【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第三十話 謝罪
Part-A


 レイは、シャルルⅢ世に連れられ、落ち着いた雰囲気の待合室に入る。

 

「いきなり連れ出してすまないね。星菱レイ君」

「いえ、えーと……シャルルⅢ世陛下」

「前に会った時のように、トロワでいいよ。フランクス語で『3』を意味するんだ。Ⅲ世の3だね」

「はあ……。じゃあ、トロワさん。なんのご用でしょうか?」

 

 レイには、国王であるトロワに呼び出される心当たりがまったくなかった。

 

「うん、君に謝罪をしたいと思ってね」

「え?」

「環局所泡合同演習リムロックの最終日のことだよ。君の母親について、無神経な言及をしてしまった。不用意な言動で君を傷つけたことを、改めて謝りたい」

「あー……。ちょっと待ってください」

 

 レイは手のひらを向けて言葉を制し、少し考え込む。

 

「じゃあ、代わりにボクと剣術で模擬戦をしてもらえませんか?」

「え?」

 

 今度はトロワが困惑する番だった。謝罪の代わりに剣を交えたいという提案の意図を測りかねたが。

 

「なるほど。ワタシが勝負に勝たないと、謝罪を受け入れてもらえないということかな」

「……」

「分かった。奥に武道場があるので、そこでいいかな」

「はい」

 

 二人は御所内にある武道場へと向かい、備え付けの道着に着替えた。ここは普段、近衛師団などの護衛官が訓練に使っている場所らしい。女性隊員が多い組織だが、幸いにも男子向けの道着も用意されていた。トロワは持ち込みの訓練着に身を包む。

 

 板張りの道場の中央で、二人が対峙する。

 

「ワタシは、これを選ぼう」

 

 トロワが手にしたのは、刃を潰した細身の剣。いわゆるサーベルだ。剣先がわずかに曲がり、鋭い刺突と斬撃の両方に対応可能な形状をしている。

 

「じゃあ、ボクはこれ」

 

 レイの愛刀は預けたままだ。代わりに重量バランスが似た獲物を探し、刃を潰した模造刀を手に取った。軽く素振りをして感触を確かめる。

 

「言い出したのはボクですから、ルールはそちらでどうぞ」

「分かった。頭部と下半身以外にクリーンヒットを一撃当てたら勝ち。一発勝負、ということでどうかな」

「はい」

 

 開始線に立ち、互いの呼吸を合わせる。審判はいない。

 

「では、始めよう」

「テン・シント流、星菱レイ。よろしくお願いします」

「ダッソー流、トロワ。よろしく頼む」

 

 それぞれの流儀で一礼し、同時に身体強化の術式を回す。

 

 トロワの構えはフェンシングに近く、片手に剣を持ち、反対の手を後ろに掲げていた。

 

(左利きか……)

 

 レイには馴染みのない構えだ。慎重に距離を測るが、間合いが掴みにくい。

 

「では、ワタシが合図を出すよ。Allez(始め)!」

 

 トロワはいきなり仕掛けてはこず、鋭い眼光で様子を窺っている。

 

(こちらから仕掛けてみるか)

 

 レイは上段の構えを取った。テン・シント流の上段は頭の真上ではなく、右利きであれば頭の右横に構える。これは実戦で兜を着用している状態を想定しているためだ。

 

 踏み込みと同時に、力強い袈裟斬りを繰り出す。体に当てられずとも、まずはバランスを崩すつもりだった。

 

 しかし、その一撃はサーベルで滑らかにいなされた。刀身を滑るように受け流される。それだけでは終わらず、トロワは刀を巻き込むようにサーベルを絡ませてきた。

 

(小手狙いか!)

 

 レイは咄嗟に右手を離し、刀が弾かれるままに任せた。トロワは追撃を止め、感嘆の声を上げる。

 

「すごいね。今の一撃を躱すとは」

「偶然だよ」

「いやいや、あそこから咄嗟に右手を離すのは、なかなかできることじゃない」

 

 賞賛を受けるレイだったが、今の受け流しには肝を冷やした。

 

(”柔”の剣……なるほど、ゴウガが負けるわけだ)

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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