俺の能力、「解説系動画」だった   作:鳩胸な鴨

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異能バトルにあるまじきクソ能力


今日は何を解説してくれるんだ?

解説系動画というものをご存知だろうか。

名の通り、様々な事象について、適切…かどうかはわからないが、ネットやら本やらの資料を引用し、わかりやすく解説するという、動画ジャンルの一つである。

ジャンルとしても、テレビには取り上げられないものの、かなりメジャーなものとして認知されている。

基本的に使われるのは、生声ではなく合成音声。

生声で収録するよりも遥かに時間がかかるのに、わざわざ音声を打ち込むその気概には感心を覚える。

差し込まれる茶番が面白いと尚良しだ。

消費者側だった俺からすれば、その程度の認識であった。

 

『今日はそこでマヌケヅラを晒してる鹿室 アサヒのウルトラスーパーチャーミングな能力、「解説系動画」…つまり私について解説していくぞ』

「わっつ???」

 

それが、今世における俺の能力と知るまでは。

 

まずは俺の身の上を語ろう。

大前提として、俺は転生者である。

何が原因で死んで、どうして前世の記憶を持ったまま赤子に転生したかは定かではないが、それは置いておこう。今気にしても仕方ない。

問題は、この世界が俺の記憶とは少し…、いや、かなり違うという点にある。

それを知覚したのは5歳の頃。唐突に、こいつが目覚めた時のことだった。

 

『というわけで、今回は無知なアサヒのために、この世界に酷似したラノベ作品、「ナイトゲイザー」について解説していくぞ』

 

モノローグにまで介入された。

…とまあ、俺の能力が言うには、今世の俺は、「ナイトゲイザー」というラノベの世界に転生してしまったようなのだ。

詳しいことは知らない。

ナイトゲイザーという作品自体はアニメ化もしたし、劇場版も放映されたから、知識としては知っている程度で、どんな話かは全く知らない。

 

『ナイトゲイザーは株式会社イチクラから出版されている、染島ミルフィーユ先生のライトノベル作品だ。

全26巻。13年に渡り愛された、現代ファンタジーの金字塔シリーズだな』

 

能力の声に合わせ、視界に26巻分の表紙がずらりと並ぶ。

へぇ、そうなんだ。巻数とか全然把握してなかった。

「長く続いてたなぁ」程度の認識だった。

…っとと、いけない。意識を「解説される側」に持っていかれるところだった。

とまあ、このように。俺は気を抜いたら、こいつに「解説される側」に仕立て上げられ、思考力がチンパンジーとどっこいになってしまうのだ。

では、なぜ俺がこんな能力に目覚めたのかと言うと…。

 

『それは、この世界が「異能力バトルもの」だからだ。

ナイトゲイザーは能力に目覚めた少年少女らが、人の世界と密接に存在する「ナイト」という世界に突入し、人々を襲う「ゲイザー」という怪物を退治していく物語。

だからこそ、アサヒに私のような能力が目覚めるのは必然のことだったんだぞ』

 

目覚めたとしても、お前みたいなトンチキ能力は願い下げじゃボケ。

発動中は気を抜いた途端に、「すごーい」みたいなことしか言わん小学生以下の無知に成り下がるんだぞ。

あと、視界を勝手に画像とかで塞がないでくれない?果てしなく邪魔だから。

 

話を戻す。

兎にも角にも、俺はこの能力に目覚め、それなりに苦労しながら生きてきた。

なにせ、少しでもわからないと思うと、即座にこいつが発動してしまうのだ。

テストや受験の時なんて地獄だった。

問題を前に5秒以上考え込んだら、問答無用で発動するというクソ仕様。

仮にも「解説さん」なんだから、カンニングとかに役立ってくれよ。

むしろ、思考力を低下させられ、視界を画像で隠された挙げ句、延々と解説続けられて邪魔だったわ。

 

『アサヒ。テストは自分の力で受けるモノだぞ。勉強してなかったアサヒが悪い』

 

黙れ。お前のせいでまともに勉強できんかったんじゃタコ。

…とまぁ、バトルどころか、日常生活にも支障きたしまくりのクソ能力であることがよくわかっただろう。

普通のアナライズ系能力みたく、ぱっと事象が理解できるわけではない。

むしろ、動画にされる分、余計に時間を食うという欠陥っぷり。

評価できる点と言えば、アカシックレコードにでも通じてんのかってくらいの情報量と、その正確さだろうか。

…それも肝心の俺が「解説される側」になるせいで、ざっくりとしか理解できないんだけど。うーん、クソ能力。

 

が。こんな能力のクソさなんかよりも、俺には差し迫った問題がある。

 

『そう。アサヒが生きるこの世界はいわゆる「ダークファンタジー」。

メインキャラクターでも非業の死を遂げる展開が多々ある。

アサヒはよりにもよって、異世界…「ナイト」による現実世界の侵食に巻き込まれ、その中で生きる怪物、「ゲイザー」に出会して死ぬモブの1人に転生してしまったんだ』

 

そう。俺は物語開始時に殺される、「最初の犠牲者たち」という素晴らしいポジションなのである。

勘弁してくれ。俺の能力でどう切り抜けろってんだ。

 

『主人公に気に入られたら、守ってもらえるだろうな』

 

そいつ、俺の立場で会えます?

俺、能力を隠してきたパンピーで、死ぬ理由もただ巻き込まれるだけなんですが。

 

『ああ。アサヒの言う通り、不可能に近い。だが、これしか方法はないぞ。

能力が発動した途端にアホヅラを晒すアサヒだけで解決できる事態ではないな』

 

それ、お前のせいなんだけど。

…兎にも角にも、俺は余命…どれだけかはわからないが、短い命と確定している。

「おっぱいが揉みたかった」という遺言書も遺したし、今世の両親に迷惑をかけないよう、できるだけ後腐れは無くしてきた。

あとは、残された時間で主人公と関わりを作るだけなのだが…。

 

『残念ながら、アサヒの周りに主人公…金崎 アイリは住んでないな。

彼女の住所は現在、沖縄だぞ』

 

はい詰んでまーす!!

都内に住む高校生にそんな遠出が出来るわけもなく、俺の人生はパーフェクトに詰んでいた。

「詰んでる」ってことしか教えてくれなくなったクソ能力に、絶体絶命が待ち構えてるこの状況。

万事休すにも程がある。

 

俺を転生させた神様。

いるのかはわからんけど、もうちょっとマシな能力に出来ませんでしたか?

 

『アカシックレコードを持ち歩いてるみたいなもんなんだし、手から味噌汁を放つみたいな能力よりはマシな方だろ』

 

お前みたいな形で持ち歩くのはごめんじゃボケェ!!




解説さん…主人公の異能。アカシックレコードみたいな知識量を持っているくせして、それを視界を遮る動画という形にしか出力できない上に、気を抜いたらチンパンジー以下のアホになる主人公にしか認知できないというクソ仕様。毒舌な上に実態がない。

鹿室 アサヒ…主人公。元秒で死ぬモブ。クソ能力に振り回されながら生きてる。
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