【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第三十二話 形見
Part-A


「陛下、新しいHFはいかがですか? 違和感などはございませんか?」

「ええ、シズカ。違和感はありませんね。機体の挙動も極めてスムーズです」

 

 大八洲(おおやしま)皇国12億人の頂点、第253代女帝は、皇都のある惑星カントウ付近の宙域でHFに搭乗していた。

 

 女帝が駆るHFは、配備されたばかりの星菱零式人型機動戦闘機の最新型――通称「52型」と呼ばれる機体だ。女帝専用HFは、加えて外装に陣羽織を模した追加装甲を纏う。

 この52型は、ユイたちが運用する21型の発展型にあたる。装甲を強化し、出力も若干向上しているが、引き換えに機動性は21型に譲る。いわば「重装甲の52型」と「高機動の21型」という棲み分けだ。

 

「といっても、私には飛ぶのが精一杯ですね。戦闘など、とてもとても……」

「式典用ですので、それで問題ありません。先帝陛下もそうでしたが、帝国の皇帝のように前線に出る必要はないのです。というか、絶対に出ないでくださいね」

「はーい」

 

 通信ウィンドウ越しに、侍従長のシズカから釘を刺される。傍らに控えるモミジも無言で深く頷いた。

 

 女帝の随伴機として、狩衣(かりぎぬ)を模した装甲を持つ術士仕様機と、黒い装甲に赤いラインが走る近衛仕様機が並んでいる。どちらも最新の52型で、シズカとモミジが操縦していた。

 

 彼女たちは今、星菱重工から納入されたばかりの52型の最終チェックを行っている。

 

 付近には第01護衛隊群所属の人型搭載護衛艦DDH-5183『いずも』が停泊。所属する第101飛行隊、および近衛師団の第1戦隊も、この52型への機種転換を順次進めていた。

 

 旧式の96式に慣れていたパイロットたちは、零式の圧倒的な出力と運動性能に驚きを隠せない。装甲の絶対的な厚みこそ96式が勝るが、零式の新素材によるモジュール装甲は、それ以上の防御効率を誇っている。

 

 ちなみに近衛機は「黒地に赤」だが、101飛行隊は「暗緑色」で統一されていた。これは三沢ゴウガの訓練経験からの選択で52型の量産仕様もこれに従う形となった。報告を受けたゴウガは相当なドヤ顔をしていたらしい。

 

「それにしても、このパイロットスーツは体に密着しすぎていて、少し気恥ずかしいですね……体の線が際立つというか」

「真空の船外活動服としての機能を優先させた設計ですから、仕方ありませんよ。肌との間に空気が入ると気圧差で膨れてしまいますからね。密着しててもちゃんと皮膚呼吸もできる素材になっていますのでご安心を」

「……そりゃあ、シズカたちは気にならないんでしょうけど……」

 

 女帝の視線がシズカの顔から少し下がった位置に注がれると、シズカはわざとらしく笑みを深めた。

 

「いえいえ、バストサイズに貴賤はございません。陛下の慎ましいお胸も、きっと好まれる方がいらっしゃいますよ」

「くっ……」

 

 思わず腕で胸元を隠してしまう女帝。にやにやしたシズカと、頷きを強くするモミジ。

 

 シズカもモミジも、実に立派なものをお持ちだ。心底羨ましいと唇を噛む、皇国元首であった。

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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