【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
敵HFティーガーを追って、宇宙ステーションの残骸に飛び込んだペリノア07と08は、白い輝きに包まれた。
07を止めようとしたヒルダは、円筒形の残骸から白い光線が飛び出るのを目の当たりにする。
それはまるで宇宙ステーションの筒を砲身とした巨大な光線兵器のよう。
「ペリノア07!!08!!」
『……こちらペリノア07!すみませんHF大破!脱出します!』
『08同じく!』
ヒルダが叫ぶと、雑音と共に返信があった。どうやら見た目の割には、消し飛ぶような威力ではなかったらしい。それでも一度に2機のイーグルが大破してしまった。
魔術攻撃の光を確認し、味方に警告を出す。
「501各機!こちらペリノアリーダー!深追いするな!魔導士が隠れているぞ!」
他に巻き込まれた味方がないか周囲を確認していると、一機の敵HFが接近してきた。
ヒルダは直ちに迎撃の体制を取る。
彼女の乗機HFはHFF-111C アードヴァーク。イーグル系とは違う魔槍士型と呼ばれる機体。HFの身長より長い槍を持つ。女性のフォルムを持った細身の騎士。
長槍はHF戦に置いてリーチが長く有利だが、自身の霊力が低いと敵の
槍の間合いで、接近してきた敵HFを貫く。が、あっさり巨大な剣で弾かれてしまう。必殺の間合いを軽くいなされたヒルダは動揺した。
敵HFは帝国標準のティーガーと少し違う形状をしている。赤いマントを背負い巨大な両手剣を装備。恐らくエース級が乗る機体だ。
一旦距離を取り、間合いを外す。しかし敵はさらに距離を縮めてくる。
ヒルダは咄嗟に長槍で薙ぎ払ったが、あっさりと上空に避けられた。宇宙空間で上も下もないがHFの死角には違いない。
眼で追うのは諦め、薙ぎ払った動作を止めずに軸を傾けただけの回転を続けた。
一種の掛けだったが、上空に向けた長槍は敵を捕らえた。ただクリーンヒットはせず両手剣で防がれたようだ。今一度お互い距離を取る。
「強い!」
一瞬の交わりだったが、相手の技量の高さを実感。生半可な技では通用しないであろう。彼女は出し惜しみをせず、今できる最大の技を選択する。
「魔槍ハープーンよ!巨大な鯨を貫く炎の穂先を纏え!」
魔槍士型と呼ぶ彼女の乗機はイーグル系とは大きく違う。それはパイロットの技量によって魔術攻撃もできる点だ。豊富な霊力があるヒルダは魔術の技能も持つ。
騎士と魔女のハイブリッドである彼女の得意技は、武器に魔術の力を宿すエンチャント魔術。
HFの持つ長槍の穂先が赤く輝く炎を纏う。高密度で霊子を含んだ炎は簡単に獲物を貫く。例えそれが強化された武器であろうとも。
「はあっ!!!!」
最大の運動エネルギーをHFに叩き込み、一気に間合いを詰め、魔槍ハープーンを突きさす。魔術の炎を纏った穂先で、防御ができない敵HFを貫く。
はずだった。
「何!?」
長槍は敵HFの両手剣で防がれていた。その剣には魔術文字が浮かび上がっている。
「ルーン魔術!!」
剣の腹に突き立っている魔術の穂先がギリギリと擦れる。しかし貫けない。相手も魔術を纏った武器だったのだ。
『この武器は『竜殺し』のルーンを刻んでいる。魔術攻撃は無効だ』
「な!?」
なんと相手が会話してきた。武器同士の接触通信を介して。
『あなたは強い。敬意を払う。全力で行く』
あくまで真面目な声が彼女の耳に届く。
動揺している彼女を置いて、機体を離し両手剣を大上段に構える。両手剣のルーン文字が輝きを増すと、剣が巨大な光る剣へと変貌した。
身長の数倍の光る刃が、彼女の機体アードヴァークを襲う。
咄嗟に長槍の柄で防ぐが、光る剣で真っ二つにされた。
脳天も真っ二つにされる未来を観て、思わず眼を瞑る。
「?」
しかし衝撃が来ないので、恐る恐る眼を開く。
頭上の両手剣が寸止めされていた。いつの間にか光の刀身が消え普通の刃に戻っている。剣がゆっくりと降り兜に接触する。
『私の勝ちだ』
再度接触通信で相手の声が聞こえた。
完敗だ。ヒルダはこれまで実戦でも訓練でも負けたことがない。唯一アラス・エルメンドルフと引き分けたくらい。ついに彼女は負けを経験した。不思議と悔しさはない。その正直な心情を声に出す。
「降参だ」