ベアトリーチェ(ゲマトリア)、キヴォトスにて   作:ふぁっしょん

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 前置き回です。読まなくてもいいです。
 次はベアトリーチェ(ゲマトリア)と、錠前サオリのコミュ予定です。


ベアトリーチェ(ゲマトリア)、生徒用総合訓練施設にて

 ベアトリーチェは困っていた。

 アリウス自治区のひとびとが、まったく想定通りに動かないからだ。

 どれだけ敵意を外部に誘導しようとしても、内部に向けて害意を放つだけに留まってしまう。

 対処すれば一時的に収まるのだが、重要なのは自主性であり、自発的に高みを目指すことだ。

 やらせるのでは意味がないと、彼女は考えていた。

 しかし……

 観察する限り、その兆候はない。

 

 

 アリウス自治区の生徒居住区画における、生徒たちの一日を振り返ってみよう。

 アリウスの生徒は4から6名をまとめ、ひとつのチームとして、毎日を暮らす。

 以下の基礎日程はキヴォトスにおけるいくつかの学園のカリキュラムを参考として、設計したものだ。

 

 

 早朝、模擬太陽が地下都市の天蓋に現れる頃に起床し、ただちに身だしなみを整えに向かう。

 清潔な冷水と布で顔など各部の汗ばんだ箇所を軽く洗い、歯を磨き、爪を整える。そして寮を離れ、食堂へ向かう。

 点呼ののち、朝食が配給される。

 食堂で配給された食事を食べた後、自主判断に基づく装備の整備を始めるため寮へ戻る。

 整備が一通り終わる程度の時間が経つと、施設外にある修練場へ集合。

 柔軟を兼ねた徒手体操を行う。それが終われば一旦体を清潔にするため、浴場へ向かう。

 浴場で汚れを落としたのち、着替える。

 

 そして午前の課業が始まる。これは学舎と称される施設で行われる。

 午前の稼業は基本的に机上で行う。

 生徒は栄養補給用の甘味料と水筒いっぱいの生理食塩水を与えられ、ひたすら学業に励む。

 たとえばアリウス派の教義についての学習。たとえば戦術的、あるいは戦略的な机上訓練。

 これは正午になるまで、45~50分ごとに10~15分程度の休憩を挟みながら行われる。

 

 正午になると、アリウス派教義に沿った儀式を行うため、教会へ向かう。

 この時点で午前に使う備品を返却する。

 教会で礼拝などを行ったあとは、食堂へ。

 食堂で昼食を摂り終えたら、義務交流が始まる。

 義務交流とは、自らの所属するチームと、ほかのチームとで行われるものだ。

 互いの現在状況について報告し合うことで、現状を多角的に認識することを求められる。

 

 そして午後の課業が始まる。生徒は施設外部にある郊外演習場へ向かう。

 午後の課業は基本的に運動を伴う。教官役として選ばれたチームのひとりが、上級教官として選ばれた生徒の指示に従い、訓練を行うのだ。

 この指示内容はベアトリーチェが逐次調整を加えるため、非常に高度なものとなっている。

 そのためもあって上級教官は、教官の持ち回り制となっている。

 

 生徒はやはり、栄養補給用の甘味料と水筒いっぱいの生理食塩水を与えられ、ひたすら訓練に励む。

 たとえば戦闘訓練。たとえば行軍訓練。たとえば工作訓練。

 これもやはり、日没一時間前まで、45~50分ごとに10~15分程度の休憩を挟みながら行われる。

 

 日没一時間前になると、柔軟を兼ねた徒手体操をふたたび行い、浴場へ向かう。

 浴場で汚れを落としたのち、着替える。

 この時点で午後に使う備品を返却する。

 

 そこから教会へ向かい、儀式を行う。

 礼拝を終えたのち、食堂へ。

 食堂で夕食を摂り終えたら、再び義務交流が始まる。

 

 義務交流が終われば、自己学習計画を製作する時間に移る。

 これは教官が回収し、上級教官の判断ののち、許可、あるいは不許可が下される。

 そして生徒は配給される甘味料を受け取り、許可が下された学習計画に従って、自習を始める。

 45~50分続けたのち、これを終え、寮へ戻る。

 寮では就寝準備を自らがやる義務のほかは、特に制限がない。

 消灯まで自由時間だ。

 

 そして一日が終わる……

 

 

 ベアトリーチェは日程を改めてみて、思った。

 なぜ、生徒たちは粛々と従っているのだろうか?

 様々な不満があるはずだった。たとえば億劫さであったり、たとえば……

 

 過去のデータを鑑みると、これまで義務を課されていなかった生徒が突然義務を課されると、それに抵抗しようとする傾向があった。

 しかし、そんな兆候はなかった。

 就寝までの時間において、たとえば脱走計画を用意するなど、なにかしら行うだろうと考えていたのだが……

 しかし、そんな気配はなかった。

 誰一人として逆らおうとするものはいない。

 

 ただ、生徒が生徒に対して、たとえばサボタージュのため義務を押し付けるよう恐喝するなど、そういった堕落の先触れはよく見受けられた。

 発見するたびに厳罰に処しているので、だんだんとなくなっているが……

 なくなったぶんのフラストレーションが、外へ向く様子はない。

 

 

 ベアトリーチェは困惑していた。

 自分がそこまで優れた能力や知識を持っていないことを理解していたからだ。

 だというのに、生徒は改善要求を出すことすらなく、粛々と従っている。

 なぜ、不満を訴えないのだろう?

 なぜ、より高みへ行こうとしないのだろう?

 ベアトリーチェには理解できなかった……

 なので、意識調査を行うことにした。




 雑に漁ったカリキュラムをもとに、ベアトリーチェの方針である、堕落せず向上心を持たせることを前提に、基礎日程を組み込みました。
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