【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
リムロックの剣術大会・個人戦決勝で、ゴウガはトロワに敗北した。レイが試合を申し込んだのは、その時の動きが気になっていたからだ。遠目では分からなかったが、実際に相対してみればその腕前は本物だった。『柔よく剛を制す』を地で行くスタイル。
こちらもテン・シント流の”柔”で対応すべきか。しかし、レイは真っ向から力でぶつかることを選んだ。
(『剛よく柔を断つ』ってね!)
すっと息を吸い、筋肉に力を込める。身体強化によって筋肉がミシっと鳴り、一回り膨らんだかのような錯覚を覚える。
レイの変化を感じ取ったトロワが、次々に技を仕掛けてきた。
Xを描くような鋭い斬撃。そして三連撃、四連撃と続く電光石火の刺突。
レイは斬撃を真っ向から叩き落とし、連撃には最後の一撃を受け流せない角度で力強く弾き返した。剛の力による徹底した防御だ。
一進一退の攻防。道場には連続した金属音が響き渡る。
トロワは一瞬の間を置き、深くバックステップを取った。体全体を弓のように引き絞り、刺突の構えを固める。
(来た!)
レイはその構えの意味を悟った。最大最速の突きを放つ前触れ。レイも脇を締め、腕をコンパクトに畳んで備えた。
「シッ!」
トロワが裂帛の気勢とともに踏み込む。最速の踏み込みから放たれる最強の刺突。これを打ち払って逸らそうとしても、勢いを殺しきれずに胸を貫かれるだろう。まさに必殺の一突き。
(テン・シント流太刀術
レイはそれに対し、まったく同じ刺突を真正面から放った。
サーベルと刀が切っ先同士で激突し、ギンッと鼓膜を震わせる高い音が鳴る。勢いを殺しきれず、互いの武器は反りの分だけ上方へ弾き飛ばされた。
「
予想外の反動に、トロワの体勢が大きく流れる。だが、レイは止まらなかった。上に弾かれた刀の勢いをそのまま上段の構えへと繋げ、渾身の力でサーベルを叩きつける。
「ふん!!」
バギンという衝撃音とともにサーベルが床へと叩き伏せられ、その切っ先が板の間に突き刺さった。レイはすかさず踏み込み、足の指でサーベルの刀身を抑え込んだ。
トロワは慌てて剣を引き抜こうとするが、万力のような力で固定され、びくともしない。
ゆっくりと、レイの刀の切っ先がトロワの胸に触れた。
「
トロワが爽やかに負けを認めた。
二人は開始線に戻り、一礼して握手を交わす。トロワは少し困ったような、苦笑いを含んだ表情を浮かべた。
「素晴らしい試合だったよ。完敗だ。……しかし、これで謝罪は受けてくれなくなるのかな?」
「え?」
「え?」
「その話は別ですよ。ただ、トロワさんと試合をしてみたかっただけですから」
「ええ? でも、さっき……」
「勝敗云々については、何も言ってなかったでしょ?」
言われてみれば、試合の結果と謝罪を結びつけるとは明言していなかった。
「確かに! 君は口も上手いね。降参だよ」
「うん。あー……でも床、傷つけちゃった。怒られるかな」
「それはワタシの剣がやったことだから、後で謝っておくよ。それよりも、話の続きを……」
「待った! ……シャワーを浴びてからにしない?」
「アハハ! そうだね!」
トロワはレイのどこか惚けた反応に、腹を抱えて笑った。国を失って以来、心は悔しさや悲しさで埋め尽くされていたが、久々に心の底から笑えた気がした。トロワは心の中で、静かにレイに感謝した。