【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第三十一話 貴族
Part-A


 地球自由連邦の北東部に汎ペルセウス帝国が侵攻した当初、各星系で激しい防衛戦が予想されていたが、実際には殆ど戦闘は発生しなかった。

 

 例えば、ある星系州に侵攻した際、迎撃を想定しながら州都惑星へ降下したが、一切の攻撃を受けなかったのだ。

 そのまま都市部まで移動しても、なんの反応もない。だが、都市の中央通りを通ったとき、帝国兵たちは驚愕の光景を目にした。

 

 ”歓迎! 汎ペルセウス帝国軍! くたばれ! 連邦貴族!”と書かれた巨大な横断幕で迎えられる。

 

 マルダー歩兵戦闘車で都市に入った帝国兵が呆然としていると、周りの建物から色とりどりの紙吹雪が降って来た。

 

「帝国ばんざーい!」

 

 民衆が笑顔で手を振って歓迎している。最初、帝国側は罠を疑ったが、歩兵戦闘車を降りて話を聞いてみると、そうでないことが分かった。

 

「連邦貴族のやつら、俺たちを置いてさっさと逃げやがったんだ!」

「やつらは重税ばかり課して、私腹を肥やすことしか考えていない! 居なくなってせいせいしたよ!」

「貴族でなければ人にあらず、といった態度でいやがる。あいつら普遍人(Normalian)のことを、閉魂者(Closed)と言って差別するんだ」

 

 人々の口から次々と不満が漏れ出す。民衆の怒りは限界に達しており、彼らにとって帝国軍は侵略者ではなく、圧政からの「解放者」だった。

 

 

 州知事に会い説明を聞いてみると、民衆の言葉が真実であることが裏付けられた。州知事すらお飾りで、実権はすべて連邦貴族が握っていたという。

 

「連邦貴族は守備隊を引き連れて、早々に逃亡しました。守るべき民衆を置き去りにして。私達に武器はありませんし、抵抗する意思もありません。どうか、略奪などはご勘弁を……」

 

 もともと皇帝からは、市民への暴力や略奪を厳禁する命令が出ている。元海賊の帝国とはいえ、現在の帝国軍は規律正しい軍隊へと変貌を遂げていた。

 

 そのことを伝えると、州知事は心底安心したようだった。

 

「ありがとうございます。我々は帝国軍の進駐を歓迎します」

 

 星系州は帝国軍を正式に受け入れ、占領はあっけなく完了した。

 

 実際に貴族の館や軍の基地を調査してみると、本当に何も残っていなかった。まさに夜逃げ同然の逃走である。

 

 州知事の話では、やつらは備蓄していた食料まで持ち去ってしまったらしい。今すぐ飢えることはないが、予備がないため、時間が経てば深刻な物資不足に陥るのは明白だった。

 

 だが、帝国軍は農業国フランクスから輸送艦で食料などの物資を大量に運び込んでいた。当初、なんのためにこれほどの食料を運ぶのかと疑問を抱いていた兵士たちもいたが、上層部はこの事態を正確に予見していたようだ。

 

 食料の提供を伝えると、州知事に涙を流して感謝された。

 

 その後、帝国は代官こそ置くものの、基本的には現地の自治に任せる方針だ。当面の間、州は帝国軍の補給を支えることを約束する。

 

 他の北東部州星系でも、帝国軍は同様に歓迎される。連邦貴族がいかに民衆から恨まれていたかの証明でもあった。

 

 かくして地球自由連邦は、戦うまでもなく北東部を占領され、全領土の30%を帝国に編入されることとなる。

 

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/

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