【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
「そっか。あの王様から直接、謝罪を受けたんだ」
「うん。あと、ついでに一試合してきたよ」
金曜日の『かが』第二食堂、昼食メニューは恒例のカレーライス。艦ごとに秘伝のレシピがあるこの料理は、皇軍全体でコンテストが開かれるほど親しまれている。
レイはカレーを口に運びながら、皇居での一件をゴウガに話していた。シャルルⅢ世――トロワと剣を交えたことを伝えると、ゴウガが食らいつく。
「なに! 勝ったのか!?」
「うん」
「おっしゃ! ナイスだレイ!」
「独特な剣術だったよ。受け流しが凄まじく上手い。いわゆる”柔”の極致だね」
トロワの剣術は、一見フェンシングを思わせるが、その本質は冷徹な実戦剣術だ。しなやかな剣筋で攻撃を無力化し、隙を突く。皇国の武術とは根本から思想が異なっていた。
「そうなんだよ。いくら打ち込んでも暖簾に腕押しで、いつの間にかこっちのバランスを崩されてるんだ。ありゃやりづらかった……」
「ボクも、ゴウガとの試合を見てなきゃ危なかったと思う」
「そうか。よーし、次は絶対に負けねえ!」
よほど悔しかったのか、ゴウガは手のひらに拳を叩きつけた。
「そうだね。……もっとも、次があるかは分からないけど」
「なきゃ困る! あの後、姉さんにこっぴどく叱られたんだぞ。『情けない』って……あの時の姉さんはマジで鬼かと思ったね」
その光景を思い出したのか、ゴウガの顔が一気に青ざめる。
「誰が鬼だって?」
「ひっ!」
いつの間にか、背後に三沢ナユが立っていた。ゴウガは背筋を伸ばす。ナユは震える弟を無視し、真剣な眼差しをレイに向けた。
「そんなことより、レイ君。ユイのこと、何か聞いてる?」
「何かあったの?」
「なんかね、皇居から戻って以来、様子がおかしいのよ」
「元気がないとか?」
「いや、元気はあるみたい。でも、時々ぽけーっと考え込んでるというか、上の空なのよね」
「うーん。陛下との話の内容は、ボクにも言えないみたいなんだ。たぶん機密なんだろうけど」
「そっか……。力になりたいんだけどな」
ナユは本気で親友のユイを案じているようだった。
「分かった。後でユイのところに行ってみるよ。何ができるか分からないけど、ナユが心配してたことも伝えておく」
「お願いね、レイ君」
「うん」
もし悩みがあるなら、少しでも力になりたい。ユイには、いつも通り前を向いていてほしいから。
「あ、ゴウガ。あんたは後で、ちょっと話があるから」
話が逸れたかと思えば、そう甘くはなかった。地獄の続きを予感し、ゴウガの顔はさらに土気色へと変わっていった。