暗殺教室×呪術廻戦   作:ストレスマッハ

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14話 クラスメイトの秘密に迫れ

 

 

 E組に関する校則の一つに、以下の様なものがある。

 

 “学業に集中するため、部活動や校内活動には制限を加えるものとする”

 

 要するに、授業が終わり次第とっとと帰って勉強しろ、というものである。

 だが、E組の生徒は落ちこぼれである現状を受け入れてしまっている。最近変な教師がやって来て改善されつつあるといっても、この意識はまだ変わっていない。現実から逃げるように、放課後は遊びに行く生徒も少なくない。

 

 そして、この3人も息抜きの為に放課後の時間を使っていた。

 

「うーん、今日も疲れたぁ〜。なんか甘いもの食べたーい」

「そうだ、駅前に新しくできたカフェに行かない? 丁度気になるお店見つけちゃったんだよねー!」

「いいねぇ! 行こ行こ!」

 

 倉橋陽菜乃(くらはし ひなの)矢田桃花(やだ とうか)中村莉桜(なかむら りお)は、至福の時間を楽しんでいると──

 

「あれ〜? あそこにいるの、カオルンっぽくない?」

「ほんとだ」

「わざわざ私服に着替えてる。今からどっか行くのかな?」

 

 ──ガラス張りの向こうに見えるのは、同じクラスの若木薫だ。転入してきて席が近くというのもあり、交流する事が多くなった。

 特に、直近であった体育の授業でとんでもない芸当を披露した事が記憶に新しい。

 

(……そういえば、よくよく考えてみるとアイツの事あんまり知らないような……?)

 

 中村が他の二人に顔を向けると、彼女達と目が合った。……どうやら考える事は同じようだ。

 

「……尾ける?」

「やっちゃうか……!」

「いいねっ」

「面白そうですねぇ」

 

 中村の提案に、悪ノリした友人3()()が乗っかる……今、なんか声が多くなかった? 

 

「……何してるの殺せんせー」

 

 そこには、いつの間にか隣の机から1つ席を持ってきて、私達の机に寄せて座る黄色いタコの姿があった。

 

「先生も、この店には前々から目を付けてましてねぇ。それで、どうします?」

 

 思わぬ闖入者があったが、そうこうしているうちに彼の姿が遠ざかりつつある。

 

 それを見た彼女達は、慌てて店を出る。

 ……どうやら電車に乗って何処かへ行くようだ。

 改札へ向かう彼に気付かれないよう、一行は少し後ろから追跡を始めた。

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

(((……遠い!!)))

 

 尾行中の三人は後悔していた。てっきり隣町程度の移動だと思っていたのに、そろそろ1時間弱経過する。なんなら途中一度乗り換えを挟んだ時点で回れ右したくなった。だがここまで付いてきた以上、さすがになんの成果も得られず帰る訳には行かない。もはやヤケクソである。

 

「……殺せんせーは付いて来れてる?」

「うん。図体デカくてバレそうだから、隣の車両に押し込んだけど……」

 

 矢田の言葉に、目線をそちらに向ける。隣の車両の扉と人混みの間で板挟みになっており、シクシクと泣いているのが見える。変装しているはずなのに、違和感を全く隠せていない。

 

 ……そんな事より、この状態はいつまで続くのだろうか……? 

 

「にしても平日の夕方に、一人で何しに行くんだろ?」

「……バイトとか?」

「ありえる。でもここまでするって事はもっと()()()んじゃない?」

「すごいってどんな?」

「そりゃもう、夜遊び一択でしょ……!」

「……!!」

 

 それぞれが、自身の考える夜遊びを頭に浮かべ、顔が熱くなる。

 

「このネタを写真に収めて、アイツに突き付ければ……どんな顔するんだろうねぇ……?」

 

 中村の言葉に、2人もニヤリと笑う。

 

 そうこうしている内に、薫が電車から降りようと動き出すのを見て、自分達も急いで降りる。

 そして、辺りを見渡して気付く。

 

「ここ……浅草橋じゃん。……なんでこんなとこに?」

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 灯り始めたネオンの彩る道を抜け、仕事帰りのサラリーマンに交じって歩く。先を進む彼も初めて行く場所なのか、時々携帯と睨めっこしている。やがてたどり着いたのは、駅から徒歩15分程にある居酒屋だった。

 

 彼が入っていったのを確認しつつ店の前まで行く。店先に赤提灯、ビールの立て看板、引戸の玄関が目に入った。

 

(食べ処“小鳥箱”……かわいい名前だなぁ……)

 

 外から見る限り、そこまで大きな店ではなさそうだ。

 

「これ、店の中に入ったらバレないかな……?」

「どうしよっか……?」

 

 手詰まりか……

 そう思いつつ辺りを見渡す。

 

「あ、皆さん! ホラあそこ!」

 

 すると殺せんせーが声を上げ、指を差す。

 その先には細い路地があり、窓が少し開いているのが見える。そこから店内の音が漏れているのに気付く。

 ハッとした女性陣は近づき、そこから慎重に覗いて見ると……

 

(……女の人だ!!)

 

 色素の薄い長めの髪を後ろに流して編み込んでいる、いかにもオトナな女性が、彼に手招きしていた。

 

 その光景を目の当たりにして、3人と1人は黄色い声を上げる。

 

「なにあの人!? めちゃくちゃ綺麗!」

「え、これ密会!?」

「どんな関係なのかなぁ〜!」

「ニュフフフ! 妄想が捗りますねぇ!」

 

 四者それぞれの感想を述べるも、1つの問題に直面した。

 

(声が聞き取り難い……!)

 

 そんな中、目の前の教師とは呼びたくない存在は意気揚々と言った。

 

「皆さんコレを耳に……! 彼等の声を拾ってくれます!」

 

 そう言った殺せんせーは、なんか口が付いた小さい触手をこちらに向けてきた。……ちょっとキモいなこれ。

 言われるがままに耳に装着して、声を聞き始める。

 

 

 

『──やぁ、やっと来たね。先に始めてるよ。……なんか随分久しぶりに感じるね。前に会ったのはいつだったかな?』

 

 あの女の人の声だ

 声もキレイでカッコいい……! 

 

『前のは確か……年末じゃないです? ほら、歌姫先輩と硝子誘って行ったやつ。……それより何ですかこの店。店名終わってません?』

 

『店主の腕が良いんだよ。それにいいじゃないか、馴染み深くて』

 

『深過ぎて嫌だって言ってるんですよ?』

 

 ……終わってるってどういう意味だろ? 

 二人と顔を見合わせ、首を傾げる。

 

『今日はなんでこんなとこまで呼び出したんです?』

 

『ああ、仕事がやっと一息ついてね。報告がてら一杯どうかと思ったんだ。……そうだ。例の話、了承したよ』

 

『お手数お掛けしてすみません。これからもっと掛ける事になりますが……』

 

『気にする事はない。何か有れば訪ねて来ても良いよ? 「向こう一年は()()を拠点にする」。それも契約の一つだからね』

 

(話の内容がよく分かんない……あの人の仕事のことかな?)

 倉橋が言うように、何をしているのか興味をそそられる内容だ。

 

『……それで、最近どうなんだい? 久々に普通の学生出来てるんだろう? まぁ普通と言っても、ずいぶんと面白い事になってるみたいだけれど……』

 

 お、若木の話が聞けるかも……

 

『いや〜、最近の私立中ってヤバいですよ。

 普通の中学とは比べ物にならないくらい、アホみたいに難しいです。今はまだ地力でカバー出来てますけど、これ以上となるとちょっと自信ないですね……』

 

『君、そこまで頭悪かったかな? ……さては、勉強サボっていただろう。ダメだよ? 私たちのような人間だからこそ、知識は武器になる』

 

『ごもっとも、返す言葉も無い……

 良い機会と思って大人しく勉強し直しますよ。

 ……それに、今はわりと嫌いじゃなくなってきたんで』

 

『へぇ。それはもしや例の教師の……』

 

『ええ。最初はただのイかれた奴だと思ってたんですけどね。……あいつ、教えるの異様に上手いんですよねぇ。しかも妙に世話焼きな性質(たち)をしてまして……。気が付いたらこっちまで乗せられてる始末ですよ』

 

 ……! 殺せんせーの話だ……! 

 

『ふふ、よかったじゃないか。

 学び直す機会はそうそういない。折角なら楽しむといい。

 ……それにしても、君にそう言わせるとは……。

 俄然興味が湧いてきたよ。ぜひ会って話してみたいものだね』

 

『そりゃ無理でしょ。冥さんもう学生って歳じゃ「何か言ったかい?」……いえ、なんでもないです』

 

 

 

 いつもより明るい声で話す、クラスメイトの知らない一面を見て私達は……

 ──今になって盗み聞きしている事に、罪悪感がどっと押し寄せてきた。

 

「……先生、もう良いんじゃない? これ以上は若木に悪……ってすっごい泣いてる!?」

 

 矢田がそう言って先生の方を振り返ると、

 

「うぅ……若木君が、こんなにも私の事を思ってくれていたなんて……グスッ! そんな生徒になんて事を……! 

 先生を見る目つきが若干怖いとか思っててごめんなさい……!」

 

(((そんなこと思ってたのか……)))

 

 おーいおいおいと泣きながら、内心を吐露する教師を冷めた目で見る女子達。

 

 どうしたものかと視線を交わしていると、ふと声が聞こえなくなっている事に気が付く。

 窓の方を見てみると。

 

「……あれ? 二人とも居なくなってる?」

「もう解散したのかな?」

 

 2人も同じ疑問を口にする。

 

 何か嫌な予感が……。

 そんな事を考えていたその時、

 

 コンコンコン

 

 手前の、具体的には壁のすぐ向こう側からノックの音が聞こえ、ゆっくりそちらへ向くと……

 

 ニッコリとこちらに笑顔を見せる同級生の姿があった。

 

 狭い路地に悲鳴が響いた。

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

「それで? 何か言う事は?」

 

「「「「ご、ごめんなさい……」」」」

 

 実行犯として店内に連行された4人。笑みを見せながらも、視線だけは笑っていない薫の目を見て、目尻に涙を浮かべながらも謝罪する。

 

 薫は一人一人を眺めていく。

 そして、標的は定められた。

 

「大の大人がなーにやってんですか先生。生徒のプライバシーを侵害するなんて良い趣味してますねぇ」

「本当に申し訳ございませんでした……」

「担任のそんな姿見たくなかったなぁ……」

「ゆ、許して……許してつかぁさい……!」

 

 あまりの口撃に耐え切れず、顔を手で隠す殺せんせー(ざいにん)

 なお、この間笑顔で詰める薫 。

 

(若木、怒ると結構Sなんだ……)

 クラスメイトの意外な一面を、こんな形で知ってしまうとは……

 女性陣は内心色んな意味でドキドキだった。

 そんな時、

 

 くきゅ────……

 

 という可愛らしい音が鳴る。

 咄嗟に音の方に皆が顔を向けると……真っ赤な顔を背ける中村の姿が。

 

 その姿に毒気を抜かれたのか、素が漏れる薫。

 

「プフッ!」

 

「何!? 言いたい事があるなら言いなよ!」

 

 余程恥ずかしかったのか、中村は早口で捲し立てる。

 

「わかったわかった。今のは俺が悪かった」

 

 なおも不満げな中村を見て、薫は提案する。

 

「なら、そうだな……まだ晩メシ食ってないだろ? ここの飯代で手打ちにしないか?」

 

「さ、流石にそれは悪いよ!」

 

 思いがけない提案に、焦った様子で矢田が声を上げる。

 

「幸い、お金に不自由する事は無い身でね。本当に気にしなくて良い。それにさっき、中村のレアな姿を見られたからな。それでよしとしよう」

 

 またも出そうになる怒りをグッと堪える中村。

 

「そんな訳だ。好きに頼んでいいぞ」

 そう言って店員を呼び、自分の注文を伝える。

 

「ホラ、早く頼みなよ」

 

 薫が急かすのに押され、躊躇いがちに注文を読み上げる。

 頼み終わって一息付くと、倉橋が声を上げる。

 

「かおるん、今日は邪魔しちゃってゴメンね……? 折角あの女の人と会ってたのに……」

 

「……あー、まぁそう思ってくれてるなら良いよ。あの人忙しいからさ。元々ちょっとした近況話す予定だったから、そんな気にし過ぎなくていい」

 

「若木君……!」

 

「もちろん先生は別な、会計も」

 

「にゅやッ!!?」

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 ──余談ではあるが……

 

 後日、『私は生徒のプライバシーを侵害した上、生徒に食事を集ろうとしました』という手作りカードを首から下げ、HRが始まるまで正座させられる教師の姿が目撃されたそうだ。

 




お読み頂き感謝します。
評価、感想、お気に入りして頂いた方、誠にありがとうございます。
大変励みになります。

今回登場したお店は、小説版にて出てくるお店の名前をお借りしております。詳しくは『呪術廻戦 夜明けのいばら道』をご覧下さい。おもろいよ!

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