ベアトリーチェ(ゲマトリア)、キヴォトスにて   作:ふぁっしょん

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10/10の面白い話がまだないので投げます。
ベアトリーチェ(ゲマトリア)による、サオリとの面談です。


ベアトリーチェ(ゲマトリア)、アリウス生徒との面談にて

 呼び出したアリウスの生徒、錠前サオリは、非常に緊張している様子だった。

 なるべく平静を装おうとしているものの、全身の筋肉が緊張していることは、簡単に見て取れた。

 なぜ緊張しているのか。ベアトリーチェは少し思索を巡らせる。

 

 唐突な呼び出しだったからだろうか?

 理由も言わず呼び出したからからだろうか?

 自分になにか起きると思っているのだろうか?

 あるいは、部下になにか起きると思っているのだろうか?

 はたまた、なにか隠していることを知られたのではと思って……

 

 錠前サオリを呼び出したのは、彼女の成績が優秀だからではない。

 彼女が教官として担当するチーム全体の成績が優秀だからだ。

 ベアトリーチェが求めるような、想定以上の成長、あるいはそのための努力は見受けられないが……

 もし、それに最も近い生徒を選ぶとしたら、彼女がそうだった。

 

 

 ベアトリーチェは思索をやめ、言葉を発した。

「錠前サオリ。あなたを呼び出したのは、ただひとつのことを聞くためです」

 もともと考えていた内容を浴びせても、求める答えが返ってくるかわからないので、ベアトリーチェは前置きを設けることにした。

 

 サオリはさらに怯えた様子で口を開いた。

「マ、マダム、それは……なんで、しょうか」

 

「ふむ……」

 緊張を解こうと思ったのだが、逆効果だったらしい。

「ですが、その前に少し話しましょう。

 たとえば……あなたの部下について」

 

「!」

 サオリはさらに緊張した様子になった。

 ベアトリーチェは困惑した。

(おかしい……緊張をとくには、身近な話題がいいはずなのに)

 しかしそれを表に出さず、続ける。

 

 

「あなたの部下は実に優秀です。ですから、私は期待していました。

 なにをか、わかりますか?」

 

 サオリの顔色が悪い。

「わ、わかりません、マダム。

 申し訳ありません……!」

 

「あなたたちが、私の求めるある基準まで至ることをです。

 ですが、そこに至ることはなかった」

 

 サオリは震え出した。冷や汗が滲んでいる。

 ベアトリーチェは困惑した。

 

「なぜ?

 私はそれを疑問に思い、そして解決するため、あなたを呼び出したのです。

 ですが……ふむ。

 あなたは今、それを答えられなそうですね」

 

 サオリはおののき、叫ぶように言った。

「そのようなことは……!

 そのようなことは、ありません、マダム!

 私は必ず、あなたの期待に応えてみせます!

 ですから、どうか……どうか、慈悲を……!」

 

 

 ベアトリーチェは改めて困惑した。

 慈悲を願う必要がないからだ。また改めて、答えられるときに答えてもらえればいい。

 だが、本人が答えようとしているのだから、その意思にあわせるべきだろう……

 

 

「では質問しましょう。錠前サオリ教官。

 あなたがたは、なぜ私に逆らわないのですか?」

 

 

「……は?」

 サオリは驚愕の表情を浮かべた。

 

「より正確にいうと、なぜ私が課している課業に不満を抱き、改変しようとしたり、あるいは直訴しようとしたりしないのですか?」

 

「マ、マダム……

 私には、おっしゃられていることの意味が、うまく、理解できません」

 

「私はあなたがたのカリキュラムを作るにあたって、いくつか不満を抱くであろう点を認識していました。しかし、あなたがたは私にそれを訴えることなく、ただ耐えている。

 なぜ?私には理解できません」

 

 サオリは目を瞬かせた。

「マダム、私は……私たちは、マダムの考案したカリキュラムに不満など抱いておりません。

 決して、耐えているなどということもありません」

 

 

 ベアトリーチェは困惑した。

「ふむ……

 ですが、日々の課業は苦しいはずです。

 これまで机に座ったこともなかった子供が、机上演習を毎日数時間こなす。これは非常に難しいことであると、私は認識しています。

 戦闘訓練は肉体的苦痛を伴います。行軍訓練は精神的苦痛も伴います。工作訓練は非常に高度なものとなっています。

 であれば、苦しいと思うはずです。より楽をしたい……そのような傾向があって当然です。

 そして、私はその楽をするための行動を妨げてきました。

 であれば、私に逆らおうとして当然ではないでしょうか」

 

 サオリは叫ぶように言う。

「マダム!決して、決して我々がそのようなことを、考えるはずもありません!」

 

 

「ふむ……」

 ベアトリーチェは困惑のあまり、なにを言えばいいのかわからなくなってきた。

「あなたがたは、不満に思わないのですか」

 

「はい、そのようなことは、決して」

 

「……なるほど」

(道理でユスティナ聖徒会が、ああいう方向で維持させようとするわけです)

 

 

 ベアトリーチェの見解からみて、アリウス自治区の生徒は、これまでにない存在だった。

 あまりにも外れ値にみえた。

 方針が崩れていく。

 

「なるほど。錠前サオリ、あなたの答えを聞いて、私は新たな知見を得ました。ありがとうございます。

 しかし、それに伴い疑問が生まれました。

 あなたがたはどうすれば、私の手を離れるのか」

 

 

 その言葉に、サオリの顔色が変わった。

「わ、私どもになにか……至らないことがあったでしょうか……!」

 蒼白を通り越して白い。

 

「至らないところですか……そうですね。では正確に答えましょう。

 これは哲学的で高度な話になるので、あとで細かく説明します。

 あなたがたには、力への意思を抱いてほしいのです」

 

 サオリの顔色が戻っていく。

「力への意思、ですか。

 それはいったいなんでしょうか」

 

 ベアトリーチェはわかりやすいように、端的に答えた。

「新たなものを齎すために、より良い自分になろうとする、その精神的姿勢のことを指します。

 そうですね、簡単にまとめましょう。

 あなたたちが、自らの意思に基づいて、世界に新たなものを齎そうとして、努力する。それこそが私の望みなのです。

 些細なものでも構いません。善悪も問いません。荒唐無稽でも構いません。

 ただ、自分が本当に望むものであればいい」

 

 

「自分の……本当に望むもの」

 サオリは考え込んでいる様子だった。

 

 ベアトリーチェはそれを見て、遮るように言った。

「今考える必要はありませんよ。いずれわかれば、それでいいのです。

 ただ、覚えておいてください。

 たとえば私に逆らおうとすることであっても、それは私の求めることであると」

 

「……わかりました、マダム」

 サオリは真剣な表情で答えた。

 

「では、これにて面談を終わります。

 錠前サオリ、寮へ戻ってください」

 

 

 サオリは扉へ向かい、ベアトリーチェに一礼して、挨拶した。

「では、失礼しました」

 ベアトリーチェは閉じられる扉を見ていた。




なんだかマトモに見えますね。
言ってることを要約すると、とんでもない内容ですが。
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