──舐めていた
実物を目の前にして、徹は一瞬で理解した。
せざるを得なかった。
まん丸の顔と無数の触手。
ふざけた容姿からはかけ離れた、圧倒的な存在感。
内包するエネルギーが肌を粟立たせる。
そして何より、『見られている』。
例えこちらが何をしようが、動いたその瞬間に押さえ込まれるだろう予感。
(……生き物としての格が違う!!)
その目で見るまで、心のどこかで考えていた、
『今回の対象を殺した暁には、賞金の100億を頂きます』
戦って勝つ事が出来るのではないかという、甘い想定。
この瞬間、嫌というほど
コイツは、真正面からでは、絶対に殺せないと。
(……この
──こうして、暗殺教室は幕を開けた。
唐突で鮮烈に、教室内の全員へと衝撃を与えながら。
そして数日が経つ頃には、今までの日常では想像だにしない異様な空間へと変化していた。
誰しもが、望む望まないに関わらず……
◆◇◆
「HRを始めます。日直の人は号令を!」
……今日も始まる、俺達の暗殺が。
「起立!!」
皆が席を立ち、銃を構え、
「気をつけ!!」
狙いを合わせ、
「れ──────い!!!!」
26の銃口が、一斉に弾を撃ち出した。
「おはようございます。発砲したままで結構ですので、このまま出欠を取ります。磯貝君」
「……!!」
「すいませんが、銃声の中なので大きな声で」
「は、はい!!」「岡野さん」「はい!!」「片岡さん」「はい!!」
その雨の中、顔色一つ変えずに点呼を始める怪物教師。
ここまではいつもと変わらない。違うのはここからだ。俺は意識を切り替え、この教室に来て初めて呪力を回す。ごく少量の呪力を、気取られないよう細心の注意を払いつつ、瞬時に弾へ込めて……撃つ。
結果は……
「──若木君」「……はい」
……変わらなかった。
が、
最後に自身の名前を呼ばれると同時に、朝の射撃時間が終了する。
「遅刻無し……と。素晴らしい! 先生とても嬉しいです。……残念ですねぇ、今日も命中ゼロです」
顔の模様を変化させ、赤いマルをペカーと浮かべながら続ける。
数に頼る戦術の注意点、個々の思考の単純さ、そして工夫の必要性。
そうしていると、聞き続けるのが我慢できなかった、
効果の無い弾を使わせて、誤魔化しているのだと。
同調した生徒からも、そーだそーだ! と抗議が増える。
「では、弾を込めて渡しなさい」
その言葉に、前の席の岡野ひなたが自らのピストルを渡す。そして、それを受け取ったこの教師は……
パンッという乾いた音とともに、
「国が開発した対先生特殊弾です。先生の細胞を豆腐のように破壊できる。……もちろん数秒あれば再生しますが」
ビチビチと千切れ飛んだ触手にドン引きする生徒達をスルーしつつ、説明するバケモノ。既にズリュンと新しい触手を生やしている。
それを見て、驚愕した。
(……!こいつ、再生持ちか!いやそれより、今呪力が感じられなかった……!)
それが示すのは、1つの事実。
つまり、
そんな俺を嘲笑うかのように、
「殺せるといいですねぇ。卒業までに」
緑の縞模様を浮かべながら、この教室の担任は笑みを深めた。
……先はまだ、見えない。
ここまでお読み頂き感謝します。
評価を付けていただいた方、誠にありがとうございます。
見て貰えるのがこんなに嬉しいとは思ってませんでした……
時間が掛かっても完結させる心づもりですので、お読み頂けると幸いです。