暗殺教室×呪術廻戦   作:ストレスマッハ

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思ってたより早く仕上がったので。
本日2話目です。



13話 二択の時間

 

 

 ブニョンッ、ブニョンッ、ブニョンッ、ブニョンッ、ブニョンッ、ブニョンッ、ブニョンッ、ブニョンッ……

 

 一定の感覚で響く、まず日常で聞かない音。

 

「……何してんのアレ?」

「さぁ……壁パンじゃない?」

 

 そこには、黒板の横の壁を自前の触手で殴り続ける担任の奇怪な姿があった。

 

「さっきからうるっさいよ殺せんせー!! 小テスト中なんだから!!」

「こ、これは失礼!」

 

 遂に耐えられなくなった岡野ひなたから鋭い抗議が飛び、諸悪の根源(ころせんせー)はようやく手を止める。

 

 ああなったのには理由がある。それはそれは、しょうもない理由が。

 

 遡る事、約半刻前……そう、丁度あの体育が終わった直後だ。

 

 ある一人の生徒が“戻って”来たのだ。

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 グラウンドから教室に皆が戻り始めている中、逆に向かってくる姿が1つ。

 

「! 赤羽業(あかばね カルマ)君……ですね? 今日が停学明けと聞いていました。初日から遅刻はいけませんねぇ」

 

「あはは、生活リズム戻らなくてさ」

 

 そう言って近づいて来たのは、今回の一因である、赤羽業(あかばね カルマ)。なかなかファンキーな名前である。

 

 ここまでは何も問題はなかった。ここまでは。

 

「下の名前で気安く呼んでよ。とりあえずよろしく先生!!」

 

「こちらこそ。楽しい一年にして行きましょう」

 

 そう言って赤羽が手を伸ばす。

 殺せんせーが握手に応じたその時。

 

   ドロォ

 

 せんせーの触手は、文字通り“握り潰された”。

 

 そして、殺る気満々に表情を一変させた赤羽が、左手の袖口に隠していた対先生ナイフを突き込む。

 ぎょっとした殺せんせーは、それを大きく跳んで躱した。

 

 クラス全員が驚愕した。

『初めて、あの先生(かいぶつ)がダメージを負った』という事実は、それ程大きい。

 

「……へー。本トに速いし、本トに効くんだ、このナイフ」

 

 そう言う彼は、掌に()()()()()()()()()()()()()、対先生ナイフを見せる。

 

「けどさぁ、こんな単純な“手”に引っかかるとか……しかもそんなとこまで飛び退くなんてビビり過ぎじゃね?」

 

「!」

 

 そして、殺せんせーに近づいて言い放った。……実に憎たらしい表情で。

 

「殺せないから『殺せんせー』って聞いてたけど……あッれェ? せんせーひょっとしてチョロいひと?」

 

 渾身の煽りを受けたせんせーは……真っ赤な顔で青筋(?)をヒクつかせていた。

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 それからは先はこの通り、生徒に煽り散らされ手玉に取られている教師の姿があった。なんなら今も、イタリアで買ってきたジェラートをくすねられ、それを餌に床に転がっていた対先生BB弾を()()()()()()()

 

 それを側から見ていた徹は内心感心する。

(……やるなあいつ。さっき見た感じ喧嘩慣れしていて、頭の回転が速い。発想も柔軟だ。何より()()性格してる。これで適性が有れば誘ったんだがな……それに、()()()()()()

 

 例え侮辱されようが、授業の邪魔をされようが、あの教師には絶対に越えられないラインがある。

 

 それは、人を傷付ける事だ。

 

 その瞬間奴の立場は変わる。生徒を導く教師から、ただの化け物に。

 

「じゃね『先生』〜。明日も遊ぼうね!」

 粗方満足したのか、テストを終わらせて早々に教室を出て行く赤羽。

 

「……」

 すっかり押し黙ってしまった殺せんせー。

 だが、徹は見逃さなかった。……奴が笑みを深めていたのを。

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 次の日も、赤羽カルマは朝早くから行動していた。

 昨日渚から聞いた情報をもとに、次なる嫌がらせを用意する為だ。

 その手にある大きめの袋からは、ぎっしりと詰められた氷と()()()()がはみ出している。

 まだ学校が始まるまで大分時間もあるが、少し早めに行って準備でもしようと登校路に足を向けた。

 そんな中、見覚えのある顔が向こうからやって来るのに気付く。

 

「……あれ。確か君、同じクラスにいたよね? 転入生の……ゴメン名前なんだっけ?」

「……若木薫。薫でいいよ。よろしく赤羽」

「カルマでいいよー。結構気に入ってるんだこの名前。……こんな時間にランニングしてんの? すっごい熱心なんだ」

 

 彼の服装を見ると、いかにもなスポーツウェアだ。結構汗を流しているところを見ると、相当走ったのだろう。……それにしても、凄く鍛えられてる。喧嘩も強そうだ。

 

「まあ、日課だからね。そんな大層なものじゃない。……それに何してるはこっちのセリフだよ。……なにそれ? 動いてない?」

 

「ああ、これ? 朝イチで買ってきたんだ〜。次はこれで試してみようと思ってさぁ」

 

 カルマの返答に軽く引く薫。

 

「うわ、そこまでするか。……そんなに殺りたいの?」

 

「そりゃもちろん。今度こそ、自分の手で殺したいからね」

 

 頭にチラつく、絶望の光景。

 そんな内心を知る由もなく、薫は言った。

 

「……そう。まあ楽しんでやれるなら良いんじゃない? 少なくとも、アレは普通の教師とは違う。何を気にしてるか知らないけど、そこは安心していいと思うよ」

 

「……!」

 

「じゃあ、一回帰って支度しなきゃならないから、また後で。暗殺、楽しみにしてる」

 

 そう言って離れて行く彼の背を見送りながら、

 変なヤツ……とカルマは呟いた。

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 そして迎えたHR。

 

 いつも奴が来るという時間になったのを確認し、教卓に近づくカルマ。そして皆がなんだなんだと目を向ける中、用意した()()を教卓に置き──ナイフで眉間を突き刺した。

 ピクリとも動かなくなったのを確認して、自席に戻る。

 

 しばらくしてドアが開き、奴が入って来た。

 

「おはようございます」

 

 そう言った殺せんせーは、クラスの奇妙な雰囲気を疑問に思いつつ、皆の視線の先……教卓の上を見る。そこですかさず、焚き付けるカルマ。

 

「あ、ごっめーん! 殺せんせーと間違えて殺しちゃったぁ。捨てとくから持ってきてよ」

 

「……わかりました」

 

 タコを持って近づく殺せんせー。

 カルマ自身、すぐ殺せるとは思っていない。まずは心からだ。心を殺す。

 

 そう考えていた矢先、殺せんせーの触手の先がドリルになり、高速で回転を始めた。

 これには流石のカルマも意表を突かれる。

 そして超スピードで消えて戻って来た頃には、手にミサイルが加わっていた。

 

 クラス中に緊張が走る。

 

「見せてあげましょうカルマ君。……先生は暗殺者を、決して無事では返さない」

 

 そして、ドリュドリュドリュドリュ! と音を立てて、ドリルが何かを突き立てた……次の瞬間には、カルマの口に熱々の「たこ焼き」が放り込まれていた。

 

「あッつ!!」と反射で吹き出すカルマ。

 

 そんな彼を見下ろしながら、殺せんせーは言う。

 

「その顔色では、朝食も食べていないでしょう。マッハでたこ焼きを作りました。……これを食べれば、健康優良児に近づけますね」

 

 殺せんせーの声色が変わった。本気になったのだ。

 

「私はね、カルマ君。手入れをするのです。錆びて鈍った暗殺者の刃を……」

 

 それを感じ取ったカルマの表情から、嘲りの色が消える。

 

「今日1日、本気で殺しに来るがいい。その度に、先生は君を手入れする……放課後までに君の心と身体をピカピカに磨いてあげましょう」

 

 絶対強者は自信満々に宣戦布告した。

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 そこからカルマは手を変え品を変え、不意を突いて殺そうとするも、一部の隙も無くなった殺せんせー相手には一切が通じない。

 動きの“起こり”を感じ取った瞬間抑え込まれる。

 そうして、今日の授業は全て終了した。

 

 

(くそ、どうすればアレを殺せる? どうすれば……)

 通学路の道、そこを眼下に見下ろせる崖の上で、カルマは一人考える。

 だが、殺れるイメージが浮かばない。

 

 そんな時、後ろから声がする。

 渚だ。E組 ここに来る前から関わりがあったのに、いつの間にか疎遠になってた、唯一の友達。

 どうやら1人でなく、クラスで力を合わせて殺らないかという提案だ。

 

 それは嫌だ。殺るなら、自分自身の手で殺りたい。

 もう()()()()()()()のは御免だ。

 

 

(正しい事をする限り、先生はいつもお前の味方だ!)

 

 

 ──声が聞こえる。

 

「さて、カルマ君。今日は沢山手入れされましたねぇ。まだまだ殺しに来ても良いですよ? もっとピカピカに磨いてあげます」

 

 舐め切った表情で、こっちに笑い掛ける先生。

 ……そうだ、あるじゃん。簡単な方法が。

 

「確認したいんだけど、殺せんせーって先生なんだよね?」

 

「? はい」

 

「先生ってさ、命をかけて生徒を守ってくれるひと?」

 

「もちろん。先生ですから」

 

 迷い無く応える殺せんせー。

 安心した。

 

「そっか。良かった。なら、殺せるよ」

 

 そう言って銃を構えつつ、()()()()()()()()

 体を包む浮遊感。

 

 

 

 ──声が聞こえる。

 

(どう考えてもお前が悪い! なんでE組なんぞの肩を持って、未来ある者を傷付けた!? 俺の責任になるんだぞ!!)

 

 死人の声が、聞こえる。

 

 人は二回死ぬ。

 一つは、そいつ自身が死ぬ時。

 もう一つは、心の中のそいつが死ぬ時。

 

 生きていようが、人は死ぬ。

 そいつの全てに絶望すれば、俺にとって死んだのと同じだ。

 俺の中では、「先生」はとっくの昔に死んでいる。

 

 

 

(助けに来れば、救出する間に撃たれて死ぬ。見殺しにすれば、先生としてのアンタは死ぬ!)

 

 殺せんせー!! あんたは俺の手で殺してやるよ!! 

 

(さぁ! どっちの「死」を選ぶ!?)

 

 そう考えていた、次の瞬間。

 

 

 音が横を過ぎ去ったかと思えば、自分の体は何かに支えられていた。

 

「カルマ君。自らを使った計算ずくの暗殺、お見事です」

 

 背後から声が聞こえる。

 

「音速で助ければ、君の肉体は耐えられない。かといってゆっくり助ければ、その間に撃たれる。……そこで先生、ちょっとネバネバしてみました」

 

(何でもアリかよこの触手!!)

 言葉通り、体が微塵も動かせない。

 

「これでは撃てませんねぇ、ヌルフフフフフフ」

 

「ぐ……」

 

 くそ腹立つ……! 動けない事をいいことに、凄く近くから煽ってきやがる……! 

 そんな事を考えていると。

 

「ああ、ちなみに……見捨てるという選択肢は、先生には無い。いつでも信じて飛び降りて下さい」

 

「 」

 

 …………ははっ。

 

 思わず笑ってしまった。

 

 こりゃダメだ。死なないし、殺せない。

 少なくとも……先生としては。

 

 その後、敗北を認めた自分に、お返しかというくらい煽られた。

 殺意が沸くのに変わりはないけど……楽しいなら……まぁいいか。

 

 




お読み頂き感謝します。
評価、感想、お気に入りして頂いた方、誠にありがとうございます。
大変励みになります。

ちなみにお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、オリ主君は初対面や仕事では猫かぶってます。素はさしすと喋る感じ。怒ると結構口が悪い。
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