【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
帝国軍の巡洋戦艦『シャルンホルスト』が、地球の衛星『月』にある旧連邦軍基地――現在は帝国軍に占領されたアリスタルコス要塞の軍港に接岸し、重厚なタラップを下ろす。
タラップの前には整然と帝国軍兵士が整列している。その中央に開けられた道には、赤い動甲冑に身を包んだ皇帝直属の親衛隊が並んでいた。
やがて、重厚な鎧を纏った大柄な男がゆっくりとタラップを降りてくる。この男こそが汎ペルセウス帝国皇帝、フリードリヒⅣ世である。後ろには威風堂々とした親衛隊が従っていた。
皇帝が地表に降り立つと、全兵士が一斉に敬礼を捧げる。フリードリヒは答礼をしながら、兵士たちの列の中を真っ直ぐに進んだ。
「ようこそ
待ち構えていたのは、第1機動隊群司令ハンプシャ・ポーツマス大将。
「うむ」
「こちらへどうぞ」
ポーツマス大将に先導され、皇帝は基地の奥へと歩みを進める。
「修復の進捗はどうだ?」
「80%ほど完了しております。電装系は全換装となりましたが、それ以外の構造体は再利用可能でした」
「さすがグンテルだな。加減を心得ておる」
「ええ、全くです」
魔道艦隊群司令部直轄のグンテル・グリュックスブルク中佐による対要塞魔道重砲『トールハンマー』の直撃を受けた要塞だったが、あれは魔術的な稲妻による内部焼成が主であったため、物理的な外壁の破壊は最小限に抑えられている。
要塞の修復作業を担っているのは、
「それで、連邦との停戦交渉はいかがでしたか?」
「うむ。物陰から見ていたが、連邦国務長官の顔は見ものだったぞ」
帝国と連邦の一時的な停戦交渉、および捕虜交換は、連邦の首都星系であるロードン星系で行われた。
敵地のまっただ中ということもあり、皇帝は不参加を公表している。だが、実際には巡洋戦艦『シャルンホルスト』に潜伏し、こっそりと同行していたのだ。旗艦と駆逐艦2隻のみで敵の喉元に乗り込む、あまりに大胆不敵な行動だった。
交渉自体は、新任の連邦国務長官と帝国外務大臣の間で円滑に進められた。最後に握手を交わす際、帝国外務大臣はわざとらしくこう言い放った。
「では、よろしくお願いいたしますよ。地球自由連邦どの……いや、地球は我が帝国に併合されましたから、今はただの『自由連邦』でしたな。わははは!」
これを聞いた連邦国務長官は、苦虫を十匹ほど噛み潰したような顔をしていたという。舞台袖でそれを聞き、笑いを堪えるのに必死だった皇帝が危うくバレそうになったのは、ここだけの話だ。
捕虜交換は、連邦側1万人、帝国側500人という規模で行われた。帝国の捕虜は、フランクス軍が連邦側へ脱出した「ケンダルク包囲戦」の際に囚われた者たちだ。人数差は圧倒的だが、帝国にとっては一人でも多くの熟練兵を取り戻すことが、次なる戦局を左右する。停戦はあくまで再侵攻のための牙を研ぐ期間に過ぎない。
ちなみに、捕虜のうち2千人が亡命を希望して連邦に戻らなかった事実は、連邦政府に大きな衝撃を与えた。特に、愛娘が帰還しなかったラムシュタイン卿とラングレー卿の激怒は凄まじかったという。
廊下の突き当たりにあるエレベーターに乗り込む。重力制御によって急加速するケージは、驚異的な速度で月の深部へと降りていく。
「……随分と深く潜るのだな」
「ええ。月の中心核付近まで向かいますので」
エレベーターの窓の外では、照明の光が線となって過ぎ去っていく。数分の降下の後、ようやく終点が近づき、重力制御での急減速により停止、扉が開く。
エレベーターを降りた先では、灰色のローブを纏った禿頭の男、グンテル・グリュックスブルク中佐が膝を突いて待っていた。
「陛下、ご足労いただき光栄の至りに存じます」
「うむ。して、余に見せたいものとは何だ?」
そこは想像を絶する広大な空洞だったが、一見して構造物らしきものは何もない。ただ、つるつるとした真紅の床が、地平線の先まで広がっていた。
「陛下、今私たちが立っているこの場所こそが、ご覧いただきたかったものです」
「む?」
「我々が立っているのは、月の中心核に存在する、直径13.75kmの完全球体……。我々はこれを『コア』と呼称しておりますが、その性質はHFにおける
「なにぃ!?」