──そして迎えた5限目。
内容は古文。
今回の授業では、連語についてを学習するようだ。
(……連語って確か、諺や格言、後は特定のイメージを示す言葉……だっけ?)
徹は脳を回して、記憶を捻り出す。
一通り
「短歌を作ってみましょう。ラスト七文字を触手なりけりで締めて下さい。書けた人は、先生のところへ持ってきなさい」
……季語は?
と首を傾げながらも、課題に取り組む生徒達。
そんな中、手が上がる。
「先生しつもーん」
「……? 何ですか茅野さん」
同じ転入組の茅野だ。
「今更だけどさぁ、先生の名前なんて言うの? 他の先生と区別する時不便だよ」
授業内容と関係の無い質問に対して、当の本人は答える。
「名前……ですか。名乗るような名前はありませんねぇ」
なんなら皆さんでつけて下さいとのこと。
(……アイツの名前か。確かに気になるな。元の……人間の時の名前が分かれば、事の経緯について何か分かるかもしれない……)
今の様子を聞く限り、素直に教えてくれる筈もないかと思考を打ち切る。
ふと、プシューと音を立てながら、奴の顔が“薄いピンク色”に変わった。
それを待っていた
その姿を見て、クラスに緊張が走る。
気付いたのだ。彼の殺る気に。
短歌を書く為の用紙を盾に、ナイフを隠す。
自然体で歩きながら、目線を下に。
相手に殺気を感じせていない。
(……!)
様になる姿に思わず見入る徹。
そして渚が、教卓で待ちかねる奴の前に立った
その瞬間。
ナイフを振りかぶり、勢い良く首元に突き込んだ。
結果は──当然の無傷。……それでは足りない。
「……言ったでしょう。もっと工夫を」
失敗した暗殺者に、
いつもの如くアドバイスを始める怪物教師。
そんな中、渚は……ふわりと奴に抱き付いた。
刹那、
バ ァァン!!
大音量と共に、大量の特殊弾が周囲に飛び散った。
◆◇◆
(……視界がぼやける。……僕は、倒れてるのか……?)
渚は、自身の身に降りかかった衝撃に、身を捩らせる。
耳鳴りで周囲の音が歪んでいる。
……誰かが声を荒げている。
(……確か僕は、先生を……)
五感と思考が戻りつつある渚が感じたのは、自身に触れる“布のような”感触と、
◆◇◆
誰かが騒いでいる声がしたが、どうでも良かった。
眩い光に目を顰めながら、徹は見た。
確かに上へ飛び上がったのを。
だが、目の前から目を逸らせない。
危機から自分を守る為に、
ひりつく肌。
蠢く“ナニカ”。
本能を押し殺し、目線を上げる。
──その目に映ったのは、天井に張り付く「黒」と、その身から漏れ出る「呪力」だった。
「実は先生、月に一度ほど脱皮します。脱いだ皮を爆弾に被せて威力を殺した。……つまりは月イチで使える奥の手です」
ソレから、怒りを孕んだ声が聞こえる。
「寺坂、吉田、村松。首謀者は君等だな」
「えっ、いっ、いや……! 渚が勝手に……!」
事の重大さに、ようやく気付いた寺坂は、咄嗟に誤魔化そうとした。
が、次の瞬間、奴の姿は掻き消えた。
そして再び姿を現したかと思えば、大量に何かを抱えている。
この間、実に数秒である。
それを成した当人の足元に零れ落ちたのは……『表札』だった。
「政府との契約ですから、先生は君達に決して危害は加えないが……」
バラバラと音を立てて、
「次また今の方法で暗殺に来たら、君達以外には何をするか分かりませんよ?」
怪物はそう言って、笑みを向けてくる。
「家族や友人……いや
いかにも、モンスターと呼ぶに相応しい、悍ましい笑顔を。
「なっ、何なんだよテメェ……!」
寺坂は声を荒げ、続ける。
「迷惑なんだよォ!! いきなり来て地球爆破とか暗殺しろとか……迷惑な奴に迷惑な殺し方をして、何が悪いんだよォ!!」
己の本音を泣き叫ぶ寺坂に対して、奴は、
「迷惑? とんでもない。君達のアイディア自体はすごく良かった!」
顔と模様を一変させ、穏やかな表情で「正解」の赤丸を浮かばせた。
急な変わり様に、徹は目を丸くする。
表情が切り替わった瞬間、漏れ出る呪力が綺麗さっぱり消え去ったのだ。
そこからは、いつもの授業だ。
今回の暗殺の良かった点を褒め、悪かった点についてはしっかりと正す。
そして最後に、教室を見渡し、締め括る。
「人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう。君達全員、それが出来る力を秘めた有能な
「
徹は頬を引き攣らせた。
(……なんてデタラメな……)
ここが、教室だと理解したからだ。
「暗殺」を学ぶ、「教室」なのだと。
そんな変わった教室の、教師の言葉に。
渚は、どこか吹っ切れたように
「殺してみせる」と宣言した。
今度はその顔に、笑みを浮かべて。
◆◇◆
──俺達は殺し屋。
殺せない先生、「殺せんせー」と俺達の暗殺教室。
始業のベルは、明日も鳴る。
ここまでお読み頂き感謝します。
これにて1章は終了となります。
次の2章からは、待望の呪術キャラとも絡ませていく予定です。
是非お楽しみ頂ければ幸いです。
…それはそれとして、アニメ12話最高でした。
原作を“理解ってる”職人の業でしたね…