ベアトリーチェ(ゲマトリア)、キヴォトスにて   作:ふぁっしょん

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生徒のふりをした大人が、生徒と交流するはなし……
の続き。


ベアトリーチェ(らしい少女)、キッチンカーにて(2)

 なにやら勧められるがままに、ちょっとお高めのクレープを買い、隣り合い、それを頬張った。

 柔らかい。

 ベアトリーチェ(変装中)は齧り、咀嚼して、なにやら瞬きした。

 味覚というものは、こういうものだったか……などと思う。

 そしてそれから、二口、三口と食べた。

 

 隣にいる少女をみた。

 その、薄い桃色の髪をした少女は、柔らかな笑みを浮かべ、こちらを見ながら食べている。

 

 ベアトリーチェはなにか言おうとして……

 口に入ったものを思って、またクレープを齧った。

 それで喋れなかった。

 そうしているうちに、気が付くと、クレープ生地は一口ほどの小さな欠片となっていた。

 幾度か瞬きした。

 

 隣の少女をみると、なにやら満足げな顔でこちらを眺めながら食べている。

 最後のひとかけらを手に、ベアトリーチェは困った。

 ここからどうすればいいのだろうか、とも思った。

 ひとまず口に入れた。

 

 

 名残の残る口をもぐもぐしていると、少女が話しかけてきた。

 

「どう?初めてのクレープは」

「ふむ……

 ううむ……」

 

 ベアトリーチェは再び困った。

 こういうとき、どう言い表せばいいのだろうか……

 普段使わない語彙をひねり出す。

 

「柔らかく……

 甘い。そう、甘くて……

 柔らかくて甘くておいしかったです」

 

 あまりの貧弱な語彙に、ベアトリーチェは思わず眉をひそめた。

 もっとなにか……言葉が出てこないものかと、首をひねる。

 

 しかしその様子をみて、少女は笑った。

 なんだか幸せでたまらないといった表情だ。

 

「それはよかった!

 ……私は柚鳥ナツ。放課後スイーツ部ってところの部長をやってるんだ。

 君の名前は?」

 

 

 ベアトリーチェは彼女を不思議に思う。

 なにやらいろいろと、不思議なものでいっぱいの少女だ。

 柚鳥ナツ……放課後スイーツ部?

 疑問はさておき、ひとまず名乗り返す。

 

 

「私はアリウス分校の赤崎ヒサゲです。こちらには見学に来ました。

 柚鳥ナツさん……ふむ……

 クレープ、おすすめしていただきありがとうございました。

 クレープとは、良いものですね」

 

 ナツはおおげさなくらい大きく頷いた。

 腕汲みして、なにやら妙な顔で話す。

 

「そうでしょうそうでしょう。

 ……もしかして、スイーツ自体をあんまり食べたことがなかったり、する?」

 

「ええ、おそらく。

 記憶している限りでは」

 

「むぅ!スイーツ……

 スイーツとは!」

 

 

 ナツは力強く声を放つ。

 

「すなわちロマンをもたらすものであり、ロマンそのもの。

 時と場所と、ともに食すひと。そのマッチングによって千変万化する幸福……

 さきほどの食事姿をみて、私はすぅぐにわかった。

 ヒサゲちゃん、あなたはスイーツが好き!

 もし今はわからずとも、いずれ悟るだろう……

 ただ飲食することに留まらない、青春の輝きを!」

 

 そしてパック牛乳を取り出して、飲んだ。

 ベアトリーチェ(赤崎ヒサゲ)は目をぱちぱちした。

 

「うん、おいしい!

 ひとまずヒサゲちゃん、モモトークを交換しない?

 私がおすすめのスイーツを伝授してしんぜよう」

 

「ふむ……?

 わかりました、では……」

 

 

 それを聞いて、懐から端末を取り出して、たぷたぷと触り……

 しばらくして、困った表情になった。

 

「モモトークとは……これであっていますか?」

 

 ナツは画面を覗き込む。

 

「あ~、入れてなかったかんじか。

 そうそう、それを入れて……

 よし、では私とお友達になるぞ。

 えい」

 

「お友達……

 なるほど」

 

 ヒサゲとしての端末、そのモモトークの欄に増えた、柚鳥ナツという名前をみた。

 なにやら感慨深いものを感じた……

 その出所を探ろうとするが、やはり思い出せないので、やめた。

 

 ナツは拳を握りしめて語る。

 

「スイーツは、より味わえる場によって、その幸せを何倍何十倍にも高めることができる……

 ヒサゲちゃんには私のとっておきを通じて、そのロマンを知ってもらいたい!

 今日の放課後は空いてる?」

 

「ふむ……?

 よくわかりませんが、ひとまず空いていますよ」

 

「それじゃ、放課後にトリニティの第3校門前に集合!お菓子を買うためのお財布も忘れずにね」

 

「なるほど?」

 

 

 そんな様子を、放課後スイーツ部の部員たちは、やはり生温かい目線で見ていたのであった……




レモン絞りのうえで瞑想するレモンの気持ち。
時系列的にナツはまだ某駄菓子屋を知らないはずと想定し、次回はブルーベリータルト的にケーキ屋さんの予定です。
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