改訂の内容としては、伊地知さんが消されました。
五条、夏油の両名が遭遇し、夏油の呪霊操術の下に調伏されたという平釜平原の呪霊。その情報が、古きにこだわりしがみつき、権勢に溺れる呪術界上層部に与えた影響は計り知れなかった。
古きにしがみついているからこそ、約400年前の平釜平原にて、当時の特級呪術師と特級呪霊が手を組み、それでなお
まして、そのどんどろがたった一人、夏油傑の手に落ちたというではないか。
どんどろが弱体化したのか、夏油、そして五条の力量がどんどろを上回っていたのか、はたまたどんどろが手を抜いていたのか。
ともかく、どんどろという核兵器に匹敵する存在を個人が所有するということは、単純に考えて、五条悟がもう一人増えることに並ぶ厄介な事態だったのである。
故に、事案発生から数日、お団子髪が自分の中のトレンドの夏油傑はとある場所に招集させられていた。
彼が立つは、天井から吊り下げられた唯一の灯りが照らす、円形に障子に取り囲まれた薄暗い部屋。その中心である。
(呪術総監部…… 悟が嫌厭する訳だ)
隠すつもりもない気色の悪い視線に辟易し、夏油は隠れて、心底うんざりしたため息を小さく吐いた。
「夏油傑、特級術師」
切れ長な瞳で周囲をキョロキョロしている夏油へ、何処からともなく声がかけられる。嗄れ、尊大な声色に、若き青年の額に僅かに皺がよる。
「貴様をここへ召喚した故は心得ているのかね」
喉の筋肉が衰えたのだろう、震えた声の元は障子の奥。
黒い拡張ピアスを開けた耳で聞き取った夏油は、あえてとぼけたような表情を浮かべた。
彼もまた、友人である五条悟と同じく、権力を笠にきるような物言いは大嫌いであった。
「さて? 一般家庭の出には……」
一瞬にして空気が張り詰める。
「惚けるな。貴様の調伏した呪霊、どんどろについてだ」
「あぁ、あの呪霊どんどろって名前なんですかぁ」
「ふざけているのか夏油傑……!!!」
咎めるような声色に、夏油の人間性がさらに愉悦を覚えた。
「そんなに興奮しないでください…… 老い先短いんですから」
さっと周囲の温度が上がったことを感じた夏油は、口元を愉快そうに歪ませ、さらに高らかに言葉を続ける。
「いやあ調伏するのに苦労しましたよ…… いや、調伏できているかどうか、私としても判断しかねるんですがね…… どうでしょう、貴方方に確認して欲しいのですが」
わざとらしく、もっともらしい構えをとってみると、障子の奥の老人はわかりやすく動揺の息遣いを見せた。
「夏油傑、貴様……!!!」
「いやいや冗談ですよ冗談。私は呪詛師になるつもりはない。私はいつでも正義の呪術師ですよ」
その時点で、上層部の総意は決まっていた。
それは、第二の五条悟の誕生。それが確定したという、彼らにとって到底納得できない現実であった。
「だから、死にかけの顔をさらに青くすることはないじゃないですか」
一方の夏油傑はというと、初めて呪霊に対して心から惜しみない感謝をしながら、目の前で仮初の威厳が音を立てて崩れていく様を眺め、言い表せない悦に浸っていた。
(……クズどもめ)
◇◇◇
「お、犯罪者じゃん」
「いきなり随分な挨拶だな…… まだ確定した訳じゃない」
老人達との和気藹々な話し合いを終え、スキップでもしたいような晴れやかな気分で呪術高専へ帰ってきた夏油を、木張りの廊下にて一番最初に出迎えたのは、性悪女(夏油評)、家入硝子であった。
「でも呪霊を調伏しただけで呼び出しはやばいっしょ、お前もとうとう秘匿死刑か…… いつかそんなことになるとは思っていたが……」
「とうとうってなんだ…… 大体、僕が死ねば、呪霊操術で掌握していた呪霊達がどうなるかわからないんだから、上のジジイはそう簡単に私を消せないよ。あるとして封印でしょ」
「たまに何か持ってくよ。蕎麦がいい?」
「週一で甘いもの持ってきてくれ。蕎麦だけじゃ飽きる」
くだらない話で花を咲かせた二人は、教室へ向かう廊下、グラウンドへ向かう廊下の分かれ道に立った。
「あれ、次の時間体育じゃないの」
夏油が足を踏み入れ、指を刺した方はグラウンド側。家入の足は教室の方へ向いている。
タバコを咥えた彼女は、疲れたような、見下されてるような顔を親友から離した。
「サボるわ……」
「そうか…… ついてくればすごいのが見れるよ。悟も協力してくれるんだ」
「尚更行かねークズやろー」
「後で世話になるかもよー」
____事の顛末は、当然現代最強タイの白髪の青年、五条悟の耳にも届いた。他ならぬ彼の友人にして当事者、夏油傑の手によってである。
彼が爆笑を開始するのに、10秒はいらなかった。
「ふはっ!ははっギャッハハハハハ!!!!!! ジジィ共腰抜かしすぎ! ぇえ? で、なんか縛りとか結ばされた訳?」
「いーや、そんなこともなく、二、三言喋って終わったよ。アレで耄碌しきったのかもね」
だったら最高だな、と高笑いしながら準備体操をする、白いTシャツに黒ジャージのズボン姿の五条に、爽やかな笑みで相槌を打つ夏油。彼らが立っているのは、東京都立呪術高等専門学校。彼らが通う学舎のそばにある広々としたグラウンドである。
人の姿のないそこで、二人の悪ガキが集えば、とんでもない悪事が働かされるのは自明の理。
「悟、帳を頼むよ。わかってると思うが……」
「わーってるよ、どんどろ以外全てのものの出入りを許す代わりに、どんどろの出入りを禁ずる縛りを組み込む。あーめんどくさ」
そう言いつつ掌印を組む五条の隣で、夏油は不敵に微笑む。それを横目にした五条は、同じく口の端を吊り上げる。
「
「喧嘩してたって言えばいいだろ」
こともなげにそういった悪ガキを見て、もう一人の悪ガキはくしゃっと笑う。
◇◇◇
「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ払え…… っと」
薄暗く、ひんやりとした雰囲気が漂い出したグラウンド。そこに立つ二人の青年の間に、少しピリついた空気が流れ始める。
「さて……目下確認すべきは、果たして私がどんどろの調伏に成功してるか、だな」
「暴走しちまったら、この前みたいにアイツが自分で収まるまで鬼ごっこ。キツイねえ」
珍しく、それどころか、生まれてはじめて心からの弱音を吐く五条悟。それは、なまじ呪力の解析、制御という点において圧倒的な性能を誇る至高の眼球、六眼を持つが故の弱音。
「あんにゃろう
「そう願うよ」
そう軽口を叩く彼もまた、少しの不安を胸にため、長いため息と共に吐き出す。
そして、切れ長な瞳を見開く。
「いくよ悟」
瞬間、グラウンドに地響きが走る。そして、何もない空間に、一筋の黒い線が走った。
その線から、黒く濁った液体が、まるで切り傷から溢れる鮮血のように大地に落ち、穢していく。そして、みちみちと肉の千切れるような音と共に、それは姿を現した。
ズン、という巨大な着地音、そして地震。
見上げるほど巨大な釜に似つかわしくない幼児のような下駄を履いた脚を生やし、破れた封印の札が3枚ついた釜の蓋を菅笠のように被り、それを手で支える漆黒の泥。
そして、感覚を狂わす瘴気のような、強大な呪力
『どんどろ〜』
厳かでいて、どこか気の抜けた鳴き声をあげた災厄の化身――どんどろが、その紅の
天元「やめて」
懐玉・玉折編が終わったあとの話 ※得票数が多い順に全部書きます
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ぐ〜るぐる
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がっしゃぁーん!!
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イカがなものかと!!