ベアトリーチェ(ゲマトリア)、キヴォトスにて   作:ふぁっしょん

15 / 15
なんだか投げたい気分なので今日は二話投稿です。
昼投げた前話から、ベアトリーチェ(変装中)は、赤崎ヒサゲと名乗ることにしました。見た目は不明。どうしよう……


ベアトリーチェ(らしい少女)、放課後にて

 赤崎ヒサゲ(ベアトリーチェ)は、ぼんやりと空を眺めていた。

 青い空に、まばらに白い雲が浮かんでいる。その雲のかたちがゆっくりと変わるのをみていた。

 空に浮かぶ輪が、そんな雲たちと交わって、ひび割れのようにもみえた。

 

 特にやることもなく、それで予定はあるし、待つ場所もあるから、彼女は待つことにした。

 待ち合わせ場所の、トリニティ総合学園の第3校門前にて。

 ただ立って、空を眺めていた。

 

(スイーツ……

 スイーツとは……)

 

 今日受けた言葉と、クレープの刺激を咀嚼しながらのことだった。

 

 

 久方ぶりの味覚は衝撃的だった。だがそれ以上に不思議なのは、それによって浮ついている自分そのものだった。

 なるほど、クレープなる、あのスイーツは……

 強い。

 大人になってからそう動じることはなくなったと振り返って思うが、しかし動じてしまった……

 そして適切な比喩で表すには、あまりにも未知に包まれている。

 

 ヒサゲ(ベアトリーチェ)は決意していた。

 スイーツに理解を深め、自らに新たな知見を齎すことを。

 だから見学予定地を回ってすぐ、校門前にやってきたのだ。

 

 間食の誘惑を断ち切ることなど、たやすいことだ。

 なにせこれから、とっておきのスイーツを知ることになるのだから。

 その衝撃は計り知れない。もしかすると、いや間違いなくクレープ以上の衝撃を受けることになるだろう。

 しかし、その対策は万全だ。

 端末には様々なグルメリポートの比喩表現がまとめてある。

 いざとなればこれをみて、今度こそうまく言い表してみせる……!

 

 

 しかし、あのクレープなる刺激は強烈だった……

 

 

 そして時が過ぎた。

 柚鳥ナツが校門前にたどり着くと、人だかりの中から少女、すなわち赤崎ヒサゲが現れた。

 なにやら穏やかな表情を浮かべている。

 

「こんにちは、ナツ……

 さきほどぶりですね」

 

「ええと、待たせちゃった?」

 

「いえ、そうでもありません。

 思索に耽っていると、時間はあっという間に過ぎていくものですから」

 

「そおか。それじゃ、私のとっておきのケーキ屋さんのひとつ……

 パティスリー・ふぁみぃへ出発!」

 

 少女たちは歩き出す。

 先頭に立ったナツは、人混みを抜けると振り返った。

 風にのって、ミルクのような香りが漂う。

 ナツは語りだす。

 

 

「パティスリーっていうのは、ケーキとかパイみたいな、スイーツの中でも洋菓子の王道!ってかんじのやつを扱う店のことだよ。

 もちろんおいしい。でもでも、そういうお菓子はあんまりたくさん食べると、お腹がいっぱいになりすぎたり、カロリーとか……ちょっと困ったこともでてきたりする……

 だからいろんなおいしさを知るには、時間がかかったりしがちだったり。

 そんなときにおすすめなのが、シェアというやり方だね。お友達といっしょに食べれば、いろんなおいしさを一気に味わえるだけでなく、その体験を分かち合うこともできる。

 まあ、今回はふたりだから、そんなたくさんは食べれない……ということがないのが、パティスリー・ふぁみぃの特徴!」

 

 ナツは早口で、身振り手振りを加えながら説明していた。

 ちらちらと進行方向を警戒しているものの、ちょっと危なっかしい。

 ヒサゲはいろいろと集中した。

 

 

「ふぁみぃでは、ちょっと小さめの四角いケーキを、いろんな種類でひとまとめにして注文できるんだ。

 小さめのケーキっていうのは、そのサイズでも満足できるように味や香りを丁寧にこだわらないといけないから、ちょっとお高めな傾向がある。

 でもここではひとりふたりといった少人数でも、まあ許せるくらいのお値段!それでいておいしい……

 特にフルーツの扱いは絶品でね!私はここのブルーベリーの扱いには、もぉう脱帽せざるをえないんだ。みずみずしさと濃厚な甘みと、それでいて香高く……

 とにかくケチのつけようがないんだよ!だからよく向かうんだ」

 

「ふむ……

 ひとまずおいしいということはわかりました」

 

「そして、それだけではないからとっておきなのだ!

 ここは隣に、店主のお友達がやってる喫茶店があってね。持ち込みおうけいなのさ。

 無論飲み物もよく合うやつが揃ってる。

 ヒサゲちゃんはどんな飲み物が好き?」

 

「ふむ……

 飲み物……

 ……

 特にこだわりは、いまのところありませんね」

 

「そか。それじゃ炭酸とか苦い飲み物は苦手だったりする?」

 

「いいえ、大丈夫ですよ。

 たとえどんな衝撃的な飲み物でも、耐えてみせましょう」

 

「うにゅ、それじゃあひとまずおすすめなのは、なんといってミルクだね。

 あそこは産地直送の新鮮な牛乳がキンッキンに冷えてて、私は大好きなんだぁ」

 

「なるほど……

 ミルクとケーキ。なるほど」

 

 

 話しているうちにやがて、ふたりは目的地にたどり着いた。

 ナツがやはり先導する。

 

「よし、入ろう。ここからは小声でね」

 

 連れられて中をみると、大きなガラス張りのショーケースの中に、色とりどりの様々な洋菓子が並んでいる。ケーキとタルトが中心となっているのだが、どれも色合いが美しい。

 そんな中、唯一ショーケースの外に陳列されているものがあった。

 瓶詰めのジャムのようなものだ。

 

「ナツ、これはなんですか?」

「それはコンフィチュールだね。フルーツの水分を抜いて砂糖と煮詰めたやつなんだけど、そうとは思えないほどさらっとした舌触りが特徴なんだ。

 果物のぉ、なんというか……素材感みたいな食感が楽しめて、それでいていろんな食べ方があるんだよ。パンとかチーズにつけたり、紅茶とか炭酸水に溶かしてみたり……」

「なるほど……」

 

 

 ヒサゲはショーケースを真剣に見つめた。

 なるほど、果実の透き通ったような質感が特に美しい。

 しかしそれは、ほかが劣っているというわけでもないように思えた。

 たとえばチーズケーキなるものだ。

 チーズクリームの断面を一目見れば、そのきめ細かな質感を察することができるだろう。

 そしてその下にあるしっかりとした生地の存在感が……

 

 その様子を眺めながら、ナツは小声で話しかけた。

 

「ひとまず4つ選ぶといいよ。四つ並べると正方形になってきれいだぞ。

 あと、結構お腹に貯まるからね」

 

 ヒサゲはこくりと頷く。

 しかしなにを選ぼうか、苦悶した。

 悩みながら、それでも特に気になるものを選んだ。

 まずブルーベリーと、ショコラなるおすすめされたものと、なにやら緑色のマッチャなるものと、そして白が特徴的なチーズケーキだ。

 あとコンフィチュールも買うことにした……

 

 

 そして隣の喫茶店に入り、座った。

 ふたりともミルクを注文した。

 

 ミルクの入ったコップとストローが机に置かれた。

 ケーキの入った紙箱を開くと、ふわりと、甘い香りが広まった。

 食事の挨拶をして、さっそくフォークを手に取り……

 

 ヒサゲはそのなんともいえぬ妙なる味に驚愕した。

 

 そして、無言で、二口、三口、ミルク……と食べた。

 言葉を発する余裕がなかった。

 決して大口だったり噛まずに呑み込んだわけではなかった。

 ただ、その高次元からの衝撃に揉まれていると、本当に言葉を発する余裕がなかったのだ。

 

 その様子をナツはにこにことみていた。

 ちょっとずつ食べながら。

 

 そして皿に載るものがなくなり、ミルクをちゅーっと吸ってから、ヒサゲは重々しく口を開いた。

 

「おいしいとは……

 おいしい……

 ……言い表すには、私の知見が足りません」

 

「おいしかったのなら、それでよし!」

 

 ナツは満面の笑みを浮かべた。

 そしてミルクを飲んでから、また口を開いた。

 

「私もヒサゲちゃんの幸せそうな顔がみれて、すっごく幸せになれたよ。

 ありがとね、ヒサゲちゃん」

 

「ふむ…… 

 幸せ……」

 

 ヒサゲは自らの顔を両手で触る。

 なるほど、微笑んでいたらしい。

 そのままナツをみた。

 

「スイーツとは、奥深いものですね」




ここからナツによるスイーツ談義が始まるわけですが、それはまた別の話ということで……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

クックックッ…愛です、愛ですよ! シロコ!(作者:ゲマ)(原作:ブルーアーカイブ)

▼黒服に憑依転生した一般人(綺麗なボンドルド風味)が砂狼シロコを拾う話。▼※尚、転生者はハピエン厨とする。


総合評価:8379/評価:8.41/連載:17話/更新日時:2025年02月16日(日) 19:31 小説情報

憑依先の悪役将軍の立ち回りが地獄過ぎる件(作者:Mind β)(原作:ブルーアーカイブ)

ブルアカの世界に転生してヒャッハー!してたら転生憑依先がジェネラルだった主人公君のお話▼『悪い企業の将軍に憑依しました』のリメイク版です


総合評価:4751/評価:8.44/連載:25話/更新日時:2025年11月27日(木) 20:30 小説情報

光のベアトリーチェ、アリウスに立つ(作者:吾妻西紀)(原作:ブルーアーカイブ)

ベアトリーチェに成り代わってしまった誰かと▼アリウスの立て直しに関する物語▼なお本人はポンコツとする


総合評価:8333/評価:8.71/完結:9話/更新日時:2025年05月22日(木) 15:00 小説情報

そうだ、キヴォトス曇らせよう(唐突)(作者:音弧)(原作:ブルーアーカイブ)

転生トラックに飛び込み見事転生を果たした変た狂人、神崎湊。▼ヤツは生粋の曇らせ好きである。▼ヤツは転生によって得た特異能力を使い、悉く(の脳)を焼き尽くす!▼行けっ!変態!!その手に未来を掴み取れ!!▼あっまってそれ(ヤンデレ)は想定外でs▼見切り発車です。気分がのったら書きます。


総合評価:1492/評価:6.79/連載:11話/更新日時:2026年03月03日(火) 00:50 小説情報

待ちぼうけの騎士〜天童アリスの護衛従者〜(作者:弥次郎兵衛)(原作:ブルーアーカイブ)

天童アリスにはケイの他にもう一人従者がいた▼全然騎士っぽくない主人公が自分の目的のために誠心誠意頑張り続けたそんな話▼この小説は本気と書いてマジと読むほど自分のために書いた作品で▼メインストーリーやイベントをある程度知っていること前提で書いています▼


総合評価:5064/評価:8.82/連載:69話/更新日時:2026年03月23日(月) 10:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>