1945年…黒い鳥が日本に襲来した。日本各地で被害が出ており日夜日本空軍が出動している。
B-29の本土襲来は大日本帝国は事前に察知していた。だが迎撃する力が底をつき何とか被害を抑えるので限界だった。どんなに落としても次が来る…無限と感じられる質量の前になすすべがない。10倍以上の戦力差は大和魂でも塗りつぶせなかったのだ。
市民達からは理解できない状況である。大本営発表は日夜、日本軍の類まれなる快進撃を流しており、この間まで勝っていたのに爆撃が始まったのだ、混乱するのは当たり前だった。
『熱いィィ水ゥゥ』
爆撃は火薬による爆風によって起こる衝撃波のようなもの、人間が食らえば痛みもなく吹き飛んで終わるだろう…しかし、B-29に使用されたのはM69焼夷弾であったのが問題だった。
焼夷弾は名の通り、火炎瓶同様の働きがある。爆風で飛び散った着火剤が少しでも付けば火だるまになるのは避けれず、水を被った程度では消えない…例えすぐ水の中に入れたとしても重度の火傷を起こしている状態から動くこともできず、気道熱傷、熱傷ショックなどまず生きのこれないだろう。
戦時中の日本住居は木製が主流だったのが災いし、その研究がされていた故に起きた出来事…それが歴史に刻まれた悲劇、日本本土空襲である。
「いや~東京はよく燃えていたね。見て来たけどいい光景だよ…でも駄目じゃないか、肝心な場所にかすってすらいない」
『what! you!?on top of a bird!?』
B-29のパイロットは幻覚を見ているのではと慌てていた。これから京都空襲に向けて飛んでいたら、夜空しか映らないはずの景色に日本人女性が現れたのだ。しかも、巨大な鳥のような怪物に乗って。
【…listen to me ok?】
『・・・ok』
「よし、じゃあ行ってみようか…嫌がらせにね、私も本来こんなやり方は好かないんだが、まあお試しってことで」
顔を歪めた東洋人を眺めながらパイロットは追従する。追従した機体だけでない、本来なら他の区を爆撃するはずの部隊全体が追従していた。パイロット内でオペレーターが呼びかけるが回線を切り、命令通りの行動に移っていった。
「六眼は天元と因果によって結ばれた決定された未来、例えどんな事をしても必ず発生してしまう…が、
青井の快進撃の手紙から丁度2ヶ月…京都空襲が始まる1945年1月に行動に移った。彼から知らされた知識には降下される場所をあらかじめ教えられていた。本来なら彼の妻を危険に晒すことの無いように伝えられたことだが…
「元々爆心地から離れた田舎だ、それにこの行動は万が一彼女を傷つけないよう遠くに誘導しているだけだからね」
オガミの安全を守る。実にシンプルな縛り、故に強力。下手に彼女を傷つける行動は全て縛り違反になってしまう。だからこそ、縛りを守りつつあの娘に優しいお母さんでいるのだ。
今頃、ぐっすり寝ている事だろう。明日の朝の作り置きを良く味わって食べてほしい物だ、頑張って作ったのだからね。
「さて歴史は変わるかな?」
…盛大に吹っ飛んでくれ五条家の皆々様方…
日本が爆撃を受け、遠く離れた地でも混乱は起きていた。『鬼畜米英によって女子供は犯され、人の尊厳を失う。やられる前に死を選べ』または玉砕精神で立ち向かえ…二択に一つ。長きにわたる戦いの中、教えを守る者達は多くいた。
海が近くでは岩礁連なる岩山で子供と親は列をなして落ちていく。本土を占領しようと襲来した米国人が見た者は防空壕内で自殺した者達の山に恐怖を覚えたという。
世の混乱を肌で感じるようになったこの頃、寝起きの頭で朦朧とする森少年はご飯を食べに食堂に向かった。そこには裏紙に母となった者からの一言が書かれていた。
『ちょっと散歩してくるね。鍋の中にご飯があるからお姉ちゃんに温めてもらって食べて』
この時期に散歩。本人は認めないがどんくさい森少年はあることを連想してしまった。そして大慌てで走り出す。
「オガミ姉!どうしよう、お母さんが散歩してくるって書いてあった!?」
「あっそ、あの女が自殺するように見えるの?」
「だって!この間も隣の人が!」
死を恐れるのが人間の性…一人だけでは決断できず集団で行うからこそ成功する。それはどの地域でも変わらず、孤独死した者はとても少なかった。
「死ぬなら勝手に死ねばいいわ。私にはこの子がいる」
妊娠4ヶ月を過ぎ、だるさなどの症状が落ち着いてきた。大きくなったお腹から自分でも生命が宿っていると感じている。
「…僕が青井兄が来るまで守るから!僕は強いからね!」
鼻息を出しながら自信満々に発言する馬鹿な弟分を見る…呪力操作に関しては問題ない、そこらにいる呪霊なら倒せるだろう。呪術に関しても獲得し、呪力を球として飛ばす『呪弾』という能力も使える。呪霊に関してなら任せてもいい、呪霊なら…
「そ、なら空飛ぶ飛行機を落としてきて。ついでに呪術師が来たらお願いね?」
「!え、いや…じょ、冗談じゃ」
森少年の『呪弾』は威力として小拳銃程度の威力がある。非術師であれば十分だが、鉄板に覆われた空飛ぶ機械や同じく呪術で対抗してくる輩には力不足と言わざる得なかった。呪力に関しても並にやや届かず、自分よりも低い…ぶっちゃけ弱い。
「はぁ、冗談よ。さあ、何を作ってくれたのかしらね…は?何で鍋の周りに帳を」
無駄に器用な事を・・・・・簡単に解けた結界をこの時恨んだ。結界内に圧縮された猛烈な匂いが自分を襲った。後の世でその料理はこう呼ばれる…≪ニンニクマシマシニラマシラーメン≫
爆炎が京都を襲った。だが少し変わった事に爆撃を受けた場所は軍事施設もなく、一般人も滅多に近寄らない辺境な場所ばかり狙っていた。強いて言うならその爆心地に歴史ある名家の土地が多く含まれていたぐらいである。
『馬鹿な!認識阻害の帳は正常なはっ』
一人
『クソッこんな!』
また一人
『畜生!何だってんだよォォォ』
…科学の力では呪霊に届かない。呪霊とは人間の負の感情からできる実体のある怪物、故に呪術という呪いの力・人の力を持ってしなければ効果が無いのだ。そう呪霊には。
「殲滅にはいいねこれ。おっと、防御結界は壊させてもらうよ」
小さな鳥の群れが女の体から現れ、結界を破壊していく。
「この体の式神は呪力を食い破るのに特化していてね。まあ、食い破るだけで戦い向きじゃないけど」
遥か下で己の式神と遊んでいる名も知らぬ術師を眺めた
『呪詛師がおるのか!おのれぇぇ、それでも呪術を使う者かァァァ!!』
呪術師は名の通り呪術を扱う者達。その術式も千差万別、特級呪術師という単独での国家転覆が可能である者もいる。等級は基本1~4級で表され、突起戦力は特級とされるケースが多い。
「おっと…落とされたか、2級ぐらいかな?」
地上から鎌を持った呪術師が風を纏い飛び、爆撃機を切断したのだ。
「まあまあの腕だね…でも、まだまだ来るよ?」
後の世で価値ある日誌にはこう記されていた…『その日の夜は明かりが消えることは無かった』
海の音が泣いている。船の上に聞こえてくるのは無の流れ…乗る者達は死んでいる、死んでいるが歩みを止めない、信じるモノがある限り。
甲板は酷い臭いで充満していた。ヘドロを煮て、更に臭みを与えたような悪臭…敵からの情けは受けぬと獣のまま歩みを止めぬ者、腐っていても手当を受けぬ者。
『日本は降伏した。戦争は終わったんだ!』
己の信念が否定する。我々は神の国の兵、負けるはずがない、天皇陛下万歳…生きる為に仲間を食べた者もいる、生きる為に信じ続けた者もいる。
…何で自分たちは生きているんだ…
仲間達が呼んでいる…こちらへ来いと呼んでいる
「酷い状態ですね」
そんな者達を近くで眺めている青井がいた。比較的小奇麗にしており、健康状態も保っていた。
『万歳ィィィ!!』
皆と共に刺突爆雷で突撃した際、戦車の影まで突撃し爆発の瞬間影の中に潜っていたのだ。他の者からは爆発で吹き飛んだと見えた事だろう。
「青井君も生きてたんだ!…良かった…あ、でも功績係の子が青井君の事を送って」
「おお、田中君も生き残りましたか。よくご無事で」
「はは…無事というか、その捕虜になって…」
どうやら田中君は早期に捕まってしまい、そのまま捕虜として過ごしていたようだ。
「思う気持ちもわかりますが、生き残った先を考えましょう」
「ふふ、相変わらず明るいね、青井君は…先なんてあるのかな…」
日が昇り、海面に反射し目を覆う、だがその光が何故か心地よかった
「何を言っているのです。これから作るんですよ我々が」
…そうかな…うん!そうだよね!…
とある田舎の一軒家、夜泣きの夜に笑う声、間に見えるは女の子、その腕乗るは母の顔
…私は今、言ってみたい言葉がある…
『おや…おーい、娘さんやお客さんだよ~』
『は?今この子にあげてるの』
『じゃあぼくっ!?』
『…悪いけど立て込んでるんだ』
『っわかったわよ』
ガラガラと開いていく玄関が今の自分にはとてもゆっくりに感じた。今更になって自分の身だしなみを整えたくなる衝動に駆られるが、もう遅い、不格好でも前のように言ってみよう
…ただいま、オガミ…
…おかえり…青井…
ハッピーエンドの条件は、ハンサムが勝つことさ
歴史が変わっちゃった…まあええか