特級呪霊 どんどろ   作:にわとり肉

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 アンケートの項目に“どんどろ〜”を加えたせいで票が無茶苦茶になって困ってます。アンタら何してくれてんですか(責任転嫁)


どんどろの謎 2

 五条悟は、あいも変わらず、どんどろから漏れ出すおぞましい呪力に表情を固くしていた。

 そして、改めて六眼が見透した情報が彼の頭へ出力され、人の言葉に変換される。

 

 (俺なんて比じゃない呪力量に、呪力の形質が自由自在。代わりに生得領域と術式は持ち得ない、ね。んで持って、あのヘドロみてえな身体だ…… 普通の呪霊の組成じゃねえ)

 

 きょとんと首を傾げ、意識を持って周囲を見回すどんどろ。今は目を赤く染めているが、それが青く染まった時、どんどろに対してすべての呪力による攻撃は無効化される。

 たとえ核に匹敵する威力の術式で滅却を狙ったとしても、まず間違いなく無傷の状態でキノコ雲から這い出てくるのである。

 反面、その時の彼の身体は()()()()()()()()()()()()()()()。五条悟のたった1発の呪力を纏わない突きが、本来呪力を纏った攻撃以外を無効化する呪霊の肉体に通じるのである。

 そして、あの瞳が赤に染まった瞬間、それら形質は全て()()、つまり、普通の呪霊の状態へ戻る。

 他の呪霊には見られないどんどろの特異性は、一見、単純にどんどろの行動に合わせて攻撃方法に変化をつければ対処が行えそうなものである。

 しかし、そう簡単に行けば、五条が“蒼”を10発以上連発して()()()()に陥るような事態は起こり得ない。

 

 (あの異常なまでの修復力に呪力量が噛み合いすぎてんだよ……)

 

 思い起こされるのは、もはや今後の人生で忘れる事のできない先日のこと、どんどろとの初遭遇時の記憶____

 

 『術式順転――“蒼”ッ……!!!』

 

 無下限術式の順転、即ち“収束”。

 平原を抉り取り全てを引き込み砕き割って突き進む蒼き弾丸が、妖しき紫色の呪力を纏うどんどろへ殺到。

 

 『どろぉぉっ!!』

 

 当たった。どんどろが初めてのけぞった。

 しかし、五条の刹那の喜びが悪い驚愕に上書きされる。

 

 彼の透き通った赤色の瞳は、間違いなくどんどろに“蒼”が当たったことを伝えていた。

 しかし、どんどろの状況はどうだ。

 

 強大無比な引力で抉れ、黒い泥の肉体が潰れて消え、

 

 その側から逆再生しているかのように再生していく。

 

 結果、まるで()()()()()()()かのように、渾身の“蒼”はどんどろを通り抜け、背後の山林を削り飛ばし、消失した。

 

 ____そんな途方もない修復力をもって、あろうことか、どんどろは五条の攻撃全てを正面から受け止め、無効化しきったうえで余力を多分に残していたのである。

 

 呪力による攻撃か物理攻撃か、どちらに特化しても勝てず、攻撃を当てたとしても、世界中どこを見ても一番多いと断言できる呪力量と異常な回復力によって実質無効化されて勝てない。

 

 まだ五条には虎の子の術式反転、そして、()()が残されているが、反転術式をまともに扱えない以上期待はできない。

 

 (傑……! 日本の未来、いや、世界の未来はお前の双肩にかかって____)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うん、命令しても動かない。思考も縛れていない。これを調伏しているとは言わないね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『どんどろ〜』

 

 退屈そうなどんどろの鳴き声が、帳の中に虚しくこだましていく。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 「え? どうすんのこれ……」

 「うーん……」

 

 人間、どうしようもなくなると案外冷静になれる。齢16にして、二人の青年は一つ、大人の階段を登った。

 

 と、ふと、夏油は首を傾げながら友人の真顔へ顔を向ける。

 

 「でも悟。それはあくまで呪霊操術における主従関係が成り立っていないって話だ。私とどんどろの呪力の繋がりはあるだろう?」

 「……あ、ほんとだ」

 

 サングラスをずらし、夏油と、とうとう腰を下ろしたどんどろを交互に見た五条は、不思議そうに六眼をパチクリとさせた。

 

 「それに、圧縮して持ち運べる点、何よりそれを私の自由意思で呼び出せる。その点だけを見れば調伏が成功してると言っていい。それ以外の制限がどんどろにかかってないということだろうが……」

 

 顔を上げ、どんどろの、口を半開きにして怠けた表情を眺めていると、赤い瞳がぎょろりと動き、夏油を見下ろす。

 しかし、敵意は無い。

 

 (私の呪力がどんどろに遠く及ばないことが、呪霊操術の調伏に深刻なバグを齎したのか…… それとも)

 

 「……だとすれば、お前は私の何処を気に入った?」

 「はぁ?」

 

 頭がおかしくなったか? と言わんばかりの視線をひしひしと感じつつ、ガンと無視を決め込みながら、夏油はどんどろの目を凝視する。

 

 ____その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……うそつき。

 

 「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 蔑んでいるような、喜んでいるような複雑な声が、夏油の脳内を駆け巡った。

 

 「誰が…… 私が……?」

 

 その時、夏油はふと、どんどろの生い立ちを思い出す。

 平釜平原で起こった闘争、その犠牲者の魂が積み重なって生まれた怪物。

 だからこその発言とすれば。肉体が魂そのものと言っていいならば、自分(夏油)の魂を理解することもできるかもしれない。

 その上で、“嘘つき”とは。

 矛盾を指すというのであれば、人が人である限り矛盾に苦しむのは必然。

 と、するなら、自分の、夏油傑の抱える矛盾は、どんどろにとって特別に面白いとでも言うのだろうか。

 

 (私の矛盾……)

 

 それは、まだわからないもの。

 

 「傑」

 

 ハッと振り向くと、そこにいたのは友人の姿。どんどろの方を見ると、釜の蓋を閉じ、汚い寝息で空気を揺らしている。

 

 「んで、どうすんの」

 

 白髪の後頭部で手を組み、気だるげにあくびをした五条を後目に、夏油は釈然としない表情を浮かべ、吐き出すように言った。

 

 「今日は、もうやめにしよう」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 帳が上がり、何をしていたのかと問われるや否や、喧嘩してましたと適当にやり過ごした問題児二人は、そそくさと食堂へ足を運んでいた。昼時はとっくに過ぎていたが、腹が泣き喚いて仕方がないので、何か腹に詰めようという魂胆であった。

 

 そして、夏油が頼んだ鴨だし蕎麦。その香り高い麺つゆの匂いを鼻いっぱいに吸い込んだ瞬間。

 

 『どんどろぉ! どんどろ!』

 

 「ん!?」

 

 待っていましたと言わんばかりに、頭の中におどろおどろしい、能天気な声が響き渡ったのである。

 

 「……蕎麦が好きなのか?」

 「呪霊に食い物の選り好みなんてあんのか?」

 

 神妙な表情の夏油を横目に、五条はうどんを啜った。

懐玉・玉折編が終わったあとの話 ※得票数が多い順に全部書きます

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