【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
三沢ゴウガの乗る零式HFと、トロワ・ダッソーナの駆るラファールM剣士型HFが、数百メートルの間隔ですれ違う。
ゴウガはすぐさま反転してトロワを追おうとしたが、直後にロックオンを検知した警報がコックピット内に鳴り響いた。
「なにぃ!?」
完全に背後を突かれたゴウガのHFは、戦術支援システムによって「中破」の判定を下される。
「レ・ブルー1。こちらグリーンフラッグ02。トロワ! 今、何しやがった!」
『グリーンフラッグ02。こちらレ・ブルー1。何って……普通に空戦機動でいうインメルマンターンをしただけだよ。ただ、運動エネルギー付与を重心一点に集中させて、手足の振りによる慣性制御で機体の向きを急転換させたんだ』
「そんなことができるのか」
『うん。普段は加速時に機体全体へ運動エネルギーを付与していると思うんだけど、それをHFの重心だけに絞ることで、エネルギーロスを最小限に抑えながら鋭角に旋回できるんだ』
「なるほどな。その分、速く後ろに回れるってわけか」
『ただ単に直線加速するだけなら、全身に付与した方が効率はいいけどね』
模擬星間機動戦の途中だったが、二人はそのまま空戦技術談義に没頭し始める。
「なんかコツとかあるのか?」
『そうだねぇ。腰に紐を巻き付けられて、グイッと引っ張られる感じかな?』
「ほー、こんな感じか? ……どわーーー!!!」
重心制御を極端に意識しすぎたのか、腰を中心にエビ反りのまま加速していくグリーンフラッグ02。
『うわー! しっかり体幹に力を入れないと危ないよ!』
「腰が折れるかと思った……」
『何やってるのさ、二人とも……』
近くで機動練習をしていたレイからも呆れたツッコミが入る。
なぜ、フランクス軍のトロワと訓練をしているのか。その始まりは一ヶ月前に遡る。
――
「よろこべ~女子ぃ~うわさの転校生を紹介するぅ~!!」
教師……ではなく、『かが』飛行長の春日ツクモが、おどけた調子で背後から一人の少年を招き入れた。
「トロワ・ダッソーナです。よろしく」
銀髪をなびかせた線の細い美少年の登場に、ブリーフィングルームは少女たちの悲鳴にも似た歓声に包まれた。
「転校生って何ですか、飛行長……」
飛行長補佐の大湊ヒフミが半眼でツッコミを入れるが、興奮した面々には届かない。
「あー! お前! あの時の王子様……じゃなかった、王様じゃないか!」
かつて剣術大会の決勝で敗れたゴウガが、指をさして叫ぶ。ゴウガだけでなく、報道を通じてトロワの顔を知る者は多かった。ざわざわと騒ぎが大きくなる。
「まあ、皆落ち着け。今から事情を説明する」
「春日3等武佐。ワタシから説明させてください」
「ああ。よろしく頼む」
それまで柔和な笑みを浮かべていたトロワが真剣な表情へと一変し、直立して敬礼を捧げた。
「ワタシの顔をご存じの方も多いかと思いますが、お察しの通り、フランクス王国の国王シャルルⅢ世です。しかし現在、母国は帝国に占領されており、ワタシは亡命政府『自由フランクス』の代表という立場にあります。そして、同時に局所泡艦隊第12F海軍航空隊を率いる隊長、トロワ・ダッソーナ少佐でもあります。祖国奪還のため、皇国の力を貸してください。よろしくお願いします!」
トロワの切実な声に、先ほどまでの浮ついた空気は霧散し、場に重い緊張感が立ち込めた。
「という訳だ。これから数か月に渡り、フランクス軍との合同演習を行う。目的はフランクス王国領土の奪還。……つまり、皇軍は本格的に帝国と事を構えることになる」
ツクモの説明に、全員の背筋が伸びた。連邦対帝国の戦争に、ついに皇国も参戦することを意味していた。