ベアトリーチェ(ゲマトリア)、キヴォトスにて   作:ふぁっしょん

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本話は解説回、読まなくてもいいやつです。
そのため10/10は二話投稿予定です。
会話に挟む形で開示するとなると、めちゃくちゃ後で明かされるかたちになったので、無理やりねじ込みました。

経緯に正当性を持たせるためには必要ですが、あとでいい設定。
しかし、この教義こそが核心なんです。

本作は神秘と恐怖、崇高と色彩という概念に対して、この教義を応用して深堀します。

原作にはない、史実準拠の独自設定です。
これは原作の設定がなぜ存在するのか、という理屈を用意するために必要でした。
このプロットの根底に関わる設定に関わっているので、許してください。


ベアトリーチェ(ゲマトリア)、アリウス派の教会にて

 アリウス自治区の生徒が、真摯な様子でミサを行っている。

 あるものは目を閉じて祈りに耽り、あるものはその儀式を見逃さないようにと凝視する。

 

 その様子を覗き見て、ベアトリーチェは満足していた。

 彼女たちを影から観察する限り、アリウス派の教義はしっかりと根付いている。

 わかりやすいように変形させてはいるが、それは教義の根底の部分には関与していない。

 つまり、正当性が残っていた。

 

 

 あらゆるひとは自らの積み重ねたものを頼りにして生きると、ベアトリーチェは考えている。

 すなわち、敵とはそれにそぐわぬものであるほど、適している。

 都合よくアリウス自治区には、アリウス派の教義というものがあった。

 そしてその教義を弾圧した過去をもつ、トリニティ総合学園という存在もあった。

 

 

 アリウス派の教義は、数百年前から変わらず、トリニティ系統の教義でみれば異端だ。

 簡単に要点をまとめよう。

 

 数百年前、やがてトリニティとなるいくつもの自治区は、ある程度共通の教義を持っていた。

 まず、キヴォトスは創造主によって無から生み出された。

 創造主はそのあとに、あらゆるものを生み出した。

 我々は創造主によって生み出されたわけだから、すなわち神の末裔である。

 

 しかし、アリウス派はこう考えた。

 神は無からキヴォトスを生み出した。

 そして我々はキヴォトスの中で生まれた。

 すなわち無の中にあった神と、キヴォトスの中に生み出された我々とでは、完全な断絶が存在する。

 我々は神の末裔ではなく、あくまで別のものである。

 生徒は似姿ではあるものの、神とは崇高な神性であり、まったく違うのだ、と。

 

 

 これは当時においての生徒のアイデンティティを根底から覆す教義であり……

 受け入れる以前に、本当に理解できるものは、思索と知識を重ねた知者以外いなかった。

 ゆえに弾圧された。

 

 

 なぜそんな教義が、絶えることなく受け入れられていたのかというと。

 この教義はアリウス自治区の権力者にとって、知らなければならない必須知識だったからだ。

 

 アリウス自治区には戒律というものが存在する。

 富を貯め込む際の限度など、条件を逸脱した場合、ユスティナ聖徒会の用意したミメシスが現れるのだ。

 ミメシスがなにか、それは非常に難しいのであとにして。

 とにかく、ミメシスは権力者にとって現れないでほしい存在だった。

 

 

 そこで教義が関わってくる。

 ミメシスは教義の正当性に則った高等な問答や、特定の儀式によって退散するようになっているのだ。

 この儀式はアリウス派の生徒会長の直系にしか行えないという問題があったが。

 しかし、問答に成功すれば生き残れるかもしれない、という事実。

 それが教義を知る必要性を生み出し、絶えさせることないようにしていた。

 

 この仕組みは、この教義の厳密さによって戒律およびミメシスという機構が破綻することないようになっている、という事実を踏まえると、実に興味深い仕組みだが……それもさておき。

 

 

 教義はいまも受け継がれていた。

 しかも、高度な知識として考えると、異常に識者が多かった。

 ベアトリーチェはこれを利用することにした。

 アリウス派の教義を広めるように指示したのだ。

 

 

 たとえもとが貧民であろうと、アリウス派の教義を知るように、義務付けた。

 たとえ理解力が足りなかろうと、アリウス派の教義を信じるように、やり方を指導した。

 

 理解を示させるうえで重要なのは、既に理解していることを利用することだ。

 常に苦しみ、悪事を行ってきたアリウス自治区の人々は、特にコヘレトの言葉という文献に理解を示した。それについて思うこともあったが……妥協した。

 まず重要なのは、意思を持つための土壌である、信念を持つことだからだ。

 

 

 

 ベアトリーチェはミサで祈る生徒の様子を改めてみた。

 ひとりとして、居眠りする者がいない。

 想定よりもずっといい、好都合だ。

 

 信じるものを否定されることは、考えるだけでも恐ろしく、苦しい。

 そういう存在がある、ということを理解すれば、無意識の反発心がうまれる。

 あとは膨らませ、方向性を整えれば、情動が生まれる。

 情動はすべてを動かす。ベアトリーチェはそれをよく知っていた。

 ほんとうによく、知っていた。




 教義の設定については、メインストーリーを完読して考察もしているなら、もしかして……と思う内容だと思います。
 史実におけるアリウス派の教義を、キヴォトスにあわせたものですので、たぶん違和感は薄いはず……

 ブルアカの本領は透き通った青春ですから、薄暗く複雑な部分はまだまだ明かされないでしょうし、やってすぐ困ることはないと思っています。祈っています。

 とはいえ設定だけでは物語にならないです。
 大筋はやはり、ベアトリーチェによるアリウス自治区の救済(一人称視点)ですよ、安心してください。
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