【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-C

「ふん、皇帝め。奇襲のつもりだろうが無駄足だったな。絶対逃がすなよ」

 

 状況を見て落ち着いた艦隊司令は、勝利を確信した。もはや時間の問題。戦場単位での勝敗があったとしても、皇帝を捕えてしまえば、それで終いだ。

 

 

 スクリーンの光点が、皇帝機を追いかける。後続も追尾する。それを眺めていると。

 

「何者かが着空(touchdown)しました!エリアG24!艦隊の至近です!」

「なんだ?」

 

 オペレータの突然の報告に、艦隊司令は呆けたような声を出す。

 

 メインスクリーンの艦隊の傍に軍艦を占めす光点が新たに光った。

 

「霊紋解析!データバンクには登録されていませんが、艦種は霊電子戦艦。Uボートの類のようです!」

「今更Uボートが何の用だ。着空座標を間違えたか?」

 

 霊電子戦を生業とするUボートは、その特性上防御力は無いに等しい。

 

「魚雷で沈めてしまえ」

「はっ!雷撃戦用意!目標不明Uボート!」

 

 艦隊司令の単純な命令を副官が復唱する。

 

「あれ?」

 

 今度はオペレータが呆けた声を上げ、その理由がスクリーンに反映される。

 

 Uボートを示す光点から、新たな光点が生み出された。それはHFを表す大きさ。

 

--

 

 着空したUボートは帝国軍で新規開発された霊電子戦艦。いや、それに偽装した空母。強襲霊電子空母U-4000だ。その艦体側面の扉が次々と開き、中からHFが現れる。

 

「大隊各位!こちらワルキューレ01!これより対艦攻撃を行う!目標!連邦軍空母4隻!U-4000は退避!」

 

 コールサイン『ワルキューレ01』の第5SS突撃大隊指揮官ブリュンヒルデ・ラアウリッヒSS大尉の指令が飛ぶ。各HFは当初の予定通りの目標空母に向かう。

 

 エーテルステルスを発動させてU-4000が離れていく。それを見届けてブリュンヒルデも動き出す。

 彼女の機体は、戦女神型HFヤークトパンターと呼ばれる。白いスカートを履いた軽鎧姿の女性型HF。兜にある羽飾りが特徴だ。

 部下のHFもほぼ同型の戦乙女型HFパンターで槍とラウンドシールドで武装している。パイロットはブリュンヒルデと同じく全員女性。

 

 各機が敵空母に向けて突撃する。迎撃してくる敵HFはない。

 

「陛下は本当に釣りがお上手だ。まあもしHFが来ても我がワルキューレ隊は負けないがな」

 

 抵抗のないまま空母が視認できるまで近づく。重力子魚雷は撃ってきたがHFにはかすり傷も負わせられない。近接防御の光子砲など、そよ風の如し。護衛の駆逐艦などが来る前に決着を付ける。

 

「では」

 

 空母エンタープライズを視界に収め集中する。

 

 HFヤークトパンターの女性の顔を象った白い仮面の眼が光り、兜から零れる長い金髪が輝きを増した。

 

「生と死を司る豊穣の女神フライアよ!我ら戦乙女の主よ!勇敢なる戦士には祝福を!愚かなる神敵には死と災いを(もたら)す神槍を!EIHWAZ(エイワズ)!」

 

 暗い青色のルーン文字が現れ、掲げた手に輝く槍が出現する。

 

「その身に刻め!神槍ニーベルンゲン・ディザスター!!!」

 

 HFヤークトパンターの背に光の翼が生え羽ばたく。現出した巨大な神槍を投擲。光る輪が多重に表れ、その中心を貫いて飛翔した。

 

 一瞬で到達した神槍は目標を穿つ。着弾と同時に無数の光球が現れ目標を包み完全に覆う。

 

 全長1,500mの巨大空母エンタープライズは爆発四散した。たった一発の魔術攻撃で。

 

 他の空母、ホーネット、ヨークタウン、サラトガも同様にワルキューレ隊の攻撃を受け大破撃沈。

 

 太陽系攻防戦の大勢は決した。

 

--

 

「空母4隻全て……だと……」

 

 レジー・エルメンドルフ公爵は寝室でその報告を受け、茫然自失した。

 

『は、はい……艦隊司令官スプルーアンス中将も戦死され、第2、第3艦隊は無条件降伏……全員捕虜となったようです……』

 

 通信ウィンドウに映る焦燥しきった国防長官は、二度とそのポストに戻れないだろう。

 

 普段、激昂するレジーだったが、この時ばかりは呆然として報告を受け取る。

 

『あ、あと連邦北東部の状況ですが……』

「まだなにかあるのか……」

『太陽系攻防戦同時期に帝国の特殊Uボートが領内に侵入。Uボートから発艦した帝国HFが、カノープス運河、サルガス運河を制圧。完全に北東部と南西部が分断されました……』

 

 レジーは、国防長官が何を言っているのか分からなかった。

 

「何を言っている?」

『帝国軍第3、第4機動隊群が、連邦北東部に展開中。運河が使用不可となったため、連邦軍の第4、第5、第6、第7艦隊の北東部移動が難しくなりました……』

「それは帝国に連邦の領土を蹂躙されると言うことか?」

『は、はい……』

「ハイではない!!!!!!」

『ひぃ!!』

 

 その後、帝国軍第3、第4機動隊群が無人の荒野を行くが如く、連邦北東部の星系州に侵攻。星系防衛隊は居るがほぼ抵抗なく降伏。

 星系州の領主貴族などは早々に逃亡、普遍人(Normalian)の平民だけが残される。

 

 普段、貴族に虐げられていた平民は、帝国軍を歓迎したという。

 

 それほど時間を置かずに連邦の3割の領土が帝国に編入された。

 

 

続く

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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