いつの間にかいたそいつは、俺の攻撃を見てから回避しやがった。俺の赤血操術は下手な弾丸よりも早い、それを呪術による強化も無しの身体能力で回避、しかも最小限の動きで避けたのだ。
「おい、どういう事だよ」
自分の眼は呪力に関する事は情報として理解できる。だが目の前の男からは何も得られない…呪力が無い。
「うん?ああ、そういう…俺は生まれた時から呪力がねえんだよ」
言い終わると同時にこちらの間合いに一気に近づいて来た。
早い…対応はできるが、この動きを呪力も無しにできるこいつが意味わかららねえが、触れちまえば勝てる
「おっと、触れさせるとヤバそうだな」
手で触れようと素振りを見せた直後、距離を置かれた…
「あんた何者だよ、どこから雇われた」
「言えるかよ、だがお前さんは特に丁重にって言われててな、手出ししないでくれねぇ」
「悟!」
イカのような呪霊が襲撃者に向かって飛来する。埋め尽くさんと言わんばかりのイカの弾丸を軽々と避けていく中で悟もまた術式を使用した。
「うげ、イカ汁かよ」
周囲にいたイカ擬きを自らの触媒として使用する。流石にさばき切れないと思ったのか、男は口から出した呪霊から呪具が飛び出す…そしてその呪具に触れた瞬間、俺の術式が強制解除された。
「ッおい!理子の奴は」
「呪霊に乗せて奥に向かわせた…こいつは二人でやろう」
襲撃者が一息入れ、呪霊を体に巻いていく
(面倒な依頼を受けちまったもんだ…)
依頼内容は星漿体の生きた状態で確保。そして・・・・・
「また面倒な依頼を持ってきたな、はぁ…実家帰りの後はガキのお守かよ」
「そう言うなよ、金払いは良いんだ。ああそうだ、確保した星漿体はお前持ちだってよ」
生活費は工面するそうだ・・・・・10年来の付き合いがある男から語られた追加情報に顔をしかめた
「はぁ?却下だ、却下。何だそのクソ依頼」
「残念だが、あの人達からの依頼だ。お前も恩があるんだろ?子どもの世話役にでもすればいいじゃねえか、嫁さんもまだ病み上がりだろ」
あの人達。その言葉を聞いて思い出すのは…優しい顔をした老人夫婦とその孫達。頭を搔きながら、苦々しい思いはあれど依頼を受けることにした。
(あの意味わからねえ二重人格障害…あれは呪術が関係しているのは確実)
当初、意識不明の昏睡状態になった妻。それを見越していたように現れた連中によって妻は回復した…だが時々、奇功に走るようになり、とある呪物を手に入れようと動いてしまう。この症状が出た時、あの老人共をぶち殺そうと思ったが…それでこれ以上妻に何かあればと考えると動けない。
それと…妻の体で他の男の名前を叫びつつ奇功に走る人格を毎度捕らえるのも手間がかかる。その人格は子供の教育によろしくない行動をするだけでなく暴力的で子供にまで被害が出かねない。今のところ大体の周期が決まっているので、とある呪具で拘束して捕らえるを繰り返している。
『この体、貧弱すぎ!宿儺、宿儺!私の愛---!…」
思い出すだけで頭が痛くなる…あの連中とコンタクトを図ろうにも警戒されているのか、直接的な接触はあの時以来ない。こういった依頼を出してくる際、仲介を通してこっちの意思を伝える事しか今はできないでいる。
「お前が嫁さんを大事にしている限り、この状態からは逃げられねえよ…」
タバコの臭いが充満する。自分も吸おうか迷ったが止めた。
「何だ吸わねえのか?」
「これから家族と外食でな」
歩いていく男の背中は前に見た時よりも小さく感じた。付き合いが長いからこそ知っていた…最近の奴は博打も煙草も頻度が減り、家族との時間を長くなっていると…女房の事情が事情であるために今を大事にする思いが強くなったのかもしれない。
「ふぅ…人の子は所詮人の子だったか」
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六眼持ちの呪術師は自分と同等、それよりやや下程度の身体能力を持っていた。赤血操術については事前に知らされており、特段驚くことは無い。血液操作は自分だけでなく、相手の血液も可能なのは戦闘中に確認済み、危険ではあるが対処できない程ではなかった。
(…うぜえな、あの呪霊操術使い)
前衛に六眼と赤血操術、後衛に呪霊操術による全方位攻撃…お互いの隙を埋めるようなコンビネーションには骨が折れていた。一人ずつならまだしも、こちらのペースを崩すような呪霊も展開され、押し切られる可能性もあった。
「だぁぁ!また防ぎやがった」
今も呪具で防いだが、徐々にこちらの動きに対応してきている六眼に危機感が湧いてくる。
『天逆鉾』…術式を強制解除できる呪具であり、術師に対する特攻武器にもなりえる代物。それに自らの体質も合わされば大抵の輩は太刀打ちできずやられる。
(こいつ、天逆鉾に血を纏わせて操作しようとしてやがる)
「器用な事しやがって」
「あ、バレた?」
へばりついた血液を薙ぎ払う…だが、長い年月を経てできた天逆鉾の大小傷内に血液が侵入していた。
「それは触れた術式を強制解除させる呪具だろ」
「纏わせた血液を操作・解除が優先される攻防の一瞬を狙っている…だろ?六眼持ちだからこそできる離れ業だ」
相手は一撃でこちらを倒せる技持ち、そのサポートもいる中での攻防…割に合わない
「…!悟、理子ちゃんを乗せた呪霊がやられた!」
撤退も視野に入れた時…いいタイミングで増援が来たらしい。相手側が分かれ、呪霊操術使いが行くのを尻目に六眼持ちと相対する。
「やってくれるじゃねえか」
「あー、俺も誰が増援なのか知らねえがな」
「あん?仲間じゃねえのかよ」
「は…あれが仲間?冗談言うなよ…」
気だるげな様子で増援に来たであろう誰かを考え、止めた。自分は依頼通りに行動すればいい…
呪霊が消失した付近に到着すると、星漿体である理子ちゃんを…まるで物のように持っている全身レシートで包んでいる男がいた。
「野次馬に徹するはずが、狩りだされるとは…人使いが荒いよな?」
嫌々な雰囲気を出しながら話しかけてくる男はレシートを片手に呪力を出していた
「そんなに嫌なら置いて行ってくれてもいいですよ」
呪霊を影に忍ばせ、男の背後から奇襲を仕掛けた。だがレシートが燃えると同時に呪霊は真っ二つに引き裂かれた。
「生意気なガキにお灸をすえろってお願いされてね」
ウインクをしながら新たなレシートを取り出し構える。それに伴い、本格的に呪霊を出し始める…目の前の敵は一筋縄ではいかないと瞬時に理解できた。
見て頂きありがとうございます。突発的に書いた短編集が気づいたら評価もされており、嬉しい限りです。
短いね…作者は今、読む専に意識が移ろうとしているので文章が続かないです。