【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
横田ユイと星菱レイは、ホーロー星系で演習を続ける第04護衛隊を離れ、補給艦AOE-5422『とわだ』に便乗して、はるばる帝都のある本州に戻って来た。
第四惑星カントウに降り立ち、帝都にある皇居まではあっと言う間だ。送迎を担うのは女帝を守護する近衛師団。先帝があのような最期を遂げたため、女帝への面会は厳戒態勢で行われており、案内する隊員たちも厳しい表情を崩さない。ユイとレイも、必要以上に緊張を強いられることとなった。
皇居は地球時代の施設を模しており、広大な敷地の構造も当時を忠実に再現しているらしい。今回は公式訪問ではないため、公的な事務を行うための正殿棟ではなく、女帝の住居である御所へと案内された。
皇居の警備も近衛師団の管轄だ。特に御所内には、女帝が若い女性である配慮からか、赤のラインが入った黒いセーラー服を纏う少女近衛師団員の姿が目立つ。
御所の御車寄せに降り立つと、入口でボディチェックを受ける。対応したのは黒セーラー服の二人組。入間シグレ、入間ユウという姉妹だと紹介を受けた。
ユイとレイは、普段の白セーラーや詰襟ではなく第1種礼装に身を包んでいた。帯刀は許されていたが、流石にここから先は入口で預けることとなる。
問題なしと判断され、入間姉妹の案内で御所内を進む。女帝との謁見は小広間で行われるという。そこへ向かう廊下の途中で、黒い詰襟を纏った男性が待ち構えていた。
「私は入間タカシ1等武佐。近衛歩兵第1連隊の隊長を務めている。君らが、春日ツクモの教え子かね?」
かなりの高官だ。二人は直ちに背筋を伸ばして敬礼を捧げた。
「はっ! 私は横田ユイ1等武尉。こちらは星菱レイ2等武尉。護衛艦隊第04護衛隊群第04護衛隊、第401人型機動戦闘飛行隊所属です。おっしゃる通り、春日ツクモ3等武佐飛行長の部下であります!」
「うむ」
入間タカシは笑顔でユイの言葉を受け取った。しかし、次の瞬間には笑顔を消してレイを凝視する。
空気がバチッと弾けるような感覚が走った。
「「「え?」」」
ユイと、案内役の入間姉妹が同時に驚きの声を上げる。反射的に姉妹が刀の柄に手を添えるほど、その場に凄まじい圧力が立ち込めた。
「シグレ、ユウ。待て」
レイから視線を逸らさぬまま、入間タカシが二人を制する。
「星菱レイ2等武尉と言ったか。……やるな」
「いえ……」
三人の少女には何が起きたのか理解できなかったが、入間タカシとレイの間には、戦士のみが通じ合う対話があったようだった。
「殺気を放った際、一瞬でそれを押し返してきた。しかも隣の彼女を庇うように、だ」
「え?」
先ほど感じた衝撃の正体が殺気だったのかと、ユイは戦慄した。あまりに一瞬の出来事で、自分は気づくことすらできなかった。
「なるほど、流石はツクモが手塩にかけた教え子だ。通ってよい。陛下がお待ちだ」
一転して柔和な笑みを浮かべ、入間タカシが敬礼を返す。廊下の脇に寄り、二人を促した。
「な、なんだったのかしら……」
「試されたんだろ」
ユイとレイは小声で囁き合う。入間タカシがツクモの先輩にあたる人物だと知ったのは、後のことだった。