暗殺教室×呪術廻戦   作:ストレスマッハ

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15話 胎動

 

 

 終業のチャイムと共に、1日が終わる。

 そこから生徒達は水を得た魚の様に生き生きとし始める。

 

「オイオイオイ! 今日という今日は逃さんぞ若木ィ!」

 

 そんな中さっさと帰ろうとする徹に、肩を組む人物が1人。

 振り返ると、案の定だった。

 

「なんだよ岡島。暑苦しいから離れろ。あと耳元であんま叫ぶな……」

 

 こいつは岡島大河(おかじま たいが)。名前はかっこいい奴だが、それ以外は色々終わってる。

 特に言動。

 何を隠そう、コイツは初対面で開口一番「お前の好きなタイプは!?」って言ってきたバカだ。

 ……まぁ中村の第一声よりマシだが。

 せめてもの救いは、こんな奴だからこそ気兼ねなく喋れるってところだ。

 

 そんな事を考えてる間も、岡島は喋り続ける。

 

「そしたらお前、さっさと帰っちまうだろーが! それに、ネタは上がってんだぞ!」

 

(何言ってんだコイツ?)

「何言ってんだコイツ?」

 

「思った事そのまま出てるんだよお前……! そんな事より! 惚けても無駄だからな! お前、昨夜(ゆうべ)女と会ってたそうじゃねーか!」

 

 思わず固まる徹。

 クラス中の視線が刺さる。

 くそ、すぐに退散せねば……! 

 

「へぇ〜〜〜〜。面白そうな事話してるねぇ、薫く〜ん」

 

 ホラ見ろ厄介な奴が釣れた。

 そうやって近づいて来るのはカルマだ。

 この数日間で思い知った。コイツは嫌がらせの為に、自らのリスクさえも許容する、生まれながらの人格破綻者だ。

 

「ホラホラ。さっさと吐いて楽になりなよ〜。みんなも待ってるよ?」

 

(だるぅ……)

 言葉の通り、クラス全員ニンマリ笑ってやがる。

 そんな中、そろりと動く人影を捉え……天啓! 

 

「……別に大したもんじゃ無い。ただの知り合いだ。話して欲しけりゃ、駅前の期間限定苺パフェでも用意するんだな。それと……どこ行くつもりだ中村」

 

 自身の声にびくぅ! と背中を弾ませる中村。その手は教室の扉に掛けられており、もう帰る準備万端のようだ。

 

「まさか、昨日の今日で喋るとは思いもしていなかったよ。お前の口の軽さを見誤っていたな。……おいこっち向け」

 

「はいぃ!」

 

 中村の見た事がない弱々しい態度に、クラスはぎょっとするも、徹は止まらない。

 

「俺は折角手打ちにしてやったというのに、その好意を無碍にするとは……余程戦争をしたいらしいな」

 

「い、いやぁ〜、薫クン? 私も、喋るつもりは全くなかったんだよ? ホントホント! ただ、話している時に、ついうっかり……」

 

「そうかそうか。うっかりなら仕方ないな。なら俺がうっかりしても仕方ないよなぁ?」

 

 そう言って俺は撮っておいた写真を、──あと一押しでSNSの『3ーE』グループ内に送信できるようにしつつ──中村に見せる。

 どうやら気に入ってくれたようだ。

 思い切り目を見開きながら驚いてくれている。

 羞恥に顔を赤らめる可愛らしい自身の姿に。

 

「な、なんで!!?」

 

「手癖は悪い方でね。欲しいなら後で送ってあげよう。……さて、この後どうすればいいと思う? ちなみに俺はこれから晩飯の用意をする為に、駅近の商店街に行く予定なんだが……美味しい肉屋があってね? そこのコロッケが絶品なんだよ。中村も食べたいと思わないか?」

 

 その言葉と圧力に、中村は顔をサーッと青ざめさせていく。

 

「は、ハイ……食べたいです……」

 

「良かった良かった! なら行こうか! 早くしないと売り切れてしまう! ……いやぁ奢ってくれる心優しい友人がいてくれて嬉しいよ!」

 

 そう捲し立てた徹は、中村を引っ張ってクラスからさっさと出ていった。

 それを呆然と見送るクラスメイト。

 

 しばらくしてから、渚がポツリと呟いた。

 

「……あ、逃げた」

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 男は幸運だった。

 

 家は裕福とは言えずとも、何不自由なく育った。

 術師の素養はそこそこ、術式にも恵まれた。

 生来の気質的に、ちまちまと呪霊を狩るよりも人を傷つける方が向いていた。幸運な事に持ち前の術式もそちら向きであり、特に拷問は大の得意と言える。

 『痛みを増幅する』

 これは戦闘においても、大きなアドバンテージとなった。なにせ、後ろから少し傷付けるだけで相手は怯み、手足の腱を切れば悲鳴を上げる前に気絶する。後は好きに弄べる。

 いつしか仕事は、趣味と実益を兼ねるようになった。

 

 男は人生の絶頂を謳歌していた。

 

 昨夜も最初は憤りを感じていた。

 手持ちの金が尽きたせいで、行きつけの店に入れなくなったからだ。……せっかく良さそうな獲物を見つけたのに。

 だがその直ぐ後、己の運勢が最高であると確信した。

 呪詛師御用達の裏サイトを見ていた時だった。

 

『被呪者一人の殺害依頼、懸賞金10億』

 

 途方もない金額だ。

 これだけ有れば、遊んで暮らせる。

 これからは、より趣味に没頭できる。

 

 そして彼は、意気揚々とこの街にやって来た。

 ターゲットの情報は既に割れている。

 とある山の上の校舎で教師をやっているようだ。

 ああ、やはり俺はツイてる。

 教師なら、生徒の悲鳴を聞かせてやれば直ぐに大人しくなりそうだ。

 

 そして、ちょうど山のある方向から降りて来た、学生の男女が目の前を通り過ぎた。しかも商店街に行くそうだ。

 最高だ。あそこは一目見ただけでは目に付かない所が多い。路地の近くを通ったらやろう。

 だからまだ待たないと……ああ、楽しみだなぁ。コイツらはどんな風に鳴くのかなぁ。まずは手脚を落として、その後目の前でそれを刻もうか……ああ、持って帰るのが楽しみだ。

 そんな事を考えていると、女がコンビニに入るようだ。

 残ったのは男1人。

 すぐ側には細い路地がある。

 ああ、やっぱり俺は運がいい! 

 引き摺り込んで、まずは1人……! 

 

 そう思いナイフを取り出した瞬間、体が宙を舞った。

 

 衝撃。

 どうやら投げ飛ばされたらしい。

 敵を見据えると、そいつは今狙っていた学生だった。

 よく見ると、呪力が感じられる。

 

「お前術師だな?」

 

「気付くのおせぇよ。先走ったバカか、余程の実力者のどちらかだと思ってたんだが……お前は明らかに前者だわな」

 

 男の問い掛けに、学生は強気に言葉を返す。

 

「クソ生意気なガキだな……人を見掛けで判断するなって親に教わってねぇのか?」

 

「ならンな見掛けしてんじゃねーよ。全身黒と金のブランドもんとか、今時DQNでもやらんわ。それにお前、目がニタニタして気色悪いんだよ。見た目どうこう以前の問題だっての」

 

 ハァ……と深いため息を吐くガキ。

 怒りが湧く。……大丈夫。今日の俺は特段ツいてる。

 とっととバラしてメッセージを仕立てよう。

 そう男は自身に自制を掛け笑みを深める。

 

「随分嬉しそうだな? そんなに人殺すのが楽しいかよ」

 

「そりゃそうだ。何事も楽しくやらなきゃつまんねぇだろ? それに、天職だと思ってんのよ。自分が好きな事を思いのままに出来る人生なんだ。全く、神様なんてものが本当にいるなら、感謝したいぐらいだ」

 

 男は胸の前で手を組み、それっぽく祈ってみせる。

 

「あーそうゆう類いね。なら、そうだな……ゲームをしようか」

 

「? 何を言ってる? ゲームだと?」

 

「そう。お前言っただろ? ただ仕事するのはつまんねぇって。俺もそれに倣おうと思ってな。……ルールは簡単。今から5秒数える間に、俺に絶対服従を誓うなら、命だけは勘弁してやるよ。もちろんこれは縛りだ」

 

 目の前のガキはこちらを嘲りながらそう言った。

 

(……コイツ、舐めてやがるなぁ)

 気に食わない。自分が負けると微塵も考えていない(ツラ)だ。遊ぶ側なのはお前じゃねぇ。

 

「ああ? ゲームになんねぇだろうが。お前が獲物で、遊ぶのはオレだろ?」

 

 そう言うと、

 

「ブハッ! ……良いぞ! ジョークのセンスは無いが、真顔で言ってるのはポイント高い!」

 

 クツクツと、目の前で笑い出す変なガキ。

 これから死ぬのに呑気な奴だ。

 男はそう思いながら、冷めた目を向ける。

 

「お互い死にたくなかったら5秒以内に降伏をする。降伏した相手には絶対服従。これで良いな?」

 

「乗った」

(このガキが降参する前に喉を潰す。泣きながら頼んでも降伏出来ないようにしてから、ゆっくり殺してやろう。その顔を恐怖で歪ませてやる)

 男は既に、本来の目的を見失っていた。

 そして獲物が口を開く。

 

「……なら始めるか。いくぞ? 

 

 

 ──1

 

 

 直後、()()()()()()

 

 

  「2

 

 “アレ”が歩き始める。

 なんだコイツは!! こんなの、俺よりも……! 

 

  「3

 

 一歩、また一歩。

 駄目だ勝てない!! 殺される!! 今すぐ逃げ、いや縛りだ! 降伏を……

 

  「4

 

 ……!! 

 か、体が動かない! 声も出せない!! 

 

5……さて、5秒数え終わった訳だが……良いんだな? 降伏しなくて」

 

 目の前に立つ死はそう言った。

 

 ま、待って! 待ってくれ! 話を──

 

「ッッ!!? っかはッ!!」

 

 直後、男は自身の胸に衝撃が走った。

 視界に映るのは、突き込まれた掌底。

 

 な、なん……で──

 

 消えゆく意識の中、最期に男は己の不運を呪った。

 

 

 ◆◇◆

 

 

「……好き勝手やった挙句、“自分は不幸だ”みたいな顔しやがって。死に際まで不快な奴だ」

 

 崩れ落ちた男に目を顰めながら、徹は呟く。

 

 そして、現場から離れつつ、電話を掛ける。

 宛先はなじみの補助監督だ。

 

「あ、真田さん? お疲れ様です。……ええ、片したんで、回収の手配お願い頂けます? それと、冥さん近くに……ああ冥さん、ありがとうございました。すみませんね、こんな仕事お願いしちゃって……あ、金銭面の交渉については、夜蛾宛にお願いしまーす」

 

 そう言って電話を切る。

 危ない危ない。

 あの人、付け込む隙を少しでも与えたら、報酬上乗せさせようとしてくるからな……

 

 現在、高専側の動きは大きく分けて3つ。

 ①学校内の潜入、②街全体の索敵と監視、③各種手配と後始末だ。

 ①は言わずもがな

 ②には1人でこなせる冥冥を街の中心に配置

 ③には補助監督5名に街の四方と中心部を分担

 今後も、追加の人員が来るまではこの体制で動く事になる。

 

(──それにしても面倒だ。今回の奴はド三流だったから良かった。全員この程度なら楽なんだが……そうもいかないだろうな)

 

 思案を重ねつつコンビニの前まで戻ると、中村が店内から出て来るのが見える。

 

「お、お待たせ〜。ごめんねー? トイレ長くて」

 

「いやいや全然待ってないよ? てっきり裏口から逃げようと考えたけど、無理そうで泣く泣く戻ってきたのかと」

 

「ま、まっさかぁ! そんな訳無いじゃん! ……ほ、ほら行こっか!」

 

「……中村って誤魔化すの下手だよな」

 

「うっさい!」

 

 そんなやり取りを続けながら、2人は商店街へと歩いていった。

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 ……

 

 

 ……ああ、しくじってしまった

 

 まさか私の支配から脱するとは……

 

 このような事態、微塵も想定していなかった

 次は気を付けないといけないな……

 

 ひとまず、身体を修復しなければ……

 

 ……幸い、ここなら見つかる心配も無い

 

 即席の縛りだったが、上手くいった

 ……日頃の行いというやつかな?

 

 ……しかし、手が出せないというのはもどかしいな

 ……ふむ

 

 あまり手を借りたくはなかったんだが……

 

 ……ふふ……彼女には笑われてしまいそうだ

 

 

 ……

 

 




お読み頂き感謝します。
評価、感想、お気に入りして頂いた方、誠にありがとうございます。
大変励みになります。

これにて2章、4月編終了です。
ここからオリジナル展開も増えて…いくといいなぁ。


ちょっとしたお願いなんですが、感想欄にてご質問頂く際には、展開の予想はお控え頂けると幸いです。
今後の展開を的中されてしまう事があれば、ショックで立ち直れなさそうなので…
ここどういう意味?とかはバンバンください。
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