

 

 

 

「さてと…確かこの辺だったはずだが…うん?灯りが」

 

 彼女達を引き取る最終チェック、打ち合わせをするため夜風を浴びながら彼の自宅に足を進めていた。夜道故に憲兵がチラホラ歩く姿が見えたが、呪力も持たない非呪師に捕まる程この体は弱くない。簡単な認識をずらすことなど容易いことだった。

 

 珍しい洋風な建築物を見つけ中庭に入る。事前に時間は決めていた筈だが、彼の出迎えがない…辺りを見渡すとカーテンがしまっているが、夜を照らす緩やかな灯りが目についた。

 

 

 

 

 

 

 …はぁ…はぁ青井…必ず産むから…もう一回よ…

 

 

 

 

 カーテンの隙間から見えた少女の裸体。少女に押しつぶされるようにされながらも一緒に踊っている男が一人いた。

 

 

 約束をほっぽりだし何をしているのか…たぶん、戦場に行く前に少女の方が迫ったのだろうと予想できるがどうでもいい

 

 

 

「キッショ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 薄いけど性的表現は申し訳ない。書きたかった、それと私は暗くなり過ぎない程度に歴史背景を混ぜる書き方を続けると思うので、見てくれる方にあらかじめ伝えさせて頂きます事を失敬。

 
 
 ペリリューのお話は私が心に残る漫画があったのでつい話に組み込んでしまいました。

『ペリリュー 楽園のゲルニカ』という作品なのですが、よければ手に取って見て頂きたい作品ですね。個人的に歴史ものは大抵好きです。『応天の門』とか『信長のシュフ』など戦記モノ以外も好きです。
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